岩澤主予想の保型形式による証明 栗原 将人 (東京都立大・理) 0 Introduction 現在のところ、岩澤主予想の証明は大きく分けて 2 つ知られている. Euler 系を使うものと保型形式に伴う表現を使うものである.どちらも証 明のための証明といったものではなく、円分体の研究を大きな文脈の中で とらえられるという点で、岩澤理論の研究に深い示唆を与えるものである と私には思われる. 岩澤主予想は Mazur と Wiles によって最初に証明された ([5]).論文 を見て頂ければわかるが、150 ページに及ぶ大論文 (序文を読むだけで 大論文を書こうという意気込みがわかる) のほとんどが modular 曲線の Arithmetic に費やされている.しかしながら、その後肥田理論ができた ことにより、かなりの部分が簡略化されることになった.ここでは、主に Wiles [13] に基づき、岩澤主予想の証明を述べる.青木氏の稿と同様に、 最も簡単な Q(µp∞ ) の場合を述べる.また、その前に Ribet の定理 [9] についても詳しく解説する. Notation この解説では、p は常に奇素数であるとする.代数体 K に対し、AK で K のイデアル類群の p 成分 (p Sylow 部分群) を表すことにする.正の整 数 n に対し、µn は 1 の n 乗根の群を表す.GQ = Gal(Q/Q) を有理数 体の絶対 Galois 群とし、Q の p の外不分岐な最大の拡大の Galois 群を GQ,p と書く.κ : GQ −→ Z× p を円分指標 (1 の p 巾乗根への作用) とし、 × κ : GQ,p −→ Zp など円分指標から導かれる写像もすべて κ と書く.ω を i Teichmüller 指標とし、Zp [Gal(Q(µp )/Q)] 加群 M に対し、M ω で M の ω i 成分 (cf. 尾崎氏の稿) を表す. 1 Herbrand-Ribet の定理 保型形式に伴う 2 次の表現を不分岐 abel 拡大の構成という 1 次の問 題に使おうというアイディアは既に Serre (や Swinnerton-Dyer) の論文 1 に現れているようにも思われる (Serre [10], [11] 参照).しかしながら、こ の考え方をはっきりと使って、岩澤主予想証明への突破口を作ったのは、 Ribet による Herbrand の定理の逆の証明 [9] であった. 1.1. 定理の statement とその精密化 Theorem 1.1 (Herbrand-Ribet) k を 2 ≤ k < p − 1 をみたす偶数とす るとき、 1−k p | Bk ⇐⇒ AωQ(µp ) 6= 0 (1) が成立する.ここに、Bk は Bernoulli 数である. Riemann zeta 関数の値を使って書き換えると、上は、 1−k ω 6= 0 p | ζ(1 − k) ⇐⇒ AQ(µ p) (2) と書き直せる (このとき k の範囲は正の偶数でよいことに注意しておく). Ribet の定理は左から右が得られる、という部分であり (右から左が導 かれることが Herbrand の定理)、我々はこれを 1.3 で証明する. さて、尾崎氏の稿にあるように、この式の右側をもっと詳しく知りたい と考えると、 1−k #AωQ(µp ) = #(Zp /B1,ωk−1 ) という精密化が (岩澤主予想から) 得られるが、左側 (すなわちゼータの 値) が大事だと考えると次の定理が得られる. X = limAQ(µpn ) ← とおき、γ を Gal(Q(µp∞ )/Q(µp )) の生成元として、以下固定する.岩澤 主予想からは次も得られる. Theorem 1.2 k を 2 ≤ k < p − 1 をみたす偶数とするとき、 #X ω 1−k /(γ − κ1−k (γ)) = #(Zp /Bk ). (3) もう少し一般に、k を 2 ≤ k, p − 1 6 | k をみたす偶数とすれば、 #X ω 1−k /(γ − κ1−k (γ)) = #(Zp /ζ(1 − k)) が成立することにも注意しておく. Z[1/p] の etale (Galois) cohomology H 2 (Z[1/p], Zp (k))(= H 2 (GQ,p , Zp (k))) を考えると、(limH 2 (Z[1/p, µpn ], Zp (k)))Gal(Q(µp∞ )/Q) = H 2 (Z[1/p], Zp (k)) ← より、 Xω 1−k /(γ − κ1−k (γ)) = H 2 (Z[1/p], Zp (k)) 2 (4) となるので、Theorem 1.2 は Lichtenbaum 予想の特別な場合であると みなせる (H 1 (Z[1/p], Zp (k)) = 0 に注意する).H 2 (Z[1/p], Zp (k)) が K2k−2 (Z) ⊗ Zp と同型であるという Quillen の予想を認めれば、 #K2k−2 (Z) ⊗ Zp = #(Zp /ζ(1 − k)) を述べていると考えてもよい.1.4 では、岩澤主予想を使わずに、(3) の (左辺) ≥ (右辺) を証明する.このことはまた、(3) の左辺の群の元が、す べて保型形式から作られることも意味する. 1.2. 保型形式についての基本的なこと k を正の偶数とし、Mk (C) で重さ k 、SL2 (Z) に対する保型形式全体 を表すとする.すなわち、 f ∈ Mk (C) とすると、f は上半平面で正則で、 Ã ! a b k ∈ SL2 (Z) に対し、f ( az+b cz+d ) = (cz + d) f (z) をみたし、また c d n 2πiz ) と表される.Eisenstein series f = Σ∞ n=0 an q (q = e ∞ X 1 σk−1 (n)q n ∈ Mk (C) Gk = ζ(1 − k) + 2 n=1 (ここに σk−1 (n) = Σd|n dk−1 ) が存在していることが我々にとっては大変 重要である.(以上については Serre「数論講義」など参照.) n Theorem 1.3 f = Σ∞ n=1 an q を重さ k の cusp form で、a1 = 1, Hecke 作用素 T` たちの eigenform になっているとする.F を Qp に an たちを 添加して得られる体とすると、[F : Qp ] < ∞ であり、 (1) (Deligne [1]) p の外不分岐な既約表現 ρf : GQ,p −→ GL2 (F ) で、p 以外のすべての素数 ` に対して、Tr(ρf (Frob` )) = a` 、det(ρf (Frob` )) = `k−1 をみたすものが存在する.ここに、Frob` ∈ GQ,p は ` での Frobenius 写像. (2) (Mazur-Wiles [6]) f が p で ordinary (p は ap を割らない) であると すると、表現の基底を適当に取りかえれば、GQ,p の p での分解群 Dp へ の制限は、 ! Ã κk−1 ²1 ∗ ρf |Dp = 0 ²2 ²1 , ²2 は不分岐指標、となる. 1.3. Ribet の定理の証明 1.3, 1.4 では、[4] §3 の方針で進み、まず Ribet の定理を証明する (cf. also [2]).まず、もう少し保型形式についての基本的なことを続ける.Z 3 n 上の cusp form の空間を Mk0 (Z) = {Σ∞ n=1 an q | an ∈ Z for all n > 0} 0 で定義し、任意の環 R に対し、Mk (R) = Mk0 (Z) ⊗Z R と定義する. Mk0 (Z) に作用する Hecke 作用素 T` を考え、Hecke 環 T を Z 上すべ ての T` (` は素数) で生成される End(Mk0 (Z)) の部分環とする.T ∈ T と f ∈ Mk0 (Z) に対し、T f の q の係数を対応させることのより、perfect pairing T × Mk0 (Z) −→ Z が得られる. さて、k を Theorem 1.1 の通り (2 ≤ k < p − 1 なる偶数) とし、 ordp (Bk ) = n > 0 とする.ζ(1 − k) = −Bk /k より、Gk mod pn は mod pn cusp form であ る (Gk mod pn ∈ Mk0 (Z/pn )).もし、Gk mod pn が標数 0 の cusp form で eigenform になるものに持ち上がるなら、何の苦労もない.このときは、 1−k ω 1−k 直ちに Aω Q(µp ) の非自明な元が作れる (以下の議論参照).しかも AQ(µp ) が巡回群であることも直ちにわかる (この巡回性は Vandiver 予想からは 導かれるが、一般に正しいかどうかを信じている人と信じていない人が両 方いるような微妙な問題である).したがって、このような eigenform の 存在を仮定するわけにはいかない (もっとも、計算されている範囲の例で はいつでも n = 1 だからこのような eigenform は存在しているのだが). そこで、Eisenstein ideal というものを考える.Gk mod pn の存在と上の perfect pairing から T −→ Z/pn (T` 7→ 1 + `k−1 ) なる環準同型が得られ るが、Eisenstein ideal I を T` − (1 + `k−1 ) たちで生成される T のイデ アルと定義すると、次が得られる. ' Lemma 1.4 T` 7→ 1 + `k−1 により、(T/I) ⊗ Zp −→ Z/pn は同型になる. m を p と I で生成される T ⊗ Zp の極大イデアルとし、T ⊗ Zp の m 進完備化を TE と書く.I = ITE とおく.上から、TE /I ' Z/pn である. TE ⊗ Qp の各 eigenform 成分に対応する Theorem 1.3 の表現をあわ せて、 ρTE : GQ,p −→ GL2 (TE ⊗ Qp ) で、p 以外のすべての素数 ` に対して、Tr(ρTE (Frob` )) = T` 、det(ρTE (Frob` )) = `k−1 をみたすものができる.この表現を与える GQ,p の作用をもつ加群 Ã ! を (TE ⊗ Qp )e1 ⊕ (TE ⊗ Qp )e2 とする.また、ρTE (σ) = a(σ) b(σ) c(σ) d(σ) と書く. Lemma 1.5 a(σ) ≡ κk−1 (σ) (mod I), d(σ) ≡ 1 (mod I). b, c の像で生成される TE ⊗ Qp の中の TE 加群を IB , IC と書くことに する.IB , IC はもちろん基底の取り方によるが、次は成り立つ. 4 Lemma 1.6 IB IC = I. M = (TE /I)e1 ⊕ (IC /IIC )e2 とおく.Lemmas 1.5, 1.6 により M に は GQ,p が作用し、また Lemma 1.6 より 0 −→ IC /IIC −→ M −→ TE /I −→ 0 (5) なる GQ,p 加群の完全系列が存在する.ここに、Lemma 1.5 より IC /IIC には GQ,p が自明に作用し、TE /I には GQ,p が κk−1 で作用する. F を M/p への GQ,p の作用の核に対応する体であるとする.作り方か ら、F (µp )/Q(µp ) は非自明な Abel p 拡大であり、Gal(F (µp )/Q(µp )) に Gal(Q(µp )/Q) は ω 1−k で作用する.また、作り方から F (µp )/Q(µp ) は p の外不分岐である.一方、Theorem 1.3 (2) より c|Dp = 0 であるから、 Dp 加群として (5) は分裂している.したがって、F (µp )/Q(µp ) は p で 1−k も不分岐である.以上により、Aω Q(µp ) 6= 0 となる. 1.4. Ribet の定理の精密化 完全系列 (5) はもっと詳しい情報をもっているので、もう少し進もう. Lemma 1.7 #(IC /IIC ) ≥ pn . 証明には Fitting ideal というものを使う.一般に R 加群 M に対し、 f Rm −→ Rn −→ M −→ 0 という R 加群の完全系列があるとき、線型写像 f に対応する R 係数の行 列 A を考え、A の n 次の小行列式全体で生成される R のイデアルを M の Fitting ideal とよび、FittR (M ) で表す.この定義は上の完全系列のとり 方によらない.定義から、I を R のイデアルとすると FittR/I (M/IM ) = FittR (M ) mod I となる.また、M が有限 Zp 加群のとき、単因子論に より FittZp (M ) = (#M ) である.この二つの性質は上の Lemma の証明 に使われる. Lemma 1.7 の証明. c は各 eigenform 成分で 0 でないので、FittTE (IC ) = 0.したがって、上で述べた性質 FittR/I (M/IM ) = FittR (M ) mod I を 使うと、FittTE /I (IC /IIC ) = 0.Lemma 1.4 より TE /I ' Z/pn なので、 FittZ/pn (IC /IIC ) = 0 となるが、これは FittZp (IC /IIC ) ⊂ (pn ) を導く. かくて、上で述べた性質 FittZp (M ) = (#M ) により結論を得る. M への作用からできる体を考えると、1.3 と同じに考えて、Galois 群 が IC /IIC の分だけ、不分岐拡大ができている.かくて、 #X ω 1−k /(γ − κ1−k (γ)) ≥ #IC /IIC ≥ pn 5 が出る.あるいは次のように考えてもよい. 、M (1 − k) を考える ((1 − k) は Tate twist) と、完全系列 (5) から、M (1 − k) は TE /I = Z/pn の extension を与えているので、IC /IIC だけ H 1 (Z[1/p], Z/pn (1 − k)) の 元ができるが、これらは local には分裂するので、 # Ker(H 1 (Z[1/p], Z/pn (1−k)) −→ H 1 (Qp , Z/pn (1−k))) ≥ #IC /IIC ≥ pn となる.ここで、左辺は Tate Poitou の双対定理により H 2 (Z[1/p], Z/pn (k)) と同型なので、 #H 2 (Z[1/p], Zp (k)) ≥ #H 2 (Z[1/p], Z/pn (k)) ≥ pn となる.いずれにせよ、Theorem 1.2 の (左辺) ≥ (右辺) が出る. Theorem 1.2 の (左辺) ≤ (右辺) は、Euler 系の議論からも出るし、岩澤 主予想を最初に証明しておけば、そこからもちろん出る.ここで、Theorem 1.2 と上の考察を合わせると、次が得られる. Theorem 1.8 X ω 1−k /(γ − κ1−k (γ)) ' H 2 (Z[1/p], Zp (k)) ' IC /IIC . 1−k つまり、X ω /(γ −κ1−k (γ)) の元はすべて保型形式から得られる (Serre 予想は、有限体への 2 次の既約表現で odd なものは必ず modular であ ると述べているが、可約なイデアル類群の元を作るようなものも、上の ような意味では必ず保型形式から得られるのである).また、この定理は Euler 系の議論 (青木氏の稿参照) とはまったく異なる方面からイデアル 1−k 類群 (岩澤加群) の構造についての情報を与えている.上から、X ω が ∞ Zp [[Gal(Q(µp )/Q(µp ))]] 加群として cyclic であることは、IC が TE 加 群として cyclic であることと同値だから、 Corollary 1.9 X ω 1−k が cyclic ⇐⇒ IC ' TE この判定条件は、Euler 系の議論から得られる cyclicity の判定条件と は明らかに異質のものである. (たとえば、TE が離散付値環なら、この 条件は自動的にみたされている.) cyclicity の判定条件でもっと詳しいも のについては、[4] 参照.もっと詳しく調べるためには、⊗Qp する前の Galois 表現をその構成から見る必要がある (etale cohomology で構成する にせよ level が p 巾の modular 曲線の Jacobian の等分点で構成するに せよ).Eisenstein cohomology class の理論を使って (⊗Qp する前の) 表 現をさらに詳しく調べることもできる (cf. Harder-Pink [2]). 2 岩澤主予想の証明 岩澤主予想を証明するためには、1.4 で示した不等式を岩澤理論の文脈 で証明すればよい (肥田理論を使うことになる).ここでは Wiles [13] に 6 従うが、Ohta [7], [8] ではより簡明に証明されていることに注意しておく (Eisenstein cohomology class を使って、Galois 表現についてのより詳し い情報もわかる). この節では §1 の記号と同じ記号を別の意味で使うことがあるので、注 意する.この節については Wiles [13], [12] を参照.まず、肥田理論にお ける Λ-adic form とそれに伴う大きな Galois 表現について簡単な場合に 述べる.Λ = Zp [[T ]] とおく.局所体の整数環 O に対し、ΛO = O[[T ]] と 書く.F = Σan q n (an ∈ ΛO ) が level N の Λ-adic form であるとは、任 意の k ∈ Z≥2 , ζ: 1 の原始 pr 乗根に対し、Fk,ζ = Σck,ζ (an )q n が level N pr , 重さ k の保型形式ということ、とする.ここに、ck,ζ : ΛO −→ O[ζ] は T 7→ ζκ(γ)k−2 − 1 で定義される写像. 以下では k を 2 < k < p − 1 をみたす偶数とする.我々がこの節で使 う Eisenstein series は次の Λ-adic form ∞ X X 1 Gk = gk (T ) + ( ω k−2 (d)(1 + T )i(d) d)q n 2 n=1 d|n である.ここに、i(d) ∈ Zp は < d >= d/ω(d) = κ(γ)i(d) で定義される 元、gk (T ) は gk (κ(γ)s − 1) = Lp (−1 − s, ω k ) をみたす巾級数 (∈ Λ) であ る (Lp (∗, ω k ) は Kubota Leopoldt の p 進 L 関数.上で、Lp (1 − s, ω k ) ではないことに注意しておく). Λ× O に値を持つ指標 χ̃ を使って、Λ-adic form には自然に指標 χ̃ の Λ-adic form という概念が定義される.上の Gk は指標 (ω k−2 )∼ : n 7→ ω k−2 (n)(1 + T )i(n) の Λ-adic form である. level が p 巾、指標 (ω k−2 )∼ の ordinary な Λ-adic cuspform の空間へ の Hecke 作用素 T` を考え、Λ = Zp [[T ]] 上 T` たち全体で生成される環 を T と書く.T` − (1 + (ω k−2 )∼ (`)`) たちと gk (T ) で生成される T のイ デアルを I と書く (Eisenstein ideal).Lemma 1.4 に対応して、 Theorem 2.1 (Wiles) T/I ' Λ/(gk (T )). 次に、Hida による大きな Galois 表現について (level が p 巾のときに) 述べる [3].F = Σan q n (an ∈ ΛO ) を指標 χ̃, level p 巾の Λ-adic cuspform で、ordinary かつ Hecke 作用素について eigenform になっているものと する. Theorem 2.2 (1) (Hida) p の外不分岐な既約表現 ρF : GQ,p −→ GL2 (Frac ΛO ) で、p 以外のすべての素数 ` に対して、Tr(ρf (Frob` )) = a` , det(ρf (Frob` )) = χ̃(`)` をみたすものが存在する.ここに、Frac ΛO は ΛO の商体. 7 (2) (Mazur-Wiles [6]) 適当に基底を取りかえれば、GQ,p の p での分解群 Dp への制限は、 Ã ! ²1 ∗ ρf |Dp = 0 ²2 ²2 は不分岐指標、となる. 以上のように、§1 とまったく同じ状況にあるので、同じ議論が使える. θ を Λ の既約な単多項式とする.T の素イデアル p で、局所化 Tp が Tp /ITp ' Λθ /(gk (T )) をみたすものをとる (Λθ は Λ の θ で生成される 素イデアルでの局所化).TE = Tp , I = ITp とおく.上の表現から、 ρTE : GQ,p −→ GL2 (TE ⊗ Frac Λ) が得られる.IB , IC を §1 と同様に定義すると、同じ方法で、 IB IC ⊂ I が得られる.M を M = (TE /I)e1 ⊕ (IC /IIC )e2 と §1 と同様に定義する. ここで、Lemma 1.7 の証明と同様にして、 FittΛθ (IC /IIC ) ⊂ (gk (T )) (6) が得られる.一方、(5) の型の完全系列を考えると、TE /I には GQ,p は (ω k−2 )∼ κ で作用し、IC /IIC には自明に作用するから、不分岐 abel 拡 大 L/Q(µp∞ ) で、その Galois 群が IC /IIC と同型で、円分体の Galois 群 Gal(Q(µp∞ )/Q) が次のように作用しているものが作れる.Gal(Q(µp∞ )/Q) = Gal(Q(µp )/Q) × Gal(Q(µp∞ )/Q(µp )) と考えて、Gal(Q(µp )/Q) は ω 1−k で作用し、Gal(Q(µp∞ )/Q(µp )) の固定していた生成元 γ は、κ(γ)−1 (1 + 1−k T )−1 で作用する.1+T ↔ γ という対応により Λ を Zp [[Gal(Q(µp∞ )/Q)]]ω と同一視する.上のような作用をもつ Λθ 加群を (IC /IIC )∗ と書くと、上 の (6) から、FittΛθ ((IC /IIC )∗ ) ⊂ (gk (κ(γ)−1 (1 + T )−1 − 1)) が得られ る.ここで、gk (κ(γ)−1 (1 + T )−1 − 1) は gk (κ(γ)−1 (1 + T )−1 − 1)|T =κ(γ)s −1 = Lp (s, ω k ) をみたすので、尾崎氏の稿にある f (T, ω k ) に他ならない.つまり、f (T, ω k ) を f (κ(γ)s −1) = Lp (s, ω k ) をみたす Λ の元とすると、FittΛθ ((IC /IIC )∗ ) ⊂ (f (T, ω k )) となる.L/Q(µp∞ ) は不分岐なので、 Xω 1−k ⊗ Λθ −→ (IC /IIC )∗ なる Λθ 加群の全射ができたことになる.そこで上の議論により、 FittΛθ (X ω 1−k ⊗ Λθ ) ⊂ (f (T, ω k )) 8 が得られた.Abel 体については µ = 0 だから (田谷氏の稿参照)、上がす べての θ に対して得られることから、 FittΛ (X ω 1−k ) ⊂ (f (T, ω k )) (7) も得られ、両者の λ 不変量を類数公式を使って比較することにより FittΛ (X ω 1−k ) = (f (T, ω k )) (8) alg が得られる (左辺の λ 不変量を λ1−k 、右辺の λ 不変量を λan 1−k と書くと、 alg an Σ0<k<p−1,2|k λ1−k = Σ0<k<p−1,2|k λ1−k が Iwasawa によって類数公式を alg 使って証明されている.そこで (7) のような包含関係からは λ1−k = λan 1−k 1−k 1−k が導かれ、(8) が得られる).FittΛ (X ω ) = char(X ω ) だから、 char(X ω 1−k ) = (f (T, ω k )) となり、岩澤主予想が証明された. [13] では総実代数体上で岩澤主予想を証明しているので、µ = 0 が使え ないこと、trivial zero の扱い、基礎体が偶数次のときの表現の構成など たくさんの困難があり、それらを乗り越えている. また、有理数体上の楕円曲線に対する岩澤主予想 (Mazur によって定式 化された) が、最近 Skinner と Urban により、この方法の類似 (楕円曲線 に伴う 2 次の表現を扱うためにある 4 次の表現を考える方法) を使って 研究され、進展していることを remark しておく. 参考文献 [1] Deligne, P., Formes modulaires et représentations `-adiques, Sém. Bourbaki Exposé 355, Lecture Notes in Math 179, Springer (1971), 139-172. [2] Harder, G. and Pink, R., Modular konstruierte unverzweigte abelsche p-Erweiterungen von Q(µp ) und die Struktur ihrer Galoisgruppen, Math. Nachr. 159 (1992), 83-99. [3] Hida, H., Galois representations into GL2 (Zp [[X]]) attached to ordinary cusp forms, Invent. math. 85 (1986), 545-613. [4] Kurihara, M., Ideal class groups of cyclotomic fields and modular forms of level 1, J. Number Theory 45 (1993), 281-294. [5] Mazur, B. and Wiles, A., Class fields of abelian extensions of Q, Invent. math. 76 (1984), 179-330. [6] Mazur, B. and Wiles, A., On p-adic analytic families of Galois representations, Compos. Math. 59 (1986), 231-264. 9 [7] Ohta, M., Ordinary p-adic étale cohomology groups attached to towers of elliptic curves, Compos. Math. 115 (1999), 241-301. [8] Ohta, M., Ordinary p-adic étale cohomology groups attached to towers of elliptic curves II, Math. Ann. 318 (2000), 557-583. [9] Ribet, K., A modular construction of unramified p-extensions of Q(µp ), Invent. math. 34 (1976), 151-162. [10] Serre, J.-P., Une interprétation des congruences relatives à la fonction τ de Ramanujan, Sém. Delange-Pisot-Poitou 1967/68 Exposé 14, Collected Papers II, 498-511. [11] Serre, J.-P., Congruences et formes modulaires (d’après H. P. F. Swinnerton-Dyer), Sém. Bourbaki 1971/72 Exposé 416, Collected Papers III, 74-88. [12] Wiles, A., On ordinary λ-adic representations associated to modular forms, Invent. math. 94 (1988), 529-573. 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