輸血前に行う検査について

2016 年 4 月
けんさの豆知識
<第 50 号>
臨床検査部
発行
(輸血検査室)
~輸血前に行う検査について~
医療ドラマを観ていると、手術シーンなどで「輸血部に連絡!大至急、輸血準備して!!」
なんてセリフを耳にすることがあるかと思います。
「輸血する!!」となってから、すぐに輸血検査室から輸血用血液を出すまでには時間がかかり
ます。
今回は、なぜそんなに時間がかかるのか?を
当検査室で行っている輸血前検査に焦点を当てて、お話させていただきます。
血液は、赤血球・白血球・血小板などの細胞成分と血漿成分からできていて、それぞれに役割が
あります。
十分に血液を作れない場合や大量に出血して生命の危険が生じる場合、血液を固める成分が足り
ずに出血の危険がある場合などに補充を目的として輸血療法が行われます。
しかし、輸血は善意の献血により製造された自分以外のヒトの血液を使用するので、血液成分を
一つの臓器と考えると臓器移植ということになります。
そのため、輸血の必要性とメリット・デメリットを十分考慮し行われます。
患者さんに合った輸血用血液を準備し、安全な輸血を行うための検査です。
輸血前検査には…①血液型検査
②不規則抗体スクリーニング
当院では、輸血の緊急性に応じて
③交差適合試験(クロスマッチ)
これらの検査・検査方法を選択し、
の3つがあります。
24時間体制で正確・迅速に検査
を行っています
①血液型検査(ABO式血液型・Rh式血液型)
2回以上・別のタイミングで採血された血液で検査を行い 、
同じ結果が得られると血液型が確定できます。
(クロスマッチ時も血液型を確認しています。)
これは、患者取り違いによる血液型不適合輸血防止のためです。
㊟「輸血療法の実施に関する指針」で血液型と交差適合試験用
検体は同時採血禁止と定められています。
患者さんの確定した血液型と同型の血液製剤を準備します。
抗
A
抗
B
抗
D
Rh
Ctr
A1
B
O
血
血
血
球
球
球
血液型検査用の試薬です
②不規則抗体スクリーニング
不規則抗体とは、ABO式血液型以外の赤血球抗原に対する抗体のことです。
赤血球抗原には、ABO・Rh式血液型以外にも約300種類以上の抗原があり、
このうち副作用を起こす可能性が高い約20種類の赤血球抗原に対する抗体を検出します。
不規則抗体スクリーニング検査で陽性となった場合は、その抗体が何であるかを同定し、
患者さんに適合する血液製剤(抗原陰性血)を選択・準備します。
不規則抗体試験用の血球試薬は
凝集を見ているところです
こんなにあります
わずかな凝集も見逃しません!!
7
1
8
2
9
3
10
4
1
11
5
2
3
Dia
6
③交差適合試験(クロスマッチ)
輸血用血液と患者さんの血液との間に、凝集(抗原
抗体反応)が起こるかどうかをあらかじめ試験管内で
検査し、患者さんに不都合な反応を未然に防止する
ための検査です。この検査で抗原抗体反応が起こらな
ければ、
『クロスマッチ適合』となり、輸血が行われま
す。
遅発性溶血性輸血副作用もあるため、
クロスマッチ適合血だから絶対安全ではなく
LISS
PeG
抗ヒト
クームス
Ctr
+
-
Ctr
IgG
Ctr
血球
血球
Ctr
輸血後の観察も重要です。
多特異
C3bd C3d
交差適合試験に使う試薬です
<所要時間について>
当院では、院内に輸血用血液があり上記3つの輸血前検査を行った結果が不規則抗体陰
性・クロスマッチ適合の場合には、患者さんの検体が検査部に提出されてから約 1 時間以
内に報告できるようにしています。
緊急時は輸血が遅れないように確認検査を行い、速やかに準備します。
日当直時間帯は1名で担当しているので、状況によってはこの限りではありません。
検査結果や状況次第ではさらに時間がかかってしまうこともありますが、
安全で安心な輸血を行うためのご理解・ご協力を宜しくお願いします。