特開2012-223171 新規乳酸菌及びL

JP 2012-223171 A 2012.11.15
(57)【要約】
【課題】新規有胞子性乳酸菌、光学純度の高いL−乳酸
の効率的な製造方法及び新規有胞子性乳酸菌を含む食品
および薬品に関する。
【解決手段】 スクロースからの乳酸の生成が陽性であ
ることを特徴とする新規な有胞子性乳酸菌バチラスコア
ギュランス(Bacillus coagulans)
F6−2株を用い、スクロース、酵母エキスを含有する
培地で増殖させることにより光学純度に優れたL−乳酸
の生産性を非常に高めることができる。また、新規有胞
子性乳酸菌バチラスコアギュランス(Bacillus
coagulans)F6−2株を含有する食品或い
は医薬品を特徴とする。
【選択図】図1
(2)
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【特許請求の範囲】
【請求項1】
スクロースからの乳酸の生成が陽性であることを特徴とする有胞子性乳酸菌バチラスコ
アギュランス(Bacillus coagulans)F6−2株。
【請求項2】
請求項1記載の有胞子性乳酸菌バチラスコアギュランス(Bacillus coag
ulans)F6−2株をスクロース、酵母エキスを含有する培地で増殖させることを特
徴とするL−乳酸の製造方法
【請求項3】
請求項1記載の有胞子性乳酸菌バチラスコアギュランス(Bacillus coag
10
ulans)F6−2株を用いて培地温度40−70℃、pH5∼8に保ちながら乳酸発
酵するL−乳酸製造方法。
【請求項4】
請求項1記載の有胞子性乳酸菌バチラスコアギュランス(Bacillus coag
ulans)F6−2株を含有することを特徴とする食品。
【請求項5】
請求項1記載の有胞子性乳酸菌バチラスコアギュランス(Bacillus coag
ulans)F6−2株を含有することを特徴とする医薬品。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
20
【0001】
本発明は新規有胞子性乳酸菌、光学純度の高いL−乳酸の効率的な製造方法及び該有胞
子性乳酸菌を含む食品および薬品に関する。
【背景技術】
【0002】
微生物バチラスコアギュランス(Bacillus coagulans)は耐熱性乳
酸菌として知られており、1949年に中山らが胞子の形をした菌として分離したもので
ある。(非特許文献1)。また、乳酸を大量に生成する乳酸菌は基本的にどの菌も便秘、
軟便の改善を行う整腸効果が知られており、広く実用に供されている技術である。
【0003】
30
とりわけバチラスコアギュランス(Bacillus coagulans)はコレス
テロール低減(特許文献1)やインフルエンザウィルス予防(特許文献2)効果があるこ
とが報告されている有用菌でもある。
【0004】
一方、バチラスコアギュランスを含む乳酸菌は糖分を代謝し、乳酸を合成することも知
られている。乳酸は食品分野では酸味料あるいは保存料として、誘導体化され、例えば乳
酸カルシウムとして幅ひろく利用されている。更に、乳酸は工業分野では乳酸エチルのよ
うに溶媒として、あるいは化学的に重合しポリ乳酸にすることによりフィルム、繊維ある
いはプラスチックとして利用することができる。重合された乳酸ポリマーは石油由来では
ない植物由来ポリマーであり、優れた生分解性、機械的性質、成形性を有することから、
40
将来、石油由来ポリマーの代替ポリマーの1つとして有望視されている。
【0005】
乳酸発酵では、先ず糖質資源であるコーン、さつまいも等に含有される多糖類である“
でんぷん”をアミラーゼなどの酵素で加水分解し、単糖類であるグルコースに転化する。
次に、適度な栄養源のもと乳酸菌を増殖させ、乳酸菌によりグルコースを乳酸に転化させ
る。あるいはサトウキビ、てんさいのショ糖を直接乳酸菌で発酵し乳酸を得ることもでき
る。ただし、乳酸発酵においては、微生物が活動する適切なpH(4−10程度)が存在
し、この範囲外のpHでは乳酸菌の活動が停滞あるいは死滅するため、培地のpHを一定
に保つ必要があり、中和剤の添加しながら発酵を進める。中和剤としてはアンモニア、炭
酸カルシウム、苛性ソーダ等のアルカリ剤が使用され、乳酸は発酵溶液中に乳酸アンモニ
50
(3)
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ウムや乳酸カルシウムのような乳酸塩として存在することになる。バッチ式による乳酸発
酵では溶液中の乳酸塩濃度が5−20wt%程度まで乳酸発酵を進めることができる。
【0006】
乳酸発酵が終了した時点で乳酸は単離精製する必要がある。例えば、硫酸を添加し、乳
酸塩から硫酸塩として沈殿・濾別除去した後に、残った乳酸を電気透析、膜分離を行い、
最終的に蒸留により精製する。あるいは、低分子アルコールにより乳酸とアルコールのエ
ステル化を進め、エステルとして蒸留することもできる。この場合、得られた乳酸エステ
ルは加水分解し、アルコールと乳酸に分離させ乳酸を精製する。
【0007】
乳酸発酵を行う菌としてはラクトバチラス(Lactobacillus)属、ラクト
10
コッカス(Lactococcus)属、ストレプトコッカス(Streptococc
us)属などの細菌微生物、リゾパスオリザエ(Rhizopus oryzae)属の
ような真菌が知られている。
【0008】
リゾパスオリザエ(Rhizopus oryzae)の栄養要求性が低い利点はある
ものの、乳酸生成速度は低く10%程度の発酵液を得るために2週間も要する。また、糖
質分の70%程度しか消費しないので、糖分利用効率としては良いとは言えない
【0009】
バチラスコアギュランス(Bacillus coagulans)は耐熱性乳酸菌で
あるので40℃から70℃にかけて発酵が可能である。50℃以上の発酵では無滅菌培地
20
状態で乳酸発酵することが可能であり、通常乳酸発酵に必要な滅菌装置が不必要で経済的
に有利である。例えば、非特許文献2においては、生ゴミからの無滅菌乳酸発酵がバチラ
スコアギュランス(Bacillus coagulans)NBRC12583により
行われている。これによれば、ラクトプランタラム(Lact plantarum)菌
株では45℃以上ではほとんど、菌体の増殖が行われないが、バチラスコアギュランス(
Bacillus coagulans)NBRC12583菌株では70℃近くまで菌
体の増殖、発酵が可能であることが開示されている。
【0010】
しかしながら、上記のバチラスコアギュランスNBRC12583の培養液1L当たり
、1時間の平均乳酸発酵速度は1.36g/L/hと生産性は低い結果しか示されていな
30
い。さらに、乳酸に対して酢酸も12%程度生成し、乳酸を目的とした発酵としては良い
結果とは言えない。また、特許文献3では、バチラスリンチェニフォルマイス(Baci
llus licheniformis)TY7を用いた高温無滅菌乳酸発酵がMRS培
地によりなされているが、生産性は2.5g/L/h程度である。
【0011】
酵母エキス(Yeast)を乳酸菌増殖栄養源として使用し乳酸発酵を行う事例は公知
の事実であり多数報告されている。例えば非特許文献3においては、滅菌処理した廃糖蜜
培地に酵母エキスの量を変化させて、エンテロコッカスファエカリス(Enteroco
ccus faecalis)RKY1乳酸菌株による乳酸発酵量と栄養源の関係を詳細
に検討している。その結果表1に示すような酵母エキスと生産性の関係が得られている。
酵母エキス5g/Lでは乳酸生産性は0.9g/L/hであるのに対して酵母エキス20
g/Lでは5.3g/L/hと増加する。このように酵母エキス量と乳酸生産性は明確な
関係がある。しかしながら酵母エキスは多く使用すると発酵速度は向上するものの高価で
あるため、経済的に不利となる。
【0012】
40
(4)
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【表1】
10
【0013】
つまり、酵母エキスの量が増加するほど乳酸発酵速度は増加し、酵母エキスの乳酸菌増
殖の栄養源としての明確な効果が認められている。この実験では酵母エキスの量が20g
/L以上で乳酸の生産速度が5g/L/hを超える。
【0014】
非特許文献4では同じくEnterococcus faecalis RKY1を用
いてコーンスティープリカー(CSL)により乳酸発酵を行っている。この文献によれば
、乳酸100gを生成するために表2示すようにコーンスティープリカー(CSL)を0
−25g培地に添加すると発酵時間78−24hが必要であることがわかる。平均発酵速
度は1.21−4.14g/L/hとなっている。この実験でも乳酸の生産速度が遅く、
20
CSLの量が25g/Lでも5g/L/hには到達しない。
【0015】
【表2】
30
【先行技術文献】
【特許文献】
【0016】
【特許文献1】特開2010−95532
【特許文献2】特開2008−13543
【特許文献3】特開2006−333847
40
【非特許文献】
【0017】
【非特許文献1】日本農芸化学会誌 Vol.23 No.12(1949)p.513
−517
【非特許文献2】Kenji Sakai and Yutaka Ezaki,Ope
n L−Lactic Acid Fermentation of Food Ref
use Using Thermophilic Bacillus coagulan
s and Fluorescense In situ Hybridization
Analysis of Microflora,Journal of Biosc
ience and Bioengineering,101−6(2006),pp.
50
(5)
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457−463
【非特許文献3】Young−Jung Wee,Jin−Nam Kim,Jong−
Sun Yun,Hwa−Won Ryu,Utilazation of sugar
molasses for economical L(+)−lactic aci
d production by batch fermentation of En
terococcus faecalis,Enzyme and Microbial
Technology,35(2004)pp.568−573
【非特許文献4】Hurok Oh,Young−Jung Wee,Jong−Sun
Yun,Seung Ho Han,Sangwon Jung,Hwa−Won R
yu,Lactic acid production from agricultu
10
ral resources as cheap raw materials,Bio
resource technology,96(2005)pp.1492−1498
.
【非特許文献5】Tina Michelson,Karin Kask,Ene Ta
lksep,Indrek Suitso,Allan Nurk,L(+)−Lact
ic acid producer Bacillus coagulans SIM7
DSM 14043 and its comparison with Lacto
bacillus delbrueckii ssp.Lactis DSM 2007
3,39(2006)pp.861−867.
【発明の概要】
20
【発明が解決しようとする課題】
【0018】
以上の技術背景を考慮し、発明者らは無滅菌スクロース培地において、高速かつ安定し
た乳酸発酵を行うため、バチラスコアギュランス(Bacillus coagulan
s)のスクリーニングを行い、ついに耐熱性の高い新規菌株バチラスコアギュランス(B
acillus coagulans)F6−2株を完成するに至った。又、該菌株を使
った光学純度の高く生産速度の大きいL−乳酸の製造方法を完成した。さらに、該乳酸菌
を使用した食品或いは医薬品を開発するに至った。以下にその説明をする。
【課題を解決するための手段】
【0019】
30
本発明の1は、スクロースからの乳酸の生成が陽性であることを特徴とする有胞子性乳
酸菌バチラスコアギュランス(Bacillus coagulans)F6−2株であ
ることを特徴とすることもできる。
【0020】
本発明の2は、本発明の1記載の有胞子性乳酸菌バチラスコアギュランス(Bacil
lus coagulans)F6−2株をスクロース、酵母エキスを含有する培地で増
殖させるL−乳酸の製造方法であることを特徴とすることもできる。
【0021】
本発明の3は、本発明の1記載の有胞子性乳酸菌バチラスコアギュランス(Bacil
lus coagulans)F6−2株を用いて培地温度40−70℃、pH5∼8に
40
保ちながら乳酸発酵するL−乳酸製造方法であることを特徴とすることもできる。
【0022】
本発明の4は、本発明の1記載の有胞子性乳酸菌バチラスコアギュランス(Bacil
lus coagulans)F6−2株を含有する食品を特徴とすることもできる。
【0023】
本発明の5は、本発明の1に記載の有胞子性乳酸菌バチラスコアギュランス(Baci
llus coagulans)F6−2株を含有する医薬品を特徴とすることができる
。
【発明の効果】
【0024】
50
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本発明の新規有胞子性乳酸菌バチラスコアギュランス(Bacillus coagu
lans)F6−2株は、糖質源としてスクロース、酵母エキスを含有する培地において
、温度40−70℃およびpH5∼8に保つことで乳酸発酵ができるものである。したが
って、従来のデンプン等の糖質源をアミラーゼ酵素で糖化処理していた工程あるいはスク
ロースをスクラーゼ酵素でグルコース、フルクトースに分解していた工程を省くことがで
きる。また、発酵速度(単位体積・時間あたりの乳酸生成量)は極めて速く、従来使用す
る酵母エキス量と同量で、2倍以上発酵速度が得られるため、能率の良い乳酸発酵が可能
であり、乳酸発酵時間およびコストを大幅に低下させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0025】
10
【図1】 本実施例の乳酸発酵温度と生成乳酸量との関係である。
【図2】 本実施例の乳酸発酵時のpHと生成乳酸量との関係である。
【図3】 本実施例の人工胃酸試験時間と乳酸菌数の関係である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0026】
本発明の1の乳酸菌バチラスコアギュランス(Bacillus coagulans
)F6−2株は、次に示す菌学的性質を有する。
(1)菌の形態
直径の大きさ :0.8∼0.9μm
細胞の形状 :桿状
20
運動性 :なし
芽胞形成 :あり
(2)菌の生理学的性質
酸素 :好気性、通性嫌気性、嫌気性でも生育
グラム染色 :不定
グルコース :陽性
フルクトース :陽性
スクロース :陽性
マンノース :陽性
メリビオース :陽性
30
マルトース :陽性
【0027】
上記乳酸菌バチラスコアギュランス(Bacillus coagulans)F6−
2株は独立行政法人製品評価技術基盤機構特許微生物奇託センターに平成22年12月2
0日付けでNITEP−1022として寄託されている。以下、図表を用い実施例に基づ
いて本発明の乳酸菌、L−乳酸製造方法を詳細に説明する。
【実施例1】
【0028】
準備した発酵培地を攪拌装置付きの発酵槽に入れる。その後、同様の培地で、発酵培地
の1%の容量で予め24h発酵を行った植菌用乳酸発酵液を植菌する。発酵中は攪拌棒を
50rpmに保ち、攪拌を行う。発酵培地には表3に示した組成の培地を使用した。
【0029】
40
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【表3】
10
【0030】
本発明1の乳酸菌が増殖し、発酵が進むと次第に低下するpHを6.0に保つために、
28%アンモニア水をポンプで逐次滴下する。発酵槽温度は53℃に保った。発酵終了後
に発酵液をHPLCで分析し乳酸量を決定した。
【0031】
表4はバチラスコアギュランス(Bacillus coagulans)F6−2株
による乳酸発酵結果である。酵母エキス10g/Lにおいて、平均乳酸生成速度は7.6
6g/L/hに達した。最大発酵速度は酵母エキス12.5g/Lにおいて16.9g/
L/hに達した。酵母エキス15gでは発酵時間は11.9時間で終了しており、バチラ
スコアギュランスF6−2は極めて高速な乳酸発酵を行うことが判明した。これらの乳酸
20
生産速度は上述した従来の文献(非特許文献3、4)のチャンピオンデータよりもはるか
に大きいことがわかる。
【0032】
【表4】
30
【実施例2】
【0033】
比較例のため、バチラスコアギュランス(Bacillus coagulans)N
BRC12583、バチラスコアギュランス(Bacillus coagulans)
SIM−7 DSM14043を使って同様に発酵を行った。培地は表3のものを使用し
、酵母エキスは5g/Lとした。培地pHは6.0に保持し、発酵槽温度は53℃とした
。
【0034】
40
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【表5】
10
【0035】
結果を表5に示す。表5からわかるように、比較例ではスクロース培地で乳酸発酵試験
を行ったが、バチラスコアギュランスSIM7 DSM14043およびバチラスコアギ
ュランスNBRC12583ともに、スクロース培地では極めて発酵速度が本発明に比べ
て1/100∼1/10と遅いことが判明した。
【0036】
非特許文献5においてはバチラスコアギュランスSIM−7 DSM14043株をグ
ルコース培地(127g/L)において、酵母エキス7.5g/Lで乳酸発酵を行ってい
20
る。この場合、平均乳酸発酵速度は2.8g/L/hであり、本発明の乳酸生産速度に比
べて格段に遅いことがわかる。
【実施例3】
【0037】
最適な乳酸発酵温度を調べる目的で、表3の発酵培地(酵母エキス5g/L)において
、発酵温度を変化させた。発酵実験は全て24hで強制的に終了させ、HPLCによる乳
酸分析を行った。培地pHは6.0に保ちながら乳酸発酵を行った。
【0038】
図1は発酵培地を有機酸分析HPLCで分析し、生成乳酸量を調べ、発酵温度との関係
を示したものである。図に示されるように温度53℃で最も乳酸生産性が良いことが判明
30
した。即ち、本発明のバチラスコアギュランス(Bacillus coagulans
)F6−2株による乳酸発酵においては53℃という高温でも十分に大きい乳酸発酵速度
を有する。特にこうした高温で発酵を行うと他の細菌の感染・増殖を抑えることができ、
発酵後の滅菌が必要なくなり工業的に大きなメリットである。
【実施例4】
【0039】
発酵温度53℃における最適な乳酸発酵pHを調べる目的で、表3の発酵培地(酵母エ
キスは5g/L)において、発酵培地pHを変化させ、乳酸発酵実験を行った。乳酸発酵
実験は全て24hで強制終了し、HPLCによる乳酸分析を行った。
【0040】
40
図2に実験結果を示す。図に示されるように、pH6.0において乳酸生産性が最も高
いことが判明した。
【実施例5】
【0041】
実施例4における発酵乳酸2Lをロータリーエバポレーターで110℃、80torr
に保ちつつ15%まで濃縮した。その後、乳酸モル量の0.5モルに相当する濃硫酸を加
え、乳酸アンモニウムからアンモニウムイオンを遊離させ、硫安を塩析させた。硫安は遠
心分離機を用いて、2340G、10分で固液分離した。液体分はジムロート冷却管付き
の三口フラスコに投入した。ジムロート冷却管は液体窒素トラップを介して真空コントロ
ーラー付き真空ポンプに繋げた。フラスコはオイルバスで120℃から200℃に2hか
50
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けて段階的に加熱し、真空度を500torrから10torrまで低下させ、縮合した
。その後、オクチル酸スズを0.3%加え、さらに200℃、10torr、2h縮合し
た後、ジムロート管を外し、ジムロート管の代わりに、留去用フラスコを取り付け、再び
200℃、10torrで減圧した。三つ口フラスコ内で還流しているラクチドを留去用
フラスコに3時間かけて留去した。この時、ラクチドの歩留りは乳酸からの理論歩留りに
対して82%であった。
【0042】
このラクチドを光学異性体分離カラム(CP−Cycrodextrin−β−2,3
,6−M−19)を備えたガスクロマト分析システム(島津GC−2010)にて分析を
行ったところ、乳酸の光学純度はL−乳酸98.4%であった。したがってバチラスコア
10
ギュランス(Bacillus coagulans)F6−2を使用することで、光学
純度の高いL−乳酸発酵の製造が可能であることが判明した。
【実施例6】
【0043】
実施例4における固形分離した菌体を純水で洗浄、濾別した後、温風乾燥機内で60℃
、135分間乾燥した。さらに真空デシケーターで10torr、24h常温乾燥した。
(菌体A)
【0044】
実施例4における固形分離した固形分を純水で洗浄、濾別した後、温風乾燥機内で60
℃、180分乾燥した。さらに、電気炉(50℃)で48h乾燥した。(菌体B)
20
【0045】
試験管内に純水10mlおよび0.52gMRSを含む液体培地に上記で回収した菌体
をそれぞれ植菌し50℃の恒温槽内に保持した。発酵実験後、菌体Aは6時間で発酵が確
認できた。菌体Bは全く発酵しなかった。
【実施例7】
【0046】
実施例1におけるバチラスコアギュランス(Bacillus coagulans)
F6−2を人工胃液9ml(0.2%NaCl、0.35%ペプシン(1:5000)、
1M HClでpH2.0およびpH3.0に調整)に1ml(菌体乾燥重量0.005
g(0.005%))添加し、37℃、1、2、3、4時間ずつ処理した。その後、各処
30
理液を10の7乗および8乗に希釈した。その希釈液からスパチュラで表3に示した組成
の寒天培地に植菌して50℃で培養した。24時間後にコロニー数をカウントし、生菌数
を推定した。その結果を図3に示す。図3からわかるように、本菌体はpH2および3に
おいて菌数の減少が少なく、胃酸に耐えうる菌であることが判明した。
【産業上の利用可能性】
【0047】
本発明の乳酸菌により、スクロースから、少ない酵母エキス等の栄養源で有胞子乳酸菌
および乳酸を製造することができる。また、製造された乳酸菌は耐酸性に優れ、食品およ
び医薬品として広く使用することができる。乳酸発酵速度も極めて高く、製造された乳酸
は光学純度が高いL−乳酸であるため、食品添加物あるいはポリ乳酸等のポリマー等にも
使用することができ、安価なL−乳酸を提供することができる。
40
(10)
【図1】
【図2】
【図3】
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(11)
JP 2012-223171 A 2012.11.15
フロントページの続き
(51)Int.Cl.
FI
テーマコード(参考)
A61P
1/12
(2006.01)
A61P
1/12
C12R
1/07
(2006.01)
C12N
1/20
A
C12R
1:07
Fターム(参考) 4C087 AA01 AA02 BC64 NA14 ZA66 ZA72 ZA73