平成27年度 生物資源環 境地域ビジネス論Ⅰ、Ⅱ (水曜4限) 講義予定表 日程 担当教員 内容 第1回 4月15日 有賀 イントロ(ビジネスケーススタディに関する発表会とレポートに関する説 明を行う)、マーケティングとイノベーション 第2回 4月22日 有賀 経営戦略 第3回 4月30日 有賀 ブランド化戦略 第4回 5月13日 榎本 第5回 5月20日 榎本 第6回 5月27日 榎本 第7回 6月3日 三沢 第8回 6月10日 三沢 第9回 6月17日 三沢 第10回 6月24日 山下 第11回 7月1日 山下 第12回 7月8日 山下 第13回~15回の発表テーマと発表順を決めてもらう。 第13回 7月15日 全員 学生によるケーススタディに関する発表1 第14回 7月22日 全員 学生によるケーススタディに関する発表2 第15回 7月29日 全員 学生によるケーススタディに関する発表3 8/5までに提出することとす る。 全員 各自が発表したケーススタディについてレポート形式で提出する。 レポートの提出と評価 推薦図書 岡田豊(2013)『地域活性化ビジネス』東洋経済新報社 野中郁次郎・勝見明(2010)『イノベーションの知恵』日経BP社 野中郁次郎・勝見明(2009)『イノベーションの作法』日経BP社 野中郁次郎・勝見明(2004)『イノベーションの本質』日経BP社 生物資源環境地域ビジネス論I、II 第1回 マーケティングとイノベーション (4月15日) 有賀健高 本講義の目的 • 地域ビジネスのケーススタディに必要な基礎 知識を学ぶ – 現在の日本の農村では、組織化されたビジネス が少なく、大規模な市場で利益を挙げているいわ ゆるアグリビジネスはあまり進んでいない。 – 地域ビジネスの実践には組織の仕組みと組織が 事業を開発し、事業を継続させることが必要。 第1回~第3回の講義内容 1. 企業が利潤を上げていく上で重要な要素で あるマーケティングとイノベーションについて 学ぶ。(第1回目の講義) 2. 企業が事業を継続させる上で不可欠な経営 戦略について学ぶ。(第2回目の講義) 3. 企業が他社との競争に生き残るために必要 なブランド化戦略について学ぶ。(第3回目 の講義) 企業とは? • 労働や資本などの生産要素を用いて財や サービスの生産・販売活動を行う経済主体 – 財やサービスを供給する主体 – 労働環境を提供、技能形成、知識習得 – 大量の資金を金融市場から調達、資金の運用主 体 • 利潤最大化を目的とする。 企業の利潤 • 利潤をπ、価格をp、生産量をq、費用をc(q)と すると π = pq – c(q) と表される。 Total Cost (総費用曲線) Total Revenue (総収入曲線) 利潤関数 利潤を上げ続けるための要素 • 社会への貢献 – 「顧客の創造」(ドラッカー) • 有能な職員の確保 – 好待遇、良い労働環境の確保 • 売り上げの継続 – ブランド力の保持 企業が成長していくのに必要な要素 • Peter Drucker: “Because its purpose is to create a customer, the business has two - and only two - functions: marketing and innovation. Marketing and innovation create value, all the rest are costs” – 企業は「マーケティング」と「イノベーション」を通じ て発展する ドラッカーの『マネジメント』(1974年) ビジネスに必要な要素 • 組織化 – 「組織」とは共通の目標を有し、目標達成のために協 働を行う、何らかの手段で統制された複数の人々の 行為やコミュニケーションによって構成されるシステ ム • マーケティング – 市場をどう捉えてどのような市場にアプローチしてい くためのビジョン • イノベーション – 中長期的に組織を発展させていくためのビジョン マーケティングとは? • 商品やサービスが、生産者から消費者に流 れるまでの全過程における、市場で商品や サービスを効果的に売るための活動 • 顧客が真に求める商品やサービスを作り、そ の情報を届け、顧客がその商品を効果的に 得られるようにする活動」の全て マーケティングにおいて重要な視点: 売り手と買い手の視点を理解する Edmund Jerome McCarthy (1960) Robert F. Lauterborn (1993) 売り手の視点:4P • Product – どのような製品にするのか? • Price – そのような価格にするのか? • Place – どこでうるのか? • Promotion – どう宣伝するのか? 重要なのは これらをどう 組み合わせ るかという マーケティン グ・ミックス 買い手側の視点:4C • Customer – 顧客は誰か? • Cost – 値段はいくらか? • Convenience – 顧客にとって買いやすいか? • Communication – 顧客へ商品情報をどう伝えるか? 重要なのは これらをどう 組み合わせ るかという マーケティン グ・ミックス オグルヴィ(Ogilvy)の4E • Product → Experience(体験) – ブランドの体験 • Price → Exchange(交換) – 顧客に関心を持ってもらうために何が提供できるか。 • Place → Everywhere(どこでも) – 顧客自らが商品に接近してくる “Consumers create their own paths” • Promotion → Evangelism(熱心な活動) – ソーシャルネットワークを通じた紹介などのように顧 客にも宣伝に協力してもらう。 イノベーションとは? • イノベーションとは、経済活動の中で生産手 段や資源やそして労働力などを今までとは異 なる仕方で「新結合」すること • オーストリアの経済学者シュンペーター (Joseph Shumpeter)が『理論経済学の本質と 主要内容』 (Das Wesen und der Hauptinhalt der theoretishen Nationlökonomie)の中で提 唱 イノベーションは非連続的 イノベーションのタイプ • (1)新製品や新品質の開発 →プロダクト・イノベーション • (2)新しい生産方法の開発 →プロセス・イノベーション • (3)新市場の開拓 →マーケティング・イノベーション • (4)新しい供給源の獲得 →サプライチェーン・マネジメント • (5)新組織の実現 →組織イノベーション プロダクト・イノベーション • これまでになかった新しい商品を開発するイ ノベーション – ハイブリッド・カー – 任天堂DS – スマート・フォン – 遺伝子組み換えトマトFlavr Savr • 日持ちがよく、腐敗しにくい、貯蔵期間が伸びた。 • 貯蔵期間が伸びることで、輸送も容易である。 SSDの例 • SSDによってHDDでは発揮できないスピードと 機能が得られるようになった。 • サムスン製のSSDのHDDとの比較ビデオの例 プロセス・イノベーション • これまでになかった生産方法の開発 – DELLのPCの売り方 • Custom-built computers – ユニクロの格安生産ルートの開発 • 中国などへの生産拠点の移転 マーケティング・イノベーション • これまでターゲットとしてこなかった市場の開 拓 – 男性化粧品市場 – 一人しゃぶしゃぶ専門店 – 女子向けゴルフウェア サプライチェーン・イノベーションと組 織イノベーション • サプライチェーン・イノベーション – 今まで無かった場所から商品を調達する。 • 例 アフリカマダガスカル、アフリカモーリシャスからの タコの調達 • 組織イノベーション – M&A、分社化 • 例1 日本における金融部門の大型合併 • 例2 IBMのコンピュータ部門からの撤退 農業部門におけるイノベーション • 農業は産業分類上は1次産業だが 近年農業を多角化、ブランド化など のマネジメントによって第6次産業に 発展させることを提唱する人も出て きている。 第6次産業? • そもそもの産業分類の始まりは経済学者Colin Clark Jean Fourastieが提唱したthree-sector hypothesis • 第一次産業(primary industry) – 自然界に働きかけて直接に富を取得する産業 • 第二次産業(secondary industry) – 第一次産業が採取・生産した原材料を加工して富を 作り出す産業 • 第三次産業(tertiary industry) – 第一次産業にも第二次産業にも分類されない産業で 小売業やサービス業など無形財を扱う産業 第6次産業とは • 今村奈良臣(東大名誉教授)が作った造語 • 「一次産業」と「二次産業」と「三次産業」を足し算する と「六次産業」 • 「これまで農業は農業生産過程のみを担当するように されてきて、二次産業的な部分である農産物加工や 食品加工、あるいは肥料生産などは食料品製造企業 や肥料 メーカーに取り込まれ、さらに三次産業的部分 である農産物の流通や農業にかかわる情報やサービ スなども、卸売・小売業や情報サービス企業に取り込 まれてい たのであるが、それらを農業の分野に可能 なかぎり取り戻そうではないか、という提案」 ペティ=クラークの法則 • ペティ(W. Petty)(1690年代)は農業、工業、 商業の順に収益が高くなることが一般的な経 験法則として導いた。 • その後、クラーク(C. Clark)は各国の長期間 にわたる膨大なデータから、経済発展につれ て就業人口が第1次産業(農業)から第2次 産業(工業)へ、そして第3次産業へと移るこ とを確認)(1957年頃) 演習問題1 • 何でも良いので、地域固有の商品を例に、 マーケティングの4P分析を行い、その商品を どのように市場に売り出していくのかを消費 者に対して宣伝する気持ちで説明して下さい。 ただし、商品はまだ開発されていない架空の 商品でも問題ありません。説明方式でなく、 一つのCMを実演してもらうのでも構いませ ん。 例 4P分析の実践例 • 松阪牛 – Product: 製品 • 松阪牛 – Price: 価格 • 神戸牛、葉山牛、加賀牛などの高級ビーフを参照 – Place: 販売場所 • ネット販売なども考慮に入れ全国区で販売 – Promotion: 宣伝ターゲット • 高所得の35から50歳の層を対象とする 演習問題2 以下の五つのイノベーションの中から二つ選んで授業で扱っ た企業以外の企業ないし組織の例を挙げて下さい。 (1)新製品や新品質の開発 →プロダクト・イノベーション (2)新しい生産方法の開発 →プロセス・イノベーション (3)新市場の開拓 →マーケティング・イノベーション (4)新しい供給源の獲得 →サプライチェーン・マネジメント (5)新組織の実現 →組織イノベーション
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