出 典 : JASE-W 国 際 展 開 技 術 集 http://www.jase-w.eccj.or.jp/technologies-j/index.html F-02 キーワード Y3 装置・設備 Z4 電力 S5 再生可能 E L 学術研究、専門・技術サービス業 千代田化工建設株式会社 有機ケミカルハイドライド法水素貯蔵輸送システム –SPERA 水素Ⓡシステム 特 徴 世界の永続的な発展には再生可能エネルギー利用が不可欠です。再生可能エネルギーから製造した水素を 燃料として「貯める」「運ぶ」を行う水素エネルギーの利用は将来の低炭素社会で重要な役割を果たすこと が期待されています。その実現には、水素を石油や天然ガスのように、大規模に貯蔵輸送できる技術が必要 ですが、そのような技術は確立されていませんでした。当社は、世界に先駆けて水素エネルギーを大規模に 貯蔵輸送できる技術を開発、“SPERA 水素Ⓡ”システムと命名して実用化の準備を進めています。“SPERA” とはラテン語で“希望”を意味する言葉です。 本システムは有機ケミカルハイドライド法を採用しています。この方法では、水素をトルエンと化学反応 させて分子内に水素を取り込んだメチルシクロヘキサン(MCH)として常温・常圧の液体状態で大規模に 貯蔵輸送を行えます。トルエンと MCH はガソリンや軽油の成分なので、ガソリンと同様に常温・常圧の液 体状態で「貯める」「運ぶ」ができ、水素を大規模に貯蔵輸送する際の危険性を従来のガソリンと同様のレ ベルにまで低減できる特長があります。また、利用場所で水素を取り出した MCH は元のトルエンに戻ります。 トルエンは水素の入れ物として水素製造場所に戻し、再び MCH として繰り返し利用できます。 この方法は 1980 年代から提唱されていましたが、安定的に水素を取り出す技術が開発されていませんで した。当社では、2002 年より開発の鍵となる脱水素触媒の研究開発に着手し、2009 年に脱水素触媒の開 発に成功しました。その後、この触媒を利用する簡易な多管式固定床反応器を用いた脱水素プロセスの開発 を完了して、2013 年にパイロットプラントを横浜の R&D センターに建設しました。延べ約 10,000 時間 のデモンストレーション運転を行って、安定な性能を確認するとともに、実用化に必要な各種のデータ取得 を行い、システム全体(“SPERA 水素 TM”システム)の技術確立を完了しました。 <有機ケミカルハイドライド法の特長> ・水素エネルギーをガソリンと同レベルの危険性で大規模に貯蔵輸送できる安全性の高い方法。 ・常温・常圧の安全な条件で長期間、水素をロスすることなく大量貯蔵や海上輸送及び陸上輸送が可能。 ・既存のケミカルタンカー(5 万トン)で約 3,000 トン(FCV60 万台分)の水素を海上輸送可能。 ・他の方法に比べてエネルギー効率が高く、実用化時の性能が実証されている唯一のシステム。 概 要 or 原 理 図 1 に“SPERA 水素 TM”システムが採用している有機ケミカルハイドライド法の工程を示します。 水素化反応は発熱反応、脱水素反応は吸熱反応です。これらの反応の際に出入りする熱量は、水素エネル ギーの約 30%に相当します。水素化反応で発熱した熱は回収して水素製造場所で有効に再利用されます。 また、脱水素反応に投入する熱エネルギーは脱水素反応によって水素エネルギーに変換されます。これによ り、発電所、工場やゴミ焼却等から得られる熱エネルギーの水素エネルギーへの変換利用が可能です。 F-02 省エネ効果 & 特記事項 人類の持続可能な成長を実現するた めには、炭酸ガスの排出を抑制して温 暖化を防止すると同時に、エネルギー 消費量全体は増大できるシステムの確 立が不可欠です。再生可能エネルギー と水素のシステムは、地球温暖化問題 とエネルギー問題を解決する究極的な エネルギーシステムです。 本システムを利用した水素サプライ チェーンの構想を図 2 に示します。最 初は、化石資源から製造した水素の大 規模利用を進めます。発生する CO2 は 原 油 の 促 進 回 収(EOR:Enhanced Oil Recovery) や CCS(Carbon Dioxide Capture and Storage)で貯留します。 回収された高濃度の CO2 は化学製品 の原料として利用できます。すでに合 成ガスやメタン、メタノールなどの製 造は技術的には可能です。将来、再生 可能エネルギーからの安価な水素製造 が可能になれば、化石資源が枯渇して も CO2 と水素から多くの化学品製造が 可能になると考えられます。 この構想の最終ゴールは再生可能エ ネルギーの大規模貯蔵輸送の実現を通 じて、グローバルに低炭素社会に移行 することです。このように、当面は必要な炭酸ガス排出の削減を目的として、化石エネルギーの補助エネル ギーとして水素を利用しながら、再生可能エネルギー利用を拡大することで、インフラを変更することなく スムーズに将来の低炭素社会へ移行するとともに、エネルギー問題の解決を目指す構想です。 また、次の 4 件の開発を NEDO(新エネルギー・産業技術総合開発機構)プロジェクトとして遂行して います。 ① 水素サプライチェーン実証:図 3 に示す実証プラントで確立された技術を用いて、2020 年に海外 の副生水素を日本に輸送、天然ガス / 水素の混合燃料で発電するチェーンを小規模で実証するプロ ジェクトです。 ② 水素ステーション開発:本システムを適用した水素ステーションの開発です。 ③ 再生可能エネルギー / 水電解 /SPERA 水素システム開発:風力の変動する電力から水電解で水素を 製造、効率的に貯蔵輸送するシステム開発で、早期の再生可能エネルギーの大規模利用を目指した 開発です。 ④ 膜分離型小型脱水素反応装置システム開発:将来に向けたコンパクトな脱水素反応ユニットを目指 して、膜分離型脱水素反応ユニットの開発です。 導入実績または予定 国内 デモンストレーションプラント 場所 千代田化工建設㈱ リサーチパーク(横浜市神奈川区) 規模 50Nm3/h(貯蔵および発生水素量) 海外 なし コンタクト先 千代田化工建設株式会社 〒220-8765 横浜市西区みなとみらい四丁目6番2号 事業開発本部 水素チェーン推進セクション 電話番号:045-225-4872 FAX番号:045-225-4990 URL : http://www.chiyoda-corp.com/
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