英 語 - 生物科学専攻

平
成
14
年
度
入
学
試
験
問
題
生物化学専攻
英
語
[注意事項]
1.
試験開始の合図があるまで、この問題冊子をひらいてはならない。この冊子は、表紙
および草稿用紙1枚を含めて計4頁からなる。
2.
解答には、必ず黒色鉛筆(または黒色シャープペンシル)を使用すること。
3.
問題は全部で2問ある。その2問全てに解答せよ。
4.
答案用紙は、各問につき1枚、合計2枚配布してあるから、確実に配布されているこ
とを確かめること。
5.
各答案用紙の所定欄に、科目名(英語)・問題番号・受験番号および氏名を必ず記入
すること。
6.
解答は、各問ごとに所定の答案用紙を使用すること。
7.
答案用紙は、採点の際、点線で切り取られるので、裏面も使用する場合には、点線の
上部を使用しないこと。
8.
答案用紙には、解答に関係ない文字、記号、符号などを記入してはならない。
9.
解答できない場合でも、答案用紙に科目名・問題番号・受験番号及び氏名を記入して
提出すること。
10.
答案用紙を草稿用紙に絶対使用しないこと。(草稿用紙は問題より後ろの頁にある。
また問題冊子の余白は自由に使ってよい。)
この問題冊子は試験終了後に回収します。以下の欄に受験番号と氏名を記入しておくこと。
受験番号
氏 名
E-1
[第1問]
次の文章はJohn D Potterによる論文 (Nature Reviews Genetics 2, 142-147 (2001)) の前半
部分の抜粋である。以下の設問(1)∼(4)に、この文に即して答えよ。
Epidemiology is the population-based study of disease patterns and their determinants. It is
mostly an observational science (like astronomy, palaeontology and evolutionary biology),
and so is distinguishable from experimental sciences; it involves the study of people with and
without disease (unlike most clinical research); and the primary measures of comparison
involve calculations of risks (probability of disease given exposure) and rates (frequency of
disease per unit of population per unit time). The most common of these measures is the rate
(or risk) ratio (also called the relative risk) - the rate of disease in the exposed (the numerator)
divided by the rate of disease in the unexposed (the denominator).
Because epidemiology is an observational science, those being studied are not
allocated to exposed and unexposed conditions by the researcher. So, other characteristics
can correlate with the exposure of interest by chance or by choice. Furthermore, because
free-living people make choices about participating in studies, the groups being studied
(exposed versus unexposed; those with and without disease) might or might not be
comparable with the population about whom inferences are made; that is, there might be bias.
These problems are not insurmountable but require careful attention to study design and
analysis; their solutions are central to good epidemiological practice.
--------------------(省略)-------------------Given the markedly different training of epidemiologists and geneticists, it is not
surprising that different terms exist for the same concepts. For instance, ‘association
studies’ (genetics) and ‘case-control studies’ (epidemiology) embody the same design
concepts - people with and without the phenotype of interest are compared on the basis of
their exposure (epidemiology) or genotype (both genetics and epidemiology).
Conversely, there are some concepts that are poorly understood and the associated
terms tend to be misused, in both discussion and print. For instance, in epidemiology,
‘confounding’ has a specific meaning with both conceptual and mathematical definitions.
As a concept born out of the nature of observational science, it addresses a problem inherent
in seeking causal interpretations: that of mistaking potential causes with factors that are
associated both with a real causal factor and the disease itself. The most obvious example of
a confounder is age: an association might be found between age and cancer simply because
the patterns of exposure in a population have changed over time or because older people have
been exposed for longer.
It is possible to identify confounding in a study by noting a change of a prespecified
size (usually 10%) in the risk ratio, following the addition of another variable to the analysis.
For example, a risk ratio for vegetable consumption in relation to lung cancer is 0.3 (about a
threefold reduction in risk) but, after inclusion of smoking in the analysis, becomes 0.5 (a
halving of risk). So although the consumption of fruit and vegetables is associated with a
reduced risk, the reduction is not as great as threefold. This change in estimate results
because smokers consume fewer vegetables than non-smokers: the relationship between
vegetables and lung cancer is confounded by smoking.
Thus, confounding is a
well-specified and useful concept, and its control is essential for good design and analysis.
The word, however, is regularly used by non-epidemiologists to mean “other variables that
are difficult to understand, measure, or explain”.
E-2
〈設問〉
(1)epidemiology(疫学)とはどのような学問か日本語で答えなさい。
(2)epidemiology の研究に際して潜在的に注意を要するのはどのような点か、日本
語で答えなさい。
(3)epidemiology において使われる用語 ‘confounding’ とは何を表すものか、例を
交えて日本語で答えなさい。
(4)下線部を和訳しなさい。
[第2問]
以下の設問(1)および(2)に答えよ。
(1)次の文章の下線部 (A) および (B) の内容を、それぞれ英訳せよ。
例えば、次のような単純な問いはどうだろう。 「(A)あなたはミトコンドリアを何
色だと思いますか?」
大学の学生にこの質問をぶつけてみると、案外「緑色」という答が多く返ってくる。
(中略)さて、これは正しいだろうか。実はミトコンドリアの色は状況によって変化
する。ミトコンドリアには銅の成分を含んだシトクロムc酸化酵素という酵素があり、
この酵素は黒ずんだ緑色である。細胞を破壊して分離された肝ミトコンドリアは、こ
の酵素によってくすんだ緑色に見える。映画で描かれたような鮮やかな緑ではない。
ただし、生きた細胞の中のミトコンドリアは緑ではなく赤茶色である。これはミトコ
ンドリアに大量の鉄成分が含まれているためだ。鉄は酸素が結合すると赤錆になる。
(B)血液のヘモグロビンが鉄成分によって赤く見えるのと同じ理由だ。
[瀬名秀明、太田成男「ミトコンドリアと生きる」(角川書店)より]
(2) 博士課程最終学年のあなたは、ボストンのある研究者のラボを留学先の一つ
の候補として考えている。CV, reprints, reference letters を添付して、ボスドクとして
の採用の可能性についてメイルで問い合わせたところ、初めてのやりとりであるに
も関わらず、好意的なレスポンスがあった。ちょうど、来週 9 月 4 日(火)から金
曜までボストン近くで開かれるミーティングでポスター発表をすることになってい
たので、この機会にこの研究室を訪問してみたい。ミーティング途中の抜け出しは
難しいし、発表時間(未定)とぶつかるかもしれないので、あまりしたくない。も
ちろん、あまり長く自分のベンチから離れているわけにも行かない。この機会に、
自分の大学院での研究成果について、もしセミナーをさせてもらえればありがたい、
あなたはそうも考えている。
先方の研究者に、訪問の希望を述べ、訪問の日程について相談するメイルを作成
せよ。100 ワード以内で。
E-3
草稿用紙
(切り離さないで用いること)
E-4
平
成
14
年
度
入
学
試
験
問
題
生物化学専攻 専門科目
問 題 群 I
[注意事項]
1.
試験開始の合図があるまで、この問題冊子をひらいてはならない。この冊子は、表紙
および草稿用紙1枚を含めて計6頁からなる。
2.
解答には、必ず黒色鉛筆(または黒色シャープペンシル)を使用すること。
[以下、特に重要]
3.
問題は全部で3問ある。そのうちから2問を選んで解答せよ。3問全てに解答した場
合にはその全てが無効となる。
4.
答案用紙は、各問につき1枚、合計2枚配布してあるから、確実に配布されているこ
とを確かめること。
5.
各答案用紙の所定欄に、科目名(「問題群I」)・問題番号(1∼3,物理・化学・
生物化学に対応)・受験番号および氏名を必ず記入すること。
6.
解答は、各問ごとに所定の答案用紙を使用すること。
7.
答案用紙は、採点の際、点線で切り取られるので、裏面も使用する場合には、点線の
上部を使用しないこと。
8.
答案用紙には、解答に関係ない文字、記号、符号などを記入してはならない。
9.
解答できない場合でも、答案用紙に科目名・問題番号・受験番号及び氏名を記入して
提出すること。
10.
答案用紙を草稿用紙に絶対使用しないこと。(草稿用紙は問題より後ろの頁にある。
また問題冊子の余白は自由に使ってよい。)
この問題冊子は試験終了後に回収します。以下の欄に受験番号と氏名を記入しておくこと。
受験番号
氏 名
I-1
[第1問]物理
地球上から打ち上げられた人工衛星に関する、以下の問題(1)∼(3)に
答えよ。
(1)球の中心から、鉛直にRの高さまで、ロケットを打ち上げ、そこで姿勢制御
をして、水平方向にv0の速度を与える。この場合、それが、人工衛星とし
て運用するための、v0 の範囲を求めよ。ただし、地球を半径Reの球とし、
重力加速度をgとして表せ。
(2)このようにして打ち上げられた人工衛星の重心が地球の中心から距離 R と
なる円軌道上を運動するようにする。ある時点で、ロケットを逆噴射して、
速度を落とし、地球の反対側に着陸させるためには、どれだけの速度に落
とせばよいか。
(3)また、この円軌道上で、この人工衛星が、地球の表面に対して常に同じ向
き(姿勢が一定)になるように制御したい。ただし、この人工衛星は、半
径 a、質量 m の二つの球を、長さが L で質量を無視できる棒で連結したよ
うな亜鈴型人工衛星とする。さらに、地球の方向に対する人工衛星の向き
は、角度φで計るものとする(図)。φの値と、その安定性について議論
せよ。また、安定な平衡位置におけるφの微小振動の振動数を求めよ。
I-2
図
I-3
[第2問]化学
以下の設問(1)∼(5)に答えよ。
(1)下の化合物 (A) ∼ (C) を塩基性の強い順に並べ、その理由を述べよ。
(A) メチルアミン CH3NH2
(B) アニリン C6H5-NH2 (C6H5- はフェニル基)
(C) ベンジルアミン C6H5-CH2-NH2 (C6H5- はフェニル基)
(2)バターやラードのような動物性の油脂が常温で固体であるのに比べ、植物性の
油脂は液体であるものが多い。それはなぜか。簡潔に記述せよ。
(3)気体 X2 と Y2 は次の反応により気体 XY を生じるが、同時にこの逆反応も
おこる。
X2 + Y2 → 2XY(正反応)、 X2 + Y2 ← 2XY(逆反応)
また、正反応(速度定数は k1)、逆反応(速度定数は k2)はともに2次反
応であるという。この反応が平衡に達したときの平衡定数 K を求めよ。
(4)電離度が 1 に比べて極めて小さい弱酸 AH と強塩基 BOH から生じる塩 AB が
ある。1 モルの AB を水にとかして 1L になるようにした。AH の電離定数・解
離指数をそれぞれ Ka、pKa、さらに水のイオン積を Kw として、上記 AB の 1M
水溶液の pH を求める式を導け。
(5)25℃における 1M酢酸ナトリウム水溶液のpHを求めよ。ただし、酢酸のpKaは
4.76、25℃における水のイオン積Kwは 10-14mol2L-2である。(4)で求めた式
を利用してよい。
I-4
[第3問]生物化学
遺伝子に関する次の文を読み、問題(1)∼(4)に答えよ。
ヒトゲノムの全容が明らかになってきた。遺伝情報は 46 本の染色体上(a)にある半数
体あたり約3×109塩基対に担われ、遺伝子の総数は約3万個と推測されている。
しかしながら、実際に合成されるタンパク質の種類は遺伝子の数より多いと考えられ
ている。(b) 進化の過程で遺伝子の種類は増加してきたが、機能を失った遺伝子(c)も
ゲノム上に存在している。
<問題>
(1) 下線部(a)について。パン酵母をモデルに解析された結果、染色体として機
能するのに3つのエレメントが必要であることが実験により明らかにされた。
これらは何か。また、それぞれのエレメントの機能を簡単に説明せよ。
(2) 下線部(b)について。一つの遺伝子は通常、一つのタンパク質あるいは RNA
をコードしている。しかしながら、一つの遺伝子が複数のタンパク質をコード
する例も多数知られている。これには、遺伝子発現における様々な段階で見ら
れる現象が関与しているが、これらのうち、転写された後に RNA のレベルで
起こる現象を 2 つ挙げ、簡単に説明せよ。
(3) 一方、全く同じ産物をコードする遺伝子がゲノム上に多数存在するものも知
られている。例を1つ挙げよ。なぜその遺伝子が多数存在するのかを推測し簡
単に説明せよ。
(4) 下線部(c)について。これらは偽遺伝子(pseudogene)と呼ばれる。偽遺伝
子が形成される過程にはいくつか考えられるが、そのうち2つの例を挙げ、簡
単に説明せよ。
I-5
草稿用紙
(切り離さないで用いること)
I-6
平
成
14
年
度
入
学
試
験
問
題
生物化学専攻 専門科目
問 題 群 II
[注意事項]
1.
試験開始の合図があるまで、この問題冊子をひらいてはならない。この冊子は、表紙
および草稿用紙1枚を含めて計8頁からなる。
2.
解答には、必ず黒色鉛筆(または黒色シャープペンシル)を使用すること。
3.
問題は全部で3問ある。その3問全てに解答せよ。
4.
答案用紙は、各問につき1枚、合計3枚配布してあるから、確実に配布されているこ
とを確かめること。
5.
各答案用紙の所定欄に、科目名(問題群 II)・問題番号・受験番号および氏名を必ず
記入すること。
6.
解答は、各問ごとに所定の答案用紙を使用すること。
7.
答案用紙は、採点の際、点線で切り取られるので、裏面も使用する場合には、点線の
上部を使用しないこと。
8.
答案用紙には、解答に関係ない文字、記号、符号などを記入してはならない。
9.
解答できない場合でも、答案用紙に科目名・問題番号・受験番号及び氏名を記入して
提出すること。
10.
答案用紙を草稿用紙に絶対使用しないこと。(草稿用紙は問題より後ろの頁にある。
また問題冊子の余白は自由に使ってよい。)
この問題冊子は試験終了後に回収します。以下の欄に受験番号と氏名を記入しておくこと。
受験番号
氏 名
II-1
[第1問]
酵素反応に関する次の文を読み、問題(1)∼(6)に答えよ。
cyclic guanosine 3',5'-monophosphate(以下 cGMP と略)を加水分解する酵素である
cGMP-phosphodiesterase(以下 cGMP-PDE と略)は、次の反応を触媒する。
cGMP− +
5'-GMP2− +
H2O
H+
いま適正な条件を設定し、この酵素の活性をpHメーターを用いて測定しようとした。
まず 2 種類の異なる細胞からcGMP-PDEを精製し、それぞれを、1mM MgCl2を含む低
濃度のTris-HCl緩衝液(pH 8.0)に溶解した。以下、この2種類のcGMP-PDE溶液をA
とBと呼ぶが、下図のグラフaとbは、それぞれ溶液AとBを 30℃に保ちながら、それら
のpHを連続測定し、横軸の時間 0(分)の時点で終濃度 1mMとなるようにcGMPを添
加した場合のpH変化の経時記録である(溶液AとBいずれもcGMP添加後の溶液量は
10ml)。図のpH変化を見ると、いずれの場合も反応開始 2 分後ぐらいから単位時間あ
たりのpH変化量が低下しているが、6 分後にもう一度、終濃度 1mMとなるようにcGMP
を 添 加 す る と 溶 液 Aで は 再 び 急 激 な pH変 化 が 観 察 さ れ た 。 な お 、 溶 液 A と Bの
cGMP-PDE活性は、いずれも 5'-GMPに影響されないと仮定し、cGMPの添加に伴う反
応溶液の体積変化は無視できるほど小さいものとする。
II-2
<問題>
(1)この実験では、なぜ低い濃度の緩衝液(Tris-HCl)を使ったと考えられるか、
その理由を考察せよ。
(2)図のpH変化から酵素反応速度を推定する場合、反応で生成するH+量(濃度)
とpHとの間に近似的に比例関係が成立していることを示さなくてはいけない。
そのためにはcGMP添加後、充分な時間が経過してpH変化がほとんど見られな
くなったことを確認した後、各溶液に少量の 1N NaOHを一定量ずつ加えてゆ
き、そのたびにことを確認すればよい。(ア)に入るべき適切な文節を記せ。
このことが確認できたとして、以下の問いに答えよ。
(3)反応開始 6 分後に溶液 B に終濃度 1mM となるように cGMP を添加した時、b1
のような pH 変化を示したと仮定する。この場合、溶液 B の cGMP-PDE の性質
として考えられることを記せ。
実験の結果、pH 変化は b1 ではなく b2 であったとして、さらに以下の問いに答えよ。
(4)溶液 B において反応開始 4 分後の cGMP 濃度を推定せよ。その時点での反応速
度は反応開始直後の反応速度の何%程度であるか。
(5)(4)のような解析を細かく行うと、この実験から溶液BのcGMP-PDEのVmaxと
Km値を推定することができる。その解析方法を簡潔に述べよ。
(6)溶液AとBのcGMP-PDEの酵素反応論的性質の違いを考察し、この測定条件下で
両者のVmaxとKmそれぞれが相対的に、どのような関係にあるかを議論せよ(A
とBのVmaxとKmを実際に計算で求めなくて良い)。
II-3
[第2問]イオンの輸送に関する次の文を読み問題(1)∼(7)に答えよ。
生体は細胞内外のイオン勾配を維持するために、ATPのエネルギーを使ってイオン
を輸送している。Na+K+ポンプ(Na+K+-ATPpase)は、1 個のATPの加水分解あたり、
細胞内に 2 個のK+を取り込み、細胞外に 3 個のNa+を排出する。それに伴う自由エネ
ルギーの変化ΔGを計算してみよう。
一般に化学反応
A +
B
→ C +
D
----
(a)
----
(b)
に伴う自由エネルギーの変化は、平衡状態のとき
ΔG = −RT ln([C][D] / [A][B])
で与えられる。但し、Rはガス定数(1.99 cal mol-1deg-1)、Tは絶対温度、lnは自然対数で
あり、[A]は、物質Aのモル濃度(活量)を表す。
これから、たとえばNa+ 1 モルを細胞の内から外に運搬するときの自由エネルギー
の変化は、膜電位の効果も考えて、
ΔG = [Na+の細胞内外の濃度に依存した項] + Z・FΔΨ
----
(c)
で与えられる。ここで、Zは運搬されるイオンの電荷(この場合Na+なので1)、Fは
ファラデー定数(23.1 kcal V-1mol-1)、ΔΨは膜電位である。今、温度 37℃、細胞内
ではNa+が 10 mM、K+が 100 mM、細胞外ではNa+が 140 mM、K+が 5 mMとする。ま
た、膜電位は 0.07 V(細胞質側が負)とする。但し、以下の計算では、 ln 2=0.693, ln
7 = 1.95, ln 10 = 2.30, ln 14 = 2.64, ln 20 = 3.00 としてよい。
<問題>
(1)生体は細胞内外のイオン勾配を何のために維持しているのか、3行以内で述べ
よ。
(2)(c) 式の[Na+の細胞内外の濃度に依存した項]は、ガス定数Rを使ってどう書
けるか。
(3)3 モルのNa+を運搬するのに必要なエネルギーはいくらか。
(4)2 モルのK+を運搬するのに必要なエネルギーはいくらか。
(5)(3)と(4)で求めたエネルギーが大きく違うのは何故か。
(6)ATPの標準自由エネルギーは 7.3 kcal/mol(pH 7)である。Na+K+ポンプのエネ
ルギー利用効率はおよそ何%か。
(7)(6)で求めた効率が 100%を超えるのは何故か。
II-4
[第3問]
細胞周期制御に関する次の文を読み、問題(1)∼(5)に答えよ。
哺乳類の細胞周期においてG2 期からM期(a)への移行を制御しているプロテインキ
ナーゼ複合体であるMPF (maturation promoting factor) は、調節サブユニットとしての
サ イ ク リ ン B (cyclin B) と キ ナ ー ゼ 活 性 を 持 つ 触 媒 サ ブ ユ ニ ッ ト と し て の
(
A
)から構成されている。MPFは細胞内の種々のタンパク質をリン酸化す
ることにより、細胞をM期に移行させる。MPFによりリン酸化されるタンパク質のい
くつかは細胞の核内に存在し、MPFが核内で働くことがM期への移行に重要であるこ
とがわかっている。以下の一連の実験はサイクリンBファミリーの一員であるサイク
リンB1 タンパク質のCRSと名付けられた部分の機能について検討したものである。
まずサイクリン B1 のリン酸化状態を調べたところ、図 1 でドットをつけた CRS 領
域内の 4 つのアミノ酸残基がリン酸化を受けることが分かった。
図 1 サイクリン B1 タンパク質の一次構造。
これらのアミノ酸残基がリン酸化あるいは脱リン酸化された状態(その荷電状態)
を模倣するために、サイクリン B1 の cDNA に人為的に変異を導入し、これらの 4 つ
の S(Ser)をすべて Ala またはすべて Glu に変えたものを作製した。変異を導入した
サイクリンをそれぞれサイクリン B1-Ala, サイクリン B1-Glu と呼ぶ。これらの cDNA
をもとに試験管内で mRNA を合成し、これをアフリカツメガエルの卵細胞(第一減
数分裂の G2 期で停止している)に注入した。注入後の時間を追って M 期へ進行した
卵細胞の割合をプロットした(図2)。サイクリンの mRNA を注入すると、注入さ
れた mRNA から合成されるサイクリンによって MPF 活性が上昇し、M 期への移行が
起こることが知られている。
図2 アフリカツメガエルの卵細胞に正常型
または変異型のサイクリン B1 mRNA を注
入し、注入後の時間経過を迫って M 期へ
進行した卵細胞の割合を測定した結果。
(注:正確にはアフリカツメガエル卵細胞は第
一減数分裂前期で停止しており、この実験では
中期への移行を観察しているが、本文中では簡
単のため G2→M の移行とした。)
II-5
この結果からサイクリンB1 のこれら 4 つのSer(の一部または全部)のリン酸化状
態がサイクリンB1 の機能に影響を与えることが示唆された。別の実験で、細胞内の
サイクリンB1 のリン酸化状態が細胞周期の各ステップで変化することが確かめられ
た。(b)
一方、培養細胞を用いて、細胞周期におけるサイクリン B1 の細胞内局在の変化を
抗サイクリン B1 抗体を用いた染色により調べた。その結果、次の図3のようにサイ
クリン B1 は G2 期から M 期の前期にかけて細胞内局在が変化し、前期には核内に蓄
積することがわかった。
図3 細胞周期におけるサイクリン
B1 の細胞内局在の変化。
サイクリン B1 に対する抗体によ
り細胞周期の各時期の細胞を染
色した結果。
図3の実験で用いた変異サイクリン B1 の細胞内局在を調べるため、エピトープタ
グ(短いペプチド)をコードする配列を付加したサイクリン B1, サイクリン B1-Ala,
サイクリン B1-Glu の cDNA をそれぞれ発現ベクターにつなぎ、細胞にトランスフェ
クションにより導入して発現させた。導入したそれぞれのサイクリンの G2 期および
M 期前期における細胞内局在をタグに対する抗体を用いて調べたところ、次の図4の
ような結果が得られた。
図4
II-6
正常型および変異型サイ
クリン B1 の細胞内局在。
エピトープタグに対する
抗体を用いて細胞周期の
各時期の細胞を染色した
もの。
<問題>
(1)下線部(a)について。細胞周期の M 期は顕微鏡下で観察できる核膜、染色体、
紡錘体などの状態を指標に前期、前中期、中期、後期、終期に分けられる。前
期、中期、後期のそれぞれの時期における染色体(あるいはクロマチン)の状
態を説明せよ。
(2)本文中 A の空欄に当てはまる最も適当な語を答えよ。
(3)下線部(b)について。培養細胞の細胞周期でのサイクリン B1 のリン酸化状態の
変化を調べるにはどのような方法を用いたらよいか。実現可能な実験方法のひ
とつについて、5行程度でその手順を説明せよ。ただし、細胞周期の各時期の
細胞を集めることが必要であれば、この部分の手順については省略してよい。
(4)サイクリンB1 のCRS領域の機能について、図2の結果だけから考察すると少
なくとも以下のア、イ、ウの可能性が考えられる。ア、イ、ウの{ }内のa、
bのうちからそれぞれ適切なものを選べ。MPFが核内で働くことがM期への移
行に重要であることに留意せよ。
ア. CRS はサイクリンの分解のシグナルとなっている。{a.リン酸化された
b.脱リン酸化された}CRS を持つサイクリンタンパク質は分解される。
イ. CRS はサイクリンタンパク質の核移行を導く。ただし{a.リン酸化され
た b.脱リン酸化された}ときのみその機能を持つ。
ウ. CRS は核外移行シグナルとして働く。ただし{a.リン酸化された b.脱
リン酸化された}ときのみその機能を持つ。
(5)(4)のア∼ウの可能性のうちで、本文に挙げた実験結果のすべてと矛盾しな
いものを2つ選べ。
II-7
草稿用紙
(切り離さないで用いること)
II-8
平
成
14
年
度
入
学
試
験
問
題
生物化学専攻 専門科目
問 題 群 III
[注意事項]
1.
試験開始の合図があるまで、この問題冊子をひらいてはならない。この冊子は、表紙
および草稿用紙 2 枚を含めて計 14 頁からなる。
2.
解答には、必ず黒色鉛筆(または黒色シャープペンシル)を使用すること。
[以下、特に重要]
3.
問題は全部で6問ある。そのうちから3問を選んで解答せよ。4問以上に解答した場
合には全ての答案が無効となる。
4.
答案用紙は、各問につき1枚、合計3枚配布してあるから、確実に配布されているこ
とを確かめること。
5.
各答案用紙の所定欄に、科目名(問題群III)・問題番号・受験番号および氏名を必ず
記入すること。
6.
解答は、各問ごとに所定の答案用紙を使用すること。
7.
答案用紙は、採点の際、点線で切り取られるので、裏面も使用する場合には、点線の
上部を使用しないこと。
8.
答案用紙には、解答に関係ない文字、記号、符号などを記入してはならない。
9.
解答できない場合でも、答案用紙に科目名・問題番号・受験番号及び氏名を記入して
提出すること。
10.
答案用紙を草稿用紙に絶対使用しないこと。(草稿用紙は問題より後ろの頁にある。
また問題冊子の余白は自由に使ってよい。)
この問題冊子は試験終了後に回収します。以下の欄に受験番号と氏名を記入しておくこと。
受験番号
氏 名
III-1
[第1問]
シグナル伝達に関する次の文を読み、問題(1)∼(5)に答えよ。
NIH3T3 細胞に増殖因子Xを作用させるとc-myc遺伝子の転写が活性化しmRNA量と
タンパク質量が増加すること (A) が知られている。増殖因子Xからc-mycへのシグナル
伝達経路を明らかにするために様々な実験を行い以下のような結果を得た。
<実験>
(1) あらかじめチロシンキナーゼ c-Src の失活型変異体(点変異によりキナーゼ
活性を失活させた c-Src)を発現しておくと増殖因子 X による c-myc の転
写活性化は著しく阻害された。
(2) c-Src の活性化型変異体(点変異により活性化させた c-Src)を発現すると
増殖因子 X を作用させなくても c-myc の転写活性化と Ras の活性化がおこ
った。
(3) Ras や MEK の活性化型変異体を強制発現しても c-myc の転写活性化はおこ
らなかった。
(4) MEK のインヒビターPD98059 を作用させても増殖因子 X による c-myc の
転写活性化は阻害されなかった。
(5) 低分子量 G タンパク質 Rac の活性化型変異体を強制発現すると c-myc の転
写活性化がおこった。
(6) Rac の失活型変異体を強制発現しておくと増殖因子 X による c-myc の転写
活性化が阻害された。
(7) 増殖因子 X を作用させた細胞では guanine nucleotide exchange factor (GEF)
の一種 Vav2 のチロシンリン酸化が亢進していた。
(8) Vav2 を強制発現しておくと増殖因子 X による c-myc の転写活性化が亢進し
たが、Ras の活性化は増強されなかった。
(9) Vav2 の失活型変異体(活性中心を欠失させた Vav2)を発現しておくと増
殖因子 X による c-myc の転写活性化が阻害された。
(10) Vav2 の失活型変異体と Rac の活性型変異体を同時に発現すると c-myc の
転写活性化がおきた。
III-2
<問題>
(1)下線部 (A) を自分で証明するとしたらどのような実験をするか。転写活性化、
mRNA 量の増加、タンパク質量の増加を調べる方法をそれぞれ一つずつあげな
さい。
(2)mRNA 量とタンパク質量が増加する機構として転写活性化以外にはどのよう
な機構があり得るか。一つあげて、それにつき簡単に説明しなさい。
(3)実験結果(1)は何を意味しているか説明しなさい。
(4)Rac などの低分子量 G タンパク質について、その機能および活性制御機構を簡
潔に説明しなさい。
(5)上記(1)∼(10)の実験結果をもとに増殖因子 X によるシグナル伝達経路
を推測して模式図を書き簡単に説明しなさい。実験に登場したシグナル分子の
うち Src、Ras、MEK、Rac、Vav2 は必ず模式図に含めること。
III-3
[第2問]
テロメアとその解析法に関する以下の設問に答えなさい。
(1)核生物の染色体の末端にはテロメアという特殊な繰返し配列がテロメラーゼ
によって付加される。テロメラーゼは、一本鎖 DNA を鋳型として、in vitro で
テロメア繰り返し配列の付加・伸長反応をつかさどることができる(図)。テ
ロメラーゼ複合体はタンパク質以外の構成成分を含むことが知られているが、
その構成成分とは何か。またテロメア配列伸長反応におけるその役割を簡潔に
述べよ。
(2)PCR 法は、テンプレート DNA に特異的にハイプリダイゼーションするプライ
マーを用いて、特異的な DNA 領域を in vitro で増幅する方法をいう。反応は、
テンプレート DNA の変性、プライマーのアニーリング、及びその伸長の 3 つ
のステップからなり、このサイクルを繰り返すことにより、 2 つのプライマー
に挟まれた DNA 領域が指数関数的に増幅する。この反応に用いられる DNA
ポリメラーゼの最大の特徴を、反応過程に即して記せ。
(3)in vitro のテロメラーゼ活性の測定法として、鋳型プライマーにテロメア配列を
付加・伸長させて、その伸長産物を PCR によって検出する方法を開発すること
にした(図)。最初に、鋳型プライマーとテロメアリピートプライマーA を使
って、テロメア配列伸長産物を PCR によって検出しようとしたところ、テロ
メア伸長反応が十分起きている試料を鋳型として PCR を行っても、主に短い
DNA 断片しか増幅されなかった。その理由を述べよ。
(4)テロメアリピートプライマーA の代わりにテロメアリピートプライマーB を用
いることによって上記の問題が解決できた。ただしそのとき、最初の反応サイ
クルのアニーリングの温度はその後の増幅サイクルのそれよりも数℃低い温
度で行った。その理由を簡潔に説明せよ。
III-4
5'-AATCCGTCGAGCAGAGTT-3'
鋳型プライマー
5'-CCCTAACCCTAACCCTAA-3'
テロメアリピートプライマーA
5'-CCCTTACCCTTACCCTAA-3'
テロメアリピートプライマーB
図
テロメア付加・伸張反応の概略と実験に用いたプライマー配列
III-5
[第3問]
タンパク質の重合について、次の設問 (1)∼(5) に答えよ。
タンパク質 P は、溶液 A 中では大部分がモノマー (S) の状態にあり、溶液 B
中では互いに結合して(この現象を重合と呼ぶ)、繊維状構造体 (F) を作ること
がわかっている(図1)。また、遠心によって、F を沈殿に、S を上清に分離す
ることができるものとする。
<実験1> 大部分がモノマー (S) の状態にあるタンパク質 P
(濃度 0.05 mg/ml、
0.1 mg/ml、0.2 mg/ml、0.3 mg/ml、0.4 mg/ml)を、溶液条件を A から B に切
り替えることによって重合を開始させ、各時間で溶液の一部をとって素早く
遠心し、上清中のタンパク質 P の濃度を測定した。その結果、それぞれ図2
の曲線 1、2、3、4、5 が得られた。
(1) 図2に見られるように、80 分間の保温により、曲線 2、3、4、5 は同じ値に
集束した。その理由としてどのようなことが考えられるか。また、曲線1
では変化が見られなかった。その理由をのべよ。ただし、タンパク質 P の
重合は一種の結晶化であると見なすことができるということを考慮せよ。
<実験2> 実験1の濃度 0.4 mg/ml の溶液を 80 分間保温した後、溶液 B で 3
倍に希釈し、希釈後の各時間における上清中のタンパク質 P の濃度を測定し
たところ、時間とともに徐々に上昇することがわかった。
(2) 希釈後長時間たつと、上清中のタンパク質濃度はどれほどになると予想さ
れるか。
<実験3> 実験1の濃度 0.4 mg/ml の溶液を 80 分間保温した後、この溶液を注
射針中を何回か通すことによって剪断力を加えたところ、繊維状構造体の長
さの平均が、通す前の約 1/4 になっていた。
(3) 注射針を通した溶液の一部を遠心して上清のタンパク質濃度を測ると、ど
のような値が得られると考えられるか。
<実験4>注射針を通した溶液を溶液 B で 3 倍に希釈して、実験2と同じ実験を
行ったところ、上清中のタンパク質浪度の上昇の初期速度は実験2の場合よ
りも大きかった。
(4) その理由としてどのようなことが考えられるか。
<実験5>実験1に用いたタンパク質溶液を溶液 A 中でゲルろ過したところ、図
3のようなパターンが得られた。ここで、タンパク質 P のモノマーの分子量
に相当するゲルろ過画分(図3の片かっこの部分)を用いて、0.4 mg/ml の
濃度で実験1と同じ実験を行ったところ、図2の曲線5よりも重合の初期速
度が減少していることがわかった。これに注射針中を何回か通して繊維の長
さを短くしたサンプルを少量添加したところ、添加しない場合よりも重合初
III-6
期速度が大きくなることがわかった。
(5) その理由として、どのようなことが考えられるか。ゲルろ過によってどの
ようなものが除かれたと考えられるかということを含めて説明せよ。
III-7
[第4問]
DNA 複製に関する次の二つの文を読んで、設問 (1)∼(5) に答えよ。
二重鎖DNAの複製は、以下のように行われることがわかっている。まず、二重
鎖が部分的に二本の一重鎖に分けられ、それぞれを鋳型として、 DNAポリメラー
ゼによって鋳型と相補的なDNA鎖が形成される (ア)。鋳型二重鎖の開裂と相補鎖合
成がカップルしつつ、二重鎖全体におよぶことによって、DNAの複製が完了する。
DNA 複製開始には、多くのタンパク質が関与することがわかってる。タンパク
質 A、B、C は、出芽酵母の DNA 複製開始に関わるタンパク質であるものとする。
A は DNA 結合能を持つリン酸化タンパク質、B は核内外を移行できるタンパク質、
C は A 存在下で DNA 結合能を持ち、B と会合しうるタンパク質である。また、C
タンパク質は G1 後期にのみ発現し、機能し終わると速やかにユビキチン化をへて
分解される。A、B、C それぞれの役割を探るために、それらをコードする遺伝子
に次のような変異を導入した。A については、リン酸化部位のセリン残基の代わ
りにアラニン残基をコードする変異遺伝子を内在性遺伝子と置換した。 B につい
ては、強力な核移行シグナルを導入した変異遺伝子を内在性遺伝子と置換した。
また C については、ガラクトースによって転写誘導される GAL1 プロモーターと、
ユビキチン化部位を欠損した C タンパク質をコードする DNA とをつないだもの
をプラスミドに組み込み、transgene として酵母に導入した。このような変異遺伝
子を以下のような組み合わせで持つ酵母株 Y1∼Y4 を作成した。これらを M 期で
停止させた後、ガラクトースを加え、0 時間後、1 時間後、2 時間後、3 時間後に、
フローサイトメトリー(イ)を用いて各細胞の DNA 含有量を解析した。結果は図
のとおりである。グラフの横軸は細胞あたりの DNA 含有量(1C、2C、4C で表示、
1C は一倍体細胞に含まれる DNA 量を示す)を、縦軸は横軸に示された DNA 量を
含む細胞数の相対値を表す。また、各グラフ中の右側にそれぞれの時間での M 期
にある細胞の割合を示してある。
(1) 下線部(ア)について。DNA ポリメラーゼによる DNA 鎖合成は、5’→3’ 方
向に行われる。5’NN---NNA3’(N は任意の塩基)の A に C が結合して DNA 鎖
が伸長する場合の反応式を図示せよ。ただし、塩基部分は A と C と省略して
よいが、糖とリン酸の部分の分子構造は省略せずに図示すること。
(2) DNA ポリメラーゼによる DNA 鎖の伸長方向から考えて、二本の鋳型 DNA の
うち一方は連続的に複製されることが可能である。ところが、もう一方の DNA
鎖に関してはそれが不可能であり、不連続的複製と呼ばれる機構によって複製
III-8
が行われる。不連続的複製はどのように行われるか説明せよ。
(3) 下線部(イ)について。フローサイトメトリーの原理について説明せよ。この
技法は細胞周期の研究によく用いられるが、これを用いることによって、どん
なことがわかるか説明せよ。
(4) 図からわかるように、酵母株 Y4 の結果は、酵母株 Yl、Y2、Y3 における結果
と大きく異なる。Yl、Y2、Y3 ではほとんど起こらず、Y4 で起こっている現
象とは何か。
(5) 図に表された結果をもとに、酵母 DNA 複製の開始における A、B、C、3 種の
タンパク質の役割について推測せよ。
図
Y1
Y2
Y3
Y4
A 遺伝子:
野生型
変異型
変異型
変異型
B 遺伝子:
変異型
野生型
変異型
変異型
C transgene:
有り
有り
無し(*)
有り
(*:GAL1 プロモーターのみを組み込んだプラスミドを導入した。)
III-9
[第5問]
AIDS は HIV の感染によって引き起こされる。近年、HIV の生体内動態の解析
によって、AIDS の治療は大きく前進した。以下の設問 (1)∼(3) に答えよ。
(1) HIV 感染者には AIDS 発症に至るまで、3 年から 10 年に及ぶ長い無症候期が存
在し、この間、血中のウイルス濃度は低く、あまり変化しない。このような時
期に、抗 HIV 薬を投与すると HIV 増殖を効果的に抑制できることがわかった。
図1は抗 HIV 薬を投与した患者の血祭中の HIV ウイルス RNA 濃度を示してい
る(図 1 の Day 0 で薬物投与を開始し、day 15 まで投与を継続した)。day 0
から day 15 まではウイルス増殖が完全に抑制されているものとして、血中での
ウイルスの半減期を求めなさい(答えは小数点以下 1 桁まで示すこと)。ただ
し、図1中の直線は、 day 0 から day 15 までのウイルス濃度の減少にフィット
させたものである。
また、薬物投与前の血漿中のウイルス量を 1.5×105/mlとしたとき、薬物を投
与しない場合に 1 日あたりturnoverしているウイルス数を求めなさい。この時、
体内の血衆量は 3 リットルとし、 log e2 = 0.693 とする。
(2) 図2は抗 HIV 薬投与時の患者の血中ウイルス RNA 濃度と CD4 陽性 T 細胞濃
度の変化を示したものである(抗 HIV 薬は Time 0 で投与を開始し、観察期間
中投与し続けた)。この結果から、抗 HIV 薬投与前における CD4 陽性 T 細胞
の 1 日あたりの turnover 数を求めなさい。ただし、全リンパ球にしめる血中リ
ンパ球の割合は 2%、全血液を 5 リットルとする。
また、CD4 陽性 T 細胞の生体における役割について述べ、 AIDS 患者にお
ける T 細胞減少のメカニズムについて考察しなさい。
(3) 図2にあるように、単一の薬剤を継続投与した場合は 2 週後にはウイルス量が
再び増加に転じるとともに、CD4 陽性 T 細胞も減少し始めた。しかし、作用の
異なる 2 剤を投与した場合にはウイルス量の増加も T 細胞の減少も認められな
かった。この現象からどのようなことが考えられるか述べよ。
III-10
図1
図2
III-11
[第6問]
シグナル分子に関する次の文を読み、問題(1)∼(4)に答えよ。
血液細胞を増殖因子で刺激したときに発現が誘導される遺伝子を検索したとこ
ろ、機能のわからない新しい遺伝子 A がみつかった。A 遺伝子は増殖因子刺激後
約 30 分で発現が誘導された。A 遺伝子の cDNA の構造解析から、A 遺伝子は 250
アミノ酸残基をコードしており、SH2 ドメインが 1 つだけみつかったが、それ以
外は何ら特徴的な構造はみつからなかった。
<問題>
(1) この増殖因子は細胞膜に存在する受容体を介して遺伝子発現を制御して
いる。A 遺伝子の mRNA の発現は刺激後 30 分という早い時期に誘導されること
から、A 遺伝子の発現は他の遺伝子発現を介さず、増殖因子の刺激により直接制
御されている可能性が考えられる。このことを証明するにはどのような実験を行
えばよいか述べなさい。
(2) SH2 ドメインとはどのような機能をもつのか述べなさい。
(3) SH2 ドメインをもつタンパク質にはキナーゼやホスファターゼなどの酵
素活性をもつ分子が多数存在する。一方、酵素活性をもたずに、SH2 ドメインと
SH3 ドメインのみからなる分子も存在する SH3 ドメインとはどのような機能を
もつのか述べなさい。また、SH2 ドメインと SH3 ドメインのみからなる分子はシ
グナル伝達においてどのような機能を担うか述べなさい。
(4) A 遺伝子を強制発現すると、この増殖因子の作用を抑制した。A 遺伝子に
よりコードされるタンパク質は比較的小さく、SH2 ドメイン以外には酵素活性も
タンパク質との結合に関与するドメインもー切ないと仮定すると、この A タンパ
ク質にはどのような機能が想定されるか述べなさい。
III-12
草稿用紙1 (切り離さないで用いること)
III-13
草稿用紙2 (切り離さないで用いること)
III-14