電子記録債権の

前
回 は、﹁で ん さ い ネ ッ ト﹂
の特長を中心に解説した。
最終回の今回は、そのでんさいネ
ットの将来性、利用者の関心事項
手形はこれまで慣れ親しんでき
に﹁金額を分割できる﹂といった
IT技術の活用で融合させ、さら
4つの観点から解説する。
いネットの将来性﹂について次の
性化に大きく貢献することが期待
ことができるため、地域経済の活
もって資金調達をスムーズに行う
た債権者は、当該債権の信用力を
け有効活用することができる。ま
額の債権であっても、必要な分だ
能﹂。﹁でんさい﹂は、この2つを
流動化・ファクタリング等に活用
る。こ の よ う に、﹁で ん さ い﹂を
軽 く、取 扱 い が 簡 単・便 利 で あ
債権との比較で非常に事務負担が
れる﹁でんさい﹂の譲渡は、売掛
ている。電子データとして管理さ
化やファクタリングの対象となっ
近年、事業者の売掛債権が流動
こ う し た 点 も 踏 ま え、﹁で ん さ
は、そこで寄せられた利用者の関
説 明 会 を 開 催 し て い る。こ こ で
てもらうべく、全国各地で利用者
た意味がないことになる。
律を制定し、制度をスタートさせ
に結びつかなければ、わざわざ法
それが中小企業の資金繰り円滑化
んさい﹂を利用してもらっても、
度である。大企業に積極的に﹁で
1
そこで、そのメリットを理解し
でんさいネット自体はファクタ
いうニーズにある。
かかる諸コストを削減したい﹂と
や は り 第 一 の 関 心 は、﹁手 形 に
が、﹁で ん さ い﹂を よ り 使 い や す
180兆円規模の売掛金への活
用
法人企業統計調査によれば、2
010年度の全産業合計のバラン
スシートにある﹁受取手形﹂は
兆 円 で あ り︵2年 前 は 兆 円︶、
優良債権流通による経済活性化
えている。
今後の普及のカギを握るものと考
んさい﹂を活用してもらうかが、
から、いかにこうした分野に﹁で
段としても活用できる。このこと
替に限らず、広く売掛金の決済手
あ る。﹁で ん さ い﹂は、手 形 の 代
有効活用されていないのが実態で
倍となる。売掛金のほとんどは、
で、その規模は、受取手形の約8
円︵2年 前 は180兆 円︶ な の
一方の売掛金の残高は約182兆
29
等について解説していく。
た支払手段。信用取引で資金回収
の確実性が高く、債権の存在が手
にとって実感できるものである。
反面、事務コスト、印紙税負担、
取立手続きが面倒、盗難・紛失の
リスクがある、IT化との親和性
がまったくないものともいえる。
振込は、支払手段として経済社
会に定着しており、インターネッ
トバンキングなど、IT化との親
和性は非常に大きい。その一方、
利便性を取り入れるなど、機能を
活用が普及のカギを握る
される。この点を踏まえ、ぜひ大
することにより、利用者にとって
リ ン グ 会 社 で は な く、﹁で ん さ
た だ、﹁当 面 の 間、で ん さ い と
くして、利用者が自然と﹁でんさ
が
金融機関 利用可能
窓口金融機関へのアクセス方法
馴染
支払・納入企業
らうことが大切であると考える。
間で合意のうえ手続きを進めても
たな支払手段であるため、利用者
して認められている。しかし、新
﹁でんさい﹂であれば、大きな金
手 形 と 異 な り、分 割 が 可 能 な
となる。
電子記録債権市場に流通すること
なれば、信用力の高い優良債権が
﹁でんさい﹂に切り換わるように
債務者となる公共工事債権などが
る債権、あるいは地方公共団体が
大企業や中堅企業が債務者とな
﹁請求はしたものの、本当に振り
込 ん で く れ る か﹂﹁い つ 振 り 込 ん
でくれるか不安﹂といった状況も
生 ま れ る。帳 簿 上 は 売 掛 金 で あ
これまで100年以上にもわた
進化させた﹁新たな支払手段﹂と
り、支払期日前の資金化が難しい
って企業間で利用されてきた手形
捉えることができる。
企業・中堅企業、地方公共団体の
は譲渡時の事務負担が軽くなり、
でんさいネットの将来性
方々にも利用してもらいたいと考
い﹂をどのようにファクタリング
手形が併存することになるので、
手形事務のコスト削減
の対象債権として組み込んでいく
信用保証制度との連携による信
用補完
かについては、窓口となる金融機
ットでは、利用者に手形の利用を
せられることもある。でんさいネ
なくしてほしい﹂といった声が寄
二重コストになる。一斉に手形を
﹁でんさい﹂では、保証人の氏名
事業者 関心事項
利用
等を記録することにより、保証を
ば、将来的に信用保証協会等の信
用保証制度が﹁でんさい﹂にも活
用できるようになれば、制度保証
新たな決済手段である電子記録
お願いするようなことはできない
債権であるが、これまで﹁大企業
利用者の関心事項
んさい﹂の活用機会が大きく広が
2
り、結果として制度の主な目的で
なお電子記録債権は、手形と同
い﹂に移行できるよう努力してい
様、下請法上の有効な支払手段と
の資金効率化・事務効率化﹂にス
もともとこの制度は、中小企業金
ある中小企業金融の円滑化につな
がることが期待される。
流動化・ファクタリング等への
活用
融の円滑化のために導入された制
きたいと考えている。
を 利 用 し た 信 用 補 完 に よ り、﹁で
生
関側の対応に委ねられる。
能性が格段に広がることとなる。
えている。
資金調達 可能性が高
信用補完・流動化機能
心事項等をいくつか紹介する。
のが実態である。
の﹁信用機能﹂と、経済活動には
膨大な売掛金分野への
なくてはならない振込の﹁決済機
でんさいネットの将来性と
利用者の関心事項
株式会社全銀電子債権ネットワーク
執筆 代表執行役社長 松本康幸
﹁でんさい﹂による資金調達の可
.
ポットが当てられてきた。ただ、
と
は
そ
を れ
ぞ
れ
最終回では、でんさいネットの将来性をみていくとともに、利用
者の関心事項について解説していきます。
に
あ
た
っ
て
の
み
の
本格稼働にどう対応するか
電子記録債権の
つ け る こ と も 可 能 で あ る。例 え
ま で
る
第二に、窓口金融機関にどうい
う形でアクセスするかということ
である。
ほとんどの窓口金融機関は、イ
ンターネットバンキングを主体に
普及を目指す。したがって現状、
インターネットバンキングを利用
している事業者にとっては、導入
への抵抗感は少ないだろう。
一方、インターネットバンキン
グを利用していない事業者は﹁具
体的にどんな流れでの利用となる
の か 分 か ら ず、不 安 を 感 じ て い
る﹂というのも事実である。
弊社の行った窓口金融機関に対
する調査によれば、そうした事業
者のために、書面による受付を実
施する金融機関もある。したがっ
て、窓口金融機関の創意工夫によ
る、利用者にとって負担感のない
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2012・ 4月15日号
2012・ 4月15日号
73
の
最終回
短期集中連載
で
じ ん
る さ
い
の
.
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