看護学部 - 高崎健康福祉大学・大学院

3)看護学部
(1)看護学科
【到達目標】
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看護専門職育成のための学士課程カリキュラムとして、段階を追った学習
内容をつくり上げる。
効果的な教育実践を進めるための指導体制をとる。
教育効果を評価・点検する体制をつくり、教育内容・方法の改善を図る。
【現状説明】
①教育課程等
(学部・学科等の教育課程)
看護学部看護学科は、
「人類の健康と福祉に貢献する」という本学の理念にもとづき、看
護専門職に求められる社会的使命を自覚し、生涯にわたり能力の開発向上に努めることので
きる看護師等を育成し、教育目標を実現するための学士課程としての教育課程を体系的に構
築した。カリキュラム編成にあたり、基軸となる四つ分野「人間」
「環境」
「健康」
「国際」を
設定し、各分野において教育すべき内容を吟味し、科目内容を抽出した。その科目内容を人
間学科目群、看護基盤科目群に割り当て、その上に看護専門科目群をおき、全体として図 1
に示すようなカリキュラム構造と、表1に示すような科目配置を決定した。
カリキュラム構造図
看護専門科目群
看護基盤科目群
人間学科目群
図 1 カリキュラム構造図
―54―
表 1 カリキュラムデザイン
1 年次
前期
人間
○人間発達論
2 年次
後期
○人間行動学
前期
●論理学
3 年次
後期
前期
4 年次
後期
前期
後期
●倫理学Ⅱ
○哲学
○文学
●倫理学Ⅰ
環境
○生活科学概論
○自然環境
◎経済学
◎社会学
◎日本国憲法
○化学
健康
人間学科目群
○心理学
○生物学
●健康科学概論
○健康・運動実践学
○障害健康増進論
国際
●英語Ⅰ
●英語Ⅱ
●英語Ⅲ
●英語Ⅳ
○フランス語入門
○比較人類学
○現代中国語
○医療英語
○コンピュータ実習初級
●コンピュータ実習中級
○国際関係論
○看護英語
○コンピュータ実習上級
人間
●解剖生理学Ⅰ
●栄養学Ⅰ
●生化学
●栄養学Ⅱ
○臨床心理学
●解剖生理学Ⅱ
環境
●リスクマネジメント
●疫学・保健統計
○社会調査得論
●保健福祉行政論
●医療概論
●病理学
●微生物学
●臨床医学Ⅰ
○リハビリテーション概論
○心の健康
(系統別医学 A)
●臨床医学Ⅱ
●薬理学
○医療情報システム論
(系統別医学 B)
健康
看護基盤科目群
●公衆衛生学
●臨床医学Ⅲ
(老年医学)
●臨床医学Ⅳ
(小児医学)
●臨床医学Ⅴ
(女性医学)
●臨床医学Ⅵ
(精神医学)
国際
○リラクゼーション概論
○国際保健医療論
○NPO 論
●看護学原論
●看護学方法論Ⅱ
●基礎看護学実習Ⅱ
●成人看護学実習Ⅰ
●看護研究概論
●地域看護学実習
●看護管理学
●フィジカルアセスメント
●成人看護学方法論Ⅰ
●成人看護学方法論Ⅰ
●成人看護学実習Ⅱ
●成人看護学実習Ⅰ
●専門看護活動論Ⅰ
○専門看護活動論Ⅱ
●基礎看護学実習Ⅰ
●基礎看護技術Ⅱ
●成人看護学方法論Ⅱ
●成人看護学方法論Ⅱ
●老年看護学実習
●成人看護学実習Ⅱ
●研究ゼミナール
○国際看護論Ⅱ
●国際看護論Ⅰ
●看護学方法論Ⅰ
○セルフケア論
○ターミナルケア論
●小児看護学実習
●老年看護学実習
●基礎看護学実習Ⅰ
○感染看護
○クリティカルケア
●母性看護学実習
●小児看護学実習
●成人看護学概論
●老年看護学方法論Ⅰ
●老年看護学方法論Ⅱ
●精神看護学実習
●母性看護学実習
●老年看護学概論
●小児看護学方法論Ⅰ
●小児看護学方法論Ⅱ
●在宅看護論実習
●精神看護学実習
●小児看護学概論
●母性看護学方法論Ⅰ
●母性看護学方法論Ⅱ
●地域看護活動論Ⅱ
●在宅看護論実習
●母性看護学概論
●精神看護学方法論Ⅰ
●精神看護学方法論Ⅱ
●地域看護活動論Ⅲ
●精神看護学概論
○家族看護論
●地域看護学概論
●地域看護学実習
●在宅看護概論
●地域看護活動論Ⅰ
●ヘルスカウンセリング
●地域看護組織論
看護
看護専門科目群
●人間関係援助論
●基礎看護技術Ⅰ
●研究ゼミナール
●在宅看護技術論
○ケアネットワーク論
◎看護学特論Ⅰ
◎看護学特論Ⅱ
◎看護学特論Ⅲ
●必修科目 ◎選択必修科目 ○選択科目
本学科の卒業に必要な単位数は、大学設置基準の定める 124 単位にもとづき 126 単位と設
定した。卒業時に看護師および保健師国家試験受験資格が得られるよう保健師助産師看護師
学校養成所指定規則に対応する内容となっている。また、学校現場で児童及び生徒の心身の
健康を守る教育者として養護教諭の役割が注目されている折、希望する学生に対して卒業要
件とは別に所定の単位取得によって養護教諭 1 種の資格取得が可能となるカリキュラム編成
となっている。
看護師、保健師を目指す者にとって、倫理的感受性と患者の権利擁護者としての責任感の
育成はきわめて重要であり、そのため本学においては入学時のフレッシュマンキャンプの中
で、国立療養所栗生楽泉園を見学しハンセン病患者に対する差別の歴史と現実を理解し、患
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者の人権を守る医療者としての自覚を促している。
授業科目としては人間学科目群の中に
「倫
理学Ⅰ・Ⅱ」を配置し、倫理とは何かという問いを深めさせている。さらに看護専門科目群
の「看護学原論」において看護の中で問われる倫理的問題について考え認識を深め、
「看護管
理学」において、実習を通して問われた倫理的問題をグループで話し合い、現実的な解決策
を見出せる力を養わせている。
専門科目については、看護の専門的知識、技術、態度を習得するために看護基盤科目群及
び看護専門科目群を設定した。看護基盤科目群は必須科目 24 単位、選択科目 3 単位の計 27
単位を卒業要件とし、解剖生理から疾病論までを 2 名の医師の資格を持つ教員が科目間の調
整をしながら系統だって学びが深まるよう教育を行っている。
看護専門科目群は 75 単位に設定し、基礎看護学、成人看護学、老年看護学、小児看護学、
母性看護学、精神看護学、地域看護学・在宅看護論、および専門・国際看護論の領域を設定
した。特に、専門・国際看護論は本学独自に設置したものであり、医療・看護の質の向上が
求められる中でグローバルな視野から発展と統合を目指している。
また、自己学習力の低下が問題となる中で、学生が自ら課題を明確にし、主体的学習能力
を高めるために、
「看護学特論」
を設け、
ゼミナール形式で探索的学習を行えるよう配置した。
また 4 年間の集大成として専門領域とテーマを選択し、
科学的思考や研究手法を学び自主性、
創造性を育てるために研究ゼミナールを設けた。
一般教養科目の編成においては、学士課程教育として幅広い教養と人間理解が重要である
と考え、人間学科目群に計 24 単位を配置した。看護を目指す者として客観的判断力と理論的
思考をもとに自主的に問題解決に当たる能力が必要と考え、
「論理学」において医療現場にお
ける事例をもとに解決策を見出す演習を中心に行っている。一方、医療の世界においても情
報化社会のめまぐるしい進展と IT 化の進行の中で、
情報処理能力が不可欠になってきており、
その要請に応えるために「コンピュータ実習」を初級、中級、上級と学生の習熟度に応じて
クラス分けして実践的に学べるよう配慮している。
外国語科目は、本学部の特色でもある「国際」という基本軸にもとづき、国際化の進展に
適切に対応する外国語能力の育成と国際的視野を持ち看護の機能と役割を広い視野で理解で
きる人材を育成するために、外国語科目を 1 年次から段階的に習得できるよう編成した。特
に入学時点で英語のプレイスメントテストを行い、その結果をもとに「習熟度別クラス編成」
による学生のレベルに応じた授業を行っている。
専門科目においては、看護専門科目群が 75 単位であり、本学部の卒業要件単位の 59%を
占めている。看護基盤科目群を加えると 102 単位であり、総単位数の 80%を占め、看護専門
職を育成するために「専攻に係る専門の学芸」を深く学修できる教育体制となっている。教
養科目である人間学科目群は 24 単位であり、総単位数の約 2 割を占めている。教養科目中の
外国語科目が占める割合が高く、
「国際」を特色とする本学部の教育目標に合致している。
また、必須・選択科目別では、看護専門科目群の必修割合が 88%と高くなっている。これ
は看護専門職の育成にとって不可欠な科目が多いためである。1、2 年次は、人間科目群を多
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くし、3、4 年次は、看護専門科目群の選択科目を配置し、学生の習熟度に合わせて、段階的
に選択科目を選べる工夫をしている。
(カリキュラムにおける高・大の接続)
推薦入学者に対しては入学前教育として、外国語能力の向上と解剖生理学を学ぶ上での基
礎知識の復習を目的に英語および生物の問題集を配布し、E・キューブラー・ロス著「死ぬ
瞬間」の読書を課している。提出された問題集の解答および課題図書のレポートは、教員が
添削したのち返送し、自己学習をするように促している。
(カリキュラムと国家試験)
本学部では、表2に示すように、看護師および保健師国家試験受験科目に対応したカリキュ
ラム編成としている。
表2 科目編成と国家試験科目
本学部科目編成
看護基盤科目群
看護専門科目群
看護師国家試験科目
人体の構造と機能
疾病の成り立ちと回復の促進
社会保障制度と生活者の健康
基礎看護学 在宅看護論 成人看護学
老年看護学 小児看護学 母性看護学
精神看護学
保健師国家試験科目
疫学・保健統計
保健福祉行政論
地域看護学
(医・歯・薬学系のカリキュラムにおける臨地実習)
本学部のカリキュラムにおいて臨地実習は、看護専門科目群に配置されている各看護学を
構成する科目の一つである。臨地実習の科目(単位・時間数)は、保健師助産師看護師養成
所指定規則に基づき配置している。また、各看護学の臨地実習は表 3 に示すように、その目
的・目標に応じて 1 年次から 4 年次にかけ、基礎から応用へと段階を踏むよう履修基準を設
け実施している。
臨地実習のねらいは、看護師・保健師に必要な知識・技術を習得し、専門職としての倫理
観を核とする自己成長の基盤を形成することであり、病院、老人保健施設、訪問看護ステー
ション、保健センターなどの場において、看護の対象であるクライアントと家族らとのかか
わりの中から、看護実践能力を培う授業の一環として位置づけられている。
指導体制については、年度初めに各実習施設と合同で臨地実習協議会を開催し、本学の教
育目的・目標、学習内容について説明し、理解・協力をお願いしている。各科目担当者は実
習施設と常に連絡、調整を行い協力し合いながら学生指導にあたっている。また、学習環境
である実習施設に医学・看護学関係図書、視聴覚教材を配備し学生の学習内容を充実させる
ように配慮している。学部内では円滑な臨地実習をめざし開学時より臨地実習委員会を立ち
上げ、臨地実習計画、実習調整、問題点の協議、臨地実習協議会や研修会などの企画・運営
―57―
を行っている。
表 3 臨地実習概要
年次
科目名
単位数
時間数
目 的
コミュニケーションや日常生活援助を通してクラ
1
基礎看護学実習Ⅰ
1 単位
45 時間
イアントや家族との人間関係を形成し、対象の理
解を深める。
2
3
対象の健康問題・健康課題について問題解決思考
基礎看護学実習Ⅱ
2 単位
90 時間
成人看護学実習Ⅰ
4 単位
180 時間
基礎看護学実習を基盤として、あらゆるライフス
成人看護学実習Ⅱ
4 単位
180 時間
テージにありさまざまな健康段階の健康問題・健
老年看護学実習
4 単位
180 時間
康課題をもつクライアントや家族を総合的にとら
小児看護学実習
2 単位
90 時間
母性看護学実習
2 単位
90 時間
精神看護学実習
2 単位
90 時間
在宅看護論実習
2 単位
90 時間
を養うため看護過程を用いて看護を学ぶ。
え、看護過程を展開し看護の実践能力を養う。
地域社会で生活するクライアントや家族の保健ニ
3・4
地域看護学実習
3 単位
135 時間
ーズと地域の健康問題を包括的にとらえ、課題を
解決するための基本的な看護実践方法を習得す
る。
(社会人学生、外国人留学生等への教育上の配慮)
編入学生に対してこれまで習得してきた知識・技術を尊重し、さらにその学びを発展させ
るために学士課程として必要な編入学生用カリキュラムを設定している。また、編入学生の
入学前の教育背景が違うことを考慮し、ⅰ)看護学の学士課程の根幹をにない看護専門職の
態度形成に重要な科目、ⅱ)専門・国際看護活動に関する科目、ⅲ)保健師教育に必要な主
要科目についてはすでに履修していても再履修するようにした。履修方法については、編入
学生用カリキュラムガイドを配布し入学時にガイダンスを行っている。
特に平成 18 年度、19 年度の編入学生に対しては、学年進行中という事情のもと編入学生
のみの学年となったため、特別編成で時間割を組み対応してきた。さらに、編入学生だけの
クラスを編成し専任の教員が担任とアドバイザーを兼ねて履修相談を始めとする独自のサポ
ート体制をとっている。
②教育方法等
(教育効果の測定)
教育上の効果を測定する方法として、特に、看護専門科目において、総括的評価とは
別に記述テストによる診断評価、学生個々の目標達成の程度や目標達成に向けた方策を
明確にするための教員自作のテストや評価表を用いた面接などによる形成的評価が行わ
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れている。
看護技術や看護方法論に関する科目では、事前課題の学習を踏まえてグループや個人で
の演習や討議を経て、レポートをまとめ発表する学習も多い。これらの科目では、実習の各
段階において診断的評価を用い、学習の過程において形成的評価が実施されている。最終的
には、総括評価としてのレポートや実技テストによる評価、出席による評価の占める割合が
大きい。
臨地実習における総合評価は、看護実践能力を評価するために、認知領域、精神・運動領
域、情意領域における行動目標を明確にし、行動目標がどの程度達成できたのかを測定して
いる。レポートによる評価、出席による評価も加えて総合的に評価している。
本学部は、完成年次を迎えていないために総括的評価としての学士課程終了時の縦断的評
価は未実施である。
(成績評価法)
学生の質を検証・確保するための方法として、2 年次後期の「基礎看護学実習Ⅱ」
、3 年次
の各専門領域実習および 4 年次の養護実習においては、履修承認基準を設けている。そのた
め、年度末には単位修得状況を基に履修承認判定が実施され、判定結果は、教授会を経て学
生に伝えられ、今後学生がどのように履修をしたらよいのか個別指導が行われる。この履修
承認基準については、入学時ガイダンスならびに各学年のガイダンス時に学生には説明して
いる。
特に、知識、技術、態度を統合した臨地実習科目における学生の学習内容、学習評価につ
いては、科目担当教員が実習委員会で報告し、全教員が情報を共有できる仕組みが整えられ
ている。
(教育改善への組織的な取り組み)
教育指導方法の改善を促進するための組織的な取り組みとして、本学部教務委員会が中心
となって、学期(前期、後期)終了時に科目担当者全員に教員アンケートを実施している。
アンケート内容は、開講時期、担当教員数の適切さ、使用教材、授業展開での工夫と課題、
学生の学習への取り組みと課題などについてである。このアンケート結果および学生による
授業評価を資料として、年度末に看護学部専任教員によるカリキュラム検討会を 1 日かけて
実施している。平成 19 年度には学部 1 年生の科目、平成 20 年度には編入生および学部 2 年
生の科目について検討し、教員間の授業内容の相互理解、教育方法の討議、カリキュラムに
おける課題の明確化と解決に向けての取り組みを具体的にしている。検討会をふまえ、各教
員が授業内容や教育方法の改善に取り組んでいる。また、関連する科目の教員同士が授業内
容の順序性や重複点・不足点についてさらに検討し、次年度の授業に反映させている。
カリキュラム検討会を契機に平成 20 年度には、
看護過程の展開と教育方法について看護学
部専任教員による討議が行われた。また、臨地実習指導における教育方法についての勉強会
―59―
も実施された。
(授業形態と授業方法の関係)
授業形態は、講義、演習、実習に分かれているが、看護技術の演習や各分野の看護方法論
などの看護専門科目においては、教師と学生の対話、学生同士の対話を促進するためにグル
ープ・ディスカッション、グループ・ワーク、グループ発表などの演習を取り入れている。
モデル人形や医療機器・器材を使用し、デモンストレーションや学生同士の体験学習を重
視した科目や、具体的な現象(新聞記事、物語、ビデオ、事例、経験など)を教材として使
用し、
抽象的な内容を具体的な現象との関連から理解できるように工夫している科目も多い。
演習のある科目では 8 名から 12 名の学生を教員1人が指導し、臨地実習科目では、4 名か
ら 8 名の学生を教員 1 人が指導しているが、非常勤助手を雇用している割合は 5 割から 3 割
程度である。
③国内外における教育研究交流
国際的視野で異文化を理解し、海外の看護教育・医療施設の見学を通して国際的な知識や
技術を深めることを目的として、平成 19 年度に、米国ニューヨーク州における海外研修を実
施した。また、インドネシアの看護大学との研究交流の準備が進められている。
【点検・評価】
①看護専門職のための学士課程カリキュラムとして、段階を追った学習内容をつくりあ
げる。
本学部のカリキュラムデザインは漸進型であり、学年進行と共に体系的に学べるように編
成してある。1 年次は人間学科目群が多く、看護基盤科目群、看護専門科目群の比重が漸次
多くなる配置としたため、段階的に学べる点で効果的といえる。
看護の学士課程としての教育として、人間性をはぐくむ教養教育の充実は不可欠であり、
本学部の人間学科目群は総単位数の約 2 割を占めている。日本における看護系大学の 7 割に
おいても教養科目は卒業要件の約 2 割を占めており、
本学部の場合もほぼ妥当な量といえる。
これらの教養科目については、本学部が健康福祉学部、薬学部を併設した大学である特色を
活かし、学部を超えて共通のクラスで開講している科目もある。その中で学生間の交流を深
められ、
多角的な視点から物事を考えられる環境が整えられている点は、単科の大学にはない
強みといえる。
人間学科目群中の国際分野が占める割合が本学部では 42%を占めていることは、
「国際」
を特色とする本学部の教育目標に合致しているといえる。国際については、講義のみならず
肌で異文化を理解することが重要と考え、海外研修制度の充実を掲げ実践してきた点は評価
できる。学生の海外研修としては、米国のみならず、インドネシアにおける看護の現状の理
解と、国際支援のあり方を含めて多角的視点から理解できる条件が整えられてきた。現在国
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際交流委員会において検討がされてきているが、時期や体制等解決すべき課題が残されてい
る。
本学部のカリキュラム内容全体については、 開設して 3 年目の途上であり明確な評価を
出す段階には至っていないが、カリキュラム検討会議の中で幾つかの課題が出されている。
第 1 に、
看護基盤科目群と看護専門科目群の進度上で齟齬を生じている科目がある。
例えば、
解剖生理学と基礎看護技術が同時進行となり、知識が充分でないまま技術のみを学ぶ弊害が
起きている点である。第 2 に、3 年次に実習が集中し、実習と講義との相互作用の中で学生
の学びが深まるシステムができにくい。その結果、開設科目が 2 年次に集中し学生に負荷が
かかっている。第 3 に、カリキュラムにゆとりがなく、演習や体験学習など主体性、自主性
を高める教育方法が取りにくい等、カリキュラム上の問題点の改善が必要とされてきた。
一方、少子・高齢化社会の進展、医療制度の変革、医療の高度化・専門化、医療安全の確
保などの看護を取り巻く環境の変化のなかで、基礎教育と臨床現場のギャップを埋め臨床実
践能力の向上を目指して平成 21 年度より保健師助産師看護師養成所指定規則が改正される
にあたり、平成 20 年度に入り毎週 1 回学部長、学科長、各領域の代表による新カリキュラム
検討会を開催し、その対応策を検討してきた。
その結果、改正の意図である実践的看護技術の向上のためには、基礎看護技術の時間数を
増やす必要があることが判明した。また、コミュニケーション技術の向上については、
「人間
関係援助論」
「ヘルスカウンセリング」が既に配置されていることや、災害看護や国際看護な
ど必要な科目が配置されていることが確認された。改正に対しては、現行のカリキュラムを
微調整することで対応可能であり、その意味では本カリキュラムは時代の要請を先取りした
ものであると評価できる。
②看護を目指す学生に対して、効果的な教育実践をすすめるための指導体制をとる
大学全入時代に入り、多様な学生に対応するため、基礎的能力の向上と看護に対する理解
を目指して導入教育を開始してきた。それがどの程度の効果を上げてきているか、検討が今
後の課題となっている。
学生に対する履修指導及び毎学期ごとのアドバイザーによる指導をおこなってきており、
学生の履修上の悩みや人間関係等を把握し、学生のサポートを丁寧にしてきた点は評価でき
る。一方、心身に問題を抱え対応に困る学生も増えてきており、アドバイザー個人への負担
を軽減するとともに、組織的な解決に向けた取り組みの必要性に迫られた。そのため、平成
19 年、心身に問題を抱え履修に困難をきたしている学生に対する支援と対策のための委員会
が開始され、効果的な支援体制ができている点は評価できる。
臨地実習は専門看護師育成の中で重要な位置を占め、臨地実習における効果的な指導体制
を作り上げることが大きな課題となっている。
本学部では臨地実習施設が 43 施設に及ぶため、
施設間での教育目標の共有化と教育レベルの均質化が必要となっている。そのため臨地実習
協議会を年1回開催し、大学と臨地実習施設とが互いに理解し合い、教育目標の達成に向け
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連絡・相談・調整を行いよりよい関係性を維持し連携を深めていく努力をしてきた点は評価
できる。大学増加による実習施設不足のなかで、新規臨地実習施設開拓を含めた実習環境の
整備が課題となっている。
また、編入学生への教育上の配慮として、平成 18 年度、19 年度の編入学生は、小人数特
別編成クラスで対応してきた結果、円滑に必要な単位は履修できた。しかし、平成 20 年度か
らは学部生と同じ授業を大部分受講することになるため、編入学生の成熟度に応じた対応が
課題となる。
③教育効果を検討する体制づくり、教育内容・方法の改善を図る
現在、教育効果を検討する組織的取り組みは、まず全学的に学生へ向けて行っている授業
評価とそれを受けて教員の振り返りを兼ねたアンケート調査があげられる。さらに看護学部
は平成 18 年の開学時より看護学部専任教員によるカリキュラム検討会を実施しており、
全学
的な取り組みのほかに教育効果を評価できる独自の体制をつくり、
取り組んでいる。
しかし、
カリキュラム全般を考えると今後看護学部以外の教員(兼任も含む)を含めた情報交換や教
育の質の向上を目指した取り組みが必要な状況であることは否めない。そのため各教員がカ
リキュラム検討会や学生による授業評価を参考にして授業内容、教育方法の改善に取り組ん
でいる程度や内容についての実態を把握する必要がある。加えて学生が授業評価からどのよ
うに授業の改善に反映させるかを知ることができるようなシステムの検討が必要である。
また、専門職教育ではその特殊性から授業方法を工夫し分かりやすい授業を展開すること
は重要であるが、講義・演習・実習の授業形態において教員の人的確保や演習室や講義室、
メディアが効果的に活用できる設備など物的環境が十分とはいえない状況も認められる。
現在、本学部の卒業生は編入 1 期生 5 名のみであるが、学部の修業内容を活かした分野の
進路選択はできている状況である。
しかし、
開設から 2 年目であり卒業生の進路状況からは、
教育効果が反映されているか現時点で判断することはできない。
―62―