JP 2006-6251 A 2006.1.12 (57)【 要 約 】 【課題】 グルコン酸の金属塩に関する新規の利用方法を提供する。 【解決手段】 グルコン酸塩に関する鋭意検討を重ね、グルコン酸の金属塩、即ちグルコン酸銅及び/又 はグルコン酸亜鉛を食品、特に飲料に添加することで、効果的に食品の原料等に由来する 苦味、渋味、酸味を低減させることが可能となる。 (2) JP 2006-6251 A 2006.1.12 【特許請求の範囲】 【請求項1】 グルコン酸の金属塩を添加することを特徴とする食品の呈味改善方法。 【請求項2】 グルコン酸の金属塩がグルコン酸銅及び/又はグルコン酸亜鉛である請求項1記載の呈味 改善方法。 【請求項3】 食品への添加量が、食品100重量部に対しグルコン酸の金属塩が0.0001∼0.0 5重量部である請求項1及び2に記載の呈味改善方法。 【請求項4】 10 請求項1に記載の食品が飲料である呈味改善方法。 【発明の詳細な説明】 【技術分野】 【0001】 本発明は、グルコン酸の金属塩を食品に添加することを特徴とする呈味改善方法に関し 、詳しくは、グルコン酸の金属塩がグルコン酸銅及び/又はグルコン酸亜鉛であり、該金 属塩を食品、特に飲料に添加することで、飲料の風味、品質を損なわずに苦味、渋味や酸 味を低減する方法を提供する。 【背景技術】 20 【0002】 グルコン酸塩は自然界に多量に存在し、醸造酢、ワイン、漬物、味噌などの食品中に存 在していて、発酵食品の芳潤な酸味の形成に影響していることが知られている。食品添加 物としてもグルコン酸塩が使用されている。例えば、グルコン酸、グルコノデルタラクト ン、グルコン酸ナトリウム、グルコン酸カリウムは酸味料として、グルコン酸カルシウム 、グルコン酸亜鉛、グルコン酸銅は強化剤として、グルコン酸第一鉄は強化剤、着色助剤 として使用されている。 【0003】 さらに、グルコン酸ナトリウム、グルコン酸カリウムには、苦味、臭いのマスキング効 果があることが開示され(非特許文献1)、苦味アミノ酸を含有してなる組成物にグルコ 30 ン酸ナトリウムを併用することで添加物由来の塩味や旨味等の味を強く呈することなく、 苦味を顕著に抑制する効果(特許文献1)、グルコン酸の非毒性塩、例えばグルコン酸ナ トリウム、グルコン酸カリウムのようなグルコン酸のアルカリ金属塩ならびにグルコン酸 カルシウム、グルコン酸マグネシウムのようなグルコン酸のアルカリ土類金属塩を有効成 分とする旨味増強剤(特許文献2)、グルコン酸のナトリウム塩もしくはカリウム塩によ る高甘味度甘味料の甘味の後引きの改善方法(特許文献3)などが開示されている。 【0004】 【非特許文献1】食品工業、42巻、9号、67−74、1999年 【特許文献1】特開2000−217547号公報 【特許文献2】WO 01/60178 A1 40 【特許文献3】特開2003−210147号公報 【発明の開示】 【発明が解決しようとする課題】 【0005】 しかしながら、従来の技術はグルコン酸を酸味料として使用するか、あるいは特定のグ ルコン酸塩により苦味アミノ酸、大豆タンパク臭、魚臭、マグネシウムの苦味等をマスキ ングする方法が開示されているだけであった。 【課題を解決するための手段】 【0006】 本発明者らは、グルコン酸塩に関する鋭意検討を重ねていたところ、グルコン酸の金属 50 (3) JP 2006-6251 A 2006.1.12 塩、即ちグルコン酸銅及び/又はグルコン酸亜鉛を食品、特に飲料に添加することで、効 果的に食品に含まれる原料等に由来する苦味、渋味や酸味を低減させる効果を得るに至っ た。本発明は係る知見に基づくものである。 【発明の効果】 【0007】 本発明によれば、食品、特にコーヒー、紅茶、酢含有飲料、炭酸飲料、果汁や果汁飲料 などの飲料の品質、風味に影響を与えずに、飲料に含まれる原料等に由来する独特の苦味 、渋味や酸味を効果的に低減させ、爽快な摂取が可能となる。 【発明を実施するための最良の形態】 【0008】 10 本発明は、グルコン酸の金属塩を添加することにより食品、特に飲料の呈味を改善する ことを特徴とする。 【0009】 本発明で使用するグルコン酸の金属塩は、銅塩及び/又は亜鉛塩であり、これらを1種 単独或いは組み合わせて使用しても良い。尚、本発明で使用するグルコン酸の金属塩の由 来は、いかなる物質でも制限無く使用することができる。簡便には、一般に市販されてい る製品を利用するとよい。 【0010】 本発明に係る呈味改善剤に含まれるグルコン酸の金属塩の含量は、食品100重量部に 対し0.0001∼0.05重量部、好ましくは0.001∼0.01重量部である。グ 20 ルコン酸の金属塩の食品への添加量が0.0001重量部以下になると風味の改善効果が 十分に得られず、0.05重量部以上になると金属塩の風味が食品に影響を及ぼすように なるため好ましくない。 【0011】 本発明に係るグルコン酸の金属塩は、飲食品及び経口で摂取する医薬品、医薬部外品等 であり、コーヒー、紅茶、酢含有飲料、炭酸飲料、果汁や果汁入り飲料、カクテルやチュ ーハイなどの果汁入りアルコール飲料、ニアウォーターやスポーツドリンクなどの飲料類 、ゼリー、プリン等のデザート類、カレー、シチュー、スープ等の煮込み調理食品類、か まぼこ等の水産練り製品、即席麺及びその調理スープ、ハム・ソーセージ等の畜肉製品、 ヨーグルト、シェーク飲料などの乳製品などが例示できるが、好ましくは飲料類である。 30 【0012】 本発明に係る食品の呈味改善方法は、グルコン酸の金属塩を添加し呈味の改善を行う食 品の製造、加工又は調理時に、食品又はその素材にグルコン酸の金属塩を混合、塗布、噴 霧など任意の方法において混合すればよく、特別な製造装置や製造条件を整える必要がな いため、工業的にも簡便に本発明を実施することができる。 【0013】 また、グルコン酸の金属塩の添加量、添加する時期については、添加する食品の種類、 風味、製造方法などに応じて適宜増減、調節してもよい。 【0014】 以下、本発明の内容を以下の試験例を用いて具体的に説明する。但し、本発明はこれら 40 に限定されるものではない。なお、下記に記載する処方中の※は三栄源エフ・エフ・アイ 株式会社の商標であることを示し、*は三栄源エフ・エフ・アイ株式会社の製品であるこ とを示す。 【0015】 実施例1 以下の処方に基づき飲料を調製した。他のグルコン酸塩と対比するために、ナトリウム 塩、カリウム塩、第一鉄塩、カルシウム塩をそれぞれ添加して比較を行った。 【0016】 処方1 レモンティー 砂糖 7 50 (4) JP 2006-6251 A 2006.1.12 L-ア ス コ ル ビ ン 酸 0 . 0 3 クエン酸(無水) 0.02 果汁 0.5 (濃縮還元レモン透明果汁*) 紅茶エキス 0.05 (SD紅茶エキスパウダーNo.16693*) グルコン酸塩 表1参照 香料(レモンフレーバーNo.21−B*) 0.08 香料(ブラックティーフレーバーNo.69856*)0.02 水にて合計 100 L 10 【0017】 処方2 ストレートティー 砂糖 7 L-ア ス コ ル ビ ン 酸 0 . 0 3 L-ア ス コ ル ビ ン 酸 ナ ト リ ウ ム 0 . 0 3 紅茶エキス 0.05 (SD紅茶エキスパウダーNo.16693*) グルコン酸塩 表1参照 香料(ブラックティーフレーバーNo.69856*)0.02 水にて合計 100 L 20 【0018】 処方3 コーヒー 砂糖 3.5 コーヒーエキス(コーヒーエキスC100*) 6.5 グルコン酸塩 表1参照 香料(コーヒーエッセンス*) 0.05 水にて合計 100 L 【0019】 処方4 酢含有飲料 果糖ブドウ糖液糖 13.3 30 リンゴ酢(タマノイ酢社製 酸度5%) 8 クエン酸三ナトリウム 0.02 グルコン酸塩 表1参照 香料(アップルエッセンス(N)*) 0.05 水にて合計 100 L 【0020】 処方5 果汁入り飲料(20%) 果糖ブドウ糖液糖 11.7 果汁(えひめ飲料社製 オレンジ冷凍果汁55) 4.4 クエン酸 0.3 40 クエン酸三ナトリウム 0.05 グルコン酸塩 表1参照 香料(オレンジエッセンスNo.51237(N)*)0.05 水にて合計 100 L 【0021】 <製造方法> 飲料100重量部に対し所定量(表1及び2参照)のグルコン酸塩を添加した飲料を、 各飲料の公知の製造方法に準じて調整し、よく訓練されたパネラーにより評価を行った。 本発明における実施例となるグルコン酸銅及びグルコン酸亜鉛による試験結果を表1に、 対して比較例となるグルコン酸ナトリウム、グルコン酸カリウム、グルコン酸第一鉄及び 50 (5) JP 2006-6251 A 2006.1.12 グルコン酸カルシウムによる試験結果を表2に示す。 10 【0022】 【表1】 20 30 40 50 (6) JP 2006-6251 A 2006.1.12 10 【0023】 【表2】 20 30 40 【0024】 ※1 呈味改善効果は見られるが、銅に由来する金属味が強く感じられた。 ※2 呈味改善効果は見られるが、亜鉛に由来する金属味が強く感じられた。 【0025】 50 (7) JP 2006-6251 A 2006.1.12 <評価> 上記試験の結果、グルコン酸銅を飲料100重量部に対し0.001∼0.01重量部 添加したところ、紅茶の渋味やコーヒーの苦味が低下し、酢や果汁の酸味がまろやかにな るとの結果が得られ、グルコン酸亜鉛を飲料100重量部に対し0.001∼0.05重 量部添加しても同様の呈味の改善効果が見られた。但し、グルコン酸銅を0.01重量部 、或いはグルコン酸亜鉛を飲料100重量部に対し0.05重量部以上飲料に添加すると 、飲料によっては呈味の改善効果は見られるものの、金属味が強く感じられるようになっ た。 【0026】 一方、従来より利用されているグルコン酸のナトリウム塩、カリウム塩、第一鉄塩、カ ルシウム塩を添加しても、渋味を抑えたり酸味をまろやかにするなどの効果は何れの添加 量でも得られなかった。 10
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