「法律家の仕事は面白いか?」

法務研究科(法科大学院)主催
講演会
「法律家の仕事は面白いか?」
日時:4月17日(水) 4限(15:05~16:35)
場所:17号館3階17309教室
対象:法学部の新入生及び2~4年生の皆さん
他学部の学生の皆さんも歓迎
講師
木谷
明
元東京高裁部総括判事
経
歴:昭和12年生まれ。
昭和36年東京大学法学部卒業
昭和38年判事補任官(東京地裁)
東京地裁判事、名古屋地裁判事、最高裁調査官、水戸地裁所長を経て、
平成11年東京高裁部総括判事、平成12年5月退官
公証人、法政大学教授(平成16年~24年)を経て、現在弁護士
主要著書:『刑事裁判の心』(平成16年)、 『事実認定の適正化』(平成17年)、
『刑事事実認定の基本問題』(平成20年)
◇講演会の趣旨
今日、法曹人気は芳しくありません。法科大学院制度が、期待通りに機能していない
ことが原因の一つとされています。では、法律家の仕事は魅力を失ってしまったのでし
ょうか・・・?
皆さんは、法律家の仕事がどのようなものであるか、知っていますか? 例えば、民
間企業に就職する場合と比較して、専門職に就くことには、どんなメリットがあるか考
えてみたことはありますか? 企業への就職が決してバラ色ではないことは、皆さんご
承知の通りです。連日の残業、「使い捨て」さらには「過労死」などの言葉もよく耳に
します。どんな職業にも、厳しい面があることは知っておかなければなりません。
将来の職業を考えている皆さんにとって、いま必要ななことは、周りに流されること
なく、自分にとって本当に「面白い」「やり甲斐がある」と思える仕事を、いろいろな
機会を利用して、探し出していくことなのだと思います。
今回の講演会は、法律家の仕事がどのようなものであるかを、多くの人に知ってもら
うために、専門職大学院である法務研究科の立場から企画したものです。とくに、法律
の知識を要する講演ではありません。講師をお願いした木谷先生は、現在弁護士をなさ
っていますが、プロの刑事裁判官として素晴らしい仕事を残され、法科大学院でも豊富
な指導経験をお持ちの方です。先生のお人柄とご経験から、興味深い話が期待できるで
しょう。多数の皆さんのご来場をお待ちしています。
◇法学部の方は、六法をご持参下さい(他学部の方は、なしで構いません)。
◇法律家は、刑事事件にどう関わるか
あっ事件が起こった!
なりすまし脅迫メール事件とか、ねこ男事件と呼ばれている事件を知っていますか?当初、
3人の男性が犯人だと疑われて起訴されたり、家庭裁判所で保護処分の決定を受けたりしま
した。その後、この3人については無実が明らかになりましたが、次にIT関係の会社員が
「本当の犯人」だとして逮捕されました。ねこの首に証拠となるファイルをつけたという告
知が警察にあり、ねこは江ノ島で発見されました。ねことこの会社員との関係について警察
は大ありだとしましたが、敏腕の弁護士は、この人物も真犯人ではないと断言しました。真
相はどうか?この点が気がかりですが、同時に、逮捕された人が真犯人ではなかったら、ど
うなるのか?これもたいへん気になります。
刑事事件にかかわる人たち?
このような刑事事件には、起訴する検察官、弁護する弁護士、裁判をする裁判官など法律家
がかかわっています。国民も参加する裁判員裁判がはじまって4年目になります。刑事裁判官
は、その意味で、裁判員のパートナーです。検察官も弁護人も裁判員を意識せざるを得ないは
ずです。そういう法律家の仕事は、どういう魅力があるのでしょうか?
法律家の仕事は?
そこで、わかりやすい話を、専門家に聞きたいですね。
木谷明先生は、一押しの専門家です。現在は弁護士の仕事をしていますが、刑事裁判官とし
て37年間、数々の刑事裁判を通して、社会を見てこられました。また、法科大学院でも教え
られた経験があり、数多くの講演も精力的こなされています。
法律家が社会でどういう役割を果たすのか、その可能性はどんなものか、など、質問も出し
て、いろいろ聞いてみましょう。
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◇「法律学は面白いか」(木谷氏・講演記録『事実認定の適正化』所収)
「私自身は、大学時代に法律の勉強がどうしても好きになれなかったのですが、結局
裁判官になってしまいました。・・・。最終的には、裁判特に刑事裁判が面白くて仕方が
なくなったという経験をもっています。」
「皆さんに法律学の独特の性質(特質)をよく理解して法律を好きになっていただく必要
があると思います。また、将来法曹になった場合に、どういう点が人間として重要な資質
であるのかという点も理解しておいていただいた方がいいと思います。」
◇「刑事裁判の心」とは(映画監督 周防正行氏・談)
周防監督は、映画『それでもボクはやってない』のシナリオ執筆に苦しんでいたとき、木谷氏の著書
『刑事裁判の心』と偶然に出会った。そのときの感動を次のように語っている。
「その本は、そのタイトル通り、私に『刑事裁判の心』を伝えてくれた。それまでの
取材で得た様々なエピソードや裁判官、検察官、弁護士の考え方など、
自分の中で整理がつかなかった問題が、『刑事裁判の心』をよりどころと
して一つの世界を見せてくれるようになったのだ。」
「この本との出会いがなければ、全く違う映画になったかもしれないと思え
るほどに、その本は私に様々なことを教えてくれた。」