電子商取引の浸透が小売市場に与える影響 南 方 建 明 はじめに .店頭小売市場の動向 小売業年間販売額の推移 面積効率(売場面積 あたりの年間販売額)の推移 店舗面積増加傾向にブレーキ .電子商取引市場の動向 無店舗販売額、通信・カタログ販売額の推移 電子商取引市場規模 米国電子商取引市場の動向 電子商取引企業のタイプ別市場規模 むすび はじめに 年代になって大規模小売店舗法(大店法)の規制緩和がすすみ、さらに 年 月末 に大店法が廃止される中で小売業売場面積が急増し、店頭販売における競争が激化した。こ のような状況の下で、電子商取引 ) も含む通信・カタログ販売の販売額が増加し、店頭販 売を取り巻く競争はいっそう厳しさを増している。そこで、本稿は電子商取引の浸透が店頭 販売など小売市場にどのような影響を与えるかについて、統計資料などを用いて明らかにする。 ) 電子商取引 の定義は、各調査によってやや表現が異なるが、 による定義が一般的なものとし では、電子商取引を次のように定義している。 広義の電子商取引 は、企業、家 てあげられる。 計、個人、政府、その他の公的・私的組織間のコンピュータを介在したネットワーク上でおこなわれる 物・サービスの販売または購買である。財・サービスの注文はネットワークを通しておこなわれるが、決 済や最終的な配送はオンライン・オフラインを問わない。具体的には、インターネット・アプリケーショ (電子データ交換) 、 (フランスのビデオテックスサービスで、電話回線を通じて文字・ ン、 画像などを送受信する簡易な機器を用いたコンピューター・ネットワーク・システム)、インタラクティ ブ電話システムなど自動化された取引に用いられるオンライン・アプリケーション上の受発注をいう。 狭義の電子商取引(インターネット取引) は、企業、家計、個人、政府、その他の公的・私的組織間 のコンピュータを介在したネットワーク上でおこなわれる物・サービスの販売または購買である。財・ サービスの注文はネットワークを通してなされるが、決済や最終的な配送はオンライン・オフラインを問 、インターネット経 わない。具体的には、ウェブページ、エクストラネット、インターネット経由の 、その他のウェブ対応アプリケーションなど、ウェブへのアクセス形態(たとえば、モバイ 由の ル、テレビセット経由など)を問わず自動化された取引に用いられるインターネット・アプリケーション 上の受発注をいう。ただし、電話、ファックス、従来型の電子メールによる受発注は除く( )。 大阪商業大学論集 店頭小売市場の動向 第 巻 第 号(通号 号) に関しては、小売業年間販売額および大型店年間販売額の推移、 さらには面積効率(売場面積 あたりの年間販売額)の推移をもとに、店頭小売市場の停 滞傾向について分析している。他方、 電子商取引市場の動向 に関しては、電子商取引市 場の現状と将来の可能性について分析している。まず、通信・カタログ販売の動向について 述べている。カタログ販売が必ずしも電子商取引に置き換わっていくわけではないとして も、非接触型の無店舗販売であるカタログ販売の市場規模は、電子商取引のひとつの可能性 を示すものと考えたからである。次に、経済産業省をはじめとしたいくつかの調査研究機関 による電子商取引市場規模推計結果について述べている。さらに、電子商取引をおこなって いる企業をタイプに分け、タイプ別の市場規模について明らかにしている。 .店頭小売市場の動向 小売業年間販売額の推移 消費者物価指数調整後の小売業年間販売額( バブル期の 間販売額は 年に 年の価値に換算した販売額)をみると、 兆円とピークを迎え、その後は減少傾向となり、最新の 兆円と、ピークの 年と比較して 兆円減少している(表 年以降の大型店の前年対比年間販売額の推移をみても、 百貨店 表 参照) 。 スーパー 小売業年間販売額および前年対比増加率の推移 (単位 十億円、%) 年 (注 年の年 年 ( ) 年 ( ) 年 ( ) 年 ( ) 年 ( ) 年 ( ) 年 ( ) 年 ( ) 年 ( ) 年 ( ) 年 ( ) 年 ( ) 年 ( ) 年 ( ) 年 ( ) 年 ( ) 年 ( ) 年 ( ) 年 ( ) 年 ( ) 年 ( ) 年 ( ) 年 ( ) 年 ( ) 年 ( ) 年 ( ) 年 ( ) 年 ( ) 年 ( ) )年間販売額は、 年を とした総合消費者物価指数をもとに の価値に換算したもの。 (注 )カッコ内は、前年対比増加率(%)。 、総務省 資料 経済産業省 商業販売統計年報 (各年版) より作成。 年 消費者物価指数 とも 電子商取引の浸透が小売市場に与える影響(南方) に、既存店ベースではマイナスが続いている。既存店に新規出店を含めた合計ベースでも、 百貨店 はマイナス傾向が続き、 スーパー はかろうじて横ばい傾向にある(表 参 照) 。 表 大型店前年対比年間販売額の推移 (単位 %) 小売業計 大 合 型 計 店 百 既存店計 合 貨 計 店 ス ー パ ー 既存店計 合 計 既存店計 年 年 年 年 年 年 年 年 年 年 年 年 年 年 年 年 年 年 (注)商業動態統計調査における 百貨店 とは、衣・食・住の各販売額がいずれも小売販売総額 以上(東京都特別区・政 の %以上 %未満で、従業者数 人以上、かつ売場面積 以上)(スーパーを除く) 。 スーパー とは、売場面積の %以上につい 令指定都市 以上。 てセルフサービス方式採用、かつ売場面積が 資料 経済産業省 商業販売統計年報 より作成。 面積効率(売場面積 あたりの年間販売額)の推移 小売業の年間販売額が横ばいないしは減少傾向にある中で、売場面積は大きく増加してい る。そのため、面積効率(売場面積 年には 万円へと、ほぼ 分の 大型店の状況をみると、 百貨店 り、 年にはピーク時の あたりの年間販売額)は まで低下している(表 年の 万円から、 参照) 。 はバブル期をピークに年間販売額が低下の一途をたど 年の 割程度の販売額になっている。売場面積も ピークに減少している。そのため、面積効率は 年に 万円と、ピーク時の 年を %に まで低下している(表 参照) 。 スーパー の年間販売額は 年代に入ってほぼ横ばい傾向、売場面積は大店法規制緩 大阪商業大学論集 表 第 巻 第 号(通号 小売業年間販売額、売場面積、面積効率( 号) あたり年間販売額)の推移 あたり年間 面積効率( 売場面積(千 ) 年間販売額(十億円) 販売額) (万円 ) 年 年 年 年 年 年 年 (注)小売業年間販売額は、自動車小売業、ガソリンスタンドなど商業統計調査における売場面積 調査対象外業種を除く。 資料 経済産業省 商業統計表(産業編) より作成。 表 大型店年間販売額、売場面積、面積効率( 百 年間販売額 (十億円) ( 貨 あたり年間販売額)の推移 店 売場面積 (千 ) ス 面積効率 (万円 ) ー パ 年間販売額 売場面積 (十億円) (千 ) ー 面積効率 (万円 ) 年 ( ) ( ) 年 ( ) ( ) 年 ( ) ( ) 年) ( ) ( ) 年 ( ) ( ) 年 ( ) ( ) 年 ( ) ( ) 年 ( ) ( ) (注 )商業動態統計調査における 百貨店 とは、衣・食・住の各販売額がいずれも小売販売総 以上(東京都特別区・ 額の %以上 %未満で、従業者数 人以上、かつ売場面積 以上)(スーパーを除く) 。 スーパー とは、売場面積の %以上につ 政令指定都市 以上。 いてセルフサービス方式採用、かつ売場面積が (注 )年間販売額は、 年 の総合消費者物価指数で調整。 年 とした指数。 (注 )面積効率のカッコ内は、 資料 経済産業省 商業販売統計年報 より作成。 和期の 年代に急増、 年に 年代に入っても増加を続けている。そのため、面積効率は 万円と、ピーク時の %にまで低下している(表 参照) 。 店舗面積増加傾向にブレーキ 年以降、 未満 舗減少時代に入った。 いる。 超 の規模において閉店率が急増し、閉店率が開店率を上回る店 年には、 未満 の大規模小売店舗合計でも、 の規模における閉店率は 年には開店率 %に達して %に対して、閉店率 電子商取引の浸透が小売市場に与える影響(南方) は %と、差し引き %の減少となっている。 開店率が高い水準にあったが、 年には開店率は 以上 の閉店率はわずかで、 %にまで低下している(表 大店立地法に基づく届出件数をみると、いずれの店舗面積規模においても、 ピークに届出件数が減少傾向にある。特に、店舗面積 年、 年には大きく減少している(表 面積の推移をみると、 均店舗面積も 年以降は 参照) 。 年頃を 以上の規模の届出件数は、 参照)。また、 の開店数および平均店舗 の開店数が減少傾向にあり、また を切るなど、これまで一貫してきた あたりの平 の大規模化傾向に変化が現れ ている(表 参照) 。 これは、 年 月に施行された改正都市計画法により、店舗面積 客施設の立地は、原則として 商業地域 表 近隣商業地域 準工業地域 超の大規模集 に限定されること 店舗面積規模別開店率・閉店率の推移 (単位 %) 超 未満 開店率 以上 未満 閉店率 開店率 閉店率 以上 未満 開店率 閉店率 以上 開店率 閉店率 大規模小売店舗 合 計 開店率 閉店率 年 年 年 年 年 年 年 (注)開店率および閉店率は、各年における開店数および閉店数を各年はじめの店舗数で除して算 出した。なお、増床の場合は、増床前の規模において閉店、増床後の規模において開店とカ ウントされるため、この数字は必ずしも厳密な開店率および閉店率を示すものではない。 資料 東洋経済新報社 全国大型小売店総覧 (各年版)より作成。 表 超 未満 店舗面積規模別大店立地法届出件数の推移 以上 未満 以上 未満 年 年 年 年 年 年 年 年 年 資料 経済産業省 大店立地法の届出状況について より作成。 以上 合 計 大阪商業大学論集 表 第 巻 第 号(通号 の開店数および平均店舗面積の推移 開店数 平均店舗面積( ) 現存 現存 年代以前 ─ 年 年代 ─ 年 年代 ─ 年 年代 ─ 年 年 ─ 年 年 開店数 平均店舗面積 ( ) 年 年 年 年 (注 号) ( 月) ) は、ディベロッパーにより計画、開発されるものであり、次の条件を備えるもの。 小売業の店舗面積は 以上。 キーテナントを除くテナントが 店舗以上含まれる。 キーテナントがある場合、その面積がショッピングセンター面積の %程度を超えない。た 以上である場合には、この限りで だし、その他テナントのうち小売業の店舗面積が はない。 テナント会(商店会)等があり、広告宣伝、共同催事等の共同活動を行ってい る。 ) 年までの数字は、 年 月末現在営業中の 日本ショッピングセンター協会 我が国 の現況 (注 資料 となり、いわゆる郊外型大型店や郊外型 。 オープン より作成。 の出店が困難になったことも影響していると考 えられるが、需要停滞下で店舗面積のみが増加していく過当ともいえる競争状況は調整過程 に入っているといえる。 .電子商取引市場の動向 無店舗販売額、通信・カタログ販売額の推移 表 は、小売業における小売販売額(小売業による卸売販売額を除く)を 店舗販売 と 無店舗販売 (通信販売、訪問販売、通信・カタログ販売、自動販売機販売、その他の販 売形態 ピザの宅配や仕出し屋、生活協同組合の共同購入、新聞や牛乳など月極販売など) に大別したものである。 店舗販売 の割合は 年以降増加しているが、小売販売額その ものが減少傾向にあることもあって、店舗販売額は 少、 年から 年から 年にかけて約 年にかけてはほぼ横ばいとなっている。他方、 無店舗販売 割合でも販売額においても 大幅に減少している は、その 年以降減少を続けている。無店舗販売の減少は、 訪問販売 の減少によるもので、 通信・カタログ販売 兆円減 年以降 は、その割 合でも販売額においても一貫して大幅に増加している。しかし、通信・カタログ販売額は、 年において約 兆円、小売販売額に占める割合は %にとどまっている。 電子商取引の浸透が小売市場に与える影響(南方) 表 小売販売額、通信・カタログ販売額の推移 億円、%) (単位 小 売 店 販売額 舗 無 店 舗 販売額 販売額計 通信・カタ 訪問販売 ログ販売 自動販売機 そ の 他 年 ( ) ( ) ( ) ( ) ( ) ( ) ( ) ( ) ( ) ( ) ( ) ( ) ( ) ( ) ( ) ( ) ( ) ( ) ( ) ( ) ( ) ( ) ( ) ( ) ( ) ( ) ( ) ( ) ( ) ( ) ( ) ( ) ( ) ( ) ( ) 年 年 年 年 (注)カッコ内は、小売販売額を とした割合。 資料 経済産業省 商業統計表(産業編)(各年版)、日本通信販売協会 報告書 (各年版)より作成。 通信販売企業実態調査 電子商取引市場規模 電子商取引市場規模の統計的把握の現状 小売販売額が減少傾向にある中で、電子商取引を含む通信・カタログ販売額が増加してい ることは間違いない。しかし、商業統計調査においては、統計調査員が外観から小売業であ ることを把握し、調査対象としている。そのため、無店舗販売は外観から見つけにくいこと も多く、近年増加している電子商取引専業企業を十分捕捉できていないという問題がある。 そこで、総務省は商業・法人登記の情報も活用して事業所および企業を把握することとし、 これまでの センサス 事業所・企業統計調査 として統合し、 年 商業統計調査 月に サービス業基本調査 経済センサス 基礎調査 などを 経済 を実施した。ただし、 同調査は事業所数や従業者数の把握を主眼としており、販売額は調査項目とはされていな い。そこで、 年 月に販売額等も把握する 経済センサス 活動調査 の実施が予定さ れており、商業統計調査としては実施されないことが決定している。 なお、経済産業省では 年度以降、毎年 電子商取引に関する市場調査 子商取引の市場規模を推計してきた。そのうち、 年度調査から を実施し、電 年度調査(各年 月)については、時系列的にその推移を把握することが可能である。次項では同調査をも とに消費者向け電子商取引の市場規模とその推移をみることとする。 経済産業省 表 電子商取引に関する市場調査 は、小売業による消費者向け電子商取引売上高 ) の推移をみたものである。電子商 取引売上高および小売業計売上高に占める電子商取引売上高の割合は、間違いなく増加傾向 にある。しかし、小売業計の電子商取引売上高は、 年において約 兆 億円、この 調査はガソリンスタンドなど電子商取引にはなじまない小売業を調査対象外としているた 大阪商業大学論集 表 第 巻 第 号(通号 号) 小売業による電子商取引売上高の推移 (単位 億円、%) 経済産業省 電子商取引に関する市場調査 商業統計表 電子商取引売上高(電子商取引割合) 年 年 年 売上高 年 年 年 総合小売業 ( ) ( ) ( ) ( ) ( ) 衣料・アクセサリー小売業 ( ) ( ) ( ) ( ) ( ) 食料品小売業 ( ) ( ) ( ) ( ) ( ) 電気製品、家具・家庭用品、 ( ) ( ) ( ) ( ) ( ) 医薬化粧品小売業 ( ) ( ) ( ) ( ) ( ) スポーツ・本・音楽・ ( ) ( ) ( ) ( ) ( ) ( ) ( ) ( ) ( ) ( ) 自動車・パーツ小売業 玩具小売業 小売業計 (参考)製造業計 卸売業計 (注 )電子商取引とは、コンピューター・ネットワーク・システムを介して商取引が行われ、か つその成約金額が捕捉されるもの。決済についてはコンピューターネットワーク上で行われ ることを要件としておらず、決済手段は問わない。 年)で算出した。商業統計 (注 )電子商取引割合は、電子商取引売上高 商業統計表売上高( 表による売上高は、 電子商取引に関する市場調査報告書 における調査対象業種の売上 高。同調査における 総合小売業 は、百貨店、総合スーパー、コンビニエンスストア、 ホームセンターおよび通信販売業を含む。 通信販売業 は産業分類にはないため、 総合小 売業 の売上高は 商業統計表(業態別統計編) における 百貨店 総合スーパー コ ホームセンター の販売額の合計をとった。 ンビニエンスストア 資料 経済産業省 電子商取引に関する市場調査報告書 (各年版)、経済産業省 商業統計表(産 年 より作成。 業編) (業態別統計編) め、調査対象業種の小売業計売上高( 推計される。なお、 を分母とすると 年商業統計、約 兆円)を分母とすると 年商業販売統計によると、小売業計売上高は %と 兆円であり、これ %となる。消費者向け電子商取引は、小売業によるものだけではなく、 製造業や卸売業によるものもあるが、 年において製造業 億円、卸売業 億円と なっており、それほど大きな金額ではない。 電子商取引市場規模の増加率 表 は、経済産業省、富士経済、日月総合研究所調査を用いて、小売業による電子商取引 )個人間の電子商取引であるネットオークション市場は、 年において オークション、楽天 オークション、ディー・エヌ・エーのモバオクの 社合計で市場の 割程度を占めるとみられるが、その 落札総額は 億円、前年対比 %減となり、はじめて減少に転じた(ネット比較サイト運営のオー クファン調べ)( 日本経済新聞 年 月 日)。ネットオークション業界最大手の オークショ ンの年間落札総額は、 年 億円、 年 億円(前年対比 %増)、 年 億円(同 %増)、 年 億円(同 %増) 、 年 億円(同 %減)、 年 億円(同 %減)と、 年をピークに減少傾向にある(ヤフー 四半期決算短信 (各期版))。 電子商取引の浸透が小売市場に与える影響(南方) 表 小売業による電子商取引市場規模推計 (単位 億円) 年 富士経済(注 年 年 年 年 ) 経済産業省(注 ( %) ( %) ( %) ( %) ( %) ( %) ( %) ( %) ( %) ( %) ( %) ) 日月総合研究所(注 ) (注 )経済産業省 電子商取引に関する市場調査 。 モバイル通 (注 )富士経済 通販・ コマースの実態調査 における インターネット通販 販 の合計額。 社の競争力分析 年 。パソ (注 )日月総合研究所 全国有力 コマース・通販企業ベスト コンおよび携帯からのインターネット販売による売上高。 (注 )カッコ内は、前年対比増加率。 、富士経済 通販・ コマース 資料 経済産業省 電子商取引に関する市場調査報告書 (各年版) の実態調査 (各年版) 、日月総合研究所 全国有力 コマース・通販企業ベスト 社の競 年 より作成。 争力分析 市場規模の推計結果を比較したものである。それぞれ集計対象とする電子商取引の範囲が異 なるため金額ベースで比較することはあまり意味をもたないが、前年対比増加率をみると、 いずれの推計でもその増加率が鈍化していることは間違いない )。 米国電子商取引市場の動向 電子商取引・カタログ通販業販売額 米国統計局による小売業売上高(消費者物価指数調整後)の前年対比増加率の推移をみる と、 %、 年にわずかに減少したのを除いて確実に増加してきたが、金融危機後は 年 年 %と大幅な減少となっている。 これに対して、 電子商取引・カタログ通販業 の年間販売額は、 年まではほぼ 桁 の増加を続けてきたが、その後、伸び率は鈍化している。 小売業販売額に占める 電子商取引・カタログ通販業 販売額(産業分類上 電子商取 引・カタログ通販業 として格付けされる事業所の販売額であり、他の産業分類に格付けさ れた事業所による電子商取引・カタログ販売額は含まれない)の割合は確実に増加し、 年には %となっている(表 参照) 。 )日経 ショップ・通信販売調査 (各年版)に基づいて、 ショップ・通信販売の総合売上高 ( ネット通販 コンテンツ配信 テレビ通販 カタログ通販 の合計)および インターネット通販 売 上 高 の 前 年 度 対 比 増 加 率 を み る と、 年度総合売上高 % (イ ン ター ネッ ト 通 販 売 上 高 %)、 年度同 %(同 %)、 年度同 %(同 %)、 年度同 %(同 %)、 年度同 %(同 %)、 年度同 %(同 %)、 年度同 %(同 %)、 年度同 %(同 %)、 年度同 %(同 %)となっており、 インターネット通販売上高 の増加率 は ショップ・通信販売の総合売上高 と比較して非常に大きいことは間違いないとしても、その増加 率は明らかに鈍化している。 大阪商業大学論集 表 第 巻 第 号(通号 号) 米国小売業年間販売額の推移 小売業 年間販売額(百万ドル) (前年対比増加率(%)) 電子商取引・カタログ通販業 年間販売額 (百万ドル) (前年対比増加率 (%) ) 電子商取 消費者物価指数 消費者物価指数 消費者物価指数 消費者物価指数 調整前 調整後 調整前 調整後 引・ カ タ ログ通販 業の割合 (%) 年 (注 年 ( ) ( ) ( ) ( ) 年 ( ) ( ) ( ) ( ) 年 ( ) ( ) ( ) ( ) 年 ( ) ( ) ( ) ( ) 年 ( ) ( ) ( ) ( ) 年 ( ) ( ) ( ) ( ) 年 ( ) ( ) ( ) ( ) 年 ( ) ( ) ( ) ( ) 年 ( ) ( ) ( ) ( ) 年 ( ) ( ) ( ) ( ) 年 ( ) ( ) ( ) ( ) 年 ( ) ( ) ( ) ( ) 年 ( ) ( ) ( ) ( ) 年 ( ) ( ) ( ) ( ) 年 ( ) ( ) ( ) ( ) 年 ( ) ( ) ( ) ( ) 年 ( ) ( ) ( ) ( ) ) 消費者物価指数調整後 は、 年を とした都市部の消費者物価指数をもと 年の価値に換算したもの。 に、 (注 ) 電子商取引・カタログ通販業 の年間販売額は、産業分類上 電子商取引・カタログ通 販業 として格付けされる事業所の販売額であり、他の産業分類に格付けされた事業所によ る電子商取引・カタログ販売額は含まれない。 資料 電子商取引販売額 米国商務省の 四半期電子商取引販売額統計 (季節調整済み、四半期統計を年間に合 算)に基づき、小売販売額に占める電子商取引小売販売額の割合をみると、一貫して増加を 続け、 年において %となっているが、その増加率は徐々に鈍化してきている(表 参照)。 電子商取引企業のタイプ別市場規模 電子商取引をおこなっている企業は、 主として自らのホームページを通じて直接集客し 電子商取引の浸透が小売市場に与える影響(南方) 表 米国小売販売額に占める電子商取引小売販売額の推移 電子商取引小売販売額(百万ドル) 電子商取引小売販売額 (百万ドル) (小売販売額に対する割合(%)) (小売販売額に対する割合 (%) ) 年 ( %) 年 ( %) 年 ( %) 年 ( %) 年 ( %) 年 ( %) 年 ( %) 年 ( %) 年 ( %) 年 ( %) (注)電子商取引小売販売額は、インターネットのほか、エクストラネット、 、電子メールな どのオンラインシステムによって受発注されたもの。ただし、支払い手段は問わない。 ( ) 資料 ている企業(独自集客型) 、 主として楽天やヤフーなど電子商店街経由で集客している企 業(電子商店街型)に大別できる。前者の 独自集客型 専業とする企業(電子商取引専業型)、 は、さらに、 電子商取引を カタログ通販やテレビ通販など他の無店舗販 売形態を補完する形で電子商取引をおこなう企業(カタログ・テレビ通販併用型) 、 小売企業で店舗販売に補完する形で電子商取引をおこなう企業(クリック モルタル型) 、 メーカーや卸売業で消費者向けに電子商取引をおこなう企業(メーカー直販型)に細 分できる。 表 は、大手企業についてのみではあるが、タイプ別の電子商取引売上高をみたものであ る。 年における 独自集客型 これに対して 電子商店街型 を合計すると 兆 兆 億円( 上位 %、約 の前年対比電子商取引売上高増加率は 他方 電子商店街型 年 %増、 また、表 商取引専業型 ) 最大手の楽天 億円となり、表 年)の 社の電子商取引売上高の合計は 兆 の楽天市場事業流通総額は 億円、 億円、両者 でみた経済産業省推計による電子商取引市場規模 分の を占める。なお、 独自集客型 年 %増、 の楽天市場事業流通総額の前年対比売上高増加率は 年 %増、 に基づき %増、 年 社 %増、 年 年 の上位 %増となっている。 独自集客型 上位 社のタイプ別の売上高構成比をみると、 電子 %、 カタログ・テレビ通販併用型 %、 メーカー直販型 %、 クリック モルタル型 %となっている。 表 は、書籍・雑誌小売における電子商取引の地位をみたものである。アマゾンの 年 )公正取引委員会による 年度における電子商店街の取引規模推計額(電子商店街内で流通する商品等 の総額)は、楽天(楽天市場)、ヤフー( ショッピング)、 (クラブビッターズ)の上位 社で %、楽天だけで %を占める(公正取引委員会 電子商店街等の消費者向け コマースにおけ る取引実態に関する調査報告書 年 月、 ページ)。なお、楽天とヤフーの取引規模を比較する と、 年楽天 億円(ヤフー 億円)、 年楽天 億円、前年対比 %増(ヤフー 億円、同 %増)、 年楽天 億円、同 %増(ヤフー 億円、同 %増)、 年楽天 億円、同 %増(ヤフー 億円、同 %増)、 年楽天 億円、同 %増(ヤフー 億円、同 %増)となっており、 年以降は楽天の増加率の方が大幅に大きく、楽天のシェアは さらに増加しているものとみられる。なお、楽天の取引総額は楽天市場および楽天ブックス事業の流通総 額(楽天 四半期決算説明会資料 (各期版) )、ヤフーの取引総額は !ショッピング ! トラベル !チケット の取扱高合計(ヤフー 四半期決算短信 (各期版))。 大阪商業大学論集 表 第 巻 第 号(通号 号) タイプ別電子商取引売上高( 年) 独自集客型 社 電子商取引 主な企業 %) 社 億円( %) メーカー直 億円( %) 社 億円( %) 億円( %) 億 円、 ファ ミ リー マー ト ソニースタイル・ 楽天市場 円、デル(個人向け ニッセン 億円、ヨドバシ ジャパン 億円、 億円、ス パルシステム生活 カ メ ラ トリーム 販型 社 億 千趣会 アマゾン のみ) 店街型 クリック テレビ通販併用型 モルタル型 社 年間売上高 億円 ( カ タ ロ グ・ 専業型 企業数、 兆 電子商 億円。 協同組合連合会 ビックカメラ 億 円、 ジャ パ ネッ 円、上新電機 トたかた 億円、 事業流通 億 円、 エプソンダイレク 総額 億 ト 億円。 億 億 円 億円、 円、 ファー ス ト リ ディエイチシー テー リ ン グ 億 億円、フェリシモ 円、セブンネット 億円、ディノス ショッピング 億円、セシール 円、 億円。 億 ジャ パ 億円。 ン (注 ) 独自集客型 は、 日流 コマース 年 月 日による。同調査は、 年 月 に迎えた決算期のネット通販の売上高を対象。 年における楽天市場事業流通総額。 (注 ) 電子商店街型 は、 (注 ) 年における電子商取引売上高は、上位 社で約 兆 億円、上位 社で約 兆 億円、上位 社で約 兆 億円、上位 社で約 兆 億円となっている(日 年 月 日) 。 本流通産業新聞社 日流 コマース 年 月 日、楽天 四半期決算説明会資料 資料 日本流通産業新聞社 日流 コマース (各期版)より作成。 表 書籍・雑誌小売に占める電子商取引の地位 電子商取引 店舗販売(専門店) 年 市場規模 上位 社、 年 億円 億円 社、 億円 社総計、 億円 主な企業 ア マ ゾ ン・ ジャ パ ン 紀伊国屋書店 億円、セブンア 年 上位 社、 上位 ンドワイ 店舗販売(コンビニエンスストア) 丸善 億円以上) 、 社総計、 億円、 億円、有隣堂 億 円、 円、ジュンク堂書店 社(総 売 上 高 総売上高上位 セブンイレブン 億 ロー ソ ン 億 マー ト ション 億円など。 億 円、 億 円、 ファ ミ リー 億 円、 サー ク ル 億円、紀伊國 円、ブックオフコーポレー サ ン ク ス ジャ パ ン 屋書店 億円など。 億円 億円 ・ 億円な ど。 資料 電子商取引 ネット販売 第 巻第 号、 年 月、アマゾン・ジャパンのみ高須次郎 出 年 月下旬号、 ページ、店舗 版界の喫緊の課題にどう対処すべきか 旬刊出版ニュース 日本の専門店調査 年度 、店舗販売(コンビニエンスストア) 販売(専門店) 日経 出版ニュース社編 出版年鑑 出版ニュース社、 年、 ページ。 電子商取引の浸透が小売市場に与える影響(南方) における書籍・雑誌売上高は約 売額(百貨店・総合スーパーを除く) 年 )の ) 億円 と推計されており、 兆 億円(経済産業省 年の書籍・雑誌小売販 商業統計表(品目編) %程度である。 むすび 本稿では店頭小売市場の動向について分析するとともに、電子商取引の浸透が店頭販売な ど小売市場にどのような影響を与えるかについて、統計資料などを用いて分析してきた。 小売業販売額はバブル崩壊以降、横ばいないしは減少傾向にある一方で、 て大店法の規制緩和がすすみ、さらに 年 増した。そのため、面積効率(売場面積 年代になっ 月末に大店法が廃止される中で売場面積が急 あたりの年間販売額)は低下の一途をたどり、 店頭販売を取り巻く環境は厳しさを増している。しかし、店舗面積の過剰傾向も 年頃か ら調整過程に入ったようであり、店舗面積の増加傾向にブレーキがかかっている。 他方、電子商取引市場の動向をみると、その市場規模は (調査対象業種の小売販売額に占める割合 年において約 兆 億円 %)と推計されている。電子商取引市場規模 は年々増加しているものの、近年はその増加率が鈍化してきていることも確かである。ま た、電子商取引販売額が小売販売額に占める割合は、米国においても %( 年)にと どまっている。 電子商取引市場は今後拡大していくと予想されるものの、それが店頭販売に与える影響は 一部の商品を除いてそれほど大きなものではなく、店頭販売の苦境は小売販売額が停滞傾向 にある中での売場面積の急増が主要な要因といえる。 )アマゾン・ジャパンの売上高は公開されていないが、 年において売上高約 億円、うち書籍・ 雑誌の売上高 億円(和書の売上高 億円)と推計されている(高須次郎 出版界の喫緊の課題に どう対処すべきか 旬刊出版ニュース 年 月下旬号、 ページ)。米国 の売上高の推 移をみると、 年 百万ドル(前年対比 %増)、 年 百万ドル(同 %増)、 年 百万ドル(同 %増)、 年 百万ドル(同 %増)、 年 百万ドル(同 % 増)、 年 百万ドル(同 %増)、 年 百万ドル(同 %増)、 年 百万ドル (同 %増)、 年 百万ドル(同 %増)、 年 百万ドル(同 %増)と推移して いる。地域別売上高は、北米(米国、カナダ) 、海外(英国、ドイツ、日本、フランス、中国)の 区分 しか公表されていないが、北米 百万ドル( %)、海外 百万ドル( %)、商品部門別売 上高は、メディア部門 百万ドル( %)、家電・日用品部門 百万ドル( %)、その他 百万ドル( %)となっている( )。なお、 年におけるアマゾン・ジャパンの売上高は約 億円に達したものと推計されている (日本流通産業新聞社 日流 コマース 年 月 日)。このうち半分の約 億円が書籍・雑誌の 売上高であると仮定すると、店舗販売(専門店)最大手の紀伊国屋書店の 億円( 年)、店舗販売 (コンビニエンスストア)最大手のセブンイレブンの 億円( 年)をはるかにしのぐ売上高規模 になったといえる。
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