「最新の金コロイドの科学」の 企画と編集にあたって

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オレオサイエンス 第 14 巻第 1 号(2014)
特集序言
「最新の金コロイドの科学」の
企画と編集にあたって
三 宅 深 雪
(ライオン株式会社)
金コロイドの歴史をふりかえると,私たちが金コロイドを利用し始めたのは,古代ローマ時代にさかのぼ
ると言われております。当時はステンドグラスの着色のために用いられていました。それから何世紀も経た
1850 年代,その着色の原理が微粒子の生成である事を,マイケル・ファラデイーが解明したことにより,そ
こからナノサイズに焦点をあてた金コロイドの研究が飛躍的に進歩して参りました。私にとっても金コロイド
は思い出深きもので,恩師がコロイド科学の授業で見せてくれた暗赤色の透明な溶液が,私の興味を眼には見
えなきコロイドの世界に誘ってくれたといっても過言ではありません。
長き歴史を経て合成法や計測技術が進歩したことにより,今日はシングルサイズのナノ粒子や形状に特徴の
ある粒子,またそれらの複合材料が自在に作れるようになり,様々な分野への応用に欠かせない素材となって
おります。
そこで,本特集では,最新の金コロイドの研究動向を,「計測技術」,「材料」,「医療」の 3 つの応用分野に
焦点を当てて特集を組むことになりました。計測技術分野では,兵庫県立大学高度産業科学技術研究所 福岡
隆夫先生に,着色の基本原理である局所プラズモン共鳴を表面粒子集合体で発展させた新たな計測技術,表面
増強ラマン散乱の紹介をお願いしました。また,北海道大学大学院工学研究院,材料科学部門 米澤徹先生に
は,触媒や蛍光性,導電性材料の分野の動向を紹介していただくことになりました。さらに,熊本大学大学院
自然科学研究科,産業創造工学専攻 新留琢朗先生からは,ロッド状の金ナノ粒子の近赤外光によるフォトサー
マル効果を利用した,機能的ドラッグデリバリーシステム構築への展開を紹介していただきました。
金コロイドの科学や応用に関心をもたれている方々にとって,本企画がホットな話題提供の場となり,皆様
のご研究の一助となれば幸いです。最後に,大変お忙しい中,本企画にご賛同いただき,快く総説をご執筆い
ただきました先生方に,心より深く感謝申し上げます。
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