を 歩 け ば ︱︱︱︱ 杉本 純 など類似点が多いことを述べた。このほかに も大学や学生数の突出した多さ、伝統的なお 菓子のおいしさと多様さ、古くからの喫茶店 やカフェの多さ、京料理やウィーン料理の独 自性、日本酒やワインの伝統と味など、両市 の類似点は枚挙にいとまがない。このうち、 両市に共通するおいしい水について今回はや や詳しく述べたい。 京都は琵琶湖の水量に匹敵する地下水に恵 まれており、梨木神社の染井の水をはじめと 前号まで二回にわたり、京都とウィーンと の間には、古都としての長い歴史と伝統の精 して、昔から市内各地にある多くの湧き水が 華とも言うべき皇室の面影を中心として、盆 地や川などの地形、水のおいしさ、人口数、 有名である。お好みの湧き水を愛用している 上:ウィーンのカフェは、アルプスの雪解け水で抽出したコー ヒーを出す店が多い (写真=P IXTA) 右:春の鴨川 ︿すぎもと じゅん﹀京都大学大学院工学研究科原子核 工 学 専 攻 教 授。 一 九 五 〇 年、 東 京 都 港 区 生 ま れ。 京 都 大 学 大 学 院 原 子 核 工 学 修 士 課 程 修 了。 日 本 原 子 力 研 究 開 発 機 構 炉 心 損 傷 安 全 研 究 室 長、 ウ ィ ー ン 事 務 所 長、 原 子 力 人 材 育 成 セ ン タ ー 長 な ど を 経 て、 一 一 年 か ら 現 職。 工 学 博 士。 専 門 は 原 子 炉 シ ス テ ム 安 全、 シ ビ ア ア ク シ デ ン ト。 著 書 に﹃ シ ビ ア ア ク シ デ ン ト と 新 型 軽 水 炉の熱流動挙動研究の現状﹄︵共著︶など。 スケッチで恐縮であるが掲載させていただく。 の雰囲気が少しでも伝わればと思い、素人の 小川の水の清れつさが特に印象的だった。そ る円すい形のきれいな立砂と神社内を流れる って有り難みを感じるとともに、細殿前にあ 勢神宮に次ぐわが国二番目の社格の神社と知 録されている上賀茂神社に初参拝した際、伊 つもうれしくなる。また昨年、世界遺産に登 段にきれいになっている鴨川の水を見るとい 余談であるが、鴨川沿いに徒歩や自転車で の通勤時、約四〇年前の学生時代に比べて格 が、それが両市の味に特徴を与えている。 ネラル成分が多い硬水であるのが少々異なる い軟水であるのに対して、ウィーンの水はミ ウムやマグネシウムなどミネラル成分が少な ィーン人の誇りでもある。京都の水はカルシ 例外である。おいしい水道水が飲めるのはウ 水は飲まないのが鉄則であるが、ウィーンは ロンドン、ニューヨークでも安全のため水道 水である。外国の大都市では、例えば、パリ、 プに入った水が出てくるが、それがこの水道 ィーンのカフェでコーヒーを注文するとコッ 一区をはじめとする市内中心部で飲める。ウ お陰で、アルプスからのおいしい雪解け水が 一方、ウィーンでは一八七三年に当時のフ ランツ・ヨーゼフ皇帝が整備した水道施設の いしいとの回答が最多の四割を占めた。 水、水道水の三種の中で水道水がいちばんお き水では、国産および外国産のペットボトル 都市の一三〇〇人以上の市民を対象とした利 道水もおいしく、二〇〇九年に実施された京 名酒もこの名水に支えられている。京都の水 紹介されていた。伏見をはじめとする京都の 毎日運んでいる東京の有名料理店がテレビで いと聞く。東名・名神を使って京都の名水を も、湧き水を料理に利用しているところが多 市民も少なくない。由緒ある料亭やそば屋で 国際的な観光都市、国内随一のノーベル賞受 著者のスケッチ画 賞者数、近年世界文化遺産に登録されたこと 京都の地下には豊富で良質な水が蓄えられている 5 2013 春 No.477 三洋化成ニュース 6 おいしい水︵京都とウィーン︶ 311
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