タマネギ(早出し・普通) 1 2 3 4 5 6 7 8 早 出 し 9 10 ○ 11 ◎ ○ 普 通 タマネギ ◎ ○ 防 除 防 除 防 収 選 出 除 草 除 草 除 穫 別 荷 苗太 床陽 準熱 備消 毒 主な作業 12 播育 苗 管 種理 ◎ ◎ 定定 植 準 備植 除 草 ている。日長と温度への感応は品種によって異なり、 ユリ科、原産地:中央アジア 作物名 タマネギ 極早生種では 11 時間以上、10 ℃以上、中晩生種で 学 名 Allium cepa L. は 13.5 時間以上、15 ℃以上で肥大が始まる。長日 作 型 早出し・普通 ・高温になるほど肥大が活発になるが、日長時間が 短くても高温であれば肥大が進むことも認められて 技 術 体 いるが、 25 ℃を超えると生育が停滞する。健全な 系 苗つくり、密植、植え痛み防止、追肥技術、病害虫 性 防除、適期収穫が栽培の要点となる。 状 中央アジア地方が原産のネギやニンニクに近いネ (1)早出し ギ科の野菜であり、ヨ-ロッパやアメリカに広まっ 品薄期の出荷をねらった早出し栽培は、超極早生 た。日本への渡来は江戸時代に長崎に伝わったが、 から極早生の品種を使い、9月上旬から9月下旬に 観賞用にとどまった。食用としては明治初期に北海 播種し、3月~4月頃に収穫する。収量が少ないの 道や大阪地方に導入されたのが最初である。細長の で、品質と鮮度を重視し、市況が高い時期に一日も 葉は、表面がろう質に覆われた扁円または円形の葉 早く出荷を行う。100 本重が 600g 程度の健苗を使 身がつながる葉鞘茎と短縮茎からなる。球は、葉鞘 い、植え傷み防止と年内における根張りが栽培の要 茎の基部が肥厚した貯蔵葉(りん茎)からなる。根 点となる。 は繊細で、地表面から 20cm ~ 30cm くらいまでに (2)普通 分布する浅根性であるが深耕した土壌では深くな 普通栽培では、中早生種や中生種等を使い9月下 る。高温と乾燥に弱く、特に幼苗期の乾燥は禁物で 旬に播種し、5月中旬から6月頃に収穫し、貯蔵し ある。排水不良土壌では品質が低下しやすいので、 ながら出荷する。 水田では暗渠排水や高畦等の対策を実施する。種子 栽培しやすく、多収で、商品性、貯蔵性が良く、 は小さく寿命が短く、自然状態では1~2年で発芽 萌芽性の遅いもので、梅雨入り前に収穫できる品種 力が低下するので低温乾燥下で貯蔵する。 を選ぶ。 1 2 作型の特徴 タマネギの秋播き春どり栽培は、地域の気象条件、 経営条件により、品種と播種期を組み合わせること 適応地域 早出し 海岸島しょ地域および水田平坦地域 普 全域 通 により、作型をいくつかに分けて栽培できる。 葉球の肥大には、日長時間と温度が大きく関係し 267 3 栽培条件 (1)温度条件 栽 培 技 術 冷涼な気候を好み、生育適温は 15 ℃~ 25 ℃で、10 ℃以下や 25 ℃以上になると生育が悪くなる。発芽 1 には 18 ℃~ 20 ℃前後、根の発育は 12 ℃~ 20 ℃が <早出し> 適する。寒さには強く- 8 ℃でも凍害は受けない。 「浜笑」 球の肥大には、10 ℃~ 15 ℃以上が必要である。 品種と特性 暖地 3 月下旬収穫の超極早生品種で、”貴錦”よ (2)土壌条件 り 10 日程度早生。草姿はやや立性、短葉でコンパ 適度の湿りをもった砂質壌土が適するが、早出し クトながら、生育は旺盛。球は、球径比 70 ~ 75 程 用の早生品種は、地温の高い砂質地の方がより早穫 度の甲高形。鱗片はジューシーで甘味があり、繊維 りが可能であり、貯蔵用の品種は、粘質地の方がし 質も少ないので生食に適する。 まりの良い玉が穫れる。土壌の水分は多いはど生育 は良くなるが、葉球の肥大期においては多湿害を受 「貴錦」 けやすく、適度の湿りと通気を保つことが大切であ 超極早生種で、 「浜育」より 2 ~ 3 週間程度早く 3 る。土壌の酸度は pH6.3 ~ 6.8 が適当とされ、石灰 月中下旬から収穫可能。形状は「浜育」に似て、球 の施用効果は大きい。 は甲高で光沢がある。食味は、鱗茎が厚く、柔らか (3)抽だい・葉球肥大の生理 で甘味がある。 葉球の肥大には、日長時間と温度が大きく関係し、 長日になるほど肥大が活発になる。日長感応は品種 「浜育」 によって異なり、球の肥大には、極早生種は日長時 極早生種で、3 月末から 5 月初めまで収穫できる。 間 11 時間以上、10 ℃以上で肥大し、中晩生種は 13.5 球は甲高でしまりも良く、肉質はきわめて良い。球 時間以上、 15 ℃以上が必要とされている。冬期の 重は 250g 以上となる。 温度が高温であれば日長時間が短くても肥大が進む ことも認められている。 「早生丸秀球E型」 花芽分化は、ある一定の大きさに生長した株が 10 極早生種で、4 月上旬に収穫できる。平均玉重 250 ~ 13 ℃以下の低温に一定期間さらされると起こる ~ 300g、青きりの早取りのほか短期貯蔵出荷もで とされており、抽だいは長日、高温条件下で促進さ きる。生育旺盛で葉は細かく立性、球形は丸に近い れる。抽だいの多少は品種により異なるが、10 g 甲高、べと病に強く作りやすく強健で収量が多い。 以上の大苗や栄養不良苗では多くなるので、100 本 重が 600g 程度の苗が適する。 <普通> 「七宝早生 7 号」 4 経営目標 中生種甲高で、5 月から収穫でき、病気に強く特 (1)収量 4.5 t/ 10 a に玉しまりが良く、多収性である。生育旺盛なため、 (2)投下労働時間 184 時間/ 10 a 早播き、肥料切れはしないようにする。 (3)所得率 35 % (4)経営規模 30 ~ 50 a 2 (家族労働力2人の場合) 268 育 苗 (1)播種期 ・超極早生 9 月上旬から ・極早生 9 月中旬から ・早生 9 月中旬から セルトレイ(324 又は 448 穴)に育苗培土を詰め、 (2)苗床の準備 高温乾燥期の育苗であるから、苗床は管理に便利 コート種子を 1 粒ずつ播種する。培土は根鉢の形成 で日当たりが良く、土は膨軟で排水が良く、病害虫 を促進するため、しっかり充鎮する。覆土した後、 の心配のないところを選ぶ。苗床面積は本圃 10 a 根切りシートをしいた育苗床に並べ、重しを掛けて 当たり約 20 坪(0.7a)準備する。畦幅 145 ~ 150 セルトレイと育苗床を密着させる。十分潅水した後、 ㎝、畦高 15 ㎝、畦面 90 ~ 100 ㎝を目安とする。 不織布資材と反射シートを被覆する。発芽を確認し 苗立枯れ病・雑草防止のため土壌消毒を実施す たら不織布と反射シートを除去し、トレイの乾燥を る。太陽熱を利用した育苗 7 月下旬~ 8 月初めまで 防ぐため粉砕した籾殻くん炭をトレイ上面に散布す には、太陽熱を利用した育苗床消毒を行う場合は、7 る。 月下旬~ 8 月初めに開始し、期間は 9 月上旬~中旬 (5)発芽後の管理 までの 35 日~ 45 日を目安にする。できるだけ深く <地床育苗> 細かく耕起し、施肥は基準どおりとする。畦をたて 1週間くらいで発芽が揃ってくる。発芽直後から て透明マルチを張る。この場合土壌水分がある程度 本葉2枚頃までは、乾燥に弱いため潅水を行うが、 必要なので、乾燥している場合は、マルチを張る前 過湿にならないように注意する。肥料が不足するよ に十分潅水するか、また、マルチ張り後に通路に潅 うであれば、潅水を兼ねて追肥 400 ~ 500 倍液を施 水する。 す。 <全自動移植機用セル苗> 育苗床施肥量 培土量が少なく、乾燥しやすいのでこまめに潅水 約 20 坪当り(本圃 10 a分の育苗面積)当たり する。茎葉が倒状しないように播種後 14 日後頃に 完熟堆肥 200 ㎏ 石灰窒素 5㎏ BM苦土重焼リン 3㎏ PK化成 3㎏ 苦土石灰 8㎏ 第 1 回目の葉切りを実施する。以降 10 ~ 14 日おき に葉切りを実施する。 苗の充実を促進するために、葉切りを実施した後 は追肥を行う。 根鉢の形成を促進するために、移植前 14 日頃に セルトレイをずらして根切りを行う。 育苗日数は 60 日以上とし、移植糖度を高めるた (3)播種量 め根鉢がしっかり形成されていることを確認し定植 種子は 10 a当たり 4 å(2 缶) する。 (4)播種 (6)苗床の病害虫防除 <地床育苗> 苗立枯れ病は、過湿にならないように注意し、べ 播種日にマルチ除去後、畦を鎮圧して播種する。 と柄、白色疫病などや害虫は防除を徹底する。 苗床の表土は、微細に砕土し凹凸のないように均平 にならし、平床に仕上げる。 3 播き溝の深さを一定にし、条間約 8 ~ 9cm で条 本圃の管理 (1)整地 播きまたはシーダーテープで播種する。播き終えた 本圃は、排水の良いところを選び、深耕し土壌p ら約 1cm 程度覆土する。その上に寒冷紗を被覆し、 Hに合わせて、石灰質資材を全面散布して土と良く その上から十分潅水を行う。 混ぜ合わせておく。 <全自動移植機用セル苗> 269 (2)施肥量 20 ㎝ <早出し> N 30 ㎝ 20 ㎝ (kg / 10 a) P2O5 K2O 基肥 12 25 追肥 6 0 合計 18 25 備 考 90 ㎝ 12 追肥は緩効性肥料を 12 6 月、 2 月を目安とし、 18 草勢により施肥量を変 140 ~ 150 ㎝ 図-1 畦の作り方・植え付け例(4 条植え) える。 (5)苗取り 苗取りは定植当日に行い、病苗を除き、根はでき <普通> るだけ多くつけて、ていねいに掘り取る。苗が不揃 (kg / 10 a) N P2O5 K2O 基肥 12 25 追肥 8 0 合計 12 25 備 考 いだと定植後の生育にムラが生じ管理しにくくなる 12 追肥は緩効性肥料を 1 8 月、 3 月を目安とし、 20 草勢により施肥量を変 える。 ので、苗は大きさ別に分けて抜き取り、植え付ける。 理想的な苗は、太さ 6 ~ 8 ㎜、草丈 25 ㎝、100 本 重 600 g程度の苗がよい。 (6)植え付け 型付機により植え穴を開けるが、深植えにならな マルチ栽培では、全量基肥とし、緩効性肥料を主 いように注意する。深さは 3 ~ 4cm、葉の分かれ目 体に施用する。畦内施肥成形マルチ機を利用して、 より浅くし、根が地表に露出しないように丁寧に植 肥効調節型肥料を施要する場合は、 30 %減肥して える。根部を押さえて、土と根を密着させる。植え もよい。無マルチ栽培では、生育を見ながら以下の 付け後は、直ちに潅水を行う。 時期に槌比する。 第 1 回追肥 12 月 第 2 回追肥 1~2月 第 1 回追肥 12 月 第 2 回追肥 3月 早出し 普通 (3)施肥の注意点 基肥は、定植10目前に施す。 早生タマネギの、無マルチ栽培は、年内の生育を 促進させるため、肥料切れが生じないように追肥も 図-2 良い苗 早めに施す。リン酸吸収係数の高い土壌は、P2O5 を 10 a当り 30kg 施肥する。止め肥の時期は、外葉 が伸び始める頃、収穫 60 日前を目安とする。埴土 は早く、砂壌土は収穫 50 日前くらいとなる。 (4)畦つくり及び栽植密度 南北方向の畦に、条間 20cm、株間 10cm、4条植、10 a当り、27,000 本以上確保を目安に植え付ける。 地下水位が高く排水の悪い水田等では高畦( 20 ㎝以上)を排水の良い畑等では低畦(10 ~ 15 ㎝) でもよい。 270 図-3 植え付け深さ (7)定植後の管理 活看後、生育期間に乾燥がつづく時は、潅水を行 う。除草剤は植え付け後、散布する。 マルチ栽培の場合は、植え穴の除草については、 年内に早期に抜き取るようにして、苗が大きくなり 植え穴をふさぐまでには終わるようにする。 (8)本圃の病害虫防除 べと病、白色疫病、ボトリチス菌による葉枯れ病、 軟腐病等の防除を徹底する。 写真 4 収 収穫間近の葉球 穫 早出しの場合は、茎葉が 60 ~ 80 %程度倒伏した 頃、葉が緑色のうちに収穫する。球の肥大したもの から順次抜き取り、半日から1日風乾してから、土 を落として根を切り、首の部分を 1.5 ~ 2cm つけて 出荷する。貯蔵用の場合は、茎葉が 60 ~ 80 %程度 倒伏した頃に収穫する。収穫は晴天続きの日を選ん で、午前中に抜き取り、球を反転して光線にあて、 十分乾操させて収納する。 写真 収穫作業 271
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