H27.2.4 (有)オフィス・マリ 中央商店街の外国人観光客への対応の現状と今後の取り組み 1 はじめに 千人 6,000 <グラフ1> 松山市の観光客数推移 2014 年、日本を訪れた外国人は 1300 万人を超え、前年 (松山市調べ) 5,884 5,711 5,523 5,600 比 300 万人弱増と過去最高を記録した。現在、日本政府は 5,642 訪日外国人旅行者の増大を重点施策の一つとして、国を挙 げての取り組みを進めている。 5,254 5,074 5,045 5,200 松山市も、インバウンド観光の推進は、地域に観光収入 の増加や雇用機会の創出をもたらし、地域の活性化に寄与 4,800 するものとして、情報発信や受け入れ態勢の整備を進めて 4,400 H19 H20 H21 H22 H23 H24 きた。 H25 松山は古くからの温泉地として知られており、かつ ては日本人観光客だけで顧客を十分賄えていたが、近 人 80,000 <グラフ2> 外国人観光客 推定数の推移(松山市調べ) 63,600 60,000 45,000 年日本人観光客が伸び悩み<グラフ 1>、将来的にも 39,000 37,000 人口減少に伴って国内の交流人口は縮小すると見込ま 40,000 32,000 32,000 28,000 れることから、外国人観光客の受け入れは非常に重要 20,000 と考えられている。 0 H19 <グラフ3> 台湾からの宿泊客数の 人ああああああ推定数推移(松山市調べ) H21 H22 H23 H24 H25 積極的な情報発信等により、平成 25 年の外国人観光客は 15,000 12,100 6 万 3600 人で過去最高となっている<グラフ 2>。特に台 湾においては、道後温泉旅館協同組合と台北市温泉発展協 10,000 会との間での交流協定締結、松山空港と台北松山空港を結 5,800 5,000 H20 2,900 2,300 3,500 ぶ直行チャーター便の運航といった取り組みを行った結果、 3,200 平成 25 年には前年比 210%と大きな成果を上げている<グ 0 H20 H21 H22 H23 H24 ラフ 3>。 H25 また、平成 26 年に行われた道後温泉商店街の商店主を対象としたアンケートによると、 「アジア圏から の観光客が増えた」という回答が 70.7%と、行政と民間の連携による観光客誘致が大きな効果を挙げて いることがわかる<グラフ 4>。 <グラフ4> 商店街を訪れる外国人観光客について(N=58) (平成26年1月「道後商店街商店主アンケート」松山市・オフィス・マリ調べ) アジア圏からの観光客が増えた 70.7 どこの国からとは限らず、全体に 外国人観光客が増えたと感じる 27.6 どこから来られたかは不明だが、 外国人観光客が増えたと感じる 19.0 欧米諸国(英語圏)からの 観光客が増えた 10.3 外国人観光客の数や 国籍などに変化は感じない 12.1 0 20 40 1 60 80 % 2 中央商店街の現状 平成 26 年に松山市中央商店街の商店主を対象として行われたアンケートによると、約 4 割の商店主が 「自店を訪れる外国人客が増えている」と回答しており、「商店街全体では外国人客が増えていると感じ る」という回答と合わせると、全体の 70.1%が「外国人客が増えている」と感じている<グラフ 5>。 <グラフ5> 中央商店街を訪れる外国人客の状況(N=318) (平成26年10月「店舗オーナーアンケート」まちづくり松山調べ) ここ数年、自店でも外国人の お客様が増えてきている 39.9 自店では特に増えたとは感じないが、 商店街全体では増えてきていると感じる 30.2 商店街を訪れる外国人の お客様の数に変化はない 20.1 以前も今も、外国からのお客様を 見かけることはほとんどない 6.6 その他 3.1 0 20 60 % 40 また、現在行っている外国人客への対応としては、「主要なクレジットカードの取り扱い」をしている 店舗が約 4 割あるほか、 「銀聯カードの取り扱い」を行っている店舗が 16.0%(51 軒)ある。ただ「特に 何もしていない」という店舗も約4割と、現状では、必要を感じている店舗が個別に対応を進めていると いう状況である<グラフ 6>。 <グラフ6> 外国人客に対する準備や対応(複数回答/N=319) (平成26年10月「店舗オーナーアンケート」まちづくり松山調べ) VISA、MASTERなど、世界的に 主要なクレジットカードの取り扱い 44.5 銀聯カード(中国で普及している デビットカード)の取り扱い 16.0 店の商品、メニューなどについて外国語での 記載・説明のあるものを用意している 11.3 主要な外国語(中国語、韓国語、英語等)の 会話に対応できる従業員がいる 9.7 その他 2.2 特になにもしていない 42.9 0 20 2 40 60 % 3 中央商店街の、観光客に対する今後の取り組み 中央商店街は松山市民の買い物場所として発展してきたこともあり、これまでは特に観光客を重視した まちづくり、店舗や品ぞろえは行なわれていなかった。しかし、中央商店街の立地は電車やバスのターミ ナルや松山城などの観光スポットにも近く、外国人観光客を含め、ビジネス客や国内の観光客が訪れるこ とも多い。商店街の店舗オーナーにも、国内消費が細る中、観光客を重要なターゲットと見る意識が高ま っている<グラフ 7>。 <グラフ7> 観光客に対してどのように考えているか(N=318) (平成26年10月「店舗オーナーアンケート」まちづくり松山調べ) 観光やビジネス等で訪れる客を 有望な客層として期待している 46.5 自店に来ることは考えにくいが、商店街として 今後観光客等に対する働きかけは必要 39.3 観光等の目的で遠来から訪れる客は多くはなく 今後も特別な対応が必要とは思わない 9.1 その他 5.0 0 20 40 60 % ただ、すでに外国人観光客がよく訪れている店舗ならば、積極的に受け入れ態勢を整えることに投資で きるが、そうではない店舗が独自に観光客へ向けて情報発信を行ったり、対応をすすめていくというのは 難しい部分もあるだろう。実際グラフ 7 を見ると、 (観光客への働きかけは必要だと思うが) 「自店に来る ことは考えにくい」という店舗が 4 割近くある。 そこで、商店街全体の窓口として、観光客を対象としたサービスセンター(休憩所やトイレを備え、商 店街や観光地・交通案内などの総合案内を行う)の設置が求められている<グラフ 8>。 サービスセンターが「必要だと思う」という回答が約 <グラフ8> サービスセンターの設置 についてどう思うか(N=318) 半数、「あればよいとは思う」と答えた割合も合わせる (平成26年10月「店舗オーナーアンケート」 まちづくり松山調べ) と、全体の 95.0%が設置に賛成という結果になった。 「あればよいとは思う」と消極的な賛成にとどまった 必要だと思う 理由としては、「施設運営のための費用負担が必要なら 46.9 難しい」 「それほど費用対効果が見込めないと思う」といった、 あればよいとは思う 48.1 運営を続けていくための資金面を問題に挙げた商店主 が多かった。逆に言えばそれがクリアされるなら設置し てほしいということである。 必要性は感じない 5.0 0 20 40 60 % 3 特に外国人客の対応は、コミュニケーションの問題もあり、各店舗が独自に対応を進めるのは難しい。 アンケートでも、 「サービスセンターが必要だと思う」と考えている店主の約半数が「ここ数年、自店で も外国人のお客様が増えた」と回答している<グラフ 9>。 外国人観光客向けの商店街各店舗の情報発信や、実際に訪れた外国人客への様々な案内業務を担える施 設が特に求められているといえるだろう。 <グラフ9> サービスセンター設置に対する考えと 外国人客の状況とのクロス集計 (平成26年10月「店舗オーナーアンケート」まちづくり松山調べ) 1.3 サービスセンターが必要だと思う (N=149) 49.0 あればよいとは思う (N=152) 33.6 サービスセンター設置の必要は感じない (N=16) 27.0 18.8 0% 30.9 50.0 25% 15.4 25.0 18.8 50% 75% 11.8 6.3 3.4 2.6 6.3 100% ここ数年、自店でも外国人のお客様が増えてきている 自店では特に増えたとは感じないが、商店街全体では増えてきていると感じる 商店街を訪れる外国人のお客様の数に変化はない 以前も今も、外国からのお客様を見かけることはほとんどない その他 4 おわりに 松山市を訪れる観光客の多くは「道後温泉」や「松山城」を訪れる。道後温泉と市内電車でつながり、 松山城の足元に位置する中央商店街は、本来、観光客の立ち寄り場所として好立地の条件を備えている。 しかし、現状では受け入れ態勢は十分とは言えず、観光客の取り込みに成功しているとはいいがたい。 観光客をより多く取り込むには、観光客にとって興味をひかれるような観光施設や店舗を揃える必要 もあるが、最初の取り掛かりとして、サービスセンターの設置は必要性が高く優先的に取り組みたい事 案である。特に外国人観光客にとっては、コミュニケーションの問題がなく、そこへ行けば知りたい情 報が得られる場所があることは重要であろう。 また、トイレや休憩所の設備、店舗や交通の案内などは、国内旅行者や買い物に訪れた市民にも有益 なものであり、求められている施設でもある。中央商店街の活性化のためにも、観光客に対する今後の 取り組みの第一歩として、サービスセンターの設置が望まれる。 4
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