パネリスト:森田 喬(法政大) [事前質問回答]

パネリスト:森田 喬(法政大)
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略歴:早稲田大学理工学部,同大学院建設工学都市
[A02]
『3年後:表現の3−4次元化の進展
5年後:リアルタイム情報の発信・受信・表示
計画修士課程卒業.1972 年フランス政府給費留学
10年後:あるがままの実空間.情報を発信する
生として渡仏.パリにおいてパリ大学,国立高等
実空間.実空間を記号化した実物大の地図空間.
美術学校で学んだ後,国立社会科学高等研究学院
ハンディな地図空間.デスクトップの地図空間な
(EHESS)博士課程終了(情報コミュニケーショ
どが混在あるいは入れ子構造になり.これらを利
ン科学博士).現在,法政大学工学部教授,日本
用者が状況・必要性に応じてダイナミックに使い
学術会議地図学研連委員長,国際地図学会副会長,
分けて行動する.すなわち.実空間および地図空
日本国際地図学会地図認識専門部会主査.著書に
間とリアルタイムに直接対話するのが新しい
「神の眼 鳥の眼 蟻の眼」,「近代都市計画の百
Spatial Interaction のイメージか?
年と未来」(共著),「図の記号学」(訳書)などが
30年後:GIS の個別化・方言化・自己表現化+
ある.
イメージ世界(虚構空間)の表現』
[事前質問回答]
[ Q 0 3 ] (アートの欠如による損失と妥当性)
※ 以下の質問では,GIS とはコンピュータを使った地図
「地図とアートとは本来近い関係でしたが,現在の
システムやナビゲーションシステムなどすべてを包含
GIS ではアートの面がなくなっていると思います.
する(広義の)概念と捉えてください.
失われた点を論じて下さい.また,逆に,アート
を無くしたために,達成できている点も多いと思
[ Q 0 1 ] (現在の G I S v s . 紙地図)
「現在の GIS と従来の紙地図を比較して,注目すべ
き良い点と悪い点を挙げてください.」
います.これも論じて下さい.」
[A03]
『個別性と標準化の相克であって.標準化により個
[A01]
別的意図によるコミュニケーションおよびイマ
『GIS のよい点は.視覚情報が動的で操作性に富む
ジネーションの刺激力が低下する一方.均質空間
ことで.悪い点は操作にかからないと情報内容が
を構築し情報プラットホームを提供できるよう
表出しないこと.逆に紙地図のよい点は.情報内
になった.両者は対立するのではなく.参照空間
容が表出したモノとして安定していることで.悪
としての均質空間を土台として.さらに個別性・
い点は硬直的で操作・加工に労力がいること.』
アート性が追求されれば.作る人と使う人が分離
し内容が平均化した「近代」を乗り越える方略の
[ Q 0 2 ] (現在の G I S v s . 未来の G I S )
一助となり得る.アート性は情報表現の或るレベ
「未来の GIS は,現在の GIS とは何が違っているの
ルであって.情報内容の新鮮さ・分かりやすさ・
でしょうか?ただし,未来というのを3年後,5
視覚的鮮やかさは美的であることに通じるとこ
年後,10 年後,30 年後で予測してみてください.
ろがある.標準化された二番煎じの情報は鮮やか
特に,全く新しい形の Spatial Interaction とは
さに欠ける.更に.アート性はイメージ世界(虚
何かについて論じてください.」
構空間)の構築・表現にも寄与する.』
[ Q 0 4 ] (K e y T e c h n o l o g y a n d F r a m e w o r k ?
- for Future Cartography)
[ Q 0 6 ] (技術とアートの融合への道)
「一般に,技術者はアートに弱く,アーティスト
「未来の GIS では,どのような技術やフレームワ
は技術に弱い.両方が見えないために答えが出
ークが最も重要になるでしょうか? 3 年後,5
せないことが多いように思えます.これは,
年後,10 年後,30 年後で予測してください.」
Mediator の必要性にもつながる考え方でもあ
[A04]
『3年後:動的表現
ると思われます.この問題の解法としては,技
術者がアートを学ぶ,そして,アーティストは
5年後:エージェントやファシリテーター
技術を学ぶというのが現実的な展開で,これを
10年後:認知プロセスに応じたヒューマン・イ
学ぶための環境を整えるべきだと考えられま
ンターフェース
す.しかし,これは簡単には実現しないでしょ
30年後:いつでも・どこでも・イメージの世界
う.これを妨げているものは何でしょうか?ま
でも利用』
た,最初から教育として,両方の才能を有する
人材を育てるべきでしょうか?,あるいは,両
[ Q 0 5 ] (安価で正確な位置情報が実現したら?)
方の人々が協調作業を行い易い環境を作るべ
「現在の時計は我々に正確で安価な時間情報をも
きでしょうか?これを本当に実現するための
たらし,これが社会の根幹を形成しています.
具体的フレームワークはどのようにものにす
もし,正確で安価な位置情報が手に入るように
べきでしょうか?」
なると,それは我々の生活や社会をどのように
[A06]
変革するでしょうか?特に,身体のデジタル化
『技術とアートを両方学ぶ環境が整っていないの
に直接つながり,電子秘書のようなエージェン
は.細分化を突っ走ってきた20世紀の「知」の
トが実現する/出現する展開が予想できます.
体系の異常発達さによる.未分化の時代には当然
そのときの未来像と実際には越えることがで
並存していた.特に.日本の高等教育では異なっ
きない壁は何かを論じて下さい.」
た分野の並列学習や.接木学習(何かを学んだあ
[A05]
とに別の分野を学ぶ)が行いにくい.ただ.建築
『身体のデジタル化の意味が不明ですが.自分の位
学科や芸工大系は.技術とアートが並存し総合化
置.目的地・参照すべき物の位置が常に明らかに
を目指している.もっとも.両方の才能を有する
なっていれば.目的に応じてエージェントが手助
人材が続々と育っているかは疑問であり.やはり
けをしてくれるということでしょうか.この場合.
個人では技術とアートで主・従の関係は生じる.
平均的な目的合理的な行動には役立てやすいで
従って.どちらかを主とする個人が集まって協
しょうが.個別的・個人的な空間探索のような発
調作業を行いやすい環境を作るのが無理がない
見的行動にはあまり意味がないかもしれません.
が.実際に協調作業を要求する適切なプロジェク
つまりデータ化されていない空間の単位に関心
ト.テーマ.そしてコンダクターの設定が肝要で
が向く場合は適切な情報を取り出すのが困難で
ある.』
す.』
[ Q 0 7 ] (空間認知のデジタル化とは?)
「人間の空間認知をデジタル化する枠組みとは何
でしょうか?それを有効利用する応用例とは
何でしょうか?」
[Q09](市民参加型のボトムアップの空間コンテン
ツインフラへの道とアートの関係)
「ボトムアップで空間コンテンツ(データ)を市
民が作成する時代が来るのではないかと考えら
[A07]
れる.その場合,市民が皆測量士になるのでし
『メトリックな情報プラットフォーム(標準化さ
ょうか?むしろ,市民が皆空間デザイナになる
れた位置座標を持つ地図)とノンメトリックな
と考える方が良いのでしょうか?このようなこ
人間の空間イメージを並存させ.対応づける.
とは本当に起こるのでしょうか?」
例としては.理解しやすいデフォルメ地図の上
[A09]
に.GPS 経由のリアルタイムの座標値を変換して
『市民が作成する空間データは.「地」である背景
プロットする.』
図情報についてのものよりは.そのうえに起きて
いる「図」としての出来事に関する情報が主体と
[ Q 0 8 ] (空間ビジネスとアート
現実的なソリューションはあるのか?)
「GIS の現状を見ると,空間データは高価である
し,きちんと整備されていない.位置情報につ
なろう.行動に応じて自動的に計測・発信される
あまり自覚的でない位置情報もあるが.案内図・
経路図・見取り図・調査図・計画図などのような
主題図を通しての空間情報の提供である.』
いても,正確な情報が安価に手に入るようにな
るまでにはまだ年月がかかる.アートなどとい
[ Q 1 0 ] (デジタル認知空間という学術領域)
う悠長なことを言ってはおられず,現状のイン
「デジタル認知空間という学術領域は存在しうる
フラと技術で空間ビジネスを展開する必要があ
のでしょうか?名前は適切でしょうか?また,
る.このような状況において空間ビジネスを推
空間 IT 研究会では,この学術領域に関してどの
進させるときに,どのようにしてアートを取り
ような活動を起こすべきでしょうか?」
入れていくべきでしょうか?」
[A08]
[A10]
『学術領域としては.もう少し環境が進展すれば実
『情報表現の鮮やかさの追求.空間データの視覚表
感できるようになる可能性があると感じます.名
現について.まだ表現されたことがない『見たか
前については「デジタル」にやや違和感がありま
った情報』を探し出し鮮やかに視覚イメージ化
す.今後のアクションについては.「地図」のメ
(誇張と省略を含み形を与えることはアート)し
タファーを重要視していただければ幸いです.』
ていく.』