九州建設アスベスト訴訟の控訴にあたっての声明 2014年11月20日 九州建設アスベスト訴訟原告団•弁護団 九州建設アスベスト訴訟を支える会 1 本日、我々は、去る11月7日に福岡地方裁判所(第1民事部)が言い渡した九州建設ア スベスト訴訟についての判決に対し、福岡高等裁判所に控訴した。 2 一審判決は、国に規制権限不行使の違法があったとして、建設現場の労働者のアスベスト 被害に対する国の責任を認めた。 他方、一次的に責任を負うべき被告建材メーカー企業の責任を認めなかった。建材メーカ ー企業は、アスベスト含有建材を製造し流通させることによって被害の根本原因を作り出す 一方で、建材の販売により多大な利潤を得た。これら建材メーカーの責任を免ずることが正 義に反することは明らかであるのに、判決は被災者ごとに加害者たる企業の範囲を特定でき ていない等として、被害者に不可能な立証を強いる判断枠組みをとり、被告企業らの責任を 否定した。 また、一審判決は、国の責任に関しても、救済対象を労働基準法上の労働者に限定し、一 人親方や中小零細事業主を除外するという不当な差別を行った。労働者と同様に就労し、労 働者と同様に石綿粉じんにばく露して石綿関連疾患を患ったという、建設現場における一人 親方らの実態から目を背けたものである。 我々は、主としてこれら2点についての不当な判断を覆すため、本日の控訴に至った。引 き続き福岡高等裁判所からこれら不当な点を改める判断を得るべく、全力で控訴審に取り組 む決意である。 3 他方、我々は一貫して、訴訟によらない包括的救済として、国や建材メーカー企業、ゼネ コン、商社などアスベスト関連企業の拠出による、建設作業従事者の石綿被害補償基金の構 想を提唱してきた。 一審判決は、建材メーカーの責任を結論において否定したとはいえ、建設現場において建 設作業従事者が石綿含有建材から発生した石綿粉じんにばく露した実態、それにより石綿関 連疾患を発症したという被害を認定している。そして、国が規制を怠った防じんマスク着用 義務づけや建材への警告表示義務づけ、警告掲示義務づけは、建材メーカーが建材への警告 表示を怠り、建設現場で石綿粉じんを発生させたことが前提となっている。 これら一審判決の判示を前提とすれば、一審判決が不当にも否定した個別の因果関係を前 提とせずとも、我々が提唱している基金構想による包括的解決を実現する根拠に不足はない というべきである。 我々は、控訴審を通じ、また控訴審と並行して、建設アスベスト被害の包括的救済を目指 して今後とも全力で闘う決意である。 以 上
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