例会報告 【日 時】 【場 所】 【テーマ】 【参加者】 2014年5月11日(日) 13:30~16:30 北区役所 7F 研修室(東) 「吃音への対処法とその効果」 13名 【例会内容】 まず、私が言語聴覚士を目指しているということで、成人を対象とした吃音の訓練法に ついて紹介させていただきました。その後、参加者の方々の、①吃音が出たとき(または 吃音が出そうなとき)の対処法、②現在吃音で困っていることや、その対処法、③自身の 吃音を今後どうしていきたいか……お一人ずつ話していただきました。以下、①~③で 出たものをご紹介します。 ①吃音が出たとき(または吃音が出そうなとき)の対処法 指を動かしてことばが出やすくなるようにしている。現在 ST と発話のコントロール訓練 を受けており、日常会話においても般化できるようにしている。「えーっと」、「まあ」など を付加して話す。吃音が出てもいいから話してみようとの考えるようにしている。母音が 苦手で、単語を言おうと意識するのではなく、単音を言う意識を持つようにしている。 腹式呼吸、発声練習を行い、話すときに呼吸を何回も行う。人前で話すところを避ける。 相手に合わせて話す。言いやすいことばへの言い換え、付加、聞き役にまわる。痛み刺激 を与えて意識を逸らす。自律訓練法が有効であった。メンタルリハーサルが有効であった。 発声、呼吸、音読の訓練を受けていた。言い換えをする。 ②現在 吃音で困っていることや、その対処法 職場での会話。吃音症によって社会的評価が低くなる。発表をする時、症状に対する悩 みがあるが、言友会に入り、以前より吃音が出ることへの悩みが減った。以前よりどう思 われるかの悩みは減ったが、コンパで呼びたい人の名前を言う時、取引先との対応、店員 と話す時に困っている。電話対応で困っている。コンパ、会社の電話で名前が出ない。 朝礼で標語が出ないことで困っており、出にくい時はごまかして終わる。学校の講義で手 を挙げるか迷うし、症状をどう明かしたらよいか迷う。アルバイト、音読をする時に困る。 年配の方からは、困っていることはないとの意見もありました。 ③自身の吃音を今後どうしていきたいか 吃音を受け入れるが、訓練も受けたい。吃音を改善させたい。吃音があっても生きてい けるので、このまま生活できればよいが、ある程度 症状をコントロールできるようになり たい。症状についてできることには取り組んでいき、周囲の理解も広めていきたい。年齢 に応じた話し方や、自信を持った話し方をしていきたい。不安感が強いので、軽減させて いきたい。相手の気持ちを考えて話したい。吃音が出ないように話したい。少しでも吃音 が出ないようにしたい。吃音のことを考えたくない。自分らしく生きていきたい。いろん な人と話していきたい。吃音を試練として乗り越え、最終的に普通に話したい。吃音を世 間に広めていきたい。 今回の例会を通じ、各自の対処法を共有できて良かったと思います。将来は吃音で困っ ている人の役に立てる言語聴覚士になりたいと改めて思いました。 「吃音改善研究会合宿 in 京都」が開かれる 5 月 17 日(土)~18 日(日)に吃音改善研究会の合宿が京都の「コミュニティ嵯峨野」 で開かれました。合宿の開催は一昨年の石川、昨年の愛知に続いて、今回で 3 回目になり ますが、名古屋・京都・いしかわ・福井・三重から 29 名が集まりました。名古屋からは 7 名が参加しました。東京言友会吃音改善研究会会長の堀寛さんが講師をされましたが、 「吃 音の原因と改善メカニズム」「スピーチ練習」「改善効果アップのポイント」「各地吃改研の 活動紹介」「吃改研例会の進め方」「マイメッセージ」……等々、非常に充実した内容でし た。フリートークでも夜遅くまで盛り上がっていました。会場は 2 年前に京都WSが開催 された懐かしの場所でもありましたので、当時の感慨に浸っている方もおられました。合 宿終了後の嵐山散策も楽しかったです。それでは 3 名の方の感想をご紹介します。 楽しく有意義だった合宿 吃音改善研究会、通称「吃改研」の合宿が京都で行われました。合宿の参加は、昨年の 合宿に続いて 2 回目の参加になります。とても楽しみにしておりました。吃改研は実際の 現場に近い状況を作り出し、その中で軽くどもりながら場慣れしていき、吃音の改善を目 指す素晴らしい改善方法だと思います。 今回は、講師である堀寛さんの講演の時間を長く取っており、とても有意義な時間を過 ごせました。実践練習も多く取り入れ、吃音改善の参考になりました。吃音が重い時は とてもゆっくりと話す抑制法を使うなど、参考になる考え方が多かったです。効果を出す ためには月に 2 回は行うべきという考え方や、練習時間を取るために要領の良い、様々な 工夫もされていますが、なるほどといつも感心しております。 吃改研に関しては、今年 11 月に愛知で行われる全国大会でも分科会として行われます。 その担当に私がなっておりますので、その時も是非 成功させたいと思っています。 さて、印象に残ったことをご紹介します。 【マイメッセージ】 東京吃改研の方が 4 名(ビデオで)、合宿の参加者が 6 名、体験談を発表しました。各々 の吃改研、吃音の思いが伝わりました。私も初めて発表しました。その場で実践して、 吃改研の効果を実証して見せるということも行いました。 【フリートーク】 私は途中で抜けましたが、大勢の方が日が変わっても残っていて、盛り上がっていまし た。私も世代を越えて恋愛話に盛り上がり、楽しかったです。 最後になりましたが、合宿の実行委員の方々、京都言友会の方々、本当にお疲れ様でし た。準備等、大変だったと思います。とても勉強になりました。本当に楽しかったです。 ボリューム満点の合宿 吃音改善研究会の合宿には今回初めて参加させていただきました。名古屋の吃改研でも 随意吃やメトロノームを使った練習をしたことはありました。しかし、堀寛さんの講演を 聞いて、予想以上に実践練習を重視した内容であることに驚きました。また、参加する全 ての人が症状に合った練習ができるように、効率を追求する姿勢にも感心しました。今回 の合宿で全てを消化しきることは難しかったですが、それでも堀さんが話す内容は非常に わかりやすいものでした。 次に、各地の吃改研の紹介では、どの例会でも様々な工夫を凝らしており、刺激になり ました。特に印象に残っているのはいしかわ吃改研です。固有名詞、朝礼、電話対応など など…それぞれの人に合わせた練習を行っており、堀さんの考えに沿った実践的な内容だ と感じました。その後に行われたフリートークでは、深夜まで色々な方と語り合うことが でき、貴重な体験になりました。次の日も早朝に嵐山周辺を散策したり、マイメッセージ では皆さんの前で発表する機会も与えられました。 堀さんの講演で、印象的に残った言葉があります。「例会ではたくさん吃りなさい」とい うものです。私は最近の例会ではどもりを誤魔化すことに注意が向いていました。そうで はなく、たくさん吃って、誤魔化し方よりも吃音症状自体に注意を向ける練習をした方が 良いのです。このように新たに学んだ知識も多く、今後の例会にも生かせる内容でした。 緑広がる季節の思い出 会場では京都言友会の皆様の温かい雰囲気を感じました。早速、堀寛先生の講習会が始 まり、改善目標を決めて実際に近い状況を再現し、成果を上げる方法を学びました。東京 の吃音改善研究会では、希望者が多い為、入会条件があるそうです。吃音の事を取材して いる記者の方も真剣に聞いていました。グループに分かれて、時間内に出来るだけ多くの 人に挨拶をする。船が難破して無人島に辿り着いたら、貴方は何をしますか?と自分の役 割を発表する訓練などをしました。 2 日間に渡る堀先生の講習会は、一朝一夕で習得出来るものでは無いですが、特に印象に 残ったことは、「抑制法」「吃音を気にしない」「苦手な場面で落ち着くこと」「ゆっくりし た動作をする」 「2~3 秒おいてから話す(話初めが一番吃音が出易い)」 「テクニックを使わ ずに話す」……などです。講習会の要点をまとめたものが、吃音改善研究会ホームページ で見れます。フリートークでは皆さん盛り上がり、他の言友会の方々とお話しをして、 アドバイスもいただいて、気が付いたら真夜中でした。嵐山の早朝散歩では女優さんの TV撮影現場に遭遇しました。 今回、一番印象に残ったことは、東京言友会の方々のスピーチを録画したVTRと最終 日のマイメッセージです。逃げずに困難に立ち向かい、堂々と発言されている姿を見て、 心を打たれ、勇気を貰いました。受け身の為に出来なかった事も沢山ありましたが、全体 では非常に楽しかったです。本当に有難う御座いました! 感謝の気持ちで一杯です。 定期総会報告 日 時:2014年4月26日(土)18:30~20:30 場 所:北区役所 7F 大会議室(西) 出席者:13名 今回の総会は、出席者13名、委任状提出者39名の合計52人からご連絡いただきま した。会員数81名の過半数を超えたため、定足数を満たしました。議長にはSさんが就 任し、すでに総会議案書でご案内の通りの議題が滞りなく審議され、全案可決となりまし た。散会後は、長年の間、名古屋言友会の会計を務められたIさんの労をねぎらい、花束 をお渡して皆で記念写真を撮影しました。 以下、話題となった内容の一部を簡単にまとめます。 ・「新社会人のつどい」について ・対象を「就活生と新社会人」に変更し、日程も8月24日(日)としたい。 ・23日(土)の例会と連続するが、必要なスタッフの数も少ないし、外部を対象と する企画だから特段の問題はない。ただ、できるだけ調整する必要はあると思う。 ・「親子のつどい」(仮称)について ・8月17日(日)の例会は記載ミスであり、実施しない。本来は「親子のつどい」 (仮 称)を開催する予定だったが、当面は見送りとなった。 ・「おしゃべりの部屋(女性の会)」について ・活気づいているが、将来的には男女が一緒に例会に参加できる雰囲気になって欲し いと思っている。 ・会計について ・今年度は特に例会補助を適正な金額にするために、合理化を推進していきたい。ま た、全国大会参加費補助は、例えば学生に多く配分するなど、傾斜をつけるべきだ。 全国的に見ても高い水準にある年会費についても、今後の検討事項としたい。 ・会則について ・内容が実態と合っていない。 ・今年度は、会則の改正も視野に入れていきたい。もっと柔軟に解釈できる内容にし たほうがいいと思う。 ・会報について ・会長が会報を担当するのは本来ならばおかしいのではないか。 ・特に所掌がない人が担当してもいいと思う。 ・ワークショップについて ・実行委員会の体制に変更があった。 ・吃改研について ・今後はセミナーの開催と訓練の個別対応になる。訓練については、自分自身もまだ まだ駆け出しの言語聴覚士なので、いきなり洗練されたセラピーをできないことは 承知してもらいたい。試行錯誤しながら症状と向き合っていく手助けをするような イメージを持って欲しい。 内部サークルのご紹介 2014年度 総会議案書で名古屋言友会内のサークル活動について報告していますが、 各担当から活動の概要についてご紹介します。 【おしゃべりの部屋(女性の会)】 吃音を持つ女性だけの集まり(女性の会。通称:「おしゃべりの部屋」)は、昨年から 準備段階の「女性の会を作る会」と合わせて 5 回行いました。日頃の嫌な思いや、女性な らではの悩みを、共感、相談できる場所になればいいと思います。昨年は、右も左もわか らず、反省することばかりでした。参加した皆さんが、もっと気楽に話せる場所にしたい と思っています。会に対してのご意見もお待ちしています。また、年に 1 度は廣嶌忍先生 に来ていただいて、相談会や勉強会も予定しています。 今年度も、5 月・9 月・11 月・2 月に行います。場所は「北区役所」です。不定期に食事 会等も行いたいと思っています。詳細は「やろまいか」、または名古屋言友会のホームペー ジをご覧ください。女性の皆さんのご参加をお待ちしています。 【吃音改善研究会】 今後は、「研究部門」と「臨床部門」に分け、それぞれ斉藤さんと横井が担当します。 「研究部門」では、研究者や臨床家などをお招きしたセミナーを開催します。具体的な 日程や場所は、後日ご案内さし上げます。 「臨床部門」では、会員制の個別対応で、吃音についての相談や訓練を実施します(費 用は会場費など実費のみ)。担当者(横井:言語聴覚士)の翌月の勤務日程が毎月 20 日頃 に決まるので、それからサークル会員と連絡を取り、日程を調整する予定です(9 月にサー クル会員を募集し、10 月から開始予定)。場所には、北区役所、ユースクエア、名古屋市 市民活動推進センター(ナディアパーク内)などを考えています。 なお、いずれの部門についても、外部に対する広報(募集)を行う予定です。 【平日例会】 現在、例会は「第 2 週 日曜昼」と「第 4 週 土曜夜」に行われています。言友会会員 や言友会に参加してみたい方には、平日夜の方がご都合の良い方もおられると思います。 私もその一人です。また、職場で吃音に悩まれる社会人にとって、週末よりも仕事が終わ った後の平日夜に例会があれば、「行ってみようかなぁ」と思う方は多いのではないかと思 います。平日例会を開催し、吃音のある人の拠り所が増えましたら嬉しく思います。 例会担当は斉藤がします。日程は「奇数月の第 3 週夜」を予定しています。場所には、 北区役所、ユースクエア、名古屋市市民活動推進センター(ナディアパーク内)などを考 えています。 「ことばの障害」入門講座(1) 横井秀明(言語聴覚士) 4月から、言語聴覚士として働き始めました。前職(金融関係)とはまるで違う仕事で あることから、そのギャップに戸惑いながらも、日々奮闘しています。 私は3才頃から吃り始めたと両親から聞かされています。特に前職時代には吃音の症状 に悩み苦しみ、七転八倒。そんな頃、会社の昼休みに近くの書店に立ち寄り、偶然見つけ たのが、バリー・ギター博士の『吃音の基礎と臨床』(学苑社)でした。その内容を基盤と して、自分で考案した訓練を自らに課した結果、ついには勤務先でセミナー講師を任せら れるまで、症状が大きく変化しました。 その後、紆余曲折を経て言語聴覚士という道を選び、養成課程の厳しいカリキュラムと 国家試験を何とか突破し、現在に至るという次第です。今は、名古屋駅近辺のリハビリ専 門病院に勤務しています。 養成課程では、様々な「ことばの障害」について学びました。その結果、私にとって吃 音が相対化されたと考えています。言い換えると、吃音も「ことばの障害」のひとつであ ることに気づき、吃音を客観的に見ることができるようになったのです。 吃音の世界では、未だに「なおる」、「なおらない」という議論があります。それが、「改 善か受容か」という、オール・オア・ナッシングの構造を生み出しているのかも知れませ ん。しかし、他の「ことばの障害」の世界では、そんなことはありません。様々な試行錯 誤の中ではありますが、具体的なリハビリテーションの手法が確立されつつあります。大 切にされているのは、どうすれば、障害を抱えていても「生きやすくなるか」ということ に他なりません。「なおるかなおらないか」というような、単純な問題ではないのです。 私は、多くの吃音がある人に対して、吃音以外の「ことばの障害」についても知っても らいたいと思っています。そうすれば、新たな価値観が発見できるかも知れません。 今後、本誌において概ね隔月ペースで、言語聴覚士や、ST学生の会員による「ことば の障害入門講座」を掲載し、失語症や運動障害性構音障害(ディサースリア)、自閉症スペ クトラムに伴う言語発達遅滞など、多岐にわたる領域について、様々な示唆をご提供さし 上げたいと思っています。 吃音を、そして吃音がある自らを見つめ直すきっかけとしていただければ、望外の喜び です。
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