せっかくやるなら子豚に快適な分娩舎管理 ― 子豚のことを考えた分娩処理が成功の決め手 ― 生物は本来ある程度の環境に適応する能力を持っていますが、豚は免疫的に未成熟な状態で産まれて来ます。養 豚場では外的要因の影響を受けぬよう、また健康に発育させるために様々な方策が取られています。分娩舎はその スタートの時期にあたり最も未熟な子豚の時期を過ごす豚舎です。子豚の発育段階に分けて説明していきます。 ○ 子豚が産まれるまでの環境 ○ 分娩処理 ○ 授乳中の出来事 環境中の細菌数:次の表は豚房の細菌汚染状況を示したものです。 豚移動後の豚房床面の総菌数 豚舎の状態 総菌数/cm2 移動直後 50,000,000 水洗い後 20,000,000 温湯、洗浄剤使用後 100,000 消毒後(目標) 1,000 出典:Waddilove(1999) この指標はどの程度実践されているのでしょうか。105農場を対象に聞き取りを行ったある調査の結果は以下のよう な驚きの結果でした。 ○ 4分の3の農場が高圧洗浄時に洗浄剤を使用していなかった。 ○ これらの68%は温水による洗浄もなされていなかった。 ○ 洗浄、消毒の効果を確認、認識していたのはわずか2%の農場であった。 ○ 消毒後のサンプリングで目標の総菌数 1,000個以下であった農場は全体の9%であった。 このような環境下に産まれて来る子豚に施される処理はいくつかありますが子豚にとって本当に必要で安全なので しょうか。 分娩処理項目と推奨日齢 処置項目 0~3日 へその緒 5~7日 (自然切除がほとんど) 切歯 ○(深く切らない) 断尾 ○(先端 2cm で十分) 刻耳 △(コマーシャルでは?) 鉄剤 ○(0~2 日齢のいずれか) 去勢 抗生剤注 4日 ○ ○ ○ ※方法は農場によりけりですが分娩0~3日と、5~7日に分けてまとめて行うようにします。コマーシャル農場であれ ば耳切りも不要と考えてもよいでしょう。 へその緒、切歯は分娩処理0日で いずれも傷口から細菌感染を受ける可能性があります。へその緒は通常自然乾燥して止血しますが、必ずイソジン 液をスプレーしましょう。切歯は手にあった切れの良い物をアルコール(消毒液)に浸けておいて1頭ずつ切ってはア ルコールに浸します。切り残しがないよう、また歯肉を切らぬように口の中に指を入れてトガリがないように確認して下 さい。 断尾、刻耳は柔軟に対応 断尾は先端の房状部分(2cm)を切るだけでも良いです。虚弱子豚は断尾、刻耳も検討します。 傷口にイソジン液スプレーは上記項目と同様。個体識別(トレサビ)の必要性よりも子豚の活力により期待しましょう。そ もそも国の勧めるHACCPは管理自体が仕事になっています。コマーシャルなら現実的には群管理で十分なはずで す。 使用器具の衛生管理 ○ 注射器、注射針、ニッパー等は2組以上準備し、日毎交互に煮沸消毒、風乾保存しておきます。一腹毎に注射 針を変える細かな注意が必要です。 ○ 煮沸器具は各種ありますが煮沸後の釜揚げ、乾燥が必須です。 ○ 扉が閉められる棚に保管します。 ○ 現場への持ち込みは必要な器具を専用コンテナ(洗える構造が良い)に入れて使用すると良いでしょう (下図参照、奥のパネルは体重計)。 まとめ ○ 分娩前の豚房と母豚の洗浄・消毒を徹底しよう。乾燥期間は長いほど理想です。 ○ 子豚のストレス低減を優先して分娩処理をしましょう。まずは子豚に“やさしく”から始めましょう。正しく実 施しないと子豚が死にます! 時には抗生物質も必要。 2005 年 3 月 グローバルピッグファーム㈱
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