【初めに】 最近、道内で局所的に 問題になっている害虫 がいます。菜豆の貯穀 害虫、インゲンマメゾウ ムシです。南米原産の、 世界中に広がっている 害虫です。日本では 1951 年に沖縄で発見されたのが 初記録。現在では沖縄の被害報告はありませんが、 1991 年以降、道内での被害報告が相次いでいます。 だいたい「自宅に置いてあった豆から虫が出た!」とい う事例で、自家菜園で収穫した豆に偶発的に発生して いると考えられてきました。ところが、ここ数年、経済栽 培下の豆からの被害報告が続き、どうも圃場での被害 が発生しているらしいとの事から、試験場をはじめとした 各機関が対策を検討しています。 【インゲンマメゾウムシの外見と生態】 インゲンマメゾウムシは体 長 3~4 ㎜の小さな甲虫 です。「ゾウムシ」と名前が ついていますが、正しくは 「マメゾウムシ科」の昆虫で、 ハムシの仲間とされてい ます。成虫の体色は黒ですが、翅の表面に毛が生えて いるため、灰色っぽく見えます。卵は乳白色の 1 ㎜弱の 長楕円形で、豆の隙間にまとめて産み落とされます(白 いゴミのように見えます)。孵化した幼虫は、乾燥子実に 食入し、豆内部で幼虫~蛹期間を過ごし、羽化後に豆 表面に丸い穴を開けて脱出します。幼虫は集中する傾 向があるので、1 つの豆から複数の成虫が脱出する事 が普通です。餌となる豆は、インゲンの他、リママメ、サ サゲ、緑豆が知られており、まれにソラマメ、小豆、大豆 も食害します。発育零点は 11~13℃あたりと考えられ、 20℃で約 2 か月、25℃で 1 か月強、30℃で 1 か月弱 の期間で 1 世代を経過します。 【被害】 豆に脱出口の穴が開く ため、商品価値が無くな ります。また、被害豆・ 虫の混入により製品の 汚染がおきます。カビな ども生えやすくなります。 【北海道におけるインゲンマメゾウムシ】 試験場等の調査の結果、わかってきた事は、 ・圃場での寄生が確かに発生している。 -1- ・被害は、市街地に近い圃場でのみ発生している。 ・但し、今のところ圃場での寄生はごく少ない。 という事です。また、北海道における生活サイクルは、 図のように予想されていますが、成虫の過ごし方など、 良くわかっていない部分もあります。 【防除法など】 外国での被害報告を調べても、圃場での被害はごく少 なく、収穫してから増殖し、被害が拡大するのが一般的 なようです。外国の文献によると、常発地帯でも初期被 害は2~5%程度との事です。収穫直前の殺虫剤散布に よる防除も行われているようですが、防除タイミングは 短い期間に限られているようです。北海道では、試験場 が収穫前の散布による技術確立を目指しており、現在、 農薬メーカーも農薬登録に動いています。ただし、それ が日の目を見るのは少し先の話になりますので、現状で できる事を挙げておきます。インゲンマメゾウムシ被害 は、子実内での増殖を抑える事が重要なので、乾燥子 実を暖かい所(室温程度)に置かない事が一番簡単な 方法です。具体的には、-15~-20℃に 12 時間以上、 または 55℃に 3~4 時間置くと、被害粒からの成虫の 脱出は無くなります。試験場の調査でも、0℃で 1 か月 以上貯蔵した被害粒からの成虫脱出は無かったそうで す。これらは、子実内で幼虫が死滅したと考えられます。 また、発育零点が 11~13℃なので、家庭用冷蔵庫程 度の温度でも、少なくとも成長・増殖はしないと考えられ ます。最後に、自家用豆に対して、アメリカの農家さん が行っている貯蔵法を紹介します。灰や黒胡椒を豆に 対して 20%程度混ぜておくと被害が無いそうです。また、 食用油やラベンダー精油を 5ml/㎏混ぜるのも良いそう ですが、後が大変そうですね。さらに、インゲンマメゾウ ムシは振動があると産卵しないそうなので、豆を揺すっ ていれば被害はでないという報告もありました。 いずれにしても一次被害粒から増殖させないため、海 外のみなさんも色々工夫されているようです。 (かくれメタラー) (2012年9月)
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