19 dBZについての統計量を用いた雪雲の種類の判別分析 ○中井専人(防災科研・雪氷) 1.はじめに 冬季、日本海で発達して日本列島に上陸する雪雲はほとんどが積雲対流によって発達し、複数の対 流セルがかたまって10km規模の構造を持つことが多い(降水系という)。しかし、長時間、広範囲に 出現し続けるため、1回の寒気の吹き出しの中でどのような構造がどれくらい現れたか見積もった例 はほとんどない。Nakai et al. (2005)は、長岡における一冬季のレーダー観測による高度1500mの等価 反射強度因子のdB値(dBZ)をもとに、降水系を6種類に分類し、その出現比率を求めた。この分類は 最初の定義ということもあり人間の目による判別であったが、このような分類を継続して行うために は客観的なパラメーターによる自動化が必要である。 2.方法 本報告では、自動判別の最初の試みとして、 dBZ分布パターン (texture)の統計的な特徴量(feature)を用いた判別分析を降雪の分類に 適用した。入力には Cartesian座 標系の高度 1500m面 上の dBZを使用 し、処理する領域(S)はレーダー電波遮蔽のない南西象限~北西象限 の 50km× 70km(水平分解能 1km)にした。この Sに対して1次統計量 ( dBZの分散、歪度、尖度)、及び2次統計量である差分統計量( dBZ 差 の 平 均 、コ ントラ スト 、角 度別 2次モ ーメ ント、 情報エ ン トロ ピー、それぞれについて4方向の16種)を求めた。降水系のスケール を考慮して、比較する格子は縦または横方向に 10格子離れたものと した。これら19種の特徴量について、判別分析を行った。 3.結果 使用したデータは、2008年 2月12-18日の7日間の連続観測による 高度 1500mの dBZデータのうち、目視で降水系分類を行った 818個で ある。この期間中には5種類の降水系しか現れなかったので、分類は 5種類に対して行った。判別分析と目視判別を比較すると(表1)、5 図1 観測された降雪パター ン の 例 。 太 線 の □ が S。 種類の降水系に対して、トータルの判別的中率は73.0%であった。降水系別に見ると、L(Lモード筋 雲)とD(停滞性不連続線)の正答率が高く、V(渦状)とM(山岳上停滞)の誤判定が多い。これらの中 には、目視判別はある程度の機関をまとめて判別、判別分析では各組のデータを独立に判別という解 析法によるものもあるが、継続的に異なる判別結果となっている期間もあった。今後、サンプルデー タ数を増やして改良をしていく必要がある。 Nakai, S., K. Iwanami, R. Misumi, S.-G. Park and T. Kobayashi, 2005: A classification of snow clouds by Doppler radar observations at Nagaoka, Japan. Sci. Online Lett. Atmos., 1, 161-164. 表1 判別分析と目視観 測の比較。行が目 視観測、列が判別 分析結果を表す。 分類はNakai, et al. (2005)を参照。 © 2009 (社)日本雪氷学会
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