近畿大医誌(M ed J Kinki Univ)第34巻3号 17A 2009 17A 1. 脳特異的 DISC1 結合タンパク質 DBZ はオリゴデンドロサイトの 化を 促進する発表内容 清 水 尚 子 宮 田 信 吾 近畿大学 東洋医学研究所 田 中 貴 士 子脳科学研究部門 統合失調症は人口の1%に見られ,思春期から青 年期にかけて発症する慢性化しやすい精神疾患であ る.妄想,幻覚や統制を欠いた行動等の陽性症状と, 会話・思 内容の 困化や社会的ひきこもり等の陰 性症状に大別される重大な精神症状が見られる. DISC1 遺伝子はスコットランドの精神疾患多発 家系を対象とした遺伝学的研究により発見された染 色体転座の部位にコードされる遺伝子である.この 遺伝子が転座により 断されることで DISC1 タン パク質の異常を引き起こし,精神疾患発症のリスク を高めると えられている.その 子機序として, DISC1 遺伝子の転座により 断される部位に結合 する 子が存在し,その因子の DISC1 との結合不全 が DISC1 の機能不全を誘導し,脳の発達障害が生じ るのではないかと え,我々は DISC1 の転座部位に 結合する 子の探索を行った.その結果,結合タン パク質として DBZ(DISC1-binding Zinc finger protein)と名付けた新規因子を同定した. 近年, ニューロンの軸索の周りに存在する髄 (ミ エリン)を形成するオリゴデンドロサイトの 化異 武 田 近畿大学 卓 遠 山 正 彌 東洋医学研究所 女性医学部門 常を示すことが知られている Olig1 KO マウスのマ イクロアレイ解析から,オリゴデンドロサイトの成 熟化に関わる数多くの遺伝子とともに DBZ の発現 が低下していることが報告された. さらに,統合失調症患者死後脳の研究でオリゴデ ンドロサイトに発現する因子の発現が低下している ことや,オリゴデンドロサイトの細胞数の減少,配 置異常,ミエリンの形成異常が見出されていること からオリゴデンドロサイトの機能異常が精神疾患発 症に少なからぬ影響を及ぼすのではないかと えら れている. これらのことから統合失調症発症の 子メカニズ ムの解明するために,機能解析がほとんど行われて こなかった DBZ の機能解析をオリゴデンドロサイ トで行った.その結果,DBZ は確かにオリゴデンド ロサイトに発現しており,生後ミエリン形成のピー ク時である生後14日に発現が一過的に増加してい た.また DBZ KO マウスの検討で,生後10日におい てミエリン形成が著しく低下していることを明らか とした. 2. 上皮間葉転換における新たな 子マーカーの可能性 村 上 哲 平 西 村 俊 司 赤 木 將 男 整形外科 背景 各組織を CADM 1#4 抗体 用し免疫染色を施行し, 上皮間葉転換(EM T)は癌の浸潤や転移に深く関 与していることが以前より知られている.当院病理 腫瘍組織内で sarcomatoid change をきたしている 部位に一致して2例陽性,2例陰性であった.組織 部との共同研究において細胞接着 子である cell 形態学的特徴として CADM1 陽性の組織では骨芽 adhesion molecule 1(CADM 1)が骨肉腫細胞株に 強発現していることが明らかとなった.このことよ 細胞様の細胞骨格変化を伴っていた.CADM1 陽性 組織では骨形成マーカーである ALP や Osterix の り CADM 1は osteoblastic な 子マーカーの側面 を持っている可能性が指摘されている.本研究では 免疫染色においても CADM1 と同一部位で陽性と 上 皮 間 葉 転 換 に お け る CADM 1 の 発 現 の 有 無 と なった. 察 osteoblastic maturation の関連性について検索し, EMT の新たな 子マーカーとなり得るかを検討し EMT にはカドヘリンなどの接着 子が代表とさ れているが,本研究で癌組織の EMT に CADM1 お た. よび骨形成マーカーの発現が認められ,新たなマー 方法と結果 カーとなりうる可能性かある.今後,癌腫や症例数 当院にて2008年から2013年まで手術を行った腎細 胞癌で EMT により sarcomatoid change を認める 4例のパラフィン包埋切片を 用し実験を行った. を増やし悪性度や予後との相関性について検討して いく予定である.
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