O-045 肩関節周囲炎に対するストレッチポールの効果 ‐姿勢矯正に着目して‐ *小島 怜士 1), 高木 大輔 2), 影山 昌利 1), 佐々木 嘉光 1), 松本 博(MD)1) 1)医療法人社団 明徳会 協立十全病院 リハビリテーション科 2)公立森町病院 リハビリテーション科 キーワード:肩関節周囲炎, ストレッチポール, 姿勢 【目的】 肩関節周囲炎の主症状として疼痛や関節可動域制限がある. 予後は一般的に疼痛が 3 ヵ月程度で治まり,1~2 年以内に症状 が軽快するとされている.しかし長期経過観察例では疼痛や関 節可動域制限が 60%残存したという報告がある.また適切な治 療を受けなかった場合,日常生活に障害はないものの何らかの 愁訴を訴えるとされており,必ずしも自然治癒するとは限らな い. 肩関節周囲炎に対するリハビリテーションは運動療法,物理 療法が主であるが,有効な治療法は確立されていない.肩関節 周囲炎患者の特徴として不良姿勢が挙げられ,姿勢矯正の指導 も大切とされている.肩関節周囲炎患者の姿勢の特徴として, 頭部は前方へ突き出し,胸椎は過度に後弯,肩甲骨が外転・前 傾し,相対的に肩関節は伸展位となる.このような不良姿勢が 頸部,肩甲骨周囲筋の筋緊張を助長し,肩関節可動域の制限を さらに悪化させている一要因と考えられる.また肩関節挙上動 作には,脊柱・肩甲骨の運動が関与しているため,肩関節周囲 炎患者に対して脊柱・肩甲骨に対してのアプローチも重要と考 えられる. ここで,日本コアコンディショニング協会が提唱するストレ ッチポール(以下,SP)を使用したエクササイズがある.SP を 使用したエクササイズには,脊椎・肩甲骨リアライメント効果 があり,姿勢矯正に有効であることが示唆されている.そこで 今回,肩関節周囲炎患者に対して,SP を使用した不良姿勢へ のアプローチが姿勢矯正またそれに伴い,肩関節可動域が改善 するのかを検証した. 【方法】 対象は当院を外来受診し,肩関節周囲炎の診断を受けた 6 名 (男性 2 名・女性 4 名,右肩 4 例・左肩 2 例,平均年齢 53.7± 6.3 歳)とした.有症期間は約 5.0±1.2 ヵ月であった.訓練内 容として SP 上でのベーシックセブン(以下,B7)7~10 分間, SSP15 分間,ホットパック 15 分間を週に 1~3 回の頻度で計 40 分程度実施した.B7 は,疼痛を伴わない範囲の運動で実施 した.初診時に姿勢評価として壁から外耳孔までの距離(以下, 頭部前方突出距離) ,第 3 胸椎棘突起・肩甲骨内側縁間距離の 左右差(以下,肩甲骨位置の左右差)を測定し,肩関節可動域 は屈曲,外転を測定した.頭部前方突出距離,肩甲骨位置の左 右差はテープメジャーを,肩関節屈曲,外転はゴニオメーター を使用し,日本整形外科学会と日本リハビリテーション医学会 評価基準の測定法に基づき,測定した.また上記評価内容を 2 週毎に治療介入後に測定し,8 週間の経過をおった.なお対象 者には,口頭,および文書にて説明し,同意が得られた者のみ を対象とし,訓練・測定を実施した. 【結果】 頭部前方突出距離は初診時 12.9±0.9cm,2 週後 12.3± 1.3cm,4 週後 11.8±1.2cm,6 週後 11.5±1.2cm,8 週後 11.1 ±1.2cm であった.肩甲骨位置の左右差は,初診時 1.17± 0.31cm,2 週後 0.57±0.41cm,4 週後 0.40±0.38cm,6 週後 0.27±0.33cm,8 週後 0.25±0.34cm であった.また肩関節屈 曲角度は,初診時 101.7±13.1°,2 週後 130.0±12.9°,4 週 後 140.0±10.4°,6 週後 146.7±12.5°,8 週後 151.7± 12.5°,肩関節外転角度は,初診時 86.7±16.2°,2 週後 109.2±11.7°,4 週後 115.8±13.4°,6 週後 126.7±12.8°, 8 週後 133.3±9.9°であった. 【考察】 今回,姿勢矯正と肩関節可動域改善の要因として,SP によ る脊椎・肩甲骨のリアライメント効果により,頸部,肩甲骨周 囲筋の筋緊張が緩和したことが考えられる.また先行研究で実 施されていたリハビリテーションでは,平均屈曲角度 140°獲 得期間が,治療開始から 8~28 週であったが,今回 SP を使用 した B7 を施行した場合,平均 5.7±2.7 週程度であり,治療期 間の短縮がみられた.さらに先行研究同様,運動療法開始から 2~4 週で関節可動域に大きな改善がみられた.加えて姿勢矯正, 肩関節屈曲,外転可動域の持続的な効果があり,即時性・持続 性が示唆された. また SP の利点として簡便に使用が可能ということが挙げら れ,肩関節周囲炎患者に対して SP を使用した B7 が姿勢矯正, 肩関節可動域改善に有効な治療手段であることが示唆された. 今後の課題として対象者数と評価内容・項目をさらに検討して いく必要性があると考えられる. 【まとめ】 今回の検証によって,肩関節周囲炎患者の姿勢矯正効果,肩 関節可動域の改善が認められた.また即時性・持続性も認めら れた.よって,肩関節周囲炎に対して SP が姿勢矯正,肩関節 可動域改善に有効な治療手段の 1 つであることが示唆された.
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