科学技術振興調整費 第Ⅰ期成果報告書 中核的研究拠点(COE)育成 光反応制御・光機能材料 研究期間:平成9年度~13年度 平成 14 年 6 月 独立行政法人産業技術総合研究所 光反応制御・光機能材料 研究計画の概要 p.1 研究成果の概要 p.15 研究成果の詳細報告 1. 光反応制御領域 1.1. 光反応機構の研究 1.1.1. 光誘起電子移動の理論的研究 p.23 1.1.2. 光誘起電子移動の実験的研究 p.33 1.1.3. レーザー量子反応制御の基礎研究 p.42 1.2. 光エネルギー変換の研究 1.2.1. 高性能色素増感太陽電池の研究開発 p.49 1.2.2. 人工光合成技術の研究開発 p.59 1.3. 光・レーザー反応の研究 1.3.1. レーザー精密プロセスの研究 p.71 1.3.2. レーザー利用ナノ材料プロセスの研究 p.83 光反応制御・光機能材料 I.研究計画の概要 研究の趣旨 今日人類が直面している一つの大きな問題はエネルギー問題である。人類が持続可能な発展を続けてい くためには、石炭・石油等の化石エネルギーに依らないクリーンで安全なエネルギーを安価に確保する技 術を確立する必要がある。太陽光エネルギーはそれに該当する唯一のエネルギーであり、植物は光合成に よりエネルギー・資源の再生を行ってきた。光合成を人工的に模倣した人工光合成システムの開発こそが、 エネルギー問題の究極的な解決策である。 人類が直面しているもう一つの大きな問題は環境問題である。化学産業は人類に大きな貢献をしてきた が、化学反応で産出される副生成物を環境に排出することによって、環境に負荷を与えてきた。この問題 を解決するためには、副生成物を産出しない反応プロセスを開発する必要がある。 これら二つの問題を解決するための手段として期待されているのが、光反応制御技術の開発である。人 工光合成システムの開発の成否は、太陽光の中の可視部を如何に効率よく吸収してエネルギー変換に利用 するかということと、太陽光エネルギーを吸収した後に起こる光誘起電子移動をいかにコントロールする かに掛かっている。一方、最近、レーザーのコヒ−レントな性質を利用することによって、レーザーを用 いて反応を選択的に起こせることが理論的に示されている。この原理の発見は、副生成物を産出しない化 学プロセスの開発につながるものとして期待されている。 化学の分野では、光は反応制御の面だけでなく材料の面でも注目を浴びている。マルチメディア時代の 到来とともに、画像などの大容量情報の高速処理・高速伝送の必要性が急速に高まっている。現在のエレ クトロニクスに予測される集積度、配線密度、電子輸送密度などの限界を解決する手段として期待されて いるのが、情報処理媒体として光を用いる光情報処理の実現である。光情報処理の実現のためには、光機 能材料の開発が不可欠である。 以上述べたことを踏まえて、本研究では先ず「光反応制御」の基礎原理を開拓する。それを応用して太 陽光エネルギーを有効利用するための高効率な人工光合成システム、光触媒、太陽電池の開発を行う。ま た、レーザーを用いて物質を選択的に合成する技術や、物質をナノレベルで微細加工して機能を付与する 技術の開発を行う。さらに新しい原理に基づく光機能材料を開発し、光情報処理の実現に向けて材料の面 から貢献していく。 COE 化設定領域は図1に示すように「光反応制御」と「光機能材料」からなる。 「光反応制御」が設定領 域の核となる研究であり、調整費充当領域である。 「光反応制御」はさらに「光反応機構」 、 「光エネルギー 変換」 、 「光・レーザー反応」という3つのサブテーマから構成される。 「光反応機構」では、光(フォトン) と物質との相互作用を原理、現象に立ち返って解明し、それに基づいて光による反応制御の基本原理を開 拓する。これを応用して、 「光エネルギー変換」では、無尽蔵な太陽光エネルギーを有効利用するために、 高効率な人工光合成システムや光合成模倣型太陽電池の開発を行う。また、 「光・レーザー反応」では、レ ーザーを用いて物質を選択的に合成する技術や、材料をナノレベルで微細加工して機能を付与する技術を 開発する。 「光機能材料」としては、光に対する物質の物理的な応答を利用する「光電子材料」 、光に応答 して物質が化学変化することを利用する「光反応性材料」を取り上げる。また上記の研究を支えるものと して「光材料計測」に関する研究を行い、光を用いた材料計測技術の高度化を図っていく。 各サブテーマの研究計画の概要は以下の通りである。 1 光反応制御・光機能材料 研究の概要 (1)光反応機構(調整費充当研究) エネルギー移動、電子移動等の光反応素過程を、極短パルスレーザーを用いた分光計測と計算機を用い たシミュレーションにより解明し、太陽光エネルギーを効率よく化学エネルギーに変換するための分子設 計の指針を開拓する。さらに、レーザーのコヒーレンスを利用した新たな反応制御法であるコヒーレント 反応制御の基礎技術を開拓する。 (2)光エネルギー変換(調整費充当研究) 植物の光合成メカニズムを模倣した高性能太陽電池や、太陽光によって水を分解するための無機光触媒 や超分子光触媒の開発に向けて基礎研究を行うとともに、総合的なエネルギーの利用効率を高めるための 材料の開発を目指す。 (3)光・レーザー反応(調整費充当研究) 真空紫外・紫外光(レーザー)と有機化合物、高分子化合物等との相互作用を種々の形態と反応場で研 究し、光による化学構造変換や物理的変換の機構を明らかにする。得られた知見に基づいて、付加価値の 高い化学品の合成手法を開発する。また、高性能化や機能付与された超微粒子、薄膜等の作製、材料表面 プロセシングの基盤技術を開発する。 (4)光電子材料 光による光の制御を目的として、大きな非線形光学特性を有する有機系材料を開発する。非線形性は、 屈折率等の光物性を光照射量に応じて変化させ得る特性であり、実用化には、加工性・光透過性等の基礎 特性にも優れた材料開発が必要である。光電子機能の発現は材料化手法にも左右されるので、新規な光電 子機能の発現を目指して、ヘテロ化、ハイブリッド化等の材料化手法の開発も行う。 (5)光反応性材料 生体内の光感覚系での情報変換・伝達機構を、光による有機物質の構造変化をトリガーとするスイッチ ング、化学増幅として捉え、これをモデルとして、光/光、光/電気情報変換機能を有する分子デバイス を開発する。光による構造変化物質としては、主にフォトクロミック分子を対象にする。この目的のため に、LB膜、2分子膜、自己組織化膜などの場でのフォトクロミック分子によるエネルギー信号の増幅、 変換などを、走査型トンネル顕微鏡等を駆使して解明する。 (6)光材料計測 先端的物質・材料の研究においては、極微小領域における現象の解明が不可欠である。この目的のため に、原子・分子レベルで識別可能な極微量物質を光、特にレーザーを用いて検出・分析する技術を開発す る。また、高強度の極短波長(1 nm∼10 nm)光を励起源とする分光法により、機能性材料の表面計測を行い、 表面物性が材料機能に及ぼす影響について研究する。 2 光反応制御・光機能材料 Ⅱ.研究体制とその状況 1.研究体制 研究総括責任者:立矢 正典(産総研フェロー) 光反応制御領域責任者:荒川 裕則(光反応制御研究センター長) 光反応制御領域(調整費充当領域) (1)光反応機構の研究 立矢 正典 (産総研フェロー) 北尾 修 (光反応制御研究センター主任研究員) A.V.Barzykin (光反応制御研究センター主任研究員) 伏木 誠 (計算科学研究部門主任研究員) (平成9年4月∼13年3月) 関 和彦 (光反応制御研究センター主任研究員) 村田 重夫 (光反応制御研究センターチーム長) 深谷 俊夫 (次世代光工学研究ラボ副ラボ長) (平成9年4月∼11年3月) 有村 隆志 (光反応制御研究センター主任研究員) 加藤 隆二 (光反応制御研究センター主任研究員) (平成10年4月∼ ) 岩井 伸一郎(強相関電子技術研究センター主任研究員) (平成9年4月∼13年3月) 図1.COE化設定領域 3 光反応制御・光機能材料 井手 誠二 (福岡県工業技術センター) (平成10年4月∼12年3月) 古部 昭広 (光反応制御研究センター研究員) (平成13年4月∼ ) 中永 泰介 (光反応制御研究センターチーム長) 永井 秀和 (光反応制御研究センター主任研究員) 伊藤 文之 (光反応制御研究センター主任研究員) 宮脇 淳 (ナノテクノロジー研究部門主任研究員) (平成10年4月∼11年 3 月) 大村 英樹 (光反応制御研究センター研究員) (平成11年4月∼ ) (2)光エネルギー変換の研究 荒川 裕則 (光反応制御研究センター長) 杉原 秀樹 (光反応制御研究センターチーム長) 貝瀬 正紘 (定年退職) (平成10年4月∼13年3月) 佐山 和弘 (光反応制御研究センター主任研究員) 小西 由也 (光反応制御研究センター主任研究員) (平成13年4月∼ ) 草間 仁 (光反応制御研究センター主任研究員) 原 浩二郎 (光反応制御研究センター研究員) (平成10年10月∼ ) 柳田 真利 (光反応制御研究センター研究員) (平成12年4月∼ ) 阿部 竜 (平成14年4月∼ ) (光反応制御研究センター研究員) 春日 和行 (光反応制御研究センター副センター長) 姫田 雄一郎(光反応制御研究センター主任研究員) 小野澤 伸子(光反応制御研究センター研究員) (3)光・レーザー反応の研究 矢部 明 (定年退職) (平成9年4月∼14年3月) 新納 弘之 (光反応制御研究センターチーム長) 川口 喜三 (光反応制御研究センター主任研究員) (平成13年4月∼ ) 佐藤 正健 (光反応制御研究センター研究員) (平成11年4月∼ ) 奈良崎愛子 (光反応制御研究センター研究員) (平成12年4月∼ ) 越崎 直人 (界面ナノアーキテクトニクス研究センターチーム長) 渡邊 昭雄 (物質プロセス研究部門主任研究員) (平成9年4月∼13年3月) 佐々木 毅 (界面ナノアーキテクトニクス研究センター主任研究員) 土屋 哲男 (物質プロセス研究部門研究員) (平成13年4月∼) 光機能材料領域(自己努力領域) (4)光電子材料の研究 八瀬 清志(光技術研究部門副部門長) 牛島 洋史(光技術研究部門主任研究員) 高田 徳幸(光技術研究部門主任研究員) 松田 宏雄(光技術研究部門グループ長) 4 光反応制御・光機能材料 福田 隆史(光技術研究部門主任研究員) 木村 龍実(光技術研究部門研究員) (平成14年4月∼) 鎌田 俊英(光技術研究部門グループ長) 小笹 健仁(光技術研究部門研究員) (平成13年4月∼) 吉田 学 (光技術研究部門研究員) (平成14年4月∼) 南 信次 (ナノテクノロジー研究部門副部門長) (平成9年4月∼14年3月) S.Kazaoui (ナノテクノロジー研究部門主任研究員) (平成9年4月∼14年3月) (5)光反応性材料の研究 松本 睦良(ナノテクノロジー研究部門グループ長) 阿澄 玲子(ナノテクノロジー研究部門主任研究員) 中村 徹 (ナノテクノロジー研究部門主任研究員) 橘 浩昭 (強相関電子技術研究センターチーム長) (平成9年4月∼13年3月) 川西 祐司(ナノテクノロジー研究部門グループ長) 桜木 雅子(評価部シニアリサーチャー) 園田与理子(ナノテクノロジー研究部門主任研究員) 箕浦 憲彦(先端バイオエレクトロニクス研究ラボ副ラボ長) 樋口 真弘(界面ナノアーキテクトニクス研究センター主任研究員) (6)光材料計測の研究 小島 勇夫(計測標準研究部門科長) 加藤 健次(計測標準研究部門室長) 松田 直樹(界面ナノアーキテクトニクス研究センター主任研究員) (平成11年4月∼) 島田 広道(企画本部総括企画主幹) 松林 信行(計測標準研究部門主任研究員) 野副 尚一(ナノテクノロジー研究部門グループ長) 近藤 寛 (東京大学) (平成9年4月∼平成10年3月) 久保 利隆(ナノテクノロジー研究部門研究員) (平成10年8月∼ ) 宮前 孝行(ナノテクノロジー研究部門研究員) (平成11年4月∼ ) 青木 勝敏(物質プロセス研究部門副部門長) 2.COE化対象領域におけるマネージメント 2−1.優秀な人材の育成・確保 2−1−1.計画 日本のみならず世界各国から多様で優秀な人材を集め、強力な研究チームを作り、世界をリードする研 究成果を発信し続けるとともに、優れた人材を育成していくことを目指す。特に多様な若手研究者を積極 的に登用し、その研究能力が十分発揮できるように配慮する。 (1)研究職員の公募採用 研究職員の採用は公募により行い、広く海外、大学、他国研、企業からの人材を求める。 5 光反応制御・光機能材料 (2)優秀な若手客員研究員(ポスドク)の受け入れ 調整費やSTAフェローシップ、科学技術特別研究員制度、AISTフェローシップ等を活用して、海 外および国内からポスドクを積極的に受け入れ、人材の育成に貢献していく。 (3)大学院生等の受け入れ 優秀な大学院生を積極的に受け入れ、次世代の研究者として指導、育成することも重要である。連携大 学院制度等を活用して人材の育成に貢献していく。 2−1−2.実施した措置及び効果 (1)研究職員の公募採用 研究職員の採用に関しては、公募により優秀な研究職員をCOE化設定領域に重点的に採用してる。公 募の際の競争率は10倍を越えている。 (2)優秀な若手客員研究員(ポスドク)の受け入れ COE化設定領域では調整費及び各種フェローシップ制度を活用して非常に多数のポスドクを海外及び 国内から受け入れている。これらの中で特に優秀な者は非常に高い競争的環境の中で公募により研究職員 に採用されている。当所のCOEプロジェクトが国内外に広く知れ渡るとともに、ポスドク応募者が増加 し、優れた人材発掘に役立っている。 (3)大学院生等の受け入れ 連携大学院制度は筑波大学からスタートし、その後、東京工業大学、東京理科大学等へと広がってい る。COE化設定領域からもこれまでに延べ15名の職員が連携大学院の教授あるいは助教授に併任され ている。連携大学院制度を通して、国立大や私立大から多くの大学院生を受け入れ、研究指導を行い優秀 な人材の育成に貢献している。 2−2.優れた研究基盤の整備 2−2−1.計画 (1)研究機器の整備 光反応はエネルギー移動、電子移動などの高速の素過程が複雑にからみあった過程である。それを制御 し有効に利用するためには、これらの素過程にまでさかのぼってその速度、効率などを測定し、機構を解 明することが必要である。これらのことを通じて、材料の改良や新たな材料の設計が可能となる。機構の 解明のためには超短パルス光により試料を励起し、反応の過程をいろいろな時間領域にわたって計測、追 跡することが必要である。このような実験を行う超高速分光実験設備を整備する。 また、紫外領域の高品位フォトン源であるエキシマレーザーやYAGレーザーを使用して、有機・高分 子、無機・金属物質を極低温や高真空などの種々の反応場で励起して、新物質・新材料創製への反応制御 実験を進めるための高エネルギーレーザー実験設備を整備する。 (2)計測解析研究センターの整備 計測解析研究センターは最新鋭の装置により化学反応および物質・材料に関する高度な測定、解析がで きる施設として、存在価値の極めて高いものである。今後、COE化設定領域に関わる研究設備、機器を 重点的に導入し、整備し、同センターのさらなる高度化を図る。また、高度な分析機器には専門家および 専任のオペレターを配置し、分析技術と解析能力の向上に努める。 (3)光反応制御実験棟の建設 6 光反応制御・光機能材料 光反応制御領域の研究スペースとして、新たに光反応制御実験棟を建設する。完成後は光反応制御関係 の機器をこの実験棟に移動し、機器の効率的運用と研究の有機的連携を可能にする。また、国内及び海外 に開かれた共同研究を推進するため、それに必要な研究スペースも確保する。 2−2−2.実施した措置及び効果 (1)研究機器の整備 光反応制御の研究において必要不可欠であるが、通常の研究費では手が届かない高額の研究機器が整備 され、研究に有効に活用され、世界的レベルの成果を生みだしている。整備した研究機器の主要なものは 以下の通りである。 平成 9年度「高出力フェムト秒レーザーシステム」 「レーザー光分解反応制御装置」 「光触媒結晶解析用X線回折装置」 「高エネルギーレーザー反応照射装置」 平成10年度「キャビティーリングダウンレーザー分光装置」 「高速金属分散度測定装置」 「太陽電池評価装置」 「超高真空レーザーアブレーション装置」 平成11年度「光イオン化検出型反応制御装置」 「過渡吸収スペクトル測定装置」 「時間分解近赤外蛍光スペクトル測定装置」 「光エネルギー変換励起用エキシマレーザー」 「活性種励起装置」 「ナノ微粒子動的形状評価装置」 平成12年度「光反応制御用高品質波長可変レーザーシステム」 「時間分解過渡ラマン分光装置」 「半導体光電極表面特性装置」 「真空紫外分光光度計」 平成13年度「ピコ秒時間分解過渡吸収分光システム」 「赤外 OPO レーザー装置」 (2)計測解析研究センタ−の整備 計測解析研究センタ−で整備した研究機器の主要なものは以下の通りである。 平成 9年度「エレクトロスプレー質量分析計」 平成10年度「精密質量分析装置」 平成11年度「精密質量分析装置用イオン化装置」 平成12年度「超伝導核磁気共鳴装置」 (3)光反応制御実験棟の建設 機器の効率的運用と研究の有機的連携及び共同研究に必要な研究スペースの確保のために「光反応制御 実験棟」の建設を計画していたが、まだ実現していない。一方、平成13年の産総研の発足により、所内 の研究スペースの配分・使用の方法が合理化・弾力化された。光反応制御領域の研究スペースもある程度 7 光反応制御・光機能材料 集中化することが出来、研究の有機的連携及び共同研究のための研究スペースの確保がある程度実現した。 2−3.開放性と流動性の確保 2−3−1.計画 (1)多様な人材の採用・受け入れ 職員の採用は公募により行い、広く海外、大学、他国研、企業から人材を求めるとともに、調整費や各 種フェローシップ制度、連携大学院制度等を活用して、国内外からポスドクや大学院生を積極的に受け入 れる。 (2)研究交流 二国間科学技術協力協定、多国間科学技術協力協定、姉妹研究所協定等に基づいて、海外の関連する研 究所と研究協力や研究者の交換を積極的に行っていく。 (3)研究グループ制 硬直的な研究室制を改め、開放性と流動性を確保するため研究グループ制を導入する。研究グループ制 では、研究者の自主的な研究グループ提案を認め、各専門領域の研究グループをボトムアップ方式で作る。 研究の展開とともに研究者は自由に研究グループ間を移動できるようにする。同時に、各研究グループの 研究活動をきちんと評価し、真にアクティブな研究グループだけが生き残れるようにする。 2−3−2.実施した措置及び効果 (1)多様な人材の採用・受け入れ 職員の採用はすべて公募により行い、広く海外、大学、他国研、企業から人材を求めている。また、職 員の任期付任用を積極的に行っている。COE化設定領域には現在2名の外国人職員が配置されているが、 10年後にはCOE化設定領域における外国人職員の割合を1割以上にしたい。さらに、調整費や各種フ ェローシップ制度、連携大学院制度等によって外部からの多数の研究者を受け入れている。多様な国、機 関からのポスドク、大学院生、客員研究員が入れ替わり立ち替わり研究に参画し、研究を活性化している。 彼らの数は、常時、職員の数と同程度に達している。 (2)研究交流 海外の関連する大学、研究所と協定を結び、研究協力や研究者の交換を積極的に行っている。平成9年 度から3年間フランスの配位化学研究所と姉妹研究所協定を結び、研究者の交換を行った。平成10年度 からはフランスのルイパスツール大学と研究協力の取り決めを締結し、研究者の交換を行っている。平成 13年には産総研とフランスのCNRSとの間で包括的な研究協力協定を締結した。研究協力は非公式な 形でも種々行われている。例えば、光反応機構ではロシア科学アカデミーと電子移動反応について、光エ ネルギー変換ではスイス連邦工科大学と色素増感太陽電池について、光・レーザー反応ではオーストリア・ リンツ大学とレーザープロセシングについて、研究者の交換を含む研究協力を行っている。 (3)研究グループ制 物質研では平成9年度から、硬直的な研究室制を改め、開放性と流動性を確保するために研究グループ 制を導入した。研究グループ制は流動性の確保に非常に効果的であったが、残念ながら平成13年の産総 研の発足に伴い消滅した。 2−4.研究評価機能の充実 8 光反応制御・光機能材料 2−4−1.計画 (1)外部評価委員会 調整費を用いてCOE化設定領域独自の外部評価委員会を設置する。外部評価委員会は、海外、国内の 指導的研究者10名からなり、3年目、6年目と最終年度(10年目)に開催し、研究成果、人材の育成・ 確保、研究基盤の整備、研究運営の観点から評価を行う。評価結果は、研究課題の変更、研究体制の改善 等に反映させる。 (2)所内評価委員会 COE化設定領域研究総括責任者、サブリーダー、企画室長、2∼3名の研究部長からなる所内評価委 員会を毎年開催し、サブグループ毎に当該年度の研究成果及び次年度の研究計画に対して評価を行う。評 価結果は、研究費の配分、サブグループの組み替え、研究計画や研究期間の変更等に反映させる。 (3)研究活動報告書 所の個人評価システムの一環として、COE化設定領域でも各研究者に毎年度研究活動報告書を提出さ せ、研究総括責任者はそれを参考に各研究者の研究活動を評価する。評価結果は指導、助言、研究者の配 置転換等に反映させる。 2−4−2.実施した措置及び効果 (1)外部評価委員会 COE化設定領域の研究に関して、研究成果及び研究運営を評価してもらうために外部評価委員会を設 置している。第1回外部評価委員会はプロジェクトの3年目に当たる平成11年8月26日及び27日に 開催し、大変よい評価を頂いた。評価結果は研究内容及び研究体制の改善に反映させた。第2回年外部評 価委員会は6年目に当たる本年8月1日及び2日に開催予定である。第3回評価委員会は最終年度(10 年目)に開催する予定である。外部評価委員会のメンバーは以下の通りである。 委 員 ○ 徳丸克己 所 属 筑波大学名誉教授 小尾欣一 日本女子大学理学部教授、東京工業大学名誉教授 柳田祥三 大阪大学大学院工学研究科教授 雀部博之 千歳科学技術大学光化学部教授 澤田嗣郎 東京大学大学院新領域創成科学研究科教授 Frans C.DeSchryver Professor, Department of Chemistry Katholieke Universiteit Leuven, Beigium Peter Hackett Vice-President of Research, Nationl Research Council Canada Michael Graetzel Professor, Institute de Chimie Physique Ⅱ Eole Polytechnique Federale de Lausanne, Switzerland Arthur J. Nozik Professor, National Renewable Energy Laboratory, U.S.A. 9 光反応制御・光機能材料 印は委員長を表す。 (2)所内評価委員会 物質研時代は、所長、次長、企画室長、研究部長等からなる所内ヒアリングで、毎年度各研究部毎に当 該年度の研究成果及び次年度の研究計画に対して評価を行ってきた。平成13年の産総研の発足に伴い、 研究部に変わる研究ユニットとして研究センターと研究部門が設置された。光反応制御領域の研究は光反 応制御研究センターで継続されている。光機能材料領域の研究はいくつかの研究ユニットに分散してしま った。研究ユニットの評価は、各研究ユニット毎に選ばれた数名の外部研究者によって行われ、評価結果 は当該研究ユニットへの研究費及び業績手当の配分に反映される。 (3)研究活動報告書 物質研時代は、毎年度各研究者に研究活動報告書を提出させ、個人評価を行ってきた。平成13年の産 総研の発足伴い、新しい個人評価システムがスターとした。各研究者は毎年度の始めに、所属するグルー プの研究・業務計画に基づいて、個人の研究・業務計画を作成し上司の了解を得る。年度の終わりに、各 研究者は自己評価表を作成し、上司はそれを参考にして考課表を作成する。考課の結果は業績手当に反映 される。 2−5.研究運営の弾力化 2−5−1.計画 (1)プロジェクト部 光反応制御・光機能材料の分野で、当所の総合力を活かした優れた研究の推進を目的として、従来の部・ 室の枠を越えたプロジェクト部(仮称)を創設し、研究総括責任者にその管理・運営を委ねる。 (2)サブリーダーの裁量権 サブリーダーにサブグループ内の予算配分、客員研究員の受け入れ、研究課題や研究計画の変更等に関 して大幅な裁量権を与えるとともに、サブグループの研究活動をきちんと評価し、アクティブでないサブ グループは解散する。 2−5−2.実施した措置及び効果 (1)プロジェクト部 調整費充当領域である光反応制御領域の研究従事者は当初7つの研究部に跨っていた。光反応制御領域 の研究を効率的に推進するために、平成10年度から、所の他の組織から独立したCOE特別研究室(部 相当)を設置し、特別研究室長にその管理・運営を委ねた。平成13年の産総研の発足に伴い、COE特 別研究室は光反応制御研究センターに移行した。研究センターではセンター内の管理・運営に対してセン ター長の権限がCOE特別研究室以上に認められている。 (2)サブリーダーの裁量権 COE特別研究室内ではサブテーマ毎に3つの班を編成した。それぞれの班で班長と副班長を指名し、彼 らに大幅な裁量権を与えた。COE特別研究室が光反応制御研究センターに移行する際に、サブグループ の再編を行い4つのチームを編成した。 (3)COE化推進委員会 物質研時代は、全所を挙げてCOEプロジェクトを推進するためにCOE化推進委員会を設置していた。 10 光反応制御・光機能材料 委員会は所長、研究総括責任者(次長) 、COE特別研究室長、総務部長、企画室長からなり、毎年度、前 年度の研究成果と当該年度の研究計画及び研究運営についてCOE特別研究室長から報告を受け、必要な 助言と支援をしてきた。平成13年の産総研の発足に伴い、物質研時代のCOE化推進委員会は消滅し、 産総研としてのCOEプロジェクト支援体制はまだ出来ていない。 (4)研究予算の使途の弾力化 平成13年の独立行政法人化に伴って、研究所の予算の約8割を占める運営費交付金の使途が、人件費 を除いて原則自由化された。各研究者は配分された運営費交付金の使途を研究が最も効率的に進むように 各自の裁量で決定できるようになった。 (5)職員の雇用数の弾力化 平成13年の独立行政法人化に伴って、定員制度はなくなり、職員の雇用数は人件費の枠内で研究所の 裁量で決定できるようになった。 2−6.研究成果の発信 2−6−1.計画 (1)一流雑誌への論文発表等 当所はこれまでも海外一流雑誌への論文発表を数多く行うことによって、研究成果の発信を積極的に行 ってきた。当所はインパクトファクターの総計では国研の中でトップクラスである。今後も一流雑誌への 論文発表を積極的に行う。また、COE化設定領域における研究の発展について英語で単行本や総説を執 筆することによって、この分野で指導的役割を果たしていく。 (2)特許の取得 当所は外国及び国内の特許の取得件数では国研の中でトップクラスである。今後もCOE化設定領域を 中心にして特許の取得を積極的に行っていく。 (3)シンポジウム等の開催 COE化設定領域で、大規模な国際シンポジウムと国内研究会を1年交代で開催し、研究成果の発信に 努める。また外部から(特に海外から)講師を招いてセミナーを毎月開催し、研究交流に努める。 (4)成果報告書 COE化設定領域で、毎年成果報告書(英語)を作成し、国内外の関係研究機関に配布する。 (5)研究集会での発表 特に海外の研究集会へ積極的に参加し、研究成果を速やかに発表するとともに、研究情報の交換を積極 的に行う。 2−6−2.実施した措置及び効果 (1)一流雑誌への論文発表等 COE化設定領域の4年目以降の発表論文数の実績はⅢ.4. (1)の通りである。このうち国際雑誌へ の発表論文は248報であり大部分を占める。インパクトファクターの高い主要雑誌への発表状況はⅢ. 4. (3)の通りである。インパクトファクターは、本来、雑誌がその研究分野でどのくらいの重要性を持 っているかを表す1つの指標であり、それを個々の発表論文の重要性を表す指標として用いることにはも ちろん限界がある。しかし、個々の発表論文ではなく、たとえば、プロジェクト全体の発表論文の集合に 対してインパクトファクターを考慮し、それをプロジェクトの研究成果を評価するための1つの指標とし 11 光反応制御・光機能材料 て用いることはそれなりに意味がある。このような観点から、当プロジェクトではプロジェクト全体の発 表論文の集合に対しインパクトファクターを考慮し、その向上をCOE化の1つの指標としている。プロ ジェクト全体の発表論文のインパクトファクターは着実に上昇している。 (2)特許の取得 COE化設定領域の出願特許はⅢ.4. (2)の通りである。欧米への海外特許申請も25件行っている。 産業界が興味を持ちそうな新技術の発明については、特許申請を積極的に行うことを指導している。ただ し、海外出願のためには多額の予算を要するので、限りある予算枠の中で、申請希望の案件の一部しか申 請できないのが現状である。 (3)シンポジウム等の開催 COEプロジェクトが開始されて以来、研究成果の発信のために国際シンポジウム International Symposium on Photoreaction Control and Photofunctional Materials(PCPM)を毎年3月に開催し ている。これまでに5回開催している。毎回、多くの(300名程度)の参加者があり、外国からの参加 者は40名以上である。シンポジウムに際して、毎回、すべての発表論文の要旨集を発行している。また、 第4回及び第5回シンポジウムについては、口頭発表の論文を集めて Proceedings を J. Photochem. Photobiol. A に掲載している。外部から講師を招いたセミナーについては、平均すると毎月1回以上開催 し、積極的に研究交流を行っている。 (4)成果報告書 毎年度COE化設定領域のすべての発表論文を集めて成果報告書を発行している。 (5)研究集会での発表 COE化設定領域の研究者の研究集会での発表件数はⅢ.4. (1)の通りである。国際会議での積極的 発表が認められる。 3.機関所属省庁の指導、支援 3−1.計画 物質工学工業技術研究所においてCOE化設定領域での研究を総合的かつ効率的に推進するため、通商 産業省工業技術院として以下の方策を実施することにより、予算面、組織面で最大限の配慮を払っていく。 (1)計測解析センターの拡充、物質材料設計支援システムの導入を行ったが、今後も引き続き支援をし ていく。 (2)工業技術院特別研究予算の配分に関する研究所の裁量権の拡大等をすすめてきたが、これを継続す る。 (3)人材の確保のため、STAフェローシップ、AIST特別研究員制度、科学技術特別研究員制度等 の各種招へい制度を積極的に活用する。また、連携大学院制度を拡充させ、組織の開放性が保たれるよう 支援する。 (4)COEプロジェクトが10年計画であることを踏まえ、調整費充当期間が終了後も当該プロジェク トが進むよう予算措置等の支援を行っていく。また、COEプロジェクトを通して組織の流動化が進むよ う今後とも支援していく。 (5)COE化設定領域に係る所要経費を確保する。平成9年度から工業技術院傘下の15研究所におい て実施すべき基礎的かつ横断的なテーマについては、研究所間の競争によりテーマを公募する「競争特研」 を創設する。 12 光反応制御・光機能材料 (6)研究実施計画、研究計画変更手続き等に関して事務処理の合理化、簡素化を進めてきたが、今後も これを継続する。 (7)短期滞在の外部研究者のための宿泊施設に加え、長期の海外からの研究者のための滞在施設を新設 する。 (8)特許については、研究者個人のインセンティブを高めるため、 「職務発明規程」を改正し、国と研究 者の持ち分を1/2ずつとした(平成8年10月) 。今後もCOEに関わる研究者が能力を伸ばせるよう支 援をしていく。 (9)研究の開放性、流動性を確保するためには、任期付任用は重要と考え、COE研究に係る任期付任 用の職員の採用を積極的に行えるよう支援していく。 3−2.実施した措置及び効果 (1)基盤整備 世界最高クラスの高速演算を行うことのできるスーパーコンピュータシステム「高度並列演算システム」 を導入した。 (2)研究予算 平成13年の独立行政法人化に伴って、研究所の予算の約8割を占める運営費交付金の使途を、人件費 を除いて、研究所・研究者の裁量で決定できるようにした。また、研究所予算の増額に努めた。 (3)スタッフ確保 各種のフェローシップ制度に加えて、各研究者は配分された運営費交付金を用いて各自の裁量でポスド クを雇用できるようにした。また、研究所の裁量で連携大学院制度を拡充できるようにした。 (4)プロジェクト体制支援 平成13年物質研を含む15の研究所を統合して産総研を創設した。産総研の内部組織として23の研 究センターと22の研究部門を創設した。光反応制御領域ではCOE特別研究室を母体として光反応制御 研究センターを創設し、光機能材料領域に関係する研究ユニットとしては、光技術研究部門、ナノテクノ ロジー研究部門等を創設した。 (5)プロジェクト予算支援 光反応制御研究センターについては、研究センターの1つとして運営費交付金を重点配分している。競 争特研については産総研の発足とともに廃止され、その資金は運営費交付金の一部として産総研に配分さ れている。 (6)事務支援 平成13年の産総研の発足に伴い、イントラネットによる事務処理制度が導入され、事務処理の合理化、 簡素化が進んだ。 (7)外来研究者宿泊施設 長期の海外からの研究者のための滞在施設として、 「けやき館」が、平成9年10月に完成した。 (8)特許取得支援 産総研の発足に当たり、産総研の特許戦略を担うTLO組織として産総研イノベーションズを設立した。 産総研で得られた特許を効果的に運用するために、 「職務発明規程」を改正し、産総研で得られた特許はす べて産総研に帰属することにした。一方、研究者個人のインセンティブを高めるために、特許の実施料収 入の1/4を研究者個人に還元することにした。 13 光反応制御・光機能材料 (9)職員採用 任期付任用でCOE化設定領域での職員採用を重点的に行った。 14 光反応制御・光機能材料 Ⅲ.研究成果の概要 1.総括 このプロジェクトでは、光を用いて反応を原子分子レベルで制御する技術を確立することを目指してい る。この技術を応用して、光合成を模倣して太陽光エネルギーを電気エネルギーや化学エネルギーに効率 的に変換する技術の開発を行っている。また、レーザーのコヒーレントな性質や高強度のレーザーを用い て、物質を高選択的に合成する技術や、機能性材料を合成する技術、材料の表面を機能化する技術の開発 を行っている。 光反応機構の研究については、均一系及び不均一系での電子移動の機構を実験及び理論の両面から研究 している。均一系についてはドナーとアクセプターの距離が非常に短いときには Marcus の理論とは異なる 機構で電子移動が起こることを明らかにした。また、光エネルギー変換の研究を基礎的な面からサポート するために、色素増感半導体ナノ微結晶における電子移動を実験及び理論の両面から研究し、色素から半 導体への電荷注入及びその逆過程に対して新しい理論を構築した。レーザーによるコヒーレント反応制御 については、非常に難しい課題で試行錯誤を重ねたが、高強度レーザーパルス光を用いることで、1光子・ 2光子の同時吸収でも量子干渉により分解効率が変化することを示すことに成功した。 光エネルギー変換の研究については、新しい太陽光エネルギー利用技術の開発を目指して、色素増感太 陽電池の高性能化の研究を行っている。高性能化の為に、高性能色素、酸化物半導体、レドックス電解質 系の探索・設計研究を行ない、世界最高水準の性能をもつ色素増感太陽電池の製造に成功した。また、太 陽光による水からの水素製造に関しては、可視光応答が可能な酸化物半導体光触媒系の探索・設計を行い、 インジウム・タンタル酸化物にニッケルをドープした光触媒や、光合成のメカニズムを利用した2段階光 触媒法を開発し、世界で初めて可視光による水の完全分解に成功した。 光・レーザー反応の研究については、溶液中の芳香族分子がレーザーの繰り返し吸収により極度に加熱 される現象を発見し、この現象を応用して石英ガラス等の透明光学材料を微細加工する技術を開発した。 また、新物質創製や新材料プロセスのために重要だが、生成や観測が困難な反応活性種を高強度紫外光パ ルスと極低温マトリックス場を用いて生成・捕捉する方法を開発し、ベンズジイン、ナイトレン等の生成・ 捕捉に成功した。これらの活性種の発見は基礎化学的にも非常に発見であり世界的に高く評価されている。 2.サブテーマ毎、研究テーマ毎の概要 2−1.光反応制御領域 2−1−1.光反応機構の研究 2−1−1−1.光誘起電子移動の理論的研究 光エネルギー変換では、光吸収の後、電荷分離を効率よく起こし、かつ分離した電荷の再結合を抑制す ることが極めて重要である。本課題では、電子移動の速度を支配する因子を明らかにし、電子移動の速度 や収率を制御する方法を理論的に研究する。4年目以降、外部電場によって電子移動の速度や収率を制御 することを目的として、電子移動に対する外部電場の効果を理論的に研究した。この結果を踏まえて、電 子写真の分野で重要な、ドープされたポリマー中における電荷輸送過程について研究し、電荷の移動度に 対する外部電場や温度の効果をほぼ定量的に説明することに成功した。また、色素増感太陽電池の性能向 上のために重要な、半導体ナノ微結晶に注入された電子と色素カチオンとの再結合過程を理論的に研究し、 15 光反応制御・光機能材料 再結合速度に対する励起光強度や印加電圧、電解質の影響を解明することに基本的に成功した。 2−1−1−2.光誘起電子移動の実験的研究 植物の光合成や人工の光合成系で重要な電子移動について、それを支配する物理的因子をナノ秒からフ ェムト秒の高速分光法を用いて実験的に研究した。電子移動に対する距離の影響を調べ、特に近距離で起 こる超高速電子移動を観測し、強い相互作用に基づく断熱的反応であることを明らかにした。また、励起 分子錯体の近赤外電荷移動吸収を測定し、ドナーとアクセプターの間の電子的相互作用の大きさを決定し た。カリックスアレーンを基体とするポルフィリン超分子システムの設計・合成を行い、電子移動経路を 制御することに成功した。さらに、色素増感太陽電池として光電変換機能が注目されているナノ微粒子半 導体膜に色素を吸着させた系において、電荷分離効率、電荷注入・再結合ダイナミクスについて研究した。 2−1−1−3.レーザー量子反応制御の基盤研究 光反応をレーザーで制御するため、ナノ秒レーザーを用いたコヒーレントコントロール、及び、赤外前 期解離反応を取り上げた。前者では、高強度レーザーパルス光を用いることで、1光子・2光子の同時吸 収でも量子干渉により分解効率が変化することを示し、3光子吸収の困難を回避することに成功した。後 者では、アニリンの水素結合クラスターを利用し、結合に関与する水素の伸縮振動を励起した場合に赤外 前期解離分解反応の収率が変わることを示した。これは振動モード選択反応の最初の例である。また、光 反応生成物をサブμ秒の時間分解で高感度モニタするため、赤外CRD法を開発し、光分解で生成するヨ ウ素原子の励起状態の検出に適用した。 2−1−2.光エネルギー変換の研究 2−1−2−1.高性能色素増感太陽電池の研究開発 高性能な色素増感太陽電池の開発の為、その開発要素であるナノ結晶酸化物半導体光電極、増感色素、 電解質溶液について検討した。特に、色素の開発においてはピリジルキノリンカルボン酸やテルピリジン カルボン酸、βジケトナートを配位子とする新規なルテニウム錯体を設計合成し、それらが、可視光や従 来困難とされていた近赤外光エネルギ−を効率よく電気エネルギーに変換出来、世界最高レベルの性能を 持つことを明らかにした。また、有機色素としてメロシアニン系色素、スチリル系色素、クマリン系色素 が有効であることを見出し、特にクマリン系色素では有機色素として世界最高の6%の光電変換効率をも つ太陽電池の開発に成功した。 2−1−2−2.人工光合成技術の研究開発 人工光合成技術として、可視光照射下で水の化学量論分解による水素、酸素発生を可能にする酸化物半 導体光触媒プロセスの開発と均一系複核金属錯体触媒による炭酸ガスの可視光還元固定について研究した。 水の光触媒分解については、世界で初めて可視光照射下で水を化学量論で水素と酸素に分解できるナロー バンドギャップ半導体光触媒の開発に成功した。また光合成の Z-スキームを模倣した、可視光照射下、2 段階水分解光触媒プロセスの構築にも成功した。これらの触媒構造や反応機構について検討した。炭酸ガ スの光還元固定についは Ru-Co 複核錯体を合成し、犠牲試薬を用いた可視光照射下で炭酸ガスが選択率高 く CO に還元されることを見出した。 16 光反応制御・光機能材料 2−1−3.光・レーザー反応の研究 2−1−3−1.レーザー精密プロセスの研究 有機化合物の極低温マトリックス場での高強度紫外光パルス励起による反応活性種の生成を研究し、新 物質創製や新材料プロセスに有用な芳香族活性種ベンズジイン、ナイトレン等の生成・捕捉に成功した。 それらの活性種とポリマー膜表面との反応性ならびに低温重合を検討し、新物質創製手法へと展開した。 また、ナノ秒レーザーによる溶液中の芳香族分子の超加熱現象を利用したアブレーション技術を開発し、 石英ガラスやフッ素化ポリマーなどの透明光学材料基板の高品位微細加工手法へと展開した。石英ガラス 表面の1µm レベル高精度加工に成功するとともに、時間分解画像測定による加工機構の解明を行った。 2−1−3−2.レーザー利用ナノ材料プロセスの研究 紫外光パルスレーザーを使ったレーザープロセシングでは、熱的な効果が抑えられ小さな空間に短時間 に高いエネルギー状態を生成することが可能であることから、複合酸化物やナノコンポジットの結晶構造 制御に有用な手法であると考えられる。そこで、塗布光分解法とオフアクシス・レーザーアブレーション 法の二つの手法によりペロブスカイト型複合酸化物の室温調製法について検討した結果、塗布光分解法で は調製条件の制御により結晶構造やエピタキシー成長の制御が可能であること、オフアクシス・レーザー アブレーション法ではナノオーダーの結晶子から構成される結晶性薄膜が生成可能であることが明らかに なった。 2−2.光機能材料領域 2−2−1.光電子材料の研究 σまたはπ共役有機・高分子材料における分子配向の制御により、特定方向に高い電荷移動度、偏光発 光および表面凹凸構造の形成に成功した。具体的には、①キャピラリー・フィリング法による液晶性オリ ゴシランの配向膜の作製技術を開発し、高い電荷輸送能を示すこと、②σまたはπ共役高分子の摩擦転写 法による一軸配向膜の作製法を用いて、その上にπ共役オリゴマーを真空蒸着することで、一方向に成長 した薄膜結晶において、高い光学的異方性(偏光吸収、PLおよびEL)を示すこと、③アゾ色素を側鎖 基として有する高融点ポリマーにおいて、光照射により可逆的に表面レリーフグレーティングが形成でき ることを明らかにした。 2−2−2.光反応性材料の研究 両親媒性アゾベンゼン LB 膜は光異性化に伴い、可逆的に形態の変化することがわかった。アゾベンゼ ンと色素混合 LB 膜において、光異性化をトリガーとして色素の会合状態を制御できることがわかった。 脂質二分子膜のイオン透過性を光制御できることを見いだした。ミセル状集合体への物質の取り込み・放 出の光制御が可能であることを見いだした。感光性を有するアクリル系アゾ化合物と架橋剤との共重合体 からなる固体膜の光応答特性を検討した。種々の置換基を有するジフェニルヘキサトリエンの光反応を検 討した。ホルミル体では液相中、選択的に末端二重結合の異性化が起こるが、固相中では環化付加反応が 進行することがわかった。 2−2−3.光材料計測の研究 ITOや石英ガラス薄板を導波路に用いた光スラブ導波路分光により、固液界面における吸着現象や電 17 光反応制御・光機能材料 気化学反応等をその場で秒レベルの高速で測定する技術を開発した。メチレンブルーやチトクローム c の 吸着過程における表面前処理効果を調べた。また、シンクロトロン放射光を用いた波長可変X線光電子分 光法(XPS)測定を用いて、酸化層の厚さを制御した試料について低ネルギー電子の有効減衰長を精密 測定した。Sc/Cr 多層膜 X 線ミラーで単色化された C-Ka を励起源とする実験室で動作する軟X線光電子分 光を試作し、高感度表面分析を試みた。さらには、高圧下における物質の挙動を分光学的手法を用いて調 べ、氷中のプロトン拡散の測定に成功した。 3.波及効果、発展方向、改善点等 3−1.光反応制御領域 3−1−1.光反応機構の研究 3−1−1−1.光誘起電子移動の理論的研究 外部電場によって電子移動の速度や収率を制御することを目的として、電子移動に対する外部電場の効 果を理論的に研究した。ドナーとアクセプターがスペーサーで繋がれてその距離が固定されている場合に は、ドナー・アクセプター間の距離及び自由エネルギー変化の値に依存して発光強度は増加したり減少し たりすることを明らかにした。この現象が有機電子デバイスの開発に応用できないか検討していきたい。 ドープされたポリマー中における電荷の移動度をドープ分子間の電荷移動の速度に対してマーカス式を用 いて定式化し、移動度に対する外部電場や温度の効果をほぼ定量的に説明することに成功した。理論をさ らに精密化して、電子写真のホール輸送材料の設計に役立つものにしていきたい。光誘起電荷分離により 色素から半導体ナノ微粒子内に注入された電子と色素カチオンとの再結合の機構を明らかにした。理論を さらに精密化し、色素増感太陽電池の性能を向上させるための材料設計に役立つものにしていきたい。 3−1−1−2.光誘起電子移動の実験的研究 本研究の基礎的な成果は、将来の電子移動の応用の基盤となるものである。近距離での電子移動、励起 錯体に関する成果は、光エネルギー変換デバイスなどドナー・アクセプターが接近している系での電子移 動の解明・制御に重要である。超分子での電子移動制御は有機分子のみで組織化される光変換デバイス開 発への応用が期待される。また、色素吸着微粒子半導体膜に関する成果は太陽電池の開発にフィードバッ クさせる。色素の酸化電位と注入効率の関係、電荷再結合ダイナミクスと開放電圧の関係などが明らかに なった。 3−1−1−3.レーザー量子反応制御の基盤研究 通常の分子は3光子吸収強度が弱いためコヒーレントコントロールを適用できる分子系が限られていた が、本研究で準共鳴の2光子吸収を用いることが可能なことがわかり、その適用範囲が広がった。とはい えこの手法は対象が限られるため、今後、フェムト秒レーザーを用いたコヒーレント制御の研究が必要に なると思われる。水素結合クラスターの赤外前期解離反応のモード選択性はNH−水の伸縮振動を励起す ることにより改善されると期待される。水素結合は自然界に広く存在し、種々の物質の2次構造や機能発 現に重要な役割を果たしているため、この手法は今後より大きな発展が期待される。 3−1−2.光エネルギー変換の研究 3−1−2−1.高性能色素増感太陽電池の研究開発 18 光反応制御・光機能材料 色素増感太陽電池の光電変換効率向上の大きな要素である増感色素に関して、新しい色素の開発に成功 し、高性能色素増感太陽電池の実用化への可能性を高めた波及効果は大きい。今後、色素増感太陽電池の 実用化を目指し、さらなる光電変換効率の向上のために、引き続き増感色素の設計合成を行うとともに、 色素の酸化物半導体光電極表面への吸着状態の制御、光電極構造や電解質溶液の最適化を行う必要がある。 これらの成果は、新しい光エネルギー変換技術開発のための基礎的知見として、その波及効果は大きいと 考えられる。 3−1−2−2.人工光合成技術の研究開発 世界で初めて達成した可視光照射下で水を化学量論的に水素と酸素に分解できる光触媒プロセスの開発 の成果は、今後のクリーンエネルギー水素製造プロセス構築に向けての波及効果として大きい。本プロセ スの実用化には、本光触媒の活性向上に向けての検討と、より広範に可視光を吸収し、水分解が可能であ る高性能光触媒の開発が必要である。炭酸ガスの光還元固定においては、犠牲試薬の無いプロセスでの炭 酸ガスの光還元を可能にする光触媒プロセスの開発が必要である。この方向のひとつとして可視光吸収金 属錯体と炭酸ガス還元用固体触媒を組み合わせたハイブリッド触媒の設計が有望であると考えられる。 3−1−3.光・レーザー反応の研究 3−1−3−1.レーザー精密プロセスの研究 高強度紫外パルス光と物質との相互作用を特異的な反応場で試み、既存のレーザープロセシングとは異 なる革新的な先端物質プロセシング手法を見出すことができた。特に、ポリマーアブレーションの機構解 明の研究途上で偶然に発見した超加熱現象を、現在の高度情報化社会を支える光エレクトロニクス産業に おいて重要な石英ガラスの微細加工へと応用できたことは、分子レベルでの光反応制御の基礎研究成果を 革新的なレーザープロセシングに展開した研究例として注目される。今後、開発したプロセシング手法の 有用性を実証する方向へ展開すると共に、プロセスの最適化条件を検討する。 3−1−3−2.レーザー利用ナノ材料プロセスの研究 塗布光分解法やオフアクシス・レーザーアブレーション法といったレーザープロセシングでは、各種高 融点酸化物の室温調製が可能であることから、シリコンのモノリシックな基板と一体化した利用とかポリ マー基板上での膜形成などさまざまな応用展開の可能性が広がるものと考えられる。また、ナノオーダー の結晶子から構成される結晶性薄膜はこれまで不可能であったさまざまな物性のサイズ依存性に関する科 学的知見を与えてくれるものと期待される。今後はこのような機能性酸化物の物性に大きな影響を及ぼす 酸素のストイキオメトリーの制御がさらに重要となるものと考えられる。 3−2.光機能材料領域 3−2−1.光電子材料の研究 σまたはπ共役分子における高い電荷輸送能、高効率発光および表面凹凸形成は、ポスト・シリコン素 子としての有機系半導体、次世代の表示素子、並びに書き換え可能ホログラムへの応用展開が考えられ、 真空プロセスを用いることなく低コストでフレキシブルな素子開発を可能とする。一方、高配向薄膜の構 造とその異方的な光電子特性は、分子内および分子間におけるフォノンと電子の移動を含め、材料科学に おける基礎・基盤的研究にも新たな材料を提供することが可能となる。 19 光反応制御・光機能材料 3−2−2.光反応性材料の研究 生体中の視覚系をモデルとして、光異性化をトリガーとした有機薄膜の光学特性制御が可能であること を明らかにしており、生体模倣型の情報処理材料のプロトタイプとなる知見を得ている。また膜のイオン 透過性・低分子透過性、ミセル内への物質の取り込み・放出の光制御は、生体模倣型のインテリジェント なナノ構造制御材料として、物質分離や分子センシングへの応用の可能性が期待される。さらに液相中、 固相中での光反応を検討することにより、将来のデバイス化の基礎を築くことが可能になる。 3−2−3.光材料計測の研究 先端的物質・材料の研究においては、極微小領域における現象の解明が不可欠である。光スラブ導波路 分光を利用した高感度計測技術においては、固液界面における電気化学反応や吸着速度等の定量的な測定 が可能になった。これにより、電極表面での反応活性の評価が実現されると考えられる。今後、吸着初期 の状況を観察するために測定間隔を更に短くすることが求められる。また、放射光光源を用いた励起X線 エルギー可変光電子分光ではさらに精密なデータを蓄積する。高圧下の物質挙動の計測では、新規な現象 の発見が期待される。 4.研究成果の発表状況 (1)研究発表件数( ( )内は調整費充当領域) 原著論文による発表 国内 41 左記以外の誌上発表 口頭発表 合計 35 (18) 件 348 (212) 件 424 (255) 件 (25) 件 国際 207 (120 ) 件 8 (4) 件 272 (171) 件 487 (295) 件 合計 248 (145) 件 43 (22) 件 620 (383) 件 911 (550) 件 (2)特許等出願件数( ( )内は調整費充当領域) 67(46)件 (うち国内 42(22)件、国外25(24)件) (3)受賞等( ( )内は調整費充当領域) 3(3)件 (うち国内 2(2)件、国外 1(1)件) (4)主要雑誌への研究成果発表 Journal 名 IF値 光反応機 構の研究 光エネルギ ー 光・レーザ ー 変換の研究 反応の研究 合計 Nature 25.814 1 1 Chem Rev 20.036 1 1 J Am Chem Soc 6.025 1 1 Biophys J 4.462 2 2 Chem Commun 3.695 3 Chem Mater 3.580 1 20 2 5 1 光反応制御・光機能材料 1 2 6 J Phys Chem B 3.386 3 J Chem Phys 3.301 10 10 Phys Rev B 3.065 1 1 Langmuir 3.045 1 New J Chem 3.009 J Comput Chem 2.900 J Phys Chem A 2.754 Inorg Chem 2.712 1 1 Tetrahedron Lett 2.558 1 1 J Chem Soc Dalton T 2.502 2 2 Adv Colloid Interface Sci 2.500 1 Chem Phys Lett 2.364 5 J Appl Phys 2.180 2 2 J Opt Soc Am B 1.943 1 1 Chem Phys 1.908 1 B Chem Soc JPN 1.834 1 Catal Lett 1.762 J Polym Sci A:Polym Chem 1.711 J Mol Catal A:Chem 1.659 1 1 Chem Lett 1.633 3 3 Appl Phys A-Mater 1.613 Appl Catal A-Gen 1.576 2 2 Appl Organomet Chem 1.556 1 1 J Mater Res 1.315 1 Solid State Comm 1.271 2 Appl Surf Sci 1.222 Inorg Chem Acta 1.200 J Sol Sci Tech 1.006 1 2 2 2 2 1 1 1 3 1 9 4 1 1 2 2 2 1 2 1 1 2 2 2 1 1 3 3 1 1 IF 値は 2000 年版 (5)シンポジウム等の開催状況 主催したシンポジウム等の年次別開催テーマ等 年 参加人数の累計 開催テーマ名 概 要 開催 日数 次 うち 外国 21 光反応制御・光機能材料 12 第 4 回物質研「光反応制御・光機能材 産総研のCOE化設定領域の研究成果の 料」国際シンポジウム International Photoreaction Photofunctional 3日 276 名 46 名 1日 124 名 4名 3日 252 名 36 名 (4th NIMC 発信と光反応および材料に関する討論と Symposium Control on 研究交流を目的とするシンポジウムで、 and 国内および世界の著名な研究者の招待講 Materials 演 24 件とポスター発表 97 件が行われた。 (PCPM2001)) 13 産総研・光技術研究センター 第 1 回 新たに発足した産総研の光反応制御研究 研究発表講演会−21世紀をひ ら く センターの目的と研究成果の紹介のため に、招待講演 2 件、職員による成果発表 2 光反応制御技術− 件からなる講演会を開催した。 第 5 回産総研「光反応制御・ 13 産総研のCOE化設定領域の研究成果の 光機能材料」国際シ ンポジウム(5th 発信と光反応および材料に関する討論と AIST International Symposium on 研究交流を目的とするシンポジウムで、 Photoreaction Photofunctional (PCPM2002)) Control and 国内および世界の著名な研究者の招待講 Materials 演 23 件とポスター発表 105 件が行われ た。 22 光反応制御・光機能材料 1. 光反応制御領域 1.1. 光反応機構の研究 1.1.1. 光誘起電子移動の理論的研究 産業技術総合研究所フェロー 産業技術総合研究所光反応制御研究センター光反応機構チーム 産業技術総合研究所光反応制御研究センターレーザー反応制御チーム 立矢 正典、A. V. Barzykin、関 和彦、北尾 修 (1)要約 光エネルギー変換では、光吸収の後、電荷分離を効率よく起こし、かつ分離した電荷の再結合を抑制すること が極めて重要である。本課題では、電子移動の速度を支配する因子を明らかにし、電子移動の速度や収率を制御 する方法を理論的に研究する。4年目以降、外部電場によって電子移動の速度や収率を制御することを目的とし て、電子移動に対する外部電場の効果を理論的に研究した。この結果を踏まえて、電子写真の分野で重要な、ド ープされたポリマー中における電荷輸送過程について研究し、電荷の移動度に対する外部電場や温度の効果をほ ぼ定量的に説明することに成功した。また、色素増感太陽電池の性能向上のために重要な、半導体ナノ微結晶に 注入された電子と色素カチオンとの再結合過程を理論的に研究し、再結合速度に対する励起光強度や印加電圧、 電解質の影響を解明することに基本的に成功した。 (2)研究目的 光エネルギー変換では、光吸収の後、電荷分離を効率よく起こし、かつ分離した電荷の再結合を抑制すること が極めて重要である。本課題では、電子移動の速度を支配する因子を明らかにし、電子移動の速度や収率を制御 する方法を理論的に研究する。3年目までに、液体中での電子移動について、速度とドナー・アクセプター間距 離や溶媒の極性、自由エネルギー変化等の物理的因子との関係を明らかにして、マーカスの理論の一般化を行っ た[1]。また、光合成反応中心における電子移動について、2次元自由エネルギー曲面を初めて導入し、逐次的反 応機構に対して超交換機構の方が重要であることを示した。4年目以降、外部電場によって電子移動の速度や収 率を制御することを目的として、電子移動に対する外部電場の効果を理論的に研究した。この結果を踏まえて、 電子写真の性能向上に寄与するために、電子写真の分野で重要な、ドープされたポリマー中における電荷輸送過 程について研究した。また、色素増感太陽電池の性能向上のために、色素増感半導体ナノ微結晶における電子移 動について理論的に研究した。液体中での電子移動については、すでに多くの研究があり基本的な描像は確立し ている。しかし、上で述べた色素増感半導体ナノ微粒子やドープされたポリマー中では、界面や不規則系での電 子移動が重要であり、このような複雑系における電子移動過程の解明は非常に挑戦的な課題である。 (3)研究方法 ポリマー中における励起ドナーからアクセプターへの電子移動に対する外部電場の効果について理論的に研究 23 光反応制御・光機能材料 し、励起ドナーからの発光が外部電場によってどのように変化するかを調べた。また、ドープされたポリマー中 における電荷輸送過程を電荷移動に対するマーカスの理論を用いて解析し、電荷の移動度が外部電場や温度にど のように依存するかを明らかにした。さらに、光誘起電荷分離により色素から半導体ナノ微粒子内に注入された 電子と色素カチオンとの再結合過程を理論的に研究した。再結合速度が励起光強度や印加電圧、電解質にどのよ うに依存するかを明らかにし、再結合速度を遅くする方法を考察した。 (4)研究成果 マーカスの理論によれば、電子移動の速度は反応の自由エネルギー変化に依存する。電子移動によって反応分 子の電荷は変化するので、反応の自由エネルギー変化は外部電場の影響を受ける。従って電子移動の速度も外部 電場の影響を受ける。励起ドナーからアクセプターへ電子移動が起こると、励起ドナーの発光は減少する。この 系に外部電場を印加すると、電子移動の速度が変化するので励起ドナーの発光強度も変化する。ポリマー中にお ける励起ドナーからアクセプターへの電子移動に対する外部電場の効果について理論的に研究し、励起ドナーか らの発光が外部電場によってどのように変化するかを調べた[2,3]。尚、ポリマー中に溶けたドナーやアクセプタ ーに実際に掛かる電場はドナーやアクセプターの周囲のポリマーの界面に誘起される双極子のために必ずしも外 部電場と等しくない。このことを考慮して自由エネルギー変化を厳密に計算する方法を開発した[4]。ポリマー中 にドナーとアクセプターがそれぞれランダムに分布している場合[2]、及びスペーサーで繋がれてその距離が固定 されたドナーとアクセプターの対がポリマー中に溶けている場合[3]を考えた。どちらの場合も外部電場による定 常状態発光強度の変化は電場強度が小さいときには電場強度の2乗に比例することを示した(図1)。ドナーとア クセプターがそれぞれランダムに分布している場合には外部電場によって発光強度は減少することを示した(図 1)。 0.000 c = 2 mol% ∆I(c,F) / I(c,0) -0.002 -0.004 -0.006 -0.008 -0.010 theory, Eq. (13) for P(t,F) theory, Eq. (11) for P(t,F) experiment -0.012 0.000 0.002 0.004 0.006 0.008 0.010 electric field [V/Å] 図1. アクセプター(DMTP)存在下(2mol%)における励起ドナー(ECZ)からの蛍光強度に対する外部電場の効果。■は実験 結果、実線と破線は理論曲線を表す。 一方、ドナーとアクセプターがスペーサーで繋がれてその距離が固定されている場合には、ドナー・アクセプ ター間の距離及び自由エネルギー変化の値に依存して発光強度は増加したり減少したりすることを明らかにした。 これらの結果は最近発表された実験結果とよく一致する。 24 光反応制御・光機能材料 また、ドープされたポリマー中における電荷の移動度に対して新しい理論を提出し、移動度に対する外部電場 や温度の効果をほぼ定量的に説明することに成功した[5]。この系での電荷移動度は強い電場依存性を示す。ドー プされた分子と高分子の多くの組み合わせに対して、移動度は電場強度とともに増大し、電場強度の広い領域(104 - 106 V/cm)で Gill の経験則に従うことが知られている。移動度の温度依存性等の測定から電荷の移動はドープ された分子間のホッピング伝導であることがすでに確立している。最近の実験結果によれば、移動度は高電場領 域では電場強度の増加とともに飽和し、さらに高電場の領域では電場強度の増加とともに減少する。上の結果を 説明するために次のようなモデルを考えた。ドープされた分子の双極子はホッピングサイトに静電ポテンシャル をつくる。サイト間の電荷移動の速度はサイト間の静電ポテンシャルの差に依存する。サイト間の電荷移動の速 度に対して、液体中の電荷移動に対して確立しているマーカスの式を用いて電荷の移動度を計算し、Gill の経験 則および高電場領域での移動度の減少を統一的に説明した(図2)。 図2. 電荷移動度の電場強度依存性。■は Hartenstein 等による17wt%EFTP-doped Polycarbonate に対する実験結果、実線 は理論曲線を表す。縦軸は対数目盛による移動度、横軸は電場強度の平方根を表す。 Gill の経験則のように移動度が電場強度とともに増大するのは、静電ポテンシャルがサイト毎にランダムに変 化しているためである。また、高電場領域での移動度の減少はマーカスの逆転領域によって説明できる。マーカ スの理論によれば、電荷移動に伴う自由エネルギー変化が非常に大きくなると、電荷移動の速度は自由エネルギ ー変化の増加とともに減少する。この領域をマーカスの逆転領域と呼ぶ。 さらに、色素増感太陽電池における電荷再結合過程に対して新しいモデルを提案し、再結合速度に対する励起 光強度や印加電圧、電解質の影響を解明することに基本的に成功した[6]。光誘起電荷分離により色素から半導体 ナノ微粒子内に注入された電子と色素カチオンとの再結合過程はピコ秒からミリ秒までの広い時間領域にわたっ て起こり、その動力学は非指数関数的である。当所の実験グループの結果を含めて最新の実験結果によれば、再 結合速度は励起光強度に依存する。また外部電場の印加や電解質溶液の組成変化によって、半導体ナノ微粒子内 に注入された暗電子の濃度を変化させると、再結合速度も変化する。再結合過程が広い時間領域にわたって起こ るのは、注入された電子がトラップに捕捉されており、トラップの深さが分布しているためであると考えられる。 上の結果を説明するために次のようなモデルを考えた。トラップは半導体ナノ微粒子の表面に分布している。ト ラップの深さの分布は指数関数的で、電子がトラップから脱する速度定数はトラップの深さを活性化エネルギー とするアーレニウス型の式で表される。電子はトラップを脱した後ナノ微粒子の伝導体内を拡散して、ナノ微粒 25 光反応制御・光機能材料 子の表面で再び別のトラップに捕捉されるか、あるいは色素カチオンと再結合する。上の過程の結果として、い ろいろの深さのトラップに捕捉されている電子の分布は時間とともに変化する。電子の分布を時間の関数として 計算し、それに基づいて電子との再結合による色素カチオン濃度の減衰曲線を求めた。光誘起電荷分離により色 素から半導体ナノ微粒子内に注入された電子の濃度 n0 がトラップの濃度 N に比べて低いときには、規格化された 時刻τにおける色素カチオンの生存確率 P(τ)は近似的に次のように表される。 P(τ)-1 = 1 + (n0/N)cτα (1) ここで、αはパラメーターであり、c はαの関数として与えられる定数である。 (1)式によれば、P(τ)-1-1 をτに対して両対数プロットすれば直線が得られるはずである。図3に示すように -1 P (τ ) - 1 理論曲線は実験データを良く再現する。 10 2 10 1 10 0 -1 10 2 10 10 3 10 4 5 10 10 6 7 10 Time, ns 図3.電荷再結合速度に対する励起光強度の影響。P(τ)は TiO2 微粒子上に吸着された Ru(dcbpy)2(NCS)2 カチオンの生存確率を 表す。点は実験結果、□、○、△、▽は対応する理論結果、実線は本文中の(1)式を表す。励起光強度は下から 0.12, 0.6, 3.5, 6mJ/cm2 である。 また、外部電場の印加や電解質溶液の組成変化によって半導体内に注入された暗電子の影響を考慮することに よって、同じモデルを用いて再結合速度に対する外部電場や電解質の影響も説明できることを示した。電子が次 のトラップに捕捉されるまでに進む距離はトラップへの捕捉速度と伝導帯での拡散速度との比に依存する。この 比が非常に大きい極限では電子はすぐ隣のトラップに捕捉される。この場合には電子の再結合速度を決める因子 として空間的拡散が重要になる。一方、この比が非常に小さい極限では、電子はトラップから脱した後直ちにナ ノ微粒子全体へ広がる。この場合には、再結合速度を決める因子として電子がトラップから脱する速度が重要に なる。我々の解析によれば、再結合速度は空間的拡散ではなくトラップから脱する速度によって決まっている。 (5)考察 外部電場によって電子移動の速度や収率を制御することを目的として、電子移動に対する外部電場の効果を理 論的に研究した。ポリマー中における励起ドナーからアクセプターへの電子移動に対する外部電場の効果につい て理論的に研究し、励起ドナーからの発光が外部電場によってどのように変化するかを調べた。ドナーとアクセ 26 光反応制御・光機能材料 プターがスペーサーで繋がれてその距離が固定されている場合には、ドナー・アクセプター間の距離及び自由エ ネルギー変化の値に依存して発光強度は増加したり減少したりすることを明らかにした。この現象が有機電子デ バイスの開発に応用できないか検討していきたい。 ドープされたポリマー中における電荷の移動度をドープ分子間の電荷移動の速度に対してマーカス式を用いて 定式化し、移動度に対する外部電場や温度の効果をほぼ定量的に説明することに成功した。しかし、マーカス式 を用いると高電場領域で移動度の電場に対する減少の仕方が実験と比較して大きくなりすぎるという問題がある。 これを解決するために、マーカス式に分子内振動の効果を取り込んだ式を用いて電荷の移動度を計算することを 計画している。理論をさらに精密化して、電子写真のホール輸送材料の設計に役立つものにしていきたい。 光誘起電荷分離により色素から半導体ナノ微粒子内に注入された電子と色素カチオンとの再結合の機構を明らか にした。理論をさらに精密化し、色素増感太陽電池の性能を向上させるための材料設計に役立つものにしていきた い。 (6)引用文献 [1] A. V. Barzykin, P. A. Frantsuzov, K. Seki and M. Tachiya, “Solvent Effects in Non-adiabatic Electron Transfer Reactions. Theoretical Aspects”, Adv. Chem. Phys. 123 in press [2] M. Hilczer, S. D. Traytak and M. Tachiya, “Electric Field Effects on Fluorescence Quenching due to Electron Transfer”, J. Chem. Phys. 115, 11249 (2001) [3] M. Hilczer and M. Tachiya, “Electric Field Effects on Fluorescence Quenching due to Electron Transfer Ⅱ. Linked Donor-Acceptor Systems”, J. Chem. Phys. 117 in press [4] K. Seki, S. D. Traytak and M. Tachiya, “Rigorous Calculation of the Electric Field Effects on the Free Energy Change and the Reorganization Energy of Electron Transfer Reaction”, J. Chem. Phys. to be submitted [5] K. Seki and M. Tachiya, “Electric Field Dependence of Charge Mobility in Energetically Disordered Materials: Polaron Aspects”, Phys. Rev. B 65, 014305 (2002) [6] A. V. Barzykin and M. Tachiya, “Mechanism of Charge Recombination in Dye-Sensitized Nanocrystalline Semiconductors: Random Flight Model”, J. Phys. Chem. B 106, 4356 (2002) (7)成果の発表 1)原著論文による発表 ア)国内誌(国内英文誌を含む) 1. M. Mikami, 中村振一郎, 北尾修, 荒川裕則, X. Gonze : “First-Principles Study of Titanium Dioxide: Rutile and Anatase”、Jpn. J. Appl. Phys., Part 2、39、L845-L850 (2000) 2. 北尾修, 青木孝造, 小川哲司: “Molecular Structure of Phodopseudomonas viridis” 、J. Comput. Aided Chem..、 1、57-62 (2000) 3. 北尾修, 小川哲司 ,青木孝造, 荒川裕則: “Electron Transfer at Dye-sensitized Solar Cells” 、J. Comput. Aided Chem.、1、63-67 (2000) イ)国外誌 1. T. Bandyopadhyay, 関和彦、立矢正典:”Theoretical Analysis of the Influence of Stochastic Gating on the Transient Effect in Fluorescence Quenching by Electron Transfer”, J. Chem. Phys. 112, 2849-2862 (2000) 2. M. Wojcik, 立矢正典:”Electron-Ion Recombination in Dense Rare Gases: Energy Diffusion Theory vs Simulation”, 27 光反応制御・光機能材料 J. Chem. Phys. 112, 3845-3850 (2000) 3. P. A. Frantsuzov, 立矢正典:”Charge Recombination in Contact Ion Pairs”, J. Chem. Phys. 112, 4216-4220 (2000) 4. 関和彦, 立矢正典: “Diffusion-assisted reaction through a fluctuating bottleneck” 、J. Chem. Phys., 113、 3441-3446 (2000) 5. M. Hilczer, 立矢正典:”Computer Simulation of Electron Transfer Reactions between Two Molecular Species in Solvents of Various Polarity”, J. Mol. Liquids 86, 97-102 (2000) 6. 関和彦, 宮崎州正: “Mean Field Theory of Viscoelasticity of Nondilute Vesicle Dispersions” 、Statistical Physics、 2000、751-753、(2000) 7. A.V. Barzykin, 橋本修一: “Random Walk Theory of Reaction Kinetics in Zeolites”Statistical Physics、2000、 754∼756 (2000) 8. A.V. Barzykin, 橋本修一: “Reaction kinetics in zeolites as a random walk problem: Theory versus experiment” 、 J.Chem. Phys.、113、2841-2845 (2000) 9. 東本慎也, 松岡雅也, 山下弘巳, 安保正一, 北尾修, 日高久夫, M. Che, E. Giamello: “ Effect of the Si/Al Ratio on the Local Structure of V-oxide/ZSM-5 Catalysts Prepared by the Solid-State Reaction and Their Photocatalytic Reactivity for the Decomposition of NO in the Absence and Presence of Propane” 、 J. Phys. Chem., B、104、10288-10292 (2000) 10. 北尾修, 青木孝造, 小川哲司:“Theoretical Study on the Mechanism of Electron Transfer at Photosyntetic Reaction Centers” 、Nonlinear Optics、26、265∼270 (2000) 11. 岩井伸一郎、村田重夫、立矢正典:”Contribution of the Ultrafast , Short-Distance Intermolecular Electron Transfer to the Fluorescence Quenching Rate in Solution”, J. Chem. Phys. 114, 1312-1318 (2001) 12. M. Hilczer, A.V. Barzykin, 立矢正典: “Theory of the Stopped-Flow Method for Studying Micelle Exchenge Knetics” 、 Langmuir、17-14、4196-4201 (2001) 13. M. Wojcik、立矢正典:”Electron-ion recombination rate constant in dense gaseous Kr/CH4/ mixtures“、Res. Chem. Intermed. 27、867-874 (2001) 14. M. Hilczer, S. D. Traytak, 立矢正典:“Electric field effects on fluorescence quenching due to electron transfer ” 、J. Chem. Phys.、115-24、11249-11253(2001) 15. 関和彦、立矢正典:“Electric field dependence of charge mobility in energetically disordered materials: Polaron aspects” 、Phys. Rev. B、65、1-13 (2001) 16. A. V. Barzykin, P. A. Frantsuzov: “On the role of back reaction in the stochastic model of electron transfer ” 、J. Chem. Phys.、114、345-354 (2001) 17. A. V. Barzykin, A. I. Shushin: “Effect of anisotropic reactivity on the rate of diffusion-controlled reactions : Comparative analysis of the modelsof patches and hemispheres“、Biophys. J.、80、2062-2073 (2001) 18. A. I. Shushin, A. V. Barzykin: “Effect of local molecular shape and anisotropic reactivity on the rate of diffusion-controlled reactions” 、Biophys. J.、81、3137-3145 (2001) 19. S. Hashimoto, M. Hagiri, A. V. Barzykin,: “Triplet-triplet energy transfer as a tool for probing molecular diffusivity within zeolites” 、J. Phys. Chem. B、106、844-852 (2002) 20. S. Yamamoto, H. Tatewaki, O. Kitao, G. H. F.Diercksen: “Rydberg character of the higher excited states of free base porphin” 、Theo.Chem. Accounts、106、287-296 (2001) 21. S. Hashimoto, M. Matsuoka, S. G. Zang, H. Yamashita, O. Kitao, H. Hidaka, M. Anpo: “Characterization of the VS-1 catalyst using various spectroscopic techniques and its unique photocatalytic reactivity for the decomposition of NO in the absence and presence of C3H8“ Microporous and Mesoporous Matererials、48、329-335 (2001) 28 光反応制御・光機能材料 2)原著論文以外による発表(レビュー等) ア)国内誌(国内英文誌を含む) なし イ)国外誌 1. A.V. Barzykin, 関和彦、立矢正典: “Kinetics of diffusion-assisted reactions in microheterogeneous syste” Adv. Colloid Interface Sci., 89-90、47-140 (2001) 3)口頭発表 ア)招待講演 1. 立矢正典:”Effect of Donor-Acceptor Distance on the Electron Transfer Rate in Solution”, 5th Trombay Symposium on Radiation and Photochemistry, Mumbai (2000) 2. 立矢正典:”The Effects of Donor-Acceptor Distance and Diffusion on the Electron Transfer Rate”, Seminar, Indian Institute of Science, Bangalore (2000) 3. 立 矢 正 典 : ”Diffusion-Assisted Reactions in Confined Systems”, Symposium on Lipid and Surfactant Self-Assemblies, Uppsala (2000) 4. 北尾修: 「光誘起電子移動に関する理論的研究」 、 [神戸大学理学部分子生物科学セミナー] (2000.5) 5. 立矢正典:”Ultrafast Charge Separation Induced by Interaction between Donor and Acceptor at Short Separations”, Symposium on Structure and Dynamics in Complex Chemical Systems, Bangalore (2001) 6. 立矢正典: 「高速電子移動と電子移動の距離の分布」 、大阪大学産業科学研究所研究会、吹田 (2001) 7. 立矢正典:”Ultrafast decay of fluorescence from excited acceptors in a donor solvent and a new machanism of electron transfer“, Seminar, Seoul National University, Seoul (2001) 8. 立矢正典:”Theory of charge recombination in dye-sensitized nanocrystalline semiconductors“、88th Korean Chemical Society Meeting、Pusan(2001) 9. 立矢正典: ”Theory of the electric field effect on fluorescence quenching due to electron transfer“、Seminar, Institute of Atomic and Molecular Sciences, Taipei(2001) 10. 立矢正典: 「電荷移動、電荷輸送、電荷再結合に対する電場効果」 、分子構造総合討論会、札幌(2001) 11. 立矢正典: ” Theory of the electric field effect on fluorescence quenching due to electron transfer“、3rd Asian Photochemistry Conference、Mumbai(2002) イ)応募・主催講演等 1. 関和彦: 「タンパクへの配位子の再結合反応にたいする溶媒粘度の効果」 、第 10 回理論化学シンポジウム (2000.8) 2. 関和彦:マーカス式に対する外部電場の効果、 [溶液化学シンポジウム] (2000.11) 3. 北尾修, 青木孝造, 小川哲司: 「電荷分離系に一般化された電荷平衡法」 、第 4 回理論化学討論会 (2000.5) 4. 青木孝造, 北尾修, 小川哲司: 「光合成反応中心における電子移動に関する理論的研究」 、第 4 回理論化学討論会 (2000.5) 5. 小川哲司, 北尾修, 荒川裕則: 「色素増感半導体太陽電池における電子移動に関する理論的研究」 、第 4 回理論化学討 論会 (2000.5) 6. 東本慎也, 安保正一, 北尾修, 青木孝造, 荒川裕則: 「V-シリカライト触媒上での NOx 光触媒分解反応機構に関する 理論的研究」 、第 4 回理論化学討論会 (2000.5) 7. 北尾修, 青木孝造, 小川哲司, 荒川裕則: 「光誘起電子移動に関する理論的研究」 、2000 計算化学討論会 (2000.6) 8. 青木孝造, 北尾修, 小川哲司: 「QEq-CS(Charge equilibration generalized fro charge separation system )法に 29 光反応制御・光機能材料 よる光合成細菌での電子移動」 、光合成細菌の色素系と反応中心に関するセミナーVIII (2000.6) 9. 北尾修, 青木孝造, 小川哲司: 「QEq-CS(Charge equilibration generalized fro charge separation system )法に よる光合成細菌の静電場」 、光合成細菌の色素系と反応中心に関するセミナーVIII (2000.6) 10. 青木孝造, 北尾修, 小川哲司: 「光合成細菌での電子移動」 、光合成細菌の色素系と反応中心に関するセミナーVIII (2000.6) 11. 青木孝造, 北尾修, 小川哲司: 「光合成反応中心における電子移動機構に関する理論的研究」 、第 10 回理論化学シン ポジウム (2000.8) 12. 小川哲司, 北尾修, 荒川裕則: 「色素増感半導体太陽電池における光誘起電子移動反応」 、第 10 回理論化学シンポジ ウム (2000.8) 13. 東本慎也, 安保正一,北尾修, 青木孝造, 荒川裕則: 「V−シリカライト上での NOx の光触媒分解反応機構に関する理 論的研究」 、第 86 回触媒討論会 (2000.9) 14. 三上昌義, 中村振一郎, 北尾修, 荒川裕則, X. Gonze: 「TiO2 多相に関する第一原理電子構造計算」 、日本物理学会第 55 回年次大会 (2000.9) 15. 北尾修, 小川哲司, 荒川裕則: 「色素増感型太陽電池における光誘起電子移動に関する理論的研究」 、2000 年光化学討 論会 (2000.9) 16. 北尾修: 「生体系における電子移動反応に関する理論的研究」 、分子構造総合討論会、(2000.9) 17. 山本茂義, 舘脇洋, 北尾修, G. H. F. Diercksen: 「FBP 励起状態のリドベルグ性」 、分子構造総合討論会 (2000.9) 18. 小川哲司, 北尾修, 荒川裕則: 「QEq,QEq-CS 法を用いた光誘起電子移動に関する理論的研究:色素増感太陽電池」 、分 子構造総合討論会 (2000.9) 19. 青木孝造, 北尾修, 小川哲司: 「光合成反応中心における光誘起電子移動機構に関する理論的研究」 、分子構造総合討 論会 (2000.9) 20. 北尾修, 小川哲司, 青木孝造, 荒川裕則:「色素増感型太陽電池に関する理論的研究」 、第 23 回情報化学討論会 (2000.10) 21. 北尾修, J. Sefcik, T. Cagin, W. A. Goddard: “The MS-Q Force Field for Aluminophosphate Zeolites; Explanation of the Unsual Hydrophilicity in VPI-5”、International Symposium on Zeolites and Microporous Crystals (2000.8 ) 22. 東本慎也, 松岡雅也, 山下弘巳, 安保正一, 北尾修:“Characterization of the VS-1 Catalyst Using Varuous Spectroscopic Techniques and its Unique Photocatalytic Reactivity for the Decomposition of NO in the Absence and Presence of C3H8” 、International Symposium on Zeolites and Microporous Crystals (2000.8) 23. 北尾修, 青木孝造, 小川哲司: “Photoinduced electron transfer at photosynthetic reaction centers investigated by charge equilibration generalized for charge separation” 、International Chemical Congress of Pasific Basin Societies(2000.12) 24. 北尾修, 青木孝造, 小川哲司: “Asymmetric electrostatic field of photosynthetic reaction center investigated by charge equilibration” 、International Chemical Congress of Pasific Basin Societies (2000.12) 25. 小川哲司, 北尾修, 荒川裕則: “Theoretical studies on photoinduced electron-transfer process at dye-sensitized solar cells” 、International Chemical Congress of Pacific Basin Society (2000.12) 26. 関和彦, 立矢正典: “Application of the Marcus Theory to the Field Dependence of Charge Mobility in Molecularly Doped Polymers ”、4th NIMC International Symposium on Photoreaction Control and Photofunctional Materials(2001.3) 27. 立矢正典, A. V. Barzykin: “Theory of charge recombination in dye-sensitized nanocrystalline semiconductors ” 、 4th NIMC International Symposium on Photoreaction Control and Photofunctional Materials(2001.3) 28. 立矢正典、S. Traytak:”Electric Field Effects on Fluorescence Quenching in Electron Transfer Processes”, 30 光反応制御・光機能材料 4th NIMC International Symposium on Photoreaction Control and Photofunctional Materials(2001.3) 29. 関和彦, 立矢正典: 「ポーラロン描像に基づく不規則な物質中での電場依存電荷移動度」、日本物理学会第 56 回年次 大会 (2001.3) 30. S.D. Traytak, 立矢正典:“Concentration dependence of fluorescence quenching with ionic reactants ”、 International Conference on Photochemistry、Moscow(2001.7) 31. M. Hilczer, S. Traytak, 立矢正典: “Theory of the electric field effect on fluorescence quenching due to electron transfer” 、第 44 回放射線化学討論会、Osaka (2001.9) 32. A. V. Barzykin, 立矢正典:“On the mechanism of charge recombination indye-sensitized nanocrystalline semiconductors” 、光化学討論会、金沢 (2001.9) 33. M. Hilczer, S. Traytak, 立矢正典:”Theory of the Electric Field Effect on Fluorescence Quenching Due to Electron Transfer”, 光化学討論会、金沢 (2001.9) 34. 関和彦, 立矢正典:「ポーラロン描像に基づく不規則な物質中での電場依存電荷移動度」、光化学討論会、金沢 (2001.9) 35. 関和彦, S. D. Traytak, 立矢正典: 「マーカス式に対する定常電場の効果」、日本物理学会、京都 (2002.3) 36. 北尾修: “Theoretical studies on electron transfer at photosynthetic reaction center” 、第 4 回物質研光反応 制御・光機能材料国際シンポジウム (2001.3) 37. 青木孝造, 北尾修 : “The anion state between a bacteriophephytion and an accessory bacteriochlorophyll at photosynthetic reaction center” 、第 4 回物質研光反応制御・光機能材料国際シンポジウム (2001.3) 38. 石川善洋, 北尾修, 高橋宏 : “Theoretical studies of electron transfer at dye-sensitized solar cells” 、 第 4 回物質研光反応制御・光機能材料国際シンポジウム (2001.3) 39. 小 川 哲 司 , 北 尾 修 , 荒 川 裕 則 :“ Theoretical studies on photo-induced electron transfer process at dye-sensitized solar cells ” 、第 4 回物質研光反応制御・光機能材料国際シンポジウム (2001.3) 40. 関和彦、S. D. Traytak、立矢正典: “Electric Field Effect on Electron Transfer Rate” 、分子科学研究所岡崎レ クチャー (2002.3) 41. 立矢正典, A. V. Barzykin:”Theory of Charge Recombination in Dye-Sensitized Nanocrystalline Semiconductors”, 5th AIST International Symposium on Photoreaction Control and Photofunctional Materials、Tsukuba(2002.3) 42. 関和彦, S. D. Traytak, 立矢正典: “Electric Field Effect on Electron Transfer Rate”、5th AIST International Symposium on Photoreaction Control and Photofunctional Materials]、Tsukuba (2002.3) 43. M. Hilczer, 立矢正典:“Electric Field Effect on fluorescence quenching due to electron transfer in a donor-spacer-acceptor systems ”、 5th AIST International Symposium on Photoreaction Control and Photofunctional Materials、Tsukuba(2002.3) 44. M. Hilczer, 立矢正典: “Competitive electron transfer in model ionic triad systems. MD simulations”、5th AIST International Symposium on Photoreaction Control and Photofunctional Materials、Tsukuba(2002.3) 45. F. D. Stanislav, 立矢正典: “Relaxation and recombination of excess electrons in water. Two-state electron model”、5th AIST International Symposium on Photoreaction Control and Photofunctional Materials、 Tsukuba(2002.3) 46. K.K.Liang, P. Lelong, A. M. Mebel, S. H. Lin, M. Hayashi, H. L. Slezle, E. W. Schlag, 立矢正典: “The role of Duscuinsky effect on intramolecular electron transfer ”、 5th AIST International Symposium on Photoreaction Control and Photofunctional Materials、Tsukuba(2002.3) 47. A.V. Barzykin, 関和彦、立矢正典: “Diffusion-assisted long-range reaction between the ends of a polymer: Effective sink approximation “ 、 5th AIST International Symposium on Photoreaction Control and Photofunctional Materials (2002.3) 31 光反応制御・光機能材料 48. O. Kitao, T. Ogawa, N. Kurita, H. Sekino and S. Tanaka :“CUFF (Consistent Charge Equilibration with Universal Force Field ” 、5th AIST International Symposium on Photoreaction Control and Photofunctional Materials (2002.3) 4)特許等出願等 なし 32 光反応制御・光機能材料 1. 光反応制御領域 1.1. 光反応機構の研究 1.1.2. 光誘起電子移動の実験的研究 産業技術総合研究所フェロー産業技術総合研究所光反応制御研究センター光反応機構チーム 立矢 正典、村田 重夫、有村 隆志、加藤 隆二、古部 昭広 (1)要約 植物の光合成や人工の光合成系で重要な電子移動について、それを支配する物理的因子をナノ秒からフェムト 秒の高速分光法を用いて実験的に研究した。電子移動に対する距離の影響を調べ、特に近距離で起こる超高速電 子移動を観測し、強い相互作用に基づく断熱的反応であることを明らかにした。また、励起分子錯体の近赤外電 荷移動吸収を測定し、ドナーとアクセプターの間の電子的相互作用の大きさを決定した。カリックスアレーンを 基体とするポルフィリン超分子システムの設計・合成を行い、電子移動経路を制御することに成功した。さらに、 色素増感太陽電池として光電変換機能が注目されているナノ微粒子半導体膜に色素を吸着させた系において、電 荷分離効率、電荷注入・再結合ダイナミクスについて研究した。 (2)研究目的 植物の光合成や人工の光合成系で重要な役割を果たす電子移動の基本的な性質を、ナノ秒からフェムト秒の高 速分光法を用いて調べる。どのような因子が電子移動を支配しているかという観点から、溶液中での反応速度に 対する距離の影響、色素増感太陽電池に使用される色素吸着半導体微粒子膜系での電子移動などを研究する。ま た、電子移動反応の制御された超分子を設計・合成し、その性質を調べる。これらの研究を通じて電子移動の機 構を調べ、光エネルギー変換系設計の指針を得ることを目的とする。 (3)研究方法 電子移動反応はナノ秒あるいはそれより速いものが多いので、それを調べるために実験は主としてナノ秒から フェムト秒までの高速分光法により行う。電子移動による蛍光消光の研究にはピコ秒の時間相関単一光子計数法 とフェムト秒蛍光アップコンバージョン法、電子移動により過渡的に生成するイオンの検出や励起錯体の近赤外 吸収の測定にはナノ秒からフェムト秒までの過渡吸収分光法を用いる。また、超分子の設計・合成は高度な有機 合成手法により行う。 (4)研究成果 1)電子移動反応のパラメーター ピコ秒およびフェムト秒の蛍光減衰を時間相関単一光子計数法(TCSPC)および蛍光アップコンバージョン法 (UC)で測定した。TCSPC のデータを解析すると電子移動速度 k(r)の距離依存性が得られる。∆G を反応の自由エネ 33 光反応制御・光機能材料 ルギー変化とすると、無極性溶媒中では logk(r) vs. r のプロットの傾きは−∆G が大きくなると緩やかになる。 一方極性溶媒中では∆G が変わっても傾きはあまり変化しない。無極性溶媒中で傾きが大きく変化するのは、r が 大きくなると−∆G が増加するためである。極性溶媒中では∆G は r に関係なくほぼ一定である[1]。 UC の測定結果によると、シアノアントラセンの蛍光がアニリン誘導体により消光されると、その減衰は2成分 となる。遅いほうの成分はマーカス型電子移動に基づく消光によるものである。速い方の成分の強度は消光物質 濃度とともに増加する。9-シアノアントラセンを N,N-ジメチルアニリンに溶かした場合、速い成分の寿命は約 210 fs で、長波長部にあるエキシプレックス蛍光の立ち上がり時間にほぼ等しい。他の数種の D-A 対の場合も速い成 分の寿命はほぼ 200 fs で、電子移動反応の∆G には関係なくほぼ一定である。このことはこれが新しいタイプの電 子移動であることを示している。この電子移動は近距離で強く相互作用している D と A の間で起こるものと考え られる。近距離では D と A の間の相互作用は十分強いため DA 状態と D+A-状態は混じり合い、ポテンシャル曲線は 図1のようになると考えられる。 D+A- 電子移動 D + A* ∆E 励起 蛍光 エキシプレックス 蛍光 D+A Q1 Q0 分子間距離 (Q) 図1 D-A 対のポテンシャルエネルギー図 この場合電子移動 D + A → D+ + A- は断熱反応となり、極めて速くなり得る[2,3]。 分子錯体の電子的相互作用の値を実験的に決定するため、近赤外過渡吸収分光装置を製作した。この装置によ り、ペリレンエキシマーおよびクロラニルとアルキルベンゼンによる三重項エキシプレックスの電荷移動吸収を 測定した[4,5]。前者の電荷移動吸収帯の波長から、中性励起状態とイオンペア状態との移動積分を 0.37 eV と見 積もった。これからペリレンエキシマーの安定化エネルギーは励起子相互作用が 70%、電荷移動相互作用が 30%と いう結果が得られた。後者については電荷移動吸収帯の場所から見積もった移動積分は約 0.5 eV であった。これ らの値を用いてエキシマーの安定性、電子移動反応との関係について検討した。 ベンゾキノンを水素結合で認識しポルフィリンとの会合体を形成させるために、ホスト化合物であるカリック スアレーンを基体とした超分子を合成し、その超分子で水素結合を介した極めて高速な光誘起電子移動反応が起 こることを明らかにした。また、種々の電子アクセプターから特定のアクセプターのみを 2 点水素結合で認識す る分子ピンセット機能を有する超分子I(図2)を合成し、特定のアクセプターのみをターゲットとした電子移 動反応を起こすことに成功した[6]。 34 光反応制御・光機能材料 Electron Transfer Electron Transfer O N O 5Å O N N Zn N N MeO O O N N Zn N N HO HO NO2 MeO O OPr OPr O I t-Bu N O NH O t-But-Bu t-Bu II 図2 この分子ピンセット機能の選択性は、特定の還元電位を有するアクセプターのみに電子を送ることが可能であ り、電子移動反応を分子レベルで制御可能な基礎的知見として注目される。さらに、カリックスアレーンをイン ターフェースとして、電子ドナーとアクセプターの空間的配置を精密に制御した超分子 II(図2)の合成に成功 した[7]。特定の立体配座(1,3-オルタネート体)における電子ドナーとアクセプター間の過渡吸収測定により、 スルーボンド経路以外で電子が移動することを明らかにした。なお、電子移動反応は、ドナーとアクセプター間 のファンデルワールス半径の2倍の距離(約 5A)をスルースペース経路で高速に進行することが判明した。 2)半導体ナノ微粒子上に吸着された色素からの電子注入 ZnO、TiO2 などのナノ微粒子半導体膜にさまざまな色素を吸着させた系における界面での電子移動反応の詳細を 調べた。色素と膜の吸着はカルボキシル基で行われており、その数でデバイス性能が大きく異なる系が報告され ている。その系について過渡吸収分光を行い、電子注入効率がカルボン酸の数に大きく依存していることを明ら かにした[8]。詳細な検討から、吸着構造に問題があり、電子注入に適した構造をとっていないために効率が低く なっていることが明らかになった。また、ZnO に Ru 金属錯体色素を吸着させた系では、TiO2 に吸着させた系に比 べ著しくデバイス効率が下がることが知られている。この原因を解明するために、過渡吸収測定に加え、電子顕 微鏡、蛍光顕微鏡等の手法を用いて検討した。その結果、Ru 系色素は Zn イオンと会合体を形成し、半導体結晶表 面にマイクロメーターサイズの結晶粒を形成し、電子注入過程を阻害していることがわかった。さらに、ZnO 系に おいて、電子注入効率と吸着色素分子の物性との比較を行った(図3)。 35 光反応制御・光機能材料 3.5 3 N ormalized Absorbance 2195 2.5 2311 2 EY 1.5 Bpy 1 N3 0.5 ZnO 0 1000 1500 2000 2500 3000 W avelength / nm 図3 注入電子の近赤外吸収スペクトル 電子注入過程の自由エネルギー変化を・G とするとき、-・G が 0.2eV より小さいときには、電子注入効率は-・G に比例して増加し、それ以上では一定値になることがわかった。このエネルギー依存性を説明するために理論モ デルを構築して検討した結果、界面でのエネルギー的な不均一性を考慮することで説明できることがわかった。 より短い時間領域では電子の生成とトラップに基づく緩和過程が観測されることが予想される。色素を吸着さ せた ZnO ナノ微粒子半導体膜についてフェムト秒分光法で電子注入の速度、注入ダイナミクスを測定したところ、 実際にそのような緩和過程がピコ秒領域で観測された。電子注入過程は、まず親イオンに束縛された電子が生成 し、その後自由電子に緩和する2段階過程で起こっていることを明らかにした。 (5)考察 近距離での DA 状態と D+A-状態との混じり合いにより起こる電子移動で生成するのはエキシプレックス状態であ る。これは速い成分の減衰の速度がエキシプレックスの立ち上がりに一致することと符合する。このタイプの電 子移動は多くの人工系で重要なものとなると考えられる。なぜなら、人工系では電子移動を速くするため D と A は近くに配置されるからである。 ペリレンエキシマーについての詳細な研究から、芳香族分子のエキシマーの電子状態について一般的な性質を 明らかにすることができた。つまり小さな分子では励起状態相互作用が重要であるのに対し、分子の大きさの増 加に伴い電荷移動相互作用の重要性が増してくることがわかった。このことは同じ分子からなる励起錯体におけ る電子移動反応の制御の研究として展開を考えている。クロラニルと種々のベンゼン誘導体からなるエキシプレ ックスについては、電子的相互作用の大きさが分子構造に依存する傾向が見いだされた。これは電子移動反応系 を分子の構造や配向の観点から設計する際の指針を与えるものと考えている。 電子移動を起こす超分子に関する研究では、電子移動経路を精密に評価するために、逆電子移動反応の制御さ 36 光反応制御・光機能材料 れた超分子システムの設計、合成、分光測定において有益かつ基礎的な知見が数多く得られている。今後、更な る基礎研究としての成果の発信を行うとともに、それらに基づいて、次世代型光分子電池、分子ワイヤー、分子 半導体等、より実用性の高い光変換デバイスの開発を行う。 微粒子半導体膜に色素を吸着させた系における電子移動の研究は、色素増感太陽電池のメカニズムに関して重 要なデータを提供しつつある。ここで述べた結果は増感色素のカルボキシル基の数や用いる半導体微粒子の種類 による太陽電池性能の違いの原因を明らかにした。また、電子注入効率と太陽電池性能には強い相関があり、得 られた結果は有用な色素の設計に指針を与えるものと言える。フェムト秒分光の結果は、電子注入の初期におい ては電子は親分子イオンに束縛されており、その後、伝導に寄与する電子へと変化するということを示している。 (6)引用文献 [1] L. Burel, M. Mostafavi, S. Murata, and M. Tachiya, J. Phys. Chem. A, 103, 5882 (1999). [2] S. Iwai, S. Murata, and M. Tachiya, J. Chem. Phys., 109, 5963 (1998). [3] S. Iwai, S. Murata, R. Katoh, M. Tachiya, K. Kikuchi, and Y. Takahashi, J. Chem. Phys., 112, 7111 (2000). [4] R. Katoh, S. Sinha, S. Murata, and M. Tachiya, J. Photochem. Photobiol. A: Chem., 145, 23 (2001). [5] R. Katoh, S. Murata, and M. Tachiya, Chem. Phys. Lett., 352, 234 (2002). [6] T. Arimura, T. NIshioka, S. Ide, Y. Suga, H. Sugihara, S. Murata, and M. Tachiya, J. Photochem. Photobiol. A: Chem., 145, 123 (2001). [7] T. Arimura, S. Ide, Y. Suga, T. Nishioka, S. Murata, M. Tachiya, T. Nagamura, and H. Inoue, J. Am. Chem. Soc., 123, 10744 (2001). [8] K. Hara, H. Horiuchi, R. Katoh, L. P. Singh, H. Sugihara, K. Sayama, S. Murata, M. Tachiya, and H. Arakawa, J. Phys. Chem. B, 106, 374 (2002). (7)研究発表成果 1)原著論文による発表 ア)国内誌(国内英文誌を含む) 1. 須賀康裕, 有村隆志, 井手誠二, 杉原秀樹, 村田重夫, 立矢正典 : “Synthesis and characterization of a porphyrin dimer having a 2,6- diacylpyridyl group as a spacer between two porphyrin units” 、J. Oleo Sci. 50、165 ∼172 (2001) 2. T. Nishioka, T. Arimura, Y. Suga, S. Murata, M. Tachiya, M. Goto,:“Synthesis and crystal structure of a calix[4]arene-based dual boron-dipyrrin system” 、Bull. Chem.Soc. Jpn.、74、2435-2436 (2001) 3. Y. Suga, T. Arimura, S. Ide, H. Sugihara, T. Nishioka, M. Tachiya: “Naphthalen etetracarboxydiimides and related compounds. preparation and chacterization”J. Oleo Sci.、50、527-532 (2001) 4. S. Ide, T. Arimura, T. Nishioka, S. Murata: “Synthesis of formyl nitrocalix[4]arene each having two ester group” 、J. Oleo Sci.、50、927-930 (2001) イ)国外誌 1. 岩井伸一郎, 村田重夫, 加藤隆二, 立矢正典, 菊池公一, 高橋康丈: “Ultrafast charge separation and exciplex formation induced by strong interaction between electron donor and acceptor at short distances” 、J. Chem. Phys.、112、7111-7117 (2000) 37 光反応制御・光機能材料 2. 岩井伸一郎, 鎌田俊英, 村田重夫, 山本薫, 太田俊明: “Wavepacket motion during thermalization of self-trapped exciton driven by an intramolecular vibration in one-dimensional platinum dimethylglyoxime complex” 、J. Lumin., 87-89、629-632 (2000) 3. 岩井伸一郎, 原浩二郎, 村田重夫, 加藤隆二, 杉原秀樹, 荒川裕則:“Ultrafast interfacial charge separation processes from the singlet and triplet MLCT states of Ru (bpy)2(dcbpy) adsorbed on nanocrystalline SnO2 under negative applied bias” 、J. Chem. Phys., 113、3366-3373 (2000) 4. 岩井伸一郎, 村田重夫, 立矢正典: “Contribution of the ultrafast, short-distance intermolecular electron transfer to the fluorescence quenching rate in solution” 、J. Chem. Phys.、 114、1312-1318 (2001) 5. 有村隆志, 井手誠二, 西岡琢哉, 杉原秀樹, 村田重夫, 大和武彦: “Synthesis of 5-formyl-17-nitrocalix[4]arenes in the 1,3-alternate conformation ” 、J. Chem. Res., Synop.、2000、234-236 (2000) 6. 有村隆志, 須賀康裕, K. Jacob, 杉原秀樹, 村田重夫, 都築廣久: “Synthesis of Trichlorodimethoxybenzene-Linked Porphyrin-Pyridine Conjugate” 、Synthesis、2000、1543-1546 (2000) 7. 須賀康裕, 有村隆志, 井手誠二, 西岡琢哉, 杉原秀樹, 村田重夫, 都築廣久: “No scrambling in the synthesis of meso-substituted porphyrins from one dipyrromethane and aryl aldehydes”、J. Chem. Res., Synop、2000、512-514 (2000) 8. R. Katoh, S. Murata, M. Tachiya:“Origin of the stabilization energy of perylene excimer as studied by fluorescence and near-IR transient absorption spectroscopy” 、J. Photochem. Photobio., A: Chem.、145、23-34 (2001) 9. K. Hara, H. Horiuchi, R. Katoh, L. P. Singh, H. Sugihara, K. Sayama, S. Murata, M.Tachiya, H. Arakawa: “Effect of the ligand structure on the efficiency of electron injection from excited Ru-phenanthroline complexes to nanocrystalline TiO2 films“、J. Phys. Chem., B、106、374-379 (2002) 10. R. Katoh, S. Murata, M. Tachiya :“Near-IR absorption of chloranil-alkylbenzene triplet exciplexes : Estimation of the transfer integral between the triplet excited state (DA*) and the ion-pair state (D+A-)” 、 Chem. Phys. Lett.、352、234-239 (2002) 11. T. Arimura, S. Ide, Y. Suga, T. Nishioka, S. Murata, M. Tachiya, T. Nagamura, H. Inoue:、 “Electron transfer through-space or through-bonds? A novel system that permits a direct evaluation“、J. Am. Chem. Soc.、123、 10744-10745 (2001) 12. T. Arimura, T. Nishioka, S. Ide, Y. Suga, H. Sugihara, S. Murata, M. Tachiya: “Intracomplex electron transfer in a hydrogen-bonded calixarene-porphyrin conjugate :Tweezers for a quinone” 、 J. Photochem. Photobio., A: Chem.、145、123-1288 (2001) 2)原著論文以外による発表(レビュー等) ア)国内誌(国内英文誌を含む) 1. 須賀康裕、有村隆志: 「非共有結合型光誘起電子移動研究の新展開」 、日本油化学会誌、49、893-904 (2000). 2. 西岡琢哉、有村隆志: 「光機能中心としてのポルフィリン二量体システム」 、オレオサイエンス、1、9-15 (2001) 3. 有村隆志、西岡琢哉、須賀康裕: 「ナノサイズ光機能システムとしてのポルフィリンオリゴマー:ナノテクノロジー へのシナリオ」 、表面、39、257-275 (2002) イ)国外誌 なし 3)口頭発表 38 光反応制御・光機能材料 ア)招待講演 1. 村田重夫:「電子移動反応に対する距離の効果」 、理化学研究所セミナー、和光 (2001.6) 2. 有村隆志: “A Supramolecular System derived from Calix [4 ]arene that Allows a Direct Evaluation between Through Space and Through Bonds” 、26th International Symposium on Macrocyclic Chemistry、福岡市 (2001.7) イ)応募・主催講演等 1. 加藤隆二, 村田重夫:「近赤外(<2500nm)領域過渡吸収分光計の製作と芳香族エキシマーの吸収スペクトルの観測」 、 第 16 回化学反応討論会 (2000.6) 2. 岩井伸一郎, 村田重夫, 立矢正典: 「近接ドナー、アクセプタ対における非マ−カス型超高速電子移動Ⅱ:溶液中で の蛍光消光速度への寄与」 、2000 年光化学討論会 (2000.9) 3. 加藤隆二, S. Sinha1, 村田重夫: 「溶液中でのペリレンエキシマーの生成過程と電子状態」 、2000 年光化学討論会 (2000.9) 4. 堀内宏明 1, 加藤隆二, 村田重夫: 「キサンテン系色素ダイマーの励起状態とその緩和過程」、2000 年光化学討論会 (2000.9) 5. 加藤隆二, 村田重夫: 「励起分子錯体の近赤外吸収スペクトル」 、分子構造総合討論会 2000 (2000.9) 6. 加藤隆二: 「超音波化学反応プロセスによる炭素材料合成」 、有機化学反応の新展開 (2000.12) 7. 村田重夫: 「超高速分光法による素反応の解析」 、つくば講座 (2001.3) 8. 加藤隆二, 堀内宏明, 原浩二郎, 村田重夫, 杉原秀樹, 立矢正典, 荒川裕則: 「色素が吸着したナノ微粒子半導体膜の 界面における電荷分離過程:注入効率と色素構造の関係」 、日本化学会第 79 春季年会 (2001.3) 9. 有村隆志、井手誠二、杉原秀樹、村田重夫、長村利彦、井上裕司、川井秀記: 「スルースペースを介する光誘起電子 移動モデルシステムの設計」 、第15回生体機能関連化学シンポジウム、奈良 (2000,9) 10. 有村隆志、須賀康裕、井手誠二、杉原秀樹、村田重夫: 「水素結合を介した多段階光誘起電子移動システムの合成と 光物性」 、2000年光化学討論会、札幌市 (2000,9) 11. 有村隆志、西岡琢哉、須賀康裕、井手誠二、杉原秀樹、村田重夫: 「カリックスアレーンを基体としたポルフィリン 2量体の合成と光物性」 、2000年光化学討論会、札幌市 (2000,9) 12. 有村隆志、西岡琢哉、井手誠二、須賀康裕、杉原秀樹、村田重夫: 「金属イオンを捕捉する新規分子ピンセットの合 成と物性」 、日本化学会第79春季年会、神戸市 (2001,3) 13. 村田重夫: “Experimental conditions for determining the electron transfer rate parameters from the transient effect observed in fluorescence quenching” 、XVIII IUPAC Symposium on Photochemistry (2000.7 ) 14. 加藤隆二, S. Sinha, 村田重夫: “Perylene excimer in fluid solution: Self-quenching of monomer fluorescence and observation of weak excimer fluorescence” 、XVIII IUPAC Symposium on Photochmemistry (2000.7 ) 15. 加藤隆二, 原浩二郎, 岩井伸一郎, 村田重夫, 荒川裕則:“Slow charge recombination in xanthene dyes on nanocrystalline TiO2 and ZnO films” 、第 5 回日中光化学シンポジウム (2000.9) 16. 加藤隆二, 村田重夫:“Near-IR absorption spectrum of excimer and exciplex”、2000 環太平洋国際化学会議 (2000.12) 17. 有村隆志、井手誠二、西岡琢哉、須賀康裕、杉原秀樹、村田重夫、長村利彦:“Electron Transfer Through Space or Through Bonds: A new Model System that Permits a Direct Comparison ”、the American Chemical Society 220th ACS National Meeting、Washington D.C. (2000.8) 18. 有村隆志: “Photoinduced Electron Transfer Reaction within Supramolecular Systems” 、4th International Symposium on Photoreaction Control and Photofunctional Materials、Tsukuba (2001.3) 19. 西岡琢哉、有村隆志、須賀康裕、井手誠二、杉原秀樹、村田重夫、立矢正典: “Synthesis and Photophysical Properties of Calix[4]arene System Having Two Porphyrins” 、4th International Symposium on Photoreaction Control 39 光反応制御・光機能材料 and Photofunctional Materials、Tsukuba (2001.3) 20. 須賀康裕、有村隆志、井手誠二、杉原秀樹、村田重夫、立矢正典: “Synthesis and Photophysical Characterizations of Multistep Electron Transfer Model systems via Hydrogen Bonds “、4th International Symposium on Photoreaction Control and Photofunctional Materials、Tsukuba (2001.3) 21. 加藤隆二, 村田重夫, 立矢正典: 「高感度近赤外過渡吸収分光計の開発と界面光化学反応への応用」 、化学反応討論会、 博多 (2001.5) 22. 堀内宏明, 加藤隆二, 原浩二郎, 柳田真利, 村田重夫, 杉原秀樹, 荒川裕則, 立矢 正典: 「Ru 錯体/ZnO 微 粒子膜界面での光誘起電子移動過程:吸着色素会合体の影響」、光化学討論会、金沢 (2001.9) 23. 加藤隆二, 古部昭広, 原浩二郎, 村田重夫, 杉原秀樹, 荒川裕則, 立矢正典:「吸着励起分子からナノ微粒子半導体 膜へ注入された電子の近赤外過渡吸収分光」 、分子構造総合討論会、札幌 (2001.9) 24. 加藤隆二, 古部昭広, 原浩二郎, 村田重夫, 杉原秀樹, 荒川裕則, 立矢正典:「ナノ微粒子半導体膜における伝導電 子の可視―近赤外過渡吸収分光」 、第20回固体―表面光化学討論会、大阪 (2002.11) 25. 加藤隆二, 古部昭広, 村田重夫, 立矢正典:「ソノメカノケミカルプロセスによる有機結晶微粒子の調製とその光化 学的性質」 、ソノケミストリー討論会、東京 (2001.11) 26. 加藤隆二, 古部昭広, 原浩二郎, 村田重夫, 荒川裕則, 立矢正典: 「吸着励起分子から酸化チタンに注入された電子の 吸収スペクトル」、日本化学会第 81 春季年会、東京 (2002.3) 27. 古部昭広, 加藤隆二, 原浩二郎, 杉原秀樹, 村田重夫, 荒川裕則, 立矢正典: 「Ru フェナントロリン錯体からナノ微 粒子半導体膜への電子注入過程のフェムト秒過渡吸収分光」、分子構造総合討論会、札幌 (2001.9) 28. 古部昭広, 加藤隆二, 原浩二郎, 村田重夫, 荒川祐則, 立矢正典:「ルテニウム錯体から酸化亜鉛ナノ微粒子膜への 光誘起フェムト秒電子注入過程:吸着濃度の効果」、日本化学会春期年会、東京 (2002.3) 29. 村田重夫, M. A. El-Kemary, 立矢正典: 「無極性溶媒中での電子移動.4.長距離電子移動」、光化学討論会、金沢 (2001.9) 30. 有村隆志, 西岡琢哉, 須賀康裕, 杉原秀樹, 村田重夫:「分子ピンセット・カリックスアレーンと希土類金属との相 互作用」 、第18回希土類討論会、東京 (2001.5) 31. 有村隆志, 須賀康裕, 井手誠二, 杉原秀樹, 村田重夫: 「カリックス[4]アレーンを基体としたポルフィリンダイマー の合成と光物理的特性」、2001年光化学討論会、金沢市 (2001.9) 32. 有村隆志, 西岡琢哉, 須賀康裕, 村田重夫, 立矢正典: 「カリックスアレーンをスペーサーとしたポルフィリンダイ マーの合成と光物理特性」 、第16回生体機能関連化学シンポジウム、千葉市 (2001.9) 33. 有村隆志, 西岡琢哉, 須賀康裕, 村田重夫, 立矢正典: 「ポルフィリンダイマーを基体とした光誘起電子移動システ ムの合成と特性」 、第18回機能性ホストゲスト化学研究会、つくば市 (2002.3) 34. 有村隆志, 須賀康裕, 村田重夫, 名川吉信: 「フタルアルデヒドとピロールの酸触媒による新規環化反応」 、日本化学 会第81春季年会、東京 (2002.3) 35. 有村隆志, 西岡琢也, 須賀康裕, 村田重夫, 立矢正典: 「新規ポルフィリンダイマーの合成およびフラーレンとの相 互作用」 、日本化学会第81春季年会、東京 (2002.3) 36. 有村隆志, 西岡琢也, 村田重夫, 立矢正典: 「新規多置換フラーレン誘導体の合成と光物性特性」 、日本化学会第81 春季年会、東京 (2002.3) 37. 加藤隆二, 原浩二郎, 堀内宏明, 佐山和弘, 杉原秀樹, 村田重夫, 荒川裕則, 立矢正典:“Near-IR Transient Absorption Study of Electrons Trapped in Nanocrystalline Semiconductor” 、10th International Conference on Unconventional Photoactive System、Les Diablerets, Switzerland (2000.9) 38. 有村隆志, 西岡琢哉, 井手誠二, 杉原秀樹, 村田重夫, 立矢正典: “Electron Transfer Through Space or Through Bonds: A Novel System derived from Calix[4]arene that Allows a Direct Evaluation” 、26th International Symposium on Macrocyclic Chemistry、福岡市 (2001.7) 40 光反応制御・光機能材料 39. 有村隆志, 西岡琢哉, 須賀康裕, 村田重夫, 立矢正典: “Inclusion Properties of a New Metalloporphyrin Dimer Derived from a Calix [4 ]arene: Tweezers for C70”、International Symposium on Cooperative Phenomena of Assembled Metal Complexes、豊中市 (2001.11) 40. 有村隆志, 西岡琢哉, 須賀康裕, 村田重夫, 立矢正典: “Host-Guest Properties of a New Porphyrin Dimer Derived from a Calix [4 ]arene: Tweezers for Fullerene“、The Pittsburgh Conference、New Orleans (2002.3) 41. A. Furube, R. Katoh, K. Hara, S. Murata, H. Arakawa , M. Tachiya: “Femtosecond transient absorption study on the electron injection process from excited Ru-complexes to nano-crystalline ZnO semiconductor films:” 、 5th AIST International Symposium on Photoreaction Control and Photofunctional Materials、Tsukuba (2002.3) 42. R. Katoh, A. Furube, K. Hara, S. Murata, H. Arakawa, M. Tachiya:“Absorption spectrum of electron injected from excited molecule adsorbed on nanocrystalline TiO2 and ZnO films” 、5th AIST International Symposium on Photoreaction Control and Photofunctional Materials、Tsukuba (2002.3) 43. S. Murata, M. El-Kemary and M. Tachiya: “Electron transfer in nonpolar solvent. Long-range electron transfer” 、 5th AIST International Symposium on Photoreaction Control and Photofunctional Materials、Tsukuba (2002.3) 44. H. Horiuchi, R. Katoh, K. Hara, M. Yanagida, S. Murata, H. Sugihara, H. Arakawa, M.Tachiya : “Effect of molecular aggregation on electron injection efficiency from Ru-complex to nanocrystalline ZnO films“、 5th AIST International Symposium on Photoreaction Control and Photofunctional Materials、Tsukuba (2002.3) 45. T. Arimura, S. Ide, Y. Suga, T. Nishioka, H. Sugihara, S. Murata, M. Tachiya:“Molecular design and photophysical properties of a calix [4 ]arene-based metalloporphyrin dimer which exhibits high selectivity for C70” 、5th AIST International Symposium on Photoreaction Control and Photofunctional Materials、 Tsukuba (2002.3) 4)特許等出願等 1. 2000 年 10 月 31 日、 「5-ホルミル-17-ニトロカリックス[4]アレン誘導体及びその製法」 、有村隆志、井手誠二、杉原 秀樹、村田重夫、特願 2000-332830 2. 2001 年 4 月 11 日、 「Zn(II)ポルフィリン誘導体共役置換されたトリクロロジメトキシベンゼン誘導体」 、有村隆志、 須賀康裕、井手誠二、杉原秀樹、村田重夫、特願 2001-113316 3. 2001 年 4 月 27日、 「メソ位置換ポルフィリン誘導体化合物の製造法 」 、有村隆志、須賀康裕、西岡琢哉、杉原秀樹、 村田重夫、特願 2001-130709 4. 2001 年 6 月 28 日、「2,6-ジアシルピリジル基をスペーサとして有するポルフィリンダイマー及びその製造法」 、有 村隆志、須賀康裕、西岡琢哉、杉原秀樹、井手誠二、特願 2001-197499 5. 2002 年 3 月 11 日、 「カリックス[4]アレーン化合物」 、有村隆志、西岡琢哉、須賀康裕、杉原秀樹、井手誠二、特願 2002-065284 41 光反応制御・光機能材料 1. 光反応制御領域 1.1. 光反応機構の研究 1.1.3. レーザー量子反応制御の基礎研究 産業技術総合研究所光反応制御研究センターレーザー反応制御チーム 中永 泰介、伊藤 文之、永井 秀和、大村 英樹 (1)要約 レーザーで光反応を制御する手法として、ナノ秒レーザーを用いたコヒーレントコントロール、および、赤外 前期解離反応を取り上げた。前者では、高強度レーザーパルス光により、1光子・2光子でも量子干渉により分 解効率が変化することを示し、3光子吸収の困難を回避することに成功した。後者では、アニリンの水素結合ク ラスターを利用し、励起する振動モードにより反応の収率が変わる結合選択分解反応が可能であることを示した。 また、光反応生成物をサブμ秒の時間分解で高感度モニタするため、赤外CRD法を開発し、光分解で生成する ヨウ素の励起状態の検出に適用した。 (2)研究目的 従来の化学反応プロセスで産出される副生成物は、精製、廃棄処理が必要で環境負荷の原因となる。光化学過 程は分子を特定の励起状態に上げることができるため、副生成物を生成しない高選択的な反応が起こることが期 待されるが、実際には高速のエネルギー緩和があるため、選択反応は例外的にしか起こらなかった。本課題では、 レーザーの持つ種々の特長を生かし、光反応を制御することによりその選択性を高め、従来の熱反応では困難で あった副生成物を生成しない高選択的な光化学プロセスの開発に資することを目的とする。 (3)研究方法 レーザーで反応を制御する手法として、1)コヒーレントコントロール、2)赤外前期解離反応を取り上げそ の有効性を確認した。また、反応生成物の高感度検出法として赤外キャビティリングダウン分光法を開発した。 1)コヒーレントコントロール Shapiro らによって提案されているナノ秒レーザーを用いた光分解反応の量子制御における実験のポイントは、 同じ励起状態に対して 2 つの光学遷移を作用させ量子干渉効果を起こし、その相対位相を変えることにより励起 状態を制御するところにある[1]。通常、光学遷移の選択則の要請から 1 光子遷移と 3 光子遷移の二つの光学遷移 を用いることが多いが、3 光子遷移確率は 1 光子遷移確率と比較して 10-4∼10-6 と極めて低く、高出力レーザー (出力 100mJ 以上)が必要とされる。我々は、光学遷移の次数を下げ、3 光子遷移と比較してより低パワーの励起 が実現できると期待される 2 光子遷移を用いることによりこの困難を回避し、より一般的な量子制御の方法を試 みた。 図1に作成した装置の概念図を示すが、1つのレーザーから作った基本波と倍波(3倍波)を重ね合わせ、光 42 光反応制御・光機能材料 反応セル中の分子に照射する。石英板の傾きを調節することにより2つのレーザーの位相差を調節し、同時に光 分解で生成した反応生成物を飛行時間型質量分析計で検出する。飛行時間型質量分析計は高感度であるばかりで なく、反応の初期過程を観測することが可能である。 光反応セル Mach-Zehnder 干渉計 分子線 飛行時間型質量分析計 検出器 + 位相 粗調整 3 V1 G シグナル V2 倍波 (280nm) 10.5 11.0 飛行時間 (µs) 11.5 反応生成物の初 期速度に依存する 560nm 倍波発生器 イオンの 質量 1 0 位相 微調整 速度分布の測定 2 基本波 (560nm) Phase shifter (石英板) 角度分解能 : 0.005° 図1 反応制御測定装置の概念図。Mach-Zender 干渉計を用い基本波、倍波2つのレーザーに適当な位相差を与え、分子に照射 する。反応生成物は初期速度分布を含め、飛行時間型質量分析計で検出する。 2)赤外前期解離 XH結合が水素結合を形成した時、XH伸縮振動の振動数が低下し、バンド幅が広がることはよく知られた事 実である。我々は、これがXH伸縮振動のエネルギーが効率よく水素結合に流れるためであり、XH伸縮振動モ ードを選択的に励起することにより隣接する水素結合を選択的に切断することが可能であると考えられる。 これを示すためモデル系として図2に示すような3成分のアニリンクラスターカチオン AXY+を用い、これに赤 外レーザーを照射したときに生成する反応、 AXY+→AX++Y 及び AXY+→AY++X を飛行時間型質量分析計で測 定した。 Y X H ν1 H N ν2 + 図2 アニリンクラスターカチオンを用いた結合選択反応の実験。ν1 を励起することによりNH−X結合を切断する反応が促進 される。 このとき、赤外前期解離反応の生成物として生成したイオンと、もとからあるイオンを区別するため、イオン 化用の紫外レーザーと反応用の赤外レーザーはずらして集光し、両者の間に 300ns のディレイをおいた。 3)赤外キャビティリングダウン分光法 ナノ秒レーザーを用いた反応制御のため、ns∼µs オーダーの時間分解能を持ち、ppm オーダーの反応生成物の 状態分析ができる計測手法が必要である。そのため広い周波数領域と高感度を兼ね備えた赤外キャビティリング ダウン分光装置(IR-CRD)の開発を行った。これは、2つの反射鏡の間でレーザー光を何千∼何万回も往復させ、 そのときに減衰するレーザー光強度をモニターする方法で、強度のふらつきが大きなパルスレーザー光に有効な 43 光反応制御・光機能材料 手法である。光源の開発(差周波レーザー⇒多重反射型ラマンシフター)やデータ取得法の改良により ppm オー ダーの吸収スペクトルの観測が赤外領域で可能になった。現在、近赤外∼中赤外(1.2 6μm 付近)までが観測対 象となっている。 (4)研究成果 コヒーレントコントロールでは、1光子・2光子の同時吸収でも量子干渉により分解効率が変化することを示 した。また、水素結合の前期解離を用いることにより振動モード選択反応が可能であることを示した。これらは、 世界で初めての成功例である。 1)コヒーレントコントロール 2原子分子であるヨウ化臭素において、1 光子励起( 500nm)と 3 光子励起( 1500nm)により、ヨウ化臭素に おいて次の 2 つの光分解反応の分岐比:IBr → (1)I + Br、(2)I + Br*(Br*は臭素の励起状態)を、相対位 相を変えることによって制御することが可能であることが理論的に指摘されていた[2]。そこで、我々はまず、こ の理論的な予測を確認するための実験を行った。YAG レーザーの基本波をラマンシフタ−によって波長変換するこ とによって、1500nm、100mJ の光を発生させ、3光子光分解の実験を行ったが、3 光子遷移確率は 1 光子遷移確 率と比較して 10-4∼10-6 と極めて低く、より高出力のレーザーが必要とされることが明らかとなった。 ついで我々は、光学遷移の次数を下げ、3 光子遷移と比較してより低パワーの励起が実現できると期待される 2 光子遷移を用いることによりこの困難を回避し、より一般的な量子制御の方法を試みた。2 光子遷移を用いる場合 に問題となるのは、1 光子遷移許容な準位は 2 光子遷移が禁制となり、励起状態への遷移を起すことができない可 能性があることである。そこで、(1)強励起による Stark mixing を利用した1光子−2光子同時励起による位 相制御(2)1 光子遷移、2 光子遷移の両方が可能な、対称性の悪い大きな分子を対象とした位相制御を行った。 具体的には、(1)では IBr、(2)ではヨウ化アリルを対象として、1 光子−2 光子同時励起による光分解反応の量 子制御を行った。その結果、IBr、ヨウ化アリルとも、ヨウ素の光分解効率をレーザーの相対位相によって変化さ ヨウ素原子の強度 せることに成功した(図3)。 1.0 0.9 0.8 0 2 4 6 石英板の傾き(度) 2つのレーザーの相対位相差 図3 IBr→I+Br 反応の量子干渉効果。 基本波と倍波2つのレーザーの相対位相を変化させたとき、ヨウ素原子の収率が変化する。 2)赤外前期解離 モデル系としてアニリン・水・芳香族分子(ベンゼン、ピロール)カチオンクラスターを取り上げ、NH 伸縮振 動領域の振動を励起したときの分解反応の分岐比を測定した。アニリンカチオンクラスターを取り上げたのは、 1)構造が決定されている、2)クラスター内に NH-σ、NH-πの2つの異なる水素結合があり片方のみを励起する のに都合が良い、3)カチオンの反応分岐比は中性のそれよりも測定が容易、という理由による。これらのクラ 44 光反応制御・光機能材料 スターは、図4に示すようにアニリンの NH2 基が水の酸素原子、芳香族環と水素結合を形成しており、 3800-3200cm-1 のエネルギー領域に、水の OH 伸縮振動による吸収を2個、NH 伸縮振動による吸収を 1∼2 個持って いる。このクラスターに赤外光を照射したところ、図4に示すように、このクラスターは赤外光を吸収し、 APW+→AP++W 及び APW+→AP++W (A:アニリン、P:ピロール、W:水)の分解反応を起こすが、 水素結合をした NH を励起した場合のみ AW+の分岐比が高くなり、励起した NH の隣の水素結合が切れやすくなっていることがわか った。 ピロール 3313cm-1 0.16/0.84 3515cm-1 0.12/0.88 3637cm-1 0.11/0.89 アニリン 3721cm-1 0.12/0.88 水 振動数 AW+/AP+ 図4 アニリンカチオンクラスターの赤外前期解離反応。 四角で囲んだ数字の上段は用いた赤外レーザーの振動数、下段は反応分岐比。矢印は、励起した振動モードが局在する部分。 3)赤外キャビティリングダウン分光法 IBr→I+Br の光分解で生成する臭素原子、ヨウ素原子の赤外∼近赤外領域の磁気双極子遷移の観測を IR-CRD 法 で行った。これらの原子がスピン副準位間の逆転分布によりリングダウンキャビティ内でレーザー発振すること から、図5に示すように、結果として大幅な検出感度向上を得た。原理的には、イントラキャビティレーザー分 光と類似したものである。また、この手法を用いて、特殊な光反応を起すヨウ化メチルクラスターの構造決定に 赤外光の強度 成功した。 -20 注入した 赤外光の 強度減衰 レーザー発振 赤外 on 赤外 off 0 20 40 60 80 100 Time (µs) 図5 ヨウ素原子の IR-CRD IBr の光分解で生成した臭素原子を IR-CRD で観測。臭素原子は反転分布しているので、モニタ用の赤外レーザーを入射すると 誘導放出により発振する (5)考察 これまでの 1 光子-3 光子遷移による量子制御の困難に対して、光学遷移の次数を一つ下げ 2 光子遷移とするこ とにより、量子制御の可能性を見出すことができた。この方法は以下の 2 つの点で、より一般的な量子制御の可 45 光反応制御・光機能材料 能性を含んでいる。第一点は、光学遷移の次数を下げたため、高出力のレーザーを必要とないことである。第二 点は、第 3 高調波発生と比較して第二高調波の発生が容易であることである。とはいえこの手法は対象が限られ るため、今後、フェムト秒レーザーを用いたコヒーレント制御の研究が必要になると思われる。 水素結合の赤外前期解離を用いることにより、赤外領域で結合選択反応が可能であることを世界で初めて示す ことができた。水素結合クラスターの赤外前期解離反応のモード選択性はNH−水の伸縮振動を励起することに より改善されると期待される。水素結合は自然界に広く存在し、種々の物質の2次構造や機能発現に重要な役割 を果たしているため、この手法は今後より大きな発展が期待される。 赤外キャビティリングダウン法で構造決定に成功したヨウ化メチルクラスターは弱い分子間相互作用で結びつ いたクラスターであり、水素結合系とは逆に分子間でのエネルギー緩和が遅い系であり、2つの C-I 切断を制御 できる可能性がある。 (6)引用文献 [1] M. Shapiro, J. W. Hepburn, P. Brumer, Chem. Phys. Lett. 149 (1988) 451. [2] C. K. Chan, P. Brumer, M. Shapiro, J. Chem. Phys. 94(1991), 2688 [3] R. J. Gordon, L. Zhu, T. Sideman, J. Phys. Chem. A105(2001), 4387 (7)成果の発表 1)原著論文による発表 ア)国内誌(国内英文誌を含む) 1. 伊藤文之: 「多重反射型ラマンシフターの製作と赤外キャビティリングダウン分光への応用」 、分光研究、49、145-146 (2000) 2. 中永泰介:「親イオン・子イオンを選別したカチオンクラスターの赤外ディプレッション分光法」 、分光研究、49、 249-250 (2000) イ)国外誌 1. 伊藤文之, 中永泰介: “A jet-cooled infrared spectrum of the formic acid dimer by cavity ring-down spectroscopy” 、 Chem.Phys.Lett.、318、571-577 (2000) 2. 中 永 泰 介 , N.K.Piracha, F.Ito :“ Investigation of the structure of the ternarycluster of aniline-water-tetrahydrofuran and its cation by infrared depletion spectroscopy” 、Phys.Chem.A.、105、4211-4215 (2001) 3. F. Ito, T. Nakanaga:“Jet-cooled infrared spectra of the formic acid dimer by cavity ring-down spectroscopy : Observation of the O-H stretching region ”、Chem. Phys.、277、163-169 (2001) 4. F. Ito, T. Nakanaga, Y. Futami, S. Kudoh, M. Takayanagi, M. Nakata: “Isomeric structures of CH3I dimers in a supersonic jet studied by matrix-isolation spectroscopy and ab initio calculation” 、Chem. Phys. Lett.、 343、163-169 (2001) 5. T. Nakanaga, N. K. Piracha, F. Ito:“The evidence of the mode selectivity of the infrared predissociation reaction of the hydrogen bonds in the aniline-water-pyrrole cluster cation” 、Chem. Phys. Lett.、346、407-412 (2001) 6. T. Nakanaga, F. Ito: “Infrared predissociation reaction of the hydrogen bonds in the ternary clustercation of aniline-water-benzene+.” 、Chem. Phys. Lett.、344、85-91、(2001) 46 光反応制御・光機能材料 7. T. Nakanaga, N. K. Piracha, F. Ito :“ Investigation of the structure of the ternary cluster of aniline-water-tetrahydrofuran and its cation by infrared depletion spectroscopy ”、J. Phys. Chem., A 、 105、4211-4215 (2001) 8. T. Nakanaga, F. Ito, N. K. Piracha: “Infrared depletion spectroscopy of aniline(H2O)+n (n=2-6) cluster cations”、 Chem. Phys. Lett.、348、270-276 (2001) 2)原著論文以外による発表(レビュー等) ア)国内誌(国内英文誌を含む) なし イ)国外誌 なし 3)口頭発表 ア)招待講演 1. 中永泰介: 「アニリンクラスターの赤外ディプレッション分光」 、赤外ラマン研究会つくば講演会 (2001.3) 2. 伊藤文之: 「赤外領域のキャビティリングダウン分光」 、赤外ラマン研究会つくば講演会 (2001.3) 3. 中永泰介: “Attempt of controlling chemical reactions by lasers in NIMC” 、2000 環太平洋 国際化学会議 (2000.12) イ)応募・主催講演等 1. 中永泰介, 大村英樹, 永井秀和, 伊藤文之: 「フッ素レーザーを用いた赤外ディプレッション分光法」 、第 16 回化学 反応討論会 (2000.6) 2. 伊藤文之, 中永泰介 : 「Raman シフター製作と赤外キャビティリングダウン分光への適用」 、第 16 回化学反応討論会 (2000.6) 3. 中永泰介, 永井秀和, 大村英樹, 伊藤文之: 「アニリン・水 n(n=2-6)+クラスターカチオンの赤外分」 、分子構造総合 討論会 (2000.9) 4. 伊藤文之, 中永泰介: 「カルボン酸二量体のジェット分光:O-H 伸縮振動領域の観測」 、分子構造総合討論会 (2000.9) 5. 中永泰介, 大村英樹, 永井秀和, 伊藤文之: 「ニリン-アルゴンn(n=2-21)クラスターカチオンの赤外分光」 、日本化 学会第 79 春季年会 (2001.3) 6. 伊藤文之, 中永泰介: 「ヨウ化メチルクラスターの赤外スペクトル(2)」 、日本化学会第 79 春季年会 (2001.3) 7. 中永泰介, N. Piracha, 大村英樹, 伊藤文之:“Infrared depletion spectroscopy of the ternary aniline clusters of aniline-X-water” 、PACIFICHEM2000 (2000.12) 8. 中永泰介:“Infrared depletion spectroscopy of aniline clusters”、Spectroscopy in the 21century (Hayama Symposium ) (2001.3 ) 9. 伊藤文之: “Infrared cavity ring-down spectroscopy of jet-cooled species” 、SPECTROSCOPY IN THE 21st CENTURY (2001.3) 10. 永井秀和, N. K. Piracha , 中永泰介:「アニリンーアセトニトリルおよびアニリンーアセトニトリルー水クラスタ ーカチオンの赤外分光」 、日本化学会第81春季化学会、早稲田大学 (2002.3) 11. 中永泰介, N. K. Piracha : 「aniline-Ne および aniline-Ne+カチオンの赤外分光」 、日本化学会第81回春季年会、 早稲田大学 (2002.3) 12. 伊藤文之, 中永泰介: 「ヨウ化メチルクラスターの IR-CRD 分光と構造について」 、第一回分子分光研究会 分子分光 47 光反応制御・光機能材料 研究会運営委員会] 、東京 (2001.11) 13. 中永泰介, 伊藤文之: 「アニリン・アルゴンクラスターカチオンの赤外分光」 、 [第一回分子分光研究会 分子分光研 究会運営委員会、東京 (2001.11) 14. 伊藤文之, 中永泰介: 「フッ化メチルクラスターの構造と振動スペクトル」 、日本化学会分子構造総合討論会、札幌市 (2001.9) 15. 大村英樹, 中永泰介, 伊藤文之, 永井秀和, 荒川裕則, 立矢正典: 「IBrの光解離過程における2つの解離経路間の干 渉効果の観測」 、日本化学会分子構造総合討論会、札幌市 (2001.9) 16. 伊藤文之, 中永泰介: 「フッ化メチルクラスターの構造と振動スペクトル 」、日本化学会分子構造総合討論会、札幌 市 (2001.9) 17. 中永泰介, 伊藤文之, 大村英樹, 永井秀和 :“Vibrational mode dependence of the infrared predissociation reaction of aniline cluster cations” 、日本化学会第17回化学反応討論会、福岡市 (2001.5) 「ナノ秒レーザーを用いたヨウ化アリルの1光子-2光子同時光分解にお 18. 中永泰介, 伊藤文之, 荒川裕則, 立矢正典: ける干渉効果の観測」 、日本化学会第81回春季年会、東京、 (2002.3) 19. 伊藤文之, 中永泰介: 「ヨウ化メチルクラスターの IR-CRD 分光と構造について」 、日本化学会第 81 春季年会、早稲田 大学 (2002.3) 20. 中永泰介, 伊藤文之:“Infrared depletion spectroscopy of aniline-watern (n=2-6 )cation clusters ” 、The 56th Ohio State University International Symposium on Molecular Spectroscopy , The US.Army Research Office & The Ohio State Universit、Columbus, USA (2001.6) 21. N. K. Piracha , T Nakanaga: “Infrared spectroscopy of aniline-toluene, aniline-toluene-water and investigation of the infrared predissociation reaction in the ternary cluster cation“、5th AIST International Symposium on Photoreaction Control and Photofunctional Materials、Tsukuba (2002.3) 22. F. Ito and T. Nakanaga:“IR-CRD spectroscopy of large methyliodide clusters -structure and its photochemical relevance“、5th AIST International Symposium on Photoreaction Control and Photofunctional Materials、 Tsukuba (2002.3) 23. H. Nagai, N. K Piracha and T. Nakanaga:“ Infrared depletion spectroscopy of aniline-acetonitrile and aniline-acetonitrile-water cluster cations“、5th AIST International Symposium on Photoreaction Control and Photofunctional Materials、Tsukuba (2002.3) 24. H. Ohmura, T. Nakanaga, F. Itoh, H. Nagai, H. Arakawa and M. Tachiya :“The observation of interference effect in the simultaneous one- and two-photon dissociation of allyl iodide” 、5th AIST International Symposium on Photoreaction Control and Photofunctional Materials、Tsukuba (2002.3) 25. T. Nakanaga :“Attempts of Controlling Photoreactions by Lasers”、5th AIST International Symposium on Photoreaction Control and Photofunctional Materials、Tsukuba (2002.3) 4)特許等出願等 なし 48 光反応制御・光機能材料 1.2. 光エネルギー変換の研究 1.2.1. 高性能色素増感太陽電池の研究開発 産業技術総合研究所光反応制御研究センター太陽光エネルギー変換チーム 荒川 裕則、杉原 秀樹、佐山 和弘、小西 由也、原浩 二郎、柳田 真利 (1)要約 高性能な色素増感太陽電池の開発の為、その開発要素であるナノ結晶酸化物半導体光電極、増感色素、電解質 溶液について検討した。特に、色素の開発においてはピリジルキノリンカルボン酸やテルピリジンカルボン酸、 βジケトナートを配位子とする新規なルテニウム錯体を設計合成し、それらが、可視光や従来困難とされていた 近赤外光エネルギ−を効率よく電気エネルギーに変換出来、世界最高レベルの性能を持つことを明らかにした。 また、有機色素としてメロシアニン系色素、スチリル系色素、クマリン系色素が有効であることを見出し、特に クマリン系色素では有機色素として世界最高の6%の光電変換効率をもつ太陽電池の開発に成功した。 (2)研究目的 太陽光エネルギーの効率的な利用技術の確立を目指し、光合成の光活性中心を模倣した新しい色素増感太陽電 池について、光エネルギー変換素過程の解明や最適化など基礎的な研究を行うとともに、それらの知見を踏まえ て実用化を目指したデバイスの開発を行う。 (3)研究方法 高い経済性が期待される色素増感太陽電池の研究では高性能化を目指して、新しい増感色素の開発と探索や酸 化物半導体光電極や電解質の最適化に焦点を絞っている。特に遷移金属錯体の光電気化学的なエネルギーレベル に注目した分子設計を行うことにより新規増感剤の開発を行っている。太陽光エネルギーを有効に利用する場合、 とりわけ重要なのは、励起状態と基底状態のエネルギーレベルのチューニングである。ルテニウム(II)を中心 金属とするポリピリジン錯体を用いる場合、MLCT と呼ばれる電荷移動状態が可視部に電子スペクトルの吸収をも つため重要である。MLCT に起因する吸収は錯体の最低空軌道(LUMO) 、と最高被占軌道(HOMO)のエネルギーレベ ルの差で定まる。LUMO は主にピリジン側のπ*のレベルによって定まり、HOMO は主にルテニウムの t2g 軌道のエネ ルギーレベルによって定まる。本研究において、錯体の配位子の共鳴構造や、ドナー性の程度を考慮することに より一連のルテニウム錯体の LUMO と HOMO のレベルのチューニングを試み、有望な結果を得た。以下にその概要 を述べる。 一方、有機色素の開発においては、今まで太陽電池の増感色素に使用されていない種々の有機色素を探索し、 その上でそれらの色素の最適化の設計を行う。 (4)研究成果 49 光反応制御・光機能材料 1)新しい金属錯体色素の開発 LUMO のチューニング:ジイミン配位子は、共鳴の程度によりビピリジン>ピリジルキノリン>ビキノリンの順 にπ*のエネルギ−レベルが低下する。ルテニウム(II)錯体として、RuL2(NCS)2 を合成したところ、前記の順 に MLCT に起因する可視部の吸収ピーク位置が 532nm から 627nm へと長波長側に現れることが認められた。 (図1) 基底状態での還元電位はそれほど大きく異ならなかったが、発光スペクトルから見積もった励起状態の酸化電位 も正側にシフトしていくのが観測された。 図1.RuL2(NCS)2 型錯体の吸収スペクトル (L=dcbiq, dcpq, dcbpy) ここで、ビキノリン誘導体を配位子とするルテニウム錯体は、近赤外領域まで吸収端が延びているのにもかか わらず、酸化チタン電極上に修飾して電池を構成したとき、ほとんど起電力応答を示さなかった[1,2]。それに対 して、ピリジルキノリンやビピリジン誘導体を配位子とするものは、可視部の照射光に応答して大きな光起電力 が観測された。特に、ピリジルキノリンを配位子とするものはそれまで困難であるとされていた近赤外領域の光 に応答して起電力を発生していることが明らかとなった[3]。ビキノリン錯体は、励起状態のエネルギーレベルが 酸化チタンのフェルミレベルに比べ卑であるため、半導体への電子注入が起こらず従って起電力応答を起こさな い。それに対してピリジルキノリン錯体とビピリジン錯体は、励起状態の酸化電位が酸化チタンのフェルミレベ ルより上にあるために電子の酸化チタンへの注入が起こると考えられる。 HOMO のチューニング:六配位八面体構造をもつルテニウム(II)のビスビピリジン錯体において、残りの二つ の配位サイトに結合する配位子の電子供与性は、ルテニウムの t2g の還元電位、すなわち錯体の HOMO のエネルギ ーレベルに大きな影響を与える。電子供与性の大きな配位子を結合させることで軌道の不安定化を実現し、比較 的小さなエネルギーで錯体を励起することが可能となる。これまで報告された、代表的な増感色素はチオシアナ ートを配位子とするものであるが、当研究グループでは、チオラートやジケトナートを電子供与性をもつ配位子 として試み、肯定的な結果を得た。 (図2) (図3)ジチオラートとしてキノキサリンジチオラート(qdt)、ジメル カプトシアノ酢酸エチル(ecda)、トルエンジチオラート(tdt)、等を用いた結果、tdt>ecda>qdt の順で長波長に 吸収をもつものが得られた。この結果はチオラートの電子供与性の大きさを反映している。 50 光反応制御・光機能材料 図2.RuL2(SS)型錯体の吸収スペクトル L=dcbpy; SS= ecda 図3.テルピリジン誘導体とジケトナートを配位子とする Ru 錯体の構造とその光電気化学応答の例 吸収した光に対する起電力は、qdt>ecda>tdt の順であった。この結果は酸化された錯体色素がヨウ化物イオ ンから電子を受け取れるよう十分な電位差をもたない場合、色素の再生が十分に速く行われないために起電力も 大きなものが得られないことによると考えられる[4]。 イオウ配位子の代わりに酸素配位子であるβジケトナートを配位子とした場合、ジチオシアナートと比べて長波 長側でやや大きな吸収係数をもつものを作ることが出来た。その錯体を増感剤とする太陽電池とした場合にもジ チオシアナート錯体を増感剤としたものと比べ同等以上の性能を示すことが確認できた[5]。ルテニウム(II)の チオシアナート錯体でビスビピリジン錯体に代わりテルピリジンを配位子とする、さらに長波長に吸収域をもつ ものが報告されている。二つのチオシアナート配位子の代わりにβジケトナートを配位子とした新規錯体につい て検討を行った。βジケトナートは置換基の構造を系統的に変えることにより、その電子供与性をコントロール することが可能である。現在のところ、トリフルオロアセチルアセトナートを配位子とするルテニウム(II)錯 体はその中でも優れた性能を示した。この錯体は従来知られている色素増感太陽電池用増感剤として知られるテ ルピリジン誘導体と、チオシアナートを配位子とするルテニウム(II)錯体に比べ 700nm より長波長の領域にお いては優れた光吸収特性、光電変換特性を示すことが認められた[6]。 51 光反応制御・光機能材料 2)有機色素の開発 金属錯体色素より光吸収領域は狭いものの、経済的にメリットがあると考えられる有機色素については、メロ シアニン系色素[7]、クマリン系[8]、スチリル系色素を数多く探索した。その結果、クマリン系色素において有 望な色素が見いだされた。さらに、この色素の光吸収領域の拡大、光電変換効率の向上を目指した分子設計を行 い、最終的に光電変換効率6%の有機色素を用いた太陽電池としては世界最高性能を持つ色素増感太陽電池を開 発した。 (5)考察 金属錯体を増感色素とするときの LUMO と HOMO のエネルギーレベルを考慮した設計を行うことにより近赤外領 域にまで延びた、広い波長範囲の光エネルギーの利用が可能となり、高効率なデバイス構築に向けて新たな展望 を開いた。また、安価有機色素を用いても可視光を広範囲に吸収し、効率よく光電変換できることが見いだされ、 有機色素を用いた太陽電池の新たな可能性が示された。 色素増感太陽電池の更なる高性能化の為には、色素とナノ結晶性酸化物半導体光電極、電解質溶液との関係の 最適化条件を明らかにすることが必要であると考えられる。 (6)引用文献 [1] A. Islam, H. Sugihara, L.P. Singh, K. Hara, R. Katoh, Y. Nagawa, M. Yanagida, Y. Takahashi, S. Murata, H. Arakawa, Inorg. Chim Acta. 322 (2001) 7. [2] A. Islam, K. Hara, L.P. Singh, R. Katoh, M. Yanagida, S. Murata, Y. Takahashi, H. Sugihara, and H. Arakawa, Chem. Lett. (2000) 490. [3] M. Yanagida, et al., Submitted to New J. Chem. [4] A. Islam, H. Sugihara, K. Hara, L.P. Singh, R. Katoh, M. Yanagida, Y. Takahashi, S. Murata, H. Arakawa, J. Photochem. Photobiol. A:Chem., 145 (2001) 135. [5] Y. Takahashi, H. Arakawa, H. Sugihara, K. Hara, A. Islam, R. Katoh, Y. Tachibana, M. Yanagida, Inorg. Chim Acta. 310 (2000) 169. [6] A. Islam, H. Sugihara, M. Yanagida, K. Hara, G. Fujihashi, Y. Tachibana, R. Katoh, S. Murata, H. Arakawa, New J. Chem. in press [7] K.sayama, S.Tsukagoshi, K.Hara, Y.Ohga, A.Shinpou, Y.Abe, S.Suga,H.Arakawa, J.Phys.Chem., 106, (2002)1363. [8] K.Hara, K.Sayama, Y.Ohga, A.Shinpou, S.Suga, H.Arakawa, Chem.Commun., 2001, 569. (7)成果の発表 1)原著論文による発表 ア)国内誌(国内英文誌を含む) 1. 原浩二郎, 堀口尚郎, 木下暢, 佐山和弘, 杉原秀樹, 荒川裕則:”Highly Efficient Photon-to-Electron Conversion of Mercurochrome-sensitized Nanoporous ZnO Solar Cells” 、Chem. Lett.、2000、316-317 (2000) 2. A. ISLAM, 原浩二郎, L. P. SINGH, 加藤隆二, 柳田真利, 村田重夫, 高橋良明, 杉原秀樹, 荒川裕則: ”Dual El ectron Injection from Charge-Transfer Excited State of TiO2- Anchored Ru(II)-4,4'-Dicarboxy-2,2'-Biquino line Complex” 、Chem. Lett.、2000、490-491 (2000) 52 光反応制御・光機能材料 イ)国外誌 1. 荒 川 裕 則 , 杉 原 秀 樹 , 原 浩 二 郎 , A.Islam, 加 藤 隆 二 , 橘 泰 宏 , 柳 田 真 利 : ” Highly efficent polypyridyl-ruthenium( Ⅱ )photosensitizers with chelating oxygen donor ligands : β -diketonato-bis(dicarboxybipyridine)ruthenium ” 、Inorg. Chim Acta、310 、169-174 (2000) 2. A. ISLAM, 杉原秀樹, 原浩二郎, L. P. SINGH1, 加藤隆二, 柳田真利, 高橋良明, 村田 重夫, 荒川裕則:”A new platinum(II) polypyridyl photosensitizers for TiO2 solar cells ” 、 New J. Chem.、24、343-345 (2000) 3. 佐山和弘, 塚越慎吾, 阿部芳首, 原浩二郎, 皐月 真, 森菜穂子, 菅貞治, 杉原秀樹, 荒川裕則: ” Photosensitization of a porous TiO2 electrode with merocyanine dyes containing a carboxyl group and a long alkyl chain” 、Chem. Commun.、2000、1173-1174 (2000) 4. 原浩二郎, 佐山和弘, 荒川裕則:”Semiconductor-sensitized solar cells based on nanocrystalline In2S3/In2O3 thin film electrodes” 、Sol. Energy Mater. Sol. Cells、62、441-447 (2000) 5. 柳田真利, Lok Pratap Singh, 佐山和弘, 原浩二郎, 加藤隆二, A. Islam, 杉原秀樹, 荒川裕則, M. K. Nazeeruddin, M. Gratzel :”A new efficient photosensitizer for nanocrystalline solar cells: synthesis and characterization of cis- bis(4,7-dicarboxy-1,10-phenanthroline) dithiocyanatoruthenium(II)” 、J. Chem. Soc.、Dalton Trans.、 2000、2817-2822 (2000) 6. 原浩二郎, 堀口尚郎, 木下暢, 佐山和弘, 杉原秀樹, 荒川裕則:”Highly efficient photon-to-electron conversion with mercurochrome-sensitized nanoporous oxide semiconductor solar cells ” 、 Sol. Energy Mater. Sol. Cells、 64、115-134 (2000) 7. 佐山和弘, 原浩二郎, 大賀保代, 神宝昭, 菅貞治, 荒川裕則:”Significant Effect of Distance between Cyanine Dye Main Frame and Semiconductor Surface on Photoelectrochemical Properties of Dye-Sensitized Porous Semiconductor Electrodes” 、 New J. Chem.、 25、200-202 (2001) 8. 原浩二郎, 佐山和弘, 大賀保代, 神宝昭, 菅貞治, 荒川裕則:”A coumarin-derivative dye sensitized nanocrystalline TiO2 solar cell having a high solar-energy conversion efficiency up to 5.6% ” 、Chem. Commun.、 2001、569-570 (2001) 9. K. Hara, H. Sugihara, L. P. Singh, A. Islam, R. Katoh, M. Yanagida, K. Sayama, S. Murata, H. Arakawa:” New Ru(II) phenanthroline complex photosensitizers having different number of caboxyl groups for dye-sensitized solar cells” 、 J.Photochem.Photobio.、 A:Chem.、145、117-122 (2001) 10. K. Hara, K. Sayama, H. Arakawa :”Influence of electrolytes on the photovoltaic performance of organic dye-sensitized nanocrystalline TiO2 solar cells” 、Solar Energy Materials and Solar Cells、2001、151-161 (2001) 11. K. Hara, H. Sugihara, M. Yanagida, K. Sayama, H. Arakawa:”Dye-sensitized nanocrystalline TiO2 solar cells based on ruthenium(II) phenanthroline complex photosensitizers” 、Langmuir、 17、5992-5999 (2001) 12. A. Islam, H. Sugihara, K. Hara, R. Katoh, M. Yanagida, S. Murata, H. Arakawa:”Dye sensitization of nanocrystalline titanium dioxide with square planar platinum(II)diimine dithiolate complexes” 、Inorg. Chem.、 40、5371-5380 (2001) 13. A. Islam, H. Sugihara, R. Katoh, Y. Nagawa, M. Yanagida, S. Murata, H. Arakawa:”Synthesis and photophysical properties of ruthenium(II) charge transfer sensitizers containing 4,4'-dicarboxy-2,2'-biquinoline and 5,8'-dicarboxy-6,7-dihydro-dibenzo[1,10] -phenanthroline” 、 Inorganica Chim. Acta、322、7-16 (2001) 14. A. Islam, H. Sugihara, K. Hara, R. Katoh, M. Yanagida, S. Murata, H. Arakawa:”Sensitization of nanocrystalline TiO2 film by ruthenium(II) diimine dithiolate complexes” 、J. Photochem.Photobio., A: Chem.、145、135-141 (2001) 15. P. Wang, N. Onozawa, Y. Himeda, H. Sugihara, H. Arakawa, K. Kasuga:”3-(2-Pyridyl)-2-pyrazoline derivatives : 53 光反応制御・光機能材料 Novel fluorescent probes for Zn2+ ion” 、Tetrahedron Lett.、42、9199-9201 (2001) 16. R. Abe, K. Sayama, H. Arakawa:”A new type of water splitting system composed of two different TiO2 photocatalysts (anatase, rutile) and a IO3-/I- shuttle redox mediator” 、Chem. Phys. Lett.、344、339-344 (2001) 17. K. Hara, H. Horiuchi, R. Katoh, L. P. Singh, H. Sugihara, K.Sayama, S. Murata, M.Tachiya, H. Arakawa :” Effect of the ligand structure on the efficiency of electron injection from excited Ru-phenanthroline complexes to nanocrystalline TiO2 films ” 、 J. Phys. Chem. B、106、374-379 (2002) 18. K. Sayama, K. Mukasa, R. Abe, Y. Abe, H. Arakawa:”Stoichiometric water splitting into H2 and O2 using a mixture of two different photocatalysts and an IO3-/I- shuttle redox mediator under visible light irradiation” 、 Chem.Commun.、2001、2416-2417 (2001) 19. K. Sayama, K. Mukasa, R. Abe, Y. Abe, H. Arakawa:”A new photocatalytic water splitting system under visible light irradiation mimicking a Z-scheme mechanism in photosynthesis” 、J. Photochem. Photobio., A: Chem.、 article in press (2002) 20. K. Sayama, S. Tukagoshi, K. Hara, Y. Ohga, A. Sinpou, Y. Abe, S. Suga, H. Arakawa:” Photoelectrochemical properties of J-aggregates of benzothiazole merocyanine dyes on a nanostructured TiO2 film” 、J. Photochem. Photobio., A:Chem.、 106、1363-1371 (2002) 2)原著論文以外による発表(レビュー等) ア)国内誌(国内英文誌を含む) 1. 荒川裕則: 「色素増感太陽電池 ∼商業化への課題と現状∼」 、太陽エネルギー、 27 、8-13 (2001) 2. 荒川裕則: 「酸化物半導体を用いた太陽電池」 、セラミックス、 6、423-429 (2001) 3. 荒川裕則: 「色素増感太陽電池技術∼実用化への展望」 、ケミカルエンジニアリング、2001、423-429 (2001) 4. 荒川裕則: 「光触媒と水素エネルギー」 、未来材料、 1、10-16 (2001) 5. 荒川裕則: 「新しい有機色素増感太陽電池の開発」 、AIST Today、2001、11 (2001) 6. 荒川裕則: 「有機太陽電池」 、先端高機能材料、2、電池特性材料、2001、439-447 (2001) 7. 荒川裕則: 「新しい太陽エネルギー変換材料の開発」 、Materials Integration、15、60-62 (2002) 8. 荒川 裕則: 「グレッツェル・セル作成の実際」 、機能材料、 22、40-47 (2002) イ)国外誌 なし 3)口頭発表 ア)招待講演 1. 荒川裕則: 「新型色素増感太陽電池の研究開発の現状と課題」 、第 8 回「高効率太陽電池および太陽光発電システム」 ワークショップ (2000.7) 2. 荒川裕則: 「色素増感太陽電池−研究開発の現状とこれからの課題−」 、次世代太陽電池講演会 (2000.8) 3. 荒川裕則:”Development of New Dye-sensitized Solar Cells at NIMC” 、第 5 回日中光化学シンポジウム (2000.9) 4. 荒川裕則:”New Efficient Dye-Sensitized Solar Cells Developed By NIMC”,、Symposium on Recent Trends in Photochemical Sciences (2001.1 ) 5. 荒川 裕則: 「色素増感太陽電池の開発の現状と期待」 、NEDO フォーラム 2001 太陽技術開発セッション、NEDO、東京 (2001.9) 6. 荒川裕則: 「酸化物を使用した太陽電池∼色素増感太陽電池の研究開発の現状∼」 、資源・素材学会 2001 年大会、資 源・素材学会、札幌 (2001.9) 54 光反応制御・光機能材料 7. 荒川裕則: 「新しい増感色素の開発とそれを用いた色素増感太陽電池の特性」 、 第 32 回中部化学関係学協会支部連合 秋季大会、中部化学関係学協会、 岐阜大学 (2001.10) 8. 佐山和弘: 「色素増感太陽電池及び光触媒を用いた太陽エネルギー変換、セミナー「電子・光を用いた新しい触媒化 学反応系」(3)」 、触媒学会、大阪府 (2001.10) 9. 荒川裕則: 「色素増感型太陽電池」 、日本学術会議第 8 回シンポジウム、日本学術会議、東京 (2001.11) 10. 荒川裕則:「光化学太陽電池実用化への課題と現状」、茨城の未来を考える産官学連携プロジェクト、茨城大学 (2001.11) 11. 荒川裕則: 「色素増感太陽電池∼研究開発の現状∼」 、近畿化学協会東京地区合同講演会、近畿化学協会化学会館、 東 京 (2001.11) 12. 荒川裕則, 佐山和弘, 原浩二郎, 橘泰宏, H. Ishizawa, T. Horiguchi, 藤橋岳:”A Detailed Study on Preparation Process for Ru-Dye-Sensitized TiO2 Solar Cells Having High Solar Energy Conversion Efficiencies up to 8.3%” 、 第 1 回半導体光触媒国際会議(SP-1) 、第 1 回半導体光触媒国際会議組織委員会(University of Strathclyde) 、グ ラスゴー / 英国 (2001.7) 13. 荒川裕則:”New Development in Efficient Pure Organic Photosensitizer for Dye-sensitized Oxide Semiconductor Solar Cells” 、第 10 回特異的光活性化システム国際会議(UPS-01) 、第 10 回特異的光活性化システム国際会議組織 委員会(ローザンヌ工科大学) 、レ・ディアブレ(スイス) (2001.9) 14. 荒川裕則:”Development of New Organic Photosensitizer for Dye-sensitized Solar Cells”、第 1 回韓国電池協会 討論会、韓国電池協会、大田、韓国 (2001.11) イ)応募・主催講演等 1. 高橋良明, 杉原秀樹, 原浩二郎, 荒川裕則: 「β−ジケトナート−ルテニウム錯体の光増感作用」 、電気化学会第 67 回大会 (2000.4) 2. 高橋良明, 荒川裕則, 杉原秀樹: 「多核金属錯体を用いた光増感」 、2000 年光化学討論会 (2000.9) 3. 原 浩 二 郎 , 堀 口 尚 郎 , 木 下 暢 , 加 藤 隆 二 , 佐 山 和 弘 , 荒 川 裕 則 : ” Photovoltaic properties of mercurochrome-sensitized nanocrystalline ZnO solar cells” 、電気化学会第 67 回大会 (2000.4) 4. 柳田真利, A. Islam, L. P. Singh, 原浩二郎, 杉原秀樹, 荒川裕則: 「Ru フェナントロリン錯体を用いた色素増感太 陽電池の最適化」 、電気化学会第 67 回大会 (2000.4) 5. 佐山和弘, 塚越慎吾, 阿部芳首, 原浩二郎, 皐月真, 森奈穂子, 菅貞治, 荒川裕則: 「メロシアニン増感多孔質 TiO2 電極の光電気化学特性」 、電気化学会第 67 回大会 (2000.4) 6. A. Islam, 杉原秀樹, 原浩二郎, L. P. Singh, 加藤隆二, 荒川裕則:”Photosensitization of nanocrystalline TiO2 films with Pt (II ) diimine dithiolate complexes” 、 第 13 回太陽光エネルギーの光化学的変換及び保存に関する 国際会議(IPS2000) (2000.8) 7. 杉原秀樹, A. ISLAM, 原浩二郎, 荒川裕則: 「ジイミンジチオラート白金(II)錯体を用いた色素増感太陽電池」 、2000 年電気化学秋季大会 (2000.9) 8. 佐山和弘, 荒川裕則, 原浩二郎, 塚越慎吾, 阿部芳首, 神宝昭, 大賀保代, 菅貞治: 「ポリメチン系色素増感多孔質 TiO2 電極の光電気化学特性」 、2000 年電気化学会秋季大会 (2000.9) 9. 原浩二郎, 柳田真利, 佐山和弘, 杉原秀樹, 荒川裕則:”Dye-sensitized oxide semiconductor solar cells based on Ru phenanthroline complex photosensitizers” 、2000 年電気化学会秋季大会 (2000.9) 10. A. ISLAM, 杉原秀樹, 原浩二郎, 荒川裕則: 「白金(II)錯体による TiO2 電極の光増感」 、 2000 年光化学討論会 (2000.9) 11. 檜林保浩, 原浩二郎, 佐山和弘, 秋鹿研一, 荒川裕則:”Effect of electrolyte on the photovoltaic performance of merocyanine-sensitized TiO2 solar cells ” 、2000 年光化学討論会 (2000.9) 12. 原浩二郎, 杉原秀樹, L. P. Singh, 柳田真利, 加藤隆二, 佐山和弘, 村田重夫, 荒川裕則:”Dye-sensitized oxide 55 光反応制御・光機能材料 semiconductor solar cells based on Ru phenanthroline complex photosensitizers” 、2000 年光化学討論会 (2000.9) 13. 佐山和弘, 荒川裕則, 原浩二郎, 塚越慎吾, 阿部芳首, 神宝昭, 大賀保代, 菅貞治: 「ポリメチン系色素増感太陽電池 の高効率化」 、2000 年光化学討論会 (2000.9) 14. 塚越慎吾, 佐山和弘, 荒川裕則, 原浩二郎, 阿部芳首, 神宝昭, 大賀保代, 菅貞治 : 「メロシアニン系有機色素を用 いた湿式増感太陽電池の性能因子の解明」 、2000 年光化学討論会 (2000.9) 15. 柳 田 真 利 , A. Islam, 高 橋 良 明 , 原 浩 二 郎 , 杉 原 秀 樹 , 荒 川 裕 則 :「 新 規 錯 体 cis-[Ru(2-(2 ’ -pyridyl)-4-carboxyquinoline)2X2](X=Cl, CN, NCS)を用いた色素増感太陽電池」 、2000 年光化学討論会 (2000.9) 16. 佐山和弘, 原浩二郎, 荒川裕則:”New Solar Cell Using Oxide Semiconductor Sensitized by Organic Dyes” 、グ リーンサステナブルケミストリーシンポジウム (2000.10) 17. 杉原秀樹, A. Islam, 原浩二郎, L. P. Singh, 加藤隆二, 柳田真利, 高橋良明, 村田重夫, 荒川裕則: 「色素増感太 陽電池のための新規な白金(II)増感剤の開発」、平成 12 年度物質工学工業技術研究所 100 周年記念研究発表会 (2000.10) 18. 原浩二郎, 柳田真利, 加藤隆二, L. P. Singh, 佐山和弘, 村田重夫, 杉原秀樹, 荒川裕則:”Dye-sensitized oxide semiconductor solar cells based on Ru phenanthroline complex photosensitizers” 、平成 12 年度物質工学工業 技術研究所 100 周年記念研究発表会 (2000.10) 19. 佐山和弘: 「色素増感型太陽電池」 、分子・無機材料科学若手オープンディスカッション(2001.3) 20. 柳田真利, A. Islam, 高橋良明, 藤橋岳, 堀口尚郎, 加藤隆二, 原浩二郎, 杉原秀樹,荒川裕則: 「新規ルテニウムピ リジルキノリン錯体を用いた色素増感太陽電池」 、日本化学会第 79 春季年会 (2001.3) 21. A. Islam, 杉原秀樹, 原浩二郎, L. P. Singh, 加藤隆二, 荒川裕則:”Photosensitization of nanocrystalline TiO2 films with Pt (II ) diimine dithiolate complexes” 、第 13 回太陽光エネルギーの光化学的変換及び保存に関する 国際会議(IPS2000) (2000.8) 22. 佐山和弘, 塚越慎吾, 阿部芳首, 原浩二郎, 皐月真, 森菜穂子, 菅貞治, 杉原秀樹, 荒川裕則:”Dye-sensitized solar cell using porous TiO2 electrode with cyanine and merocyanine dyes” 、第 13 回光エネルギー変換と太陽 エネルギー貯蔵の国際会議 (2000.8) 23. 原浩二郎, 加藤隆二, 堀口尚郎, 木下暢, 佐山和弘, 荒川裕則:”Organic Dye-sensitized Oxide Nanocrystalline Semiconductor Solar Cells: Their Photovoltaic Performance and Charge Recombination Kinetics ” 、IPS2000(13th International Conference on Photochemical Conversionand Storage of Solar Energy) (2000.8) 24. A. ISLAM, 杉原秀樹, 原浩二郎, 荒川裕則:”Sensitization of Nanocrystalline TiO2 Film by Ruthenium (II) Diimine Dithiolate Complexes” 、錯体化学討論会 50 回記念国際シンポジウム (2000.9) 25. 杉原秀樹, A. ISLAM, 原浩二郎, 荒川裕則:”Sensitization of Nanocrystalline TiO2 Film by Square-Planar Platinum (II) Diimine Dithiolate Complexes”錯体化学討論会 50 回記念国際シンポジウム (2000.9) 26. 原浩二郎, 堀 口尚郎, 木 下 暢, 佐山和弘, 荒川裕則:”Organic dye-sensitized nanocrystalline oxide semiconductor solar cells” 、第 5 回日中光化学シンポジウム (2000.9) 27. 原浩二郎, 杉原秀樹, 佐山和弘, 柳田真利, 加藤隆二, 堀内宏明, 村田重夫, 荒川裕則:”New Ru(II) phenanthroline complex photosensitizers having different number of carboxyl groups for dye-sensitized solar cells” 、 第 4 回物質研 光反応制御・光機能材料国際シンポジウム(PCPM2001) (2001.3) 28. 橘泰宏, 原浩二郎, 佐山和弘, 荒川裕則:”Optical influence of semiconductor film morphology upon photocurrent produced in dye senisitized nanocrystalline TiO2 solar cells” 、第 4 回物質研 光反応制御・光機能材料国際 シンポジウム(PCPM2001) (2001.3) 29. 柳田真利, 高橋良明, A. Islam, 藤橋岳, 堀口尚郎, 原浩二郎, 加藤隆二, 杉原秀樹, 荒川裕則:”Synthesis and Characterization of 4-Carboxy-2-(2'-pyridyl)-quinoline Ruthenium(II)complexs as New Photosensitizers for Nanocrystalline Solar Cells” 、第 4 回物質研 光反応制御・光機能材料国際シンポジウム(PCPM2001) (2001.3) 56 光反応制御・光機能材料 30. 佐山和弘、原浩二郎、荒川裕則: 「シアニン系有機色素を用いた色素増感太陽電池の高性能化」 、電気化学会第68回 大会、電気化学会、神戸 (2001.4) 31. A. Islam , 杉原秀樹, 原浩二郎, 荒川裕則: 「Ru(II)ジイミンジチオラート錯体を増感剤とした色素増感太陽電池」 、 第14回配位化合物の光化学討論会、日本化学会、光化学協会、札幌 (2001.7) 32. 柳田真利, A. Islam , 藤橋岳, 加藤隆二, 原浩二郎, 杉原秀樹, 荒川裕則: 「色素増感太陽電池における増感剤とし てのルテニウムピリジルキノリン錯体の合成と光特性」 、第 14 回配位化合物の光化学討論会、日本化学会、光化学協 会、札幌 (2001.7) 33. 原浩二郎, 杉原秀樹, 柳田真利, 佐山和弘, 荒川裕則: 「Ru フェナントロリン増感色素を用いたチタニア色素増感太 陽電池」 、第 10 回日本エネルギー学会大会、日本エネルギー学会、小倉 (2001.8.) 34. 橘泰宏, 原浩二郎, 佐山和弘, 荒川裕則: 「湿式色素増感太陽電池における酸化チタン半導体膜の設計」 、第 10 回日 本エネルギー学会大会、日本エネルギー学会、小倉 (2001.8.) 35. 杉原秀樹, イスラム・アシュラフル, 原浩二郎, 加藤隆二, 荒川裕則: 「白金(II)錯体を増感剤とした色素増感太陽電池」 、2001 年光化学討論会、光化学協会、金沢 (2001. 9) 36. 佐山和弘, 原浩二郎、荒川裕則: 「ポリメチン系色素増感太陽電池における色素会合の影響」 、光化学討論会、光化学 協会、金沢 (2001.9) 37. 橘泰宏, 原浩二郎, 佐山和弘, 荒川裕則: 「色素増感太陽電池における光散乱粒子の電子移動収率への影響」 、2001 年 光化学討論会、光化学協会、金沢 (2001.9) 38. 原浩二郎、佐山和弘、荒川裕則: 「クマリン色素を用いた高効率色素増感太陽電池」 、2001 年電気化学秋季大会、電気 化学会、東京 (2001.9) 39. 橘泰宏、原浩二郎、佐山和弘、荒川裕則: 「色素増感太陽電池の電子移動収率に及ぼす酸化チタン薄膜の散乱度の影 響」 、2001 年電気化学秋季大会、電気化学協会、東京 (2001.9) 40. イスラム・アシュラフル, 杉原秀樹, 原浩二郎, 荒川裕則: 「太陽電池用増感剤としてのルテニウム(II)チオラート錯体」 、 第51回錯体化学討論会、日本化学会、錯体化学研究会、松江 (2001.9) 41. イスラム・アシュラフル, 杉原秀樹, 原浩二郎, 柳田真利, 荒川裕則:”Ruthenium(II)-4,4',4''-tricarboxy-2,2':6',2''-te rpyridine photosensitizers containing beta-diketonato ligands; Synthesisi, photophysics and photosensiti zation to nanocrystalline TiO<sub>2</sub> electrodes” 、第51回錯体化学討論会、日本化学会、錯体化学研 究会、松江 (2001.9) 42. 柳田真利, イスラム・アシュラフル, 橘泰宏, 藤橋岳, 加藤隆二, 杉原秀樹, 荒川裕則: 「新規ルテニウムピリジルキ ノリン錯体を用いた色素増感太陽電池(2)」 、日本化学会第 81 春季年会、日本化学会、早稲田大学西早稲田キャンパ ス (2002.3) 43. A. Islam, 杉原秀樹, 柳田真利, 原浩二郎, 荒川裕則: 「ジケトナートを配位子とした-4,4',4''-トリカルボキシ -2,2':6',2''-テルピリジンルテニウム錯体の酸化チタンナノ結晶色素増感太陽電池」 、日本化学会第81春季年会、 日本化学会、 早稲田大学(東京) (2002.3) 44. H. Sugihara, A. Islam, K. Hara, R. Katoh, H. Arakawa:”Dye Sensitization of Nanocrystalline Titanium Dioxide with Square Planar Platinum(II) Diiminedithiolate Complexes ”、 14th international symposium on the Photochemistry and Photophysics of Coordination Compounds、Department of General Inorganic Chemistry, University of Veszprem, Veszprem/Hungary (2001.7) 45. 原浩二郎, 佐山和弘, 大賀保代, 神宝昭, 菅貞治, 荒川裕則:”A highly efficient coumarin-dye sensitized nanocrystalline TiO2 solar cell”, 10th International Conference on Unconventional Photoactive Systems 、 Professor Graetzel、 Les Diablerets(スイス) (2001.9) 46. Masatoshi Yanagida、Ashraful Islam、Kohjiro Hara、Ryuzi Katoh、Hideki Sugihara、Hironori Arakawa:” 57 光反応制御・光機能材料 Nanocrystalline Solar Cells Sensitized with Pyridylquinoline Ruthenium(II)Complexes”10th International Conference on Unconventional Photoactive Systems, Conference Local Organizing Committee Laboratory for Photonics and Interfaces Swiss Federal Inst. of Technology at Lausanne (EPFL)、Les Diablerets, Switzerland (2001.9) 47. 小西由也, 阿部竜, 荒川裕則:”ESR STUDIES ON ELECTRON TRANSFER REACTION FROM XANTHENE DYE ON TiO2 PARTICLE”, PCPM 2002、産業技術総合研究所、つくば市 (2002.3) 48. 原浩二郎,橘泰宏,加藤隆二,古部昭広,佐山和弘,荒川裕則,大賀保代,神宝昭,菅貞治:” Dye-sensitized nanocrystalline TiO2 solar cells using novel coumarin dyes”PCPM2002、産総研、つくば市 (2002.3) 49. 柳田真利, イスラム・アシュラフル, 橘泰宏, 藤橋岳, 原浩二郎, 加藤隆二, 杉原秀樹, 荒川裕則:”Nanocrystalline Solar Cells Sensitized with Pyridyl-quinoline Ruthenium(II) Complexes ”PCPM2002(第5回産総研光反応制御、 光機能材料国際シンポジウム) 、 産業技術総合研究所、つくば市 (2002.9) 50. A. Islam , 杉原秀樹, 荒川裕則:”Molecular design of efficient ruthenium(II) polypyridyl photosensitizers for nanocrystalline TiO2 based solar cells”, PCPM 2002、AIST、Tsukuba (2002.3) 4)特許等出願等 1. 2000 年 4 月 5 日、 「増感剤として有用な白金錯体」 、杉原秀樹、原浩二郎、佐山和弘、荒川裕則、アシュラフル・イス ラム、ロクプラタプ・シング、米国特許 2. 2000 年 9 月 22 日、 「色素増感太陽電池(ZrO2添加効果) 」 、堀口尚郎、藤橋岳、木下暢、佐山和弘、荒川裕則、原 浩二郎、特願 2000-289495 3. 2000 年 12 月 27 日、 「染色布または着色衣料の模様柄作成方法」 、国藤勝士、本行、前田進悟、佐山和弘、荒川裕則、 特願 2000-398637 4. 2000 年 11 月 28 日、 「有機色素を光増感剤とする半導体薄膜電極、光電変換素子」 、 原浩二郎、佐山和弘、荒川裕 則、菅貞治、神宝昭、大賀保代、草野創、特願 2000-361549 5. 2001 年 3 月 19 日、 「色素増感太陽電池」 、 堀口尚郎、藤橋岳、木下暢、佐山和弘、荒川裕則、原浩二郎、特願 2001-07952 6. 2001 年 3 月 19 日、 「色素増感太陽電池の再生方法」 、堀口尚郎、藤橋岳、木下暢、佐山和弘、荒川裕則、原浩二郎、 特願 2001-079573 7. 2002 年 1 月 22 日、 「増感剤として有用なルテニウム錯体、酸化物半導体電極及びそれを用た太陽電池」 、イスラム・ アシュラフル、杉原秀樹、原浩二郎、柳田真利、荒川裕則、特願 2002-012288 8. 2002 年 3 月 14 日、 「ピリジルキノリン誘導体を有するルテニウム錯体による色素増感金属酸化物半導体電極、及びそ れを用いた太陽電池」 、柳田真利、杉原秀樹、イスラム・アシュラフル、荒川裕則、特願 2002-070724 9. 2001 年 1 月 28 日、 「有機色素を光増感剤とする半導体薄膜電極、光電変換素子 」 、原浩二郎、荒川裕則、佐山和弘、 菅貞治、神宝昭、大賀保代、草野創、特願 PCT/JP01/10404、(アメリカ・EPO) 10. 2001 年 12 月 20 日、 「染色布または着色衣料の模様柄作成方法」 、國藤勝士、本行、前田進悟、佐山和弘、荒川裕則、 特願 01129396.6、広域欧州 11. 2001 年 12 月 20 日、 「染色布または着色衣料の模様柄作成方法」 、國藤勝士、本行、前田進悟、佐山和弘、荒川裕則 、 特願 10/02626、米国 12. 2001 年 8 月 21 日、 ” Metal complex usful as sensitizer, dye-sensitized oxide superconductor electrode and solar cell using same” 、杉原秀樹、荒川裕則、佐山和弘、ナジールディン、グレッツエル 、登録番号 6278056、米国 13. 2001 年 8 月 20 日 、 「色素増感型太陽電池の分光感度測定装置」 、原浩二郎、佐山和弘、荒川裕則、草野清一、浅野恒 夫、特願 2001-249112 14. 2002 年 2 月 6 日、 「スチリル色素を光増感剤とする半導体電極、光電変換素子及び電気化学太陽電池」 、佐山和弘、荒 川裕則、原浩二郎、菅、神宝、大賀、特願 2002-030040 58 光反応制御・光機能材料 1.2. 光エネルギー変換の研究 1.2.2. 人工光合成技術の研究開発 産業技術総合研究所光反応制御研究センター太陽光エネルギー変換チーム 荒川 裕則、佐山 和弘、草間 仁、阿部 竜、春日 和行、姫田 雄一郎、小野沢 伸子 (1)要約 人工光合成技術として、可視光照射下で水の化学量論分解による水素、酸素発生を可能にする酸化物半導体光 触媒プロセスの開発と複核錯体触媒による炭酸ガスの可視光還元固定について研究した。水の光触媒分解につい ては、世界で初めて可視光照射下で水を化学量論で水素と酸素に分解できるナロウバンドギャップ半導体光触媒 の開発に成功した。また光合成の Z-スキームを模倣した、可視光照射下、2 段階水分解光触媒プロセスの構築に も成功した。これらの触媒構造や反応機構について検討した。炭酸ガスの光還元固定についは Ru-Co 複核錯体を 合成し、犠牲試薬を用いた可視光照射下で炭酸ガスが選択率高く CO に還元されることを見出した。 (2)研究目的 太陽光エネルギーの効率的な利用技術の確立を目指し、植物の光合成プロセスを模倣した人工光合成技術、具 体的には水の光触媒分解による水素、酸素の生成ならびに炭酸ガスの光還元固定化技術について、その光エネル ギー変換過程の解明や最適化に関わる基礎的な知見を集積し、それらの知見を踏まえて実用化を目指した反応プ ロセスの開発を行う。 (3)研究方法 光合成の明反応に相当する水の光触媒分解反応については、太陽光の約半分を占める可視光利用を目的とした 可視光応答性の酸化物半導体光触媒の開発や可視光利用プロセスの開発を行う。具体的には、水を一段反応で分 解できるナロウバンドギャップ酸化物半導体光触媒の設計、光合成のZ-スキームを模倣した 2 段階光触媒分解プ ロセスの設計、さらには色素増感光触媒の可能性について検討を行う。炭酸ガスの光還元固定化技術では可視光 応答性の複核金属錯体触媒の設計とその反応特性について検討を行う。 (4)研究成果 1)水の一段分解用光触媒の開発 今までに、紫外光照射下で水を水素と酸素に分解できるワイドバンドギャップ酸化物半導体光触媒については 数多く見出されていたが[1,2]、可視光照射下でそれを可能にする酸化物半導体光触媒は見出されていなかった。 我々は、バンド構造(バンドギャップ、伝導帯、価電子帯)の制御に自由度がある複合酸化物半導体について注 目し、幅広い探索を行った結果A2B2O7型酸化物(Bi2InNbO7[3], Bi2AlNbO7[4]、その他[5,6,]) や ABO4 型酸化物(BiNbO4[7]や InNbO4,InTaO4[8])で可視光応答性があることを見出した。中でも Ni を担持した 59 光反応制御・光機能材料 InTaO4 は可視光で水を化学量論的に水素と酸素に分解できることを世界ではじめて見出した。[9]さらに In 部分 に遷移金属を骨格置換することにより光触媒特性が大きく変化すること[10]、なかでも Ni を担持した Ni 骨格置 換光触媒(In0.9Ni0.1TaO4)で活性が約8倍することを見出した。その活性向上効果は Ni の骨格置換によるバン ドギャップの縮小と格子のわずかな歪みによる電荷分離能率の向上にあると結論した。図1に InTaO4 の結晶構造、 図2に可視光吸収特性、図3に可視光照射下での水の光分解による水素、酸素発生の経時変化を示す。 a In O Ta b c Schematic structure with the layered wolframite type. View along b-axis. Abs. (arb.units) 図1. InTaO4 酸化物半導体の結晶構造 x=0.1 x=0.0 200 400 600 Wavelength/nm 図2.In1-xNixTaO4 (X=0.0 and 0.1)酸化物半導体の拡散反射 60 800 光反応制御・光機能材料 400 Amount of evolved gases /µ mol Light Light Dark 300 H2 O2 200 100 0 0 10 20 30 40 50 60 70 Irradiation time/h 図3.NiOx/In0.9Ni0.1TaO4 光触媒を用いた可視光照射下での水の分解反応による水素・酸素発生の経時変化 2)水の 2 段階光触媒分解プロセスの開発 光合成プロセスのように水の分解過程を水の酸化過程と水の還元過程の二つに分けて設計し、それを電子キャ Potential / V vs NHE (pH = 7) リアーにより繋ぐ方法が考えられる。図4に本プロセスの基本概念図を示す。 PS2[O2] PS1[H2] H2O -0.41 e- 0.09 e- Pt IO3 - visible light 0.82 hν H+/H2 visible light IO3-/IO2/H2O IO3- O2 H2 O H2 hν I0.67 Pt Doping state? I- h+ h+ Pt-SrTiO3(Cr-Ta doped) Pt-WO3 Proposed reaction mechanism under visible light 図4. 水の2段階光触媒分解プロセスの推定反応機構 61 光反応制御・光機能材料 この方法の長所は、水の酸化過程、還元過程を別々に設計でき、それに対応する光触媒の探索は一段光触媒の 探索にくらべ容易であることである。ただ、両過程を繋ぐ電子キャリアーの最適化が重要である。このような観 点から水の酸化触媒、還元触媒、電子キャリアーについて探索を行った結果、可視光照射下での酸素発生触媒と して Pt/WO3 触媒[11,12,13]、水の還元触媒として Cr と Ta をドープした SrTiO3 触媒を見いだした。また両触媒 反応を繋ぐ電子キャリアーとして I―/I3−レドックスが使用できることを見出した。[14]これらの触媒と電子キ ャリアーの組み合わせ使用により可視光照射下で水を水素と酸素に分解できる2段階光触媒プロセスを構築する ことに世界で初めて成功した。[15,16]図5に可視光照射下における水の光触媒分解による水素、酸素発生の経時 amount of gas evolution / µmol 変化を示す。 100 dark light light dark light 80 60 H2 40 20 O2 0 0 50 100 150 200 250 Time / h 図5.Pt-WO3 と Pt-SrTiO3(Cr と Ta の芝ドープ光触媒) を混合した NaI 水溶液からの可視光照射下での水素・酸素発生の経時 変化 3)炭酸ガスの光還元固定化研究 炭酸ガスの光還元用均一系金属錯体触媒としてビスフェナントロリンを橋架け配位子とした Ru-Co 複核錯体を 合成した。Ru 部分は可視光吸収・光電変換部分であり、Co 部分は CO2 の還元反応部分である。犠牲試薬存在下で の反応ではあるが可視光照射下で CO2 炭酸ガスが還元され、CO になることが明らかになった。また、副生成物の H2 生成も Ru 錯体、Co 錯体混合系の触媒反応より抑制されることが明らかとなった[17]。 (5)考察 A)世界で初めて可視光照射下で水を化学量論的に水素と酸素に分解できる酸化物半導体光触媒を開発したが、 活性は今のところ低い。活性向上の方法として触媒表面積を向上させること、電荷分離の効率化が今後の課題と 考えられる。また可視光吸収領域も 550nm 程度までであるので、本プロセスの実用化には不十分である。水分解 の高効率化には、可視光吸収領域を拡張することも必要であり、新たな光触媒材料の探索および開発が望まれよ う。 62 光反応制御・光機能材料 B)2 段階分解法でも世界で初めて可視光照射下で水を化学量論的に分解することに成功したが、活性は低い。性 能向上に向けての反応条件の最適化、光吸収領域の広い光触媒の探索、電子移動に高効率な電子メデアーターの 開発が必要である。 C)炭酸ガスの光還元固定反応では均一系複核錯体触媒の使用により、副生成物である H2 の生成は抑制は出来た が、CO 生成活性の向上は出来なかった。活性向上の為には CO2 の還元反応に効率的な活性サイトの設計が必要で あり、光吸収サイトとしての Ru 錯体と反応活性サイトとして好ましい固体触媒の組み合わせ触媒の設計が有望で あると考えられる。 (6)引用文献 [1] K.Sayama, H.Arakawa: Significant effect of Na2CO3 addition on stoichiometric photodecomposition of liquid water into H2 and O2 from Pt-TiO2, Chem.Commun., 1992, 150. [2] K.Sayama, H.Arakawa: Effect of carbonate salt addition on the photocatalytic decomposition of liquid water over Pt/TiO2 catalyst, J.Chem.Soc., Farady Trans., 93, 1647(1997). [3] Z.Zou, J.Ye, R.Abe, H.Arakawa: Photocatalytic decomposition of water with Bi2InNbO7,Catal.Lett., 68, 235(2000).. [4] Z.Zou, J.Ye, H.Arakawa: Photocatalytic and photophysical properties of a novel series of solid photocatalysts, Bi2MNbO7(M=Al3+, Ga3+ and In3+), Chem.Phys.Lett.,333,57(2001). [5] Z.Zou, J.Ye, H.Arakawa: Substitution effect of In3+ by Fe3+ on photocatalytic and structural properties of Bi2MNbO7 photocatalysts, J.Mol.Catal.A., 168,289(2001). [6] Z.Zou, J.Ye, H.Arakawa: Roles of R in Bi2RNbO7 ( R=Y, Rare Earth): effect on band structure and photocatalytic properties, J.Phys.Chem.,106, 517(2002). [7] Z.Zou, J.Ye, H.Arakawa: Photocatalytic and photophysical properties of a novel series of solid photocatalyst, BiTa1-xNbxO4 ( 0≦x≦1), Chem.Phys.Lett.,343,303(2001). [8] Z.Zou, J.Ye, H.Arakawa: Structural properties of InNbO4 and InTaO4: correlation with photocatalytic and photophysical properties, Chem.Phys.Lett.,332,271(2000). [9] Z.Zou, J.Ye, K.Sayama, H.Arakawa: Direct splitting of water under visible light irradiation with an oxide semiconductor photocatalyst, Nature, 414, 626(2001). [10] Z.Zou, J.Ye, H.Arakawa: Photocatalytic behavior of a new series of In0.8M0.2TaO4 (M-Ni, Cu, Fe) photocatalysts in aqueous solutions, Catal.Lett., 75, 209(2001). [11] K.Sayama, R.Yoshida, Y.Abe, H.Kusama, H.Arakawa: Photocatalytic decomposition of water into H2 and O2 by two step photoexcitation reaction using WO3 catalyst and Fe3+/Fe2+ redox system, Chem.Phys.Lett.,277,389(1997). [12] G.Bamwenda, H.Arakawa: The visible light induced photocatalytic activity of tungusten trioxide powders, Appl.Catal., 210, 181(2001). [13] G.Bamwend, T.Uesugi, Y.Abe,K.Sayama, H.Arakawa:The photocatalytic water splitting into H2 and O2 over pure CeO2, WO3 and TiO2 using Fe3+ and Ce4+ as electron acceptor, Appl. Catal., 205, 117(2000). [14] R.Abe, K.Sayama,H.Arakawa:The overall water decomposition using I-/IO3- redox mediator over the mixture of Pt/TiO2 (Anatase) and TiO2 (rutile) under UV light irradiation, Chem.Phys.Lett.,344,339(2001). [15] K.Sayama, K.Mukasa, R.Abe, Y.Abe, H.Arakawa: The stoichiometric water splitting into H2 and O2 using 63 光反応制御・光機能材料 a mixture of two different photocatalysts and IO3-/I- shuttle redox mediator under visible light irradiation, Chem.Commun., 2001,2416. [16] K.Sayama, K.Mukasa, R.Abe, Y.Abe, H.Arakawa: A new photocatalytic water splitting system under visible light irradiation mimicking a Z-scheme mechanism in photosynthesis, J.Photochem.Photobiol.A:Chem., in press. [17] N. Komaysuzaki, Y. Himeda, T. Hirose, H. Sugihara, K. Kasuga: Synthesis and photochemical properties of ruthenium-cobalt and ruthenium-nickel dinuclear complexes, Bull. Chem. Soc. Jpn., 72, 725 (1999) (7)成果の発表 1)原著論文による発表 ア)国内誌(国内英文誌を含む) 1. P. Wang, N. Onozawa, R Katoh, Y. Himeda, H. Sugihara, H.Arakawa, K. Kasuga:” Structure and properties of diastereoisomers of a ruthenium(II) complex having a pyridylpyrazoline derivatives as a ligand” 、 Chem.Lett.、2001、940-941、 (2001) 2. H. Kusama, K. Okabe, H. Arakawa :”Hydrogeation reaction of CO2 by using FSM-16 and SiO2 supported Rh catalysts (in Japanese)” 、NIPPON KAGAKU KAISHI、2002、103-105、 (2002) 3. H. Kusama, H. Arakawa:”Hydrogenation of CO2 over SiO2 supported Rh-Co-alkalimetal cataluysts (in Japanese)” 、 NIPPON KAGAKU KAISHI、2002、107-109、 (2002) 4. H. Kusama, K. Okabe, H. Arakawa:”Effect of Ce additive on CO2 hydrogenation over Rh/SiO2 catalysts” 、 Sekiyu Gakkaishi、 44、 384-391 5. H. Kusama, H. Arakawa:”The effects of precursors on CO2 hydrogenation reacrivity over SiO2 supported Rh-Li and Rh-Fe catalysts (in Japanese)” 、NIPPON KAGAKUKAISHI 、2001、483-485、 (2001) 6. K. Sayama, R. Abe:”A new photocatalytic water decomposition system, a mimicking system of Z-scheme mechanism in photosynthesis, composed of two oxide semiconductor photocatalysts and a redox mediator (in Japanese)” 、 SHOKUBAI、 43、 494-496 (2001) イ)国外誌 1. 荒川裕則, 佐山和弘:”Solar hydrogen .Significant effect of Na2CO3 addition on water splitting using simple oxide semiconductor photocatalysts” 、Catalysis Surveys 、2001、75-80 、 (2000) 2. 鄒志剛, 葉金花, 阿部竜, 荒川裕則:” Photocatalytic decomposition of water with Bi2InNbO7 ” 、 Catal. Lett., 68、235-239 (2000) 3. G. R. Bamwenda, 荒川裕則:”Cerium dioxide as a photocatalyst for water decomposition to O2 in the presence of Ce4+and Fe3+ species” 、 J. Mol. Catal. A: Chem.、 161、105-113、 (2000) 4. 小松崎(小野澤)伸子, 加藤隆二, 姫田雄一郎, 杉原秀樹, 荒川裕則, 春日和行:”structure and phoyochemical properties of ruthenium comples having dimethyl-substituted DPPZ or TPPHZ as a ligand ” 、 Inorg. Chim Acta、2000、3053-3054 、(2000) 5. 鄒志剛, 葉金花, 荒川裕則:”Synthesis, magnetic and electrical transport properties of the Bi2InNbO7 compound” 、 Solid State Commun.、116、259-263、(2000) 6. G. R. Bamwenda, 荒川裕則:”The visible light induced photocatalytic activity of tungsten trioxide powders ” 、 Appl. Catal., A、 210、181-191、(2000) 7. 鄒志剛, 葉金花, 荒川裕則:”Optical and electrical properties of solid photocatalyst Bi2InNbO7” 、 J. Mater. 64 光反応制御・光機能材料 Res.、 15、2073-2075、(2000) 8. 鄒志剛, 葉金花, 荒川裕則:”Substitution effects of In3+by Fe3+on photocatalytic and structural properties of Bi2InNbO7 photocatalysts ” 、 J. Mater. Res.、168、 289-297、 (2000) 9. 鄒志剛, 葉金花, 荒川裕則:”Optical and structural properties of solid oxide photocatalyst Bi2FeNbO7” 、 J. Mater. Res.、 16、1-3、 (2001) 10. G. R. Bamwenda, 上杉高志, 阿部芳首, 荒川裕則:”The photocatalytic oxidation of water to O2 over pure CeO2, WO3, and TiO2 using Fe3+ and Ce4+ as electron acceptors ” 、 Appl. Catal., A、 205、117-128、(2001) 11. 小松崎(小野澤)伸子, 加藤隆二, 姫田雄一郎, 杉原秀樹, 荒川裕則, 春日和行:” Synthesis and photochemical properties of ruthenium complexes having dimethyl-substituted DPPZ or TPPHZ as a ligand” 、 J. Chem. Soc., Dalton Trans、2000、3053-3054 、 (2000) 12. 阿部竜, 原浩二郎, 佐山和弘, 堂免一成, 荒川裕則:”Steady hydrogen evolution from water on Eosin Y-fixed TiO2 photocatalyst using a silane-coupling reagent under visible light irradiation” 、J. Photochem. Photobio., A:Chem.、137、63-69、(2000) 13. 草間仁, 岡部清美, 佐山和弘, 荒川裕則:”Alcohol Synthesis by Catalytic Hydrogenation of CO2 over Rh-Co/SiO2” 、 Appl. Organomet. Chem.、14、836-840、(2000) 14. 草間仁, 阪東恭子, 岡部清美, 荒川裕則:”CO2 hydrogenation reactivity and structure of Rh/SiO2 catalysts prepared from acetate, chloride and nitrate precursors” 、Appl. Catal., A、205、285-294 、(2001) 15. 草間仁, 岡部清美, 荒川裕則:”Characterization of Rh-Co/SiO2 catalysts for CO2 Hydrogenation with TEM, XPS and FT-IR ” 、Appl. Catal., A、207、85-94、(2001) 16. P. Wang, N. Onozawa, Y. Himeda, H. Sugihara, H. Arakawa, K. Kasuga:”3-(2-Pyridyl)-2-pyrazoline derivatives : Novel fluorescent probes for Zn2+ ion” 、Tetrahedron Lett.、42、9199-9201、(2001) 17. R. Abe, K. Sayama, H. Arakawa:”A new type of water splitting system composed of two different TiO2 photocatalysts (anatase, rutile) and a IO3-/I- shuttle redox mediator” 、Chem. Phys. Lett.、344、339-344、 (2001) 18. K. Sayama, K. Mukasa, R. Abe, Y. Abe, H. Arakawa :”Stoichiometric water splitting into H2 and O2 using a mixture of two different photocatalysts and an IO3-/I- shuttle redox mediator under visible light irradiation” 、 Chem.Commun.、2001、 2416-2417、 (2001) 19. K. Sayama, K. Mukasa, R. Abe, Y. Abe, H. Arakawa:”A new photocatalytic water splitting system under visible light irradiation mimicking a Z-scheme mechanism in photosynthesis” 、J. Photochem. Photobio., A: Chem.、 article in press 、(2002) 20. Z. Zou, J. Ye, K. Sayama, H.Arakawa:”Direct splitting of water under visible light irradiation with an oxide semiconductor photocatalyst ” 、 Nature、414、625-627、(2001) 21. Z. Zou, J. Ye, H. Arakawa :”Optical and structural properties of the BiTa1-xNbxO4(0≦x≦1)compounds ” 、 Solid State Commun.、 119、471-475、(2001) 22. Z. Zou, J. Ye, K. Sayama, H. Arakawa :”Photocatalytic and photophysical properties of a novel series of solid photocatalysts, BiTa1-xNbxO4 (0≦x≦1) ” 、Chem. Phys. Lett.、343、 303-308、 (2001) 23. Z. Zou, J. Ye, H. Arakawa :”Substitution effects of In3+ by Al3+ and Ga3+ on the photocatalytic and structural properties of the Bi2InNbO7 photocatalyst” 、Chem. Mater.、13、 1765-1769、(2001) 24. Z. Zou, J. Ye, H. Arakawa :”Photocatalytic behavior of a new series of In0.8M0.2TaO4(M=Ni,Cu,Fe) photocatalysts in aqueous solutions ” 、Catalysis Lett.、75、209-213、(2001) 25. Z. Zou, J. Ye, H. Arakawa:”Role of R in Bi2RNbO7(R=Y, Rare earth) : Effect on band structure and photocatalytic properties” 、J. Phys. Chem. B、 106、517-520、(2002) 65 光反応制御・光機能材料 2)原著論文以外による発表(レビュー等) ア)国内誌(国内英文誌を含む) 1. H. Arakawa:”Photocatalysts and hydrogen enegy (in Japanese)” 、 Expected Materials for the Future、1 、 10-16 、(2001) イ)国外誌 1. H. Arakawa, M. Aresta, J. N. Armor, M. A. Barteau, E. J. Beckman, A. T. Bell, J. E.Bercaw, C. Creutz, E. Dinjus, D. A. Dixon, K. Domen, D. L. DuBois, J. Eckert, E. Fujita, D. H. Gibson, W. A. Goddard, D. W. Goodman, J. Keller, G. J. Kubas, H. H. Kung, J. E.Lyons, L. E. Manzer, J. Rostrup-Nielson, W. M. H. Sachtler, L. D. Schmidt, A. Sen, G. A. Somorjai, P. C. Stair, B. R. Stults, W. Tumas:”Catalysis research of relevance to carbon management : Progress, challenges and opportunities” 、Chem. Rev.、101、953-996、(2001) 3)口頭発表 ア)招待講演 1. 荒川裕則: 「太陽光エネルギー変換光触媒の開発動向」 、第 24 回高分子錯体若手懇談会 (2000.7) 2. 佐山和弘: 「無尽蔵の水と太陽光で水素を製造する」 、ST スクエアー (2000.4) 3. 荒川裕則: 「エネルギー・環境問題の解決に貢献する光反応制御技術」 、京都大学エネルギー工学研究所第 6 回公開講 演会、京都大学、京都 (2001.5) 4. 荒川裕則: 「太陽光エネルギーの化学的変換技術研究の最前線」 、長岡技術科学大学化学系講演会、長岡技術科学大学、 長岡大学 (2001.10) 5. 佐山和弘: 「光合成メカニズムを模倣した可視光応答性半導体光触媒による水の完全分解」 、田丸コンファレンス、田 丸コンファレンス委員会、静岡県熱川 (2001.10) 6. 荒川裕則: 「太陽光エネルギー利用の新展開」 、石川県サイエンス・アンド・テクノロジーフォーラム、石川県 小松 (2001.11) イ)応募・主催講演等 1. 荒川裕則, Z. Zigang: 「Bi2AlNbO7 系光触媒による水の分解反応」 、電気化学会第 67 回大会(2000.4) 2. G. R. Bamwenda, 荒川裕則, 佐山和弘:”The Photocatalytic Oxidation of Water to O2 over Pure CeO2, WO3 and TiO2 Using Fe3+ and Ce4+ as Electron Accepotors” 、電気化学会第 67 回大会 (2000.4) 3. 鄒志剛, 葉金花, 佐山和弘, 荒川裕則: 「Inl-xMxTaO4(M=Ni2+,Cu2+,Fe2+)の結晶構造と光触媒特性の関連」 、2000 年 電気化学会秋季大会 (2000.9) 4. 鄒志剛, 葉金花, 荒川裕則:”Optical and Structural Properties of BiTa1-XNbXO4 (X=0.0∼1.0)” 、日本物理学 会第 55 回年次大会 (2000.9) 5. 鄒志剛, 佐山和弘, 荒川裕則: 「NiOx/InNbO4 および NiOx/InTaO4 光触媒による水の可視光分解」 、2000 年光化学討論 会 (2000.9) 6. 鄒志剛, 葉金花, 荒川裕則:”Substitution effects of In3+ by Fe3+ on photophysical and structural properties of Bi2InNbO7” 、日本物理学会第 56 回年次大会 (2001.3) 7. 阿部竜, 佐山和弘, 堂免一成, 荒川裕則: 「エオシンY−酸化チタン色素増感光触媒における可視光照射下での水か 66 光反応制御・光機能材料 らの水素生」 、成電気化学会第 67 回大会 (2000.4) 8. 貝瀬正紘, 高橋明文, 徳橋和明, 荒川裕則: 「ミセル水溶液に共存するキノン、及び、アスコルビン酸類の光反応 EPR」 、 第 27 回生体分子科学討論会 (2000.8) 9. 阿部竜, 佐山和弘, 堂免一成, 荒川裕則: 「半導体光触媒とヨウ素レドックスを用いた水の完全分解」 、2000 年電気化 学会秋季大会 (2000.9) 10. 春日和行, 小松崎伸子, 姫田雄一郎, 杉原秀樹, 荒川裕則: 「2-ピリジルメチル基を側鎖に持つ環状ポリアミンを配 位子とする遷移金属複核錯体の構造と性質」 、第 50 回錯体化学討論会、(2000.9) 11. P. Wang, 春日和行, 小松崎伸子, 加藤隆二, 姫田雄一郎, 杉原秀樹, 荒川裕則: 「ピリジルピラゾール誘導体を配位 子とするルテニウム錯体の合成とその発光の pH 依存性」 、第 50 回錯体化学討論会 (2000.9) 12. 姫田雄一郎, 小松崎伸子, 杉原秀樹, 荒川裕則, 春日和行:”Transfer hydrogenation of ketones with cyclopentadienyl rhodium complexes in a HCO2H/HCO2Na solution.” 、第 50 回錯体化学討論会 (2000.9) 13. 小松崎伸子, 姫田雄一郎, 加藤隆二, 杉原秀樹, 荒川裕則, 春日和行: 「ジピリドフェナジン環を含むルテニウムビピ リジルーシッフ塩基複核錯体の合成と光化学的特性」 、 第 50 回錯体化学討論会 (2000.9) 14. 阿部竜, 佐山和弘, 堂免一成, 荒川裕則: 「色素増感光触媒におけるヨウ化物イオンを電子供与体とした水−アセト ニトリル混合溶液からの水素生成」 、2000 年光化学討論会 (2000.9) 15. 姫田雄一郎, 小松崎伸子, 杉原秀樹, 荒川裕則, 春日和行:”Photocatalytic Reduction of Carbonyl Compounds with Rhodium Complexes as a Redox Catalyst” 、2000 年光化学討論会 (2000.9) 16. 小松崎伸子, 姫田雄一郎, 加藤隆二, 杉原秀樹, 荒川裕則, 春日和行: 「ジピリドフェナジン環を含むルテニウムビピ リジルーシッフ塩基複核錯体の光化学的特性」 、2000 年光化学討論会 (2000.9) 17. P. Wang, 小野澤伸子, 加藤隆二, 姫田雄一郎, 杉原秀樹, 荒川裕則, 春日和行: 「3-(2-ピリジル)−ピラゾリン誘導 体を配位子とするルテニウム錯体のジアステレオ異性体の構造とその性質」 、日本化学会第 79 春季年会 (2001.3) 18. 小野澤伸子, 姫田雄一郎, 加藤隆二, 杉原秀樹, 荒川裕則, 春日和行: 「ジピリドフェナジン環を含むルテニウムビピ リジル−銅及びコバルトシッフ塩基複核錯体の合成と性質」 、日本化学会第 79 春季年会 (2001.3) 19. 草間仁, 荒川裕則: 「Rh-Co 系触媒による CO2 と H2 からのアルコール合成」 、日本化学会第 79 春季年会 (2001.3) 20. 鄒志剛, 葉金花,荒川裕則:”Growth,Photophysical and Structual Properties of Bi2InNbO7 ” 、第 1 回アジア結 晶成長及び結晶 技術会議 (2000.8) 21. 鄒志剛, 葉金花, 荒川裕則:”Photophysical and Structual effects of Ni,Cu,and Fe Substitution in InTaO4” 、 第 1 回アジア結晶成長及び結晶技術会議 (2000.8) 22. 春日和行, 小松崎伸子, 姫田雄一郎, 杉原秀樹, 荒川裕則:”Synthesis and Properties of Novel Macrocyclic Polyamines and Their Dinuclear Transition Metal Complexes” 、34th International Conference on Coordination Chemistry (2000.7 ) 23. 小松崎伸子, 姫田雄一郎, 加藤隆二, 杉原秀樹, 荒川裕則, 春日和行:”Photochemical properties of ruthenium complexes having dimethyl-substituted DPPZ and TPPHZ ligands” 、8th International Kyoto Conference on New Aspects of Organic Chemistry (2000.7) 24. Z. Zou, J. Ye, 佐山和弘, 荒川裕則:”Water splitting using a novel series of photocatalysts, NiOx-InNbO4 and NiOx-InTaO4 under visible light irradiation” 、第 13 回光エネルギー変換と太陽エネルギー貯蔵の国際会議 (2000.8) 25. P. Wang, 春日和行, 小松崎伸子, 加藤隆二, 姫田雄一郎, 杉原秀樹, 荒川裕則:”Synthesis and properties of novel ruthenium (II) complexes having pyridylpyrazoline derivatives as ligands ”、2000 環太平洋国際化学会議 (PACIFICHEM2000) (2000.12) 26. 姫田雄一郎, 小松崎伸子, 杉原秀樹, 荒川裕則, 春日和行:”Photocatalytic Reduction of Carbonyl Compounds with Rhodium Complexes as a Redox Catalyst” 、2000 環太平洋国際化学会議 (2000.12) 67 光反応制御・光機能材料 27. 小松崎伸子, 姫田雄一郎, 加藤隆二, 杉原秀樹, 荒川裕則, 春日和行:”Synthesis and photochemical properties of ruthenium bipyridyl-Schiff base complexes” 、2000 環太平洋国際化学会議(PACIFICHEM 2000) (2000.12) 28. P. Wang, 春日和行, 小松崎伸子, 加藤隆二, 姫田雄一郎, 杉原秀樹, 荒川裕則:” Synthesis and pH-sensitive Properties of Excited State of New Ruthenium(II) Complexes Containing Pyrazole Derivatives as Ligands” 、 第 4 回物質研 光反応制御・光機能材料国際シンポジウム(PCPM2001) (2001.3) 29. 佐山和弘, 阿部竜, 荒川裕則:”A NEW WATER SPLITTING SYSTEM USING OXIDE SEMICONDUCTOR PHOTOCATALYST AND A REDOX MEDIATOR” 、第 4 回物質研 光反応制御・光機能材料国際シンポジウム(PCPM2001)(2001.3) 30. 阿部竜, 佐山和弘, 堂免一成, 荒川裕則:”A NEW PHOTOCATALYTIC WATER SPLITTING INTO H2 AND O2 USING A TWO-STEP PHOTOEXCITATION SYSTEM COMPOSED OF SEMICONDUCTOR PHOTOCATALYST AND I-/IO3- REDOX MEDIATOR” 、第 4 回物質研 光反応制御・光機能材料国際シンポジウム(PCPM2001)(2001.3) 31. 小野澤伸子, 加藤隆二, 姫田雄一郎, 杉原秀樹, 荒川裕則, 春日和行:”Synthesis and properties of ruthenium bipyridyl-schiff base dinuclear complexes having dipyrido phenazine moiety” 、第 4 回物質研 光反応制御・ 光機能材料国際シンポジウム(PCPM2001) 、(2001.3) 32. 鄒志剛, 佐山和弘, 荒川裕則: 「InNbO4 と InTaO4 系光触媒による水の可視光分解による水素の製造」 、第 10 回日本エ ネルギー学会大会、日本エネルギー学会、九州、(2001.8.) 33. 姫田雄一郎, 小野澤伸子, 杉原秀樹, 荒川裕則, 春日和行: 「ギ酸水溶液中における光学活性ロジウム錯体を用いた 水素移動型還元反応」 、日本化学会第80秋季年会、日本化学会、千葉、(2001.9) 34. 姫田雄一郎, 小野澤伸子, 杉原秀樹, 荒川裕則, 春日和行: 「光学活性ロジウム錯体の合成とギ酸水溶液中における ケトン類の水素移動型還元反応」 、第51回錯体化学討論会、錯体化学研究会、松江 (2001.9) 35. 佐山和弘, 阿部竜: 「光合成のZスキーム型メカニズムを模倣した可視光照射下での酸化物半導体光触媒による水の 完全分解システム」 、第88回触媒討論会B講演、触媒学会 、別府市 (2001.10) 36. 鄒志剛, 葉金花, 佐山和弘, 荒川裕則: 「希土類複合酸化物を用いた水の分解反応」 、第 88 回触媒討論会、触媒学会、 大分県別府市 (2001.10) 37. 阿部竜 : 「SrTiO<sub>3</sub>系光触媒を用いた水の完全分解反応の炭酸塩添加効果」 、第88回触媒討論会A講 演、触媒学会、別府市 (2001.10) 38. 阿部竜, 佐山和弘, 荒川裕則: 「2 種類の半導体光触媒とヨウ素レドックスを用いた水の完全分解反応」 、第 88 回触媒 討論会、触媒学会、日本化学会、別府市 (2001.10) 39. 鄒志剛, 葉金花, 阿部竜, 佐山和弘, 荒川裕則: 「新しい InTaO4 系光触媒を用いた可視光照射下での水の完全分解反 応」 、第 89 回触媒討論会、触媒学会、神奈川県 (2002.3) 40. 佐山和弘, Jan Augustynski, 荒川裕則: 「半導体電極を用いた光触媒反応機構の検討」 、 触媒討論会、触媒学会、神 奈川大学 (2002.3) 41. 武笠和明, 佐山和弘, 阿部竜, 阿部芳首, 荒川裕則: 「SrTiO3 系光触媒を用いた水の完全分解反応」 、触媒討論会、触 媒学会、神奈川大学 (2002.3) 42. 阿部竜, 武笠和明, 鄒志剛, 佐山和弘, 阿部芳首, 荒川裕則: 「Pt 担持半導体光触媒における水の完全分解反応のヨ ウ化物イオン添加効果」 、第 89 回触媒討論会、触媒学会、日本化学会、横浜市(2002.3) 43. 鄒 志 剛 , 葉 金 花 , 阿 部 竜 , 佐 山 和 弘 , 荒 川 裕 則 : ” Structural and Photocatalytic Properties of In1-xNixTaO4(X=0-1)” 、日本物理学会第 57 回年次大会、日本物理学会、 京都 (2002.3) 44. 春日和行, Kadarkaraisamy, Mariappan, 姫田雄一郎, 小野澤伸子, 杉原秀樹, 荒川裕則: 「ジピラゾリルピリジン誘 導体を配位子とするルテニウム錯体の合成とその性質」 、 日本化学会第 81 春季年会、日本化学会、東京 (2002.3) 45. 小野澤伸子, 杉原秀樹, 荒川裕則, 春日和行, 姫田雄一郎: 「ギ酸水溶液中における光学活性ロジウム錯体を用いる ケトン類の水素移動型還元反応」 、日本化学会第 81 春季年会、日本化学会、東京 (2002.3) 46. 荒川裕則: 「可視光による水の完全分解反応∼In1-XNixTaO4 触媒の開発」 、日本化学会第81春季年会、日本化学会、 68 光反応制御・光機能材料 東京都新宿区西早稲田 (2002.3) 47. Kazuhiro SAYAMA, Ryu ABE:”The New Photocatalytic Water Splitting System under Visible Light Irradiation Mimicking a Z-Scheme Mechanism in Photosynthesis ” 、 第一回半導体光化学国際会議、SP−1実行委員会、グラ スゴー / 英国 (2001.7) 48. 鄒志剛, Jinhua Ye, 佐山和弘, 荒川裕則:”Photocatalytic hydrogen and oxygen formation under visible light irradiation with M-doped InTaO4(M=Mn,Fe,Co,Ni,Cu)photocatalysts ” 、 第 1 回半導体光触媒国際会議(SP-1) 、 第 1 回半導体光触媒国際会議組織委員会、グラスゴー / 英国 (2001.7) 49. 鄒志剛, Jinhua Ye, 荒川裕則:”Photocatalytic water splitting into H2 and/or O2 under UV and visible light irradiation with a semiconductor photocatalyst” 、 Ⅶ International Conference on Advanced Materials ICAM 2001、 国立メキシコ大学 、Cancun (Mexico) (2001.8) 50. 鄒志剛, J. Ye, 荒川裕則:”PHOTOCATALYTIC PROPERTY AND ELECTRONIC STRUCTURE OF A NOVEL SERIES OF SOLID PHOTOCATALYSTS, Bi2RNbO7(R=Y,RARE EARTH) ” 、 International Catalysis Workshop for Young Scientists-2001(ICWYS-2001)、北京大学、Beijing(China) (2001.9) 51. 小野澤伸子, 加藤隆二, 姫田雄一郎, 杉原秀樹, 春日和行:”Synthesis and properties of ruthenium bipyridyl-copper and cobalt schiff base dinuclear complexes having dipyrido phenazine moiety ” 、5th AIST International Symposium on Photoreaction Control and Photofunctional Materials、産業技術総合研究所、つく ば市(2002.3) 52. 姫田雄一郎, 小野澤伸子, 杉原秀樹, 荒川裕則, 春日和行:”Homogeneous Hydrogenation of Carbon Dioxide to Formate Catalyzed by Rhodium Complexes in Aqueous Solution Under Mild Conditions ”、PCPM 2002 The 5th International Symposium on Photoreaction Control and Photofunctional Materials 、産業技術総合研究所、つく ば市、(2002.3) 53. 佐山和弘, K. MUKASA, 阿部竜, Y. ABE, 荒川裕則:”Photocatalytic Water Splitting System into H2 and O2 under Visible Light Irradiation Mimicking a Z-Scheme Mechanism in Photosynthesis” 、PCPM2002、産創研 PCPM 実行委 員会、つくば市 (2002.3) 54. 阿部竜, 鄒志剛, 佐山和弘, 荒川裕則:”Significant Effect of NaI Addition on Water Splitting into H2 and O2 over Pt-loaded Semiconductor Photocatalysts - Suppression of Backward Reaction over Pt Particles on Semiconductor -” 、第5回産総研光反応制御・光機能材料国際シンポジウム、産業技術総合研究所, つくば市 (2002.3) 55. 鄒志剛, 阿部竜, 佐山和弘, 荒川裕則:”Photocatalytic and photophysical properties of a new series of solid photocatalysts, M2Ta (Nb)2O6(M=Co,Ni,Cu)” 、第 5 回産総研光反応制御・光機能材料国際シンポジウム(PCPM 2002) 、産業技術総合研究所、 つくば市 (2002.3) 56. P. Wang, 春日和行, 小野澤伸子, 加藤隆二, 姫田雄一郎, 杉原秀樹, 荒川裕則:”Structure and Properties of Diastereoisomers of a Ruthenium(II) Complex Having a Pyridylpyrazoline Derivatives as a Ligand ” 、 PCPM 2002 The 5th International Symposium on Photoreaction Control and Photofunctional Materials、産業技 術総合研究所、つくば市(2002.3) 57. 鄒志剛, 荒川裕則:”DIRECT WATER SPLITTING INTO H2 AND O2 UNDER VISIBLE LIGHT IRRADIATION WITH A NEW SERIES OF MIXED OXIDE SEMICONDUCTOR PHOTOCATALYSTS” 、第 5 回産総研光反応制御・光機能材料国際シンポジウム(PCP M2002) 、産業技術総合研究所、つくば市 (2002.3) 4)特許等出願等 1. 2000 月 4 月 13 日、 「紫外線照射による無機硫黄化合物イオン水溶液からの水素製造」 、原浩二郎、佐山和弘、杉原秀 樹、荒川裕則、特願 2000-112250 2. 2000 年 12 月 22 日、 「半導体光触媒反応装置及び電解装置からなる水素の製造装置」 、佐山和弘、荒川裕則、岡部清美、 69 光反応制御・光機能材料 草間仁、特願 2000-391356 3. 2001 年 2 月 26 日、 「ヨウ素化合物と半導体光触媒による光エネルギー変換」 、佐山和弘、荒川裕則、特願 2001-050195 4. 2001.年 7 月 10 日、 「光触媒およびこれを用いた水素の製造方法ならびに有害物質の分解方法」 、荒川裕則、鄒志剛、 佐山和弘 、特願 2001-208937 5. 2001 年 6 月 15 日、 「光触媒ー電解ハイブリッドシステムによる水素の製造方法」 、 佐山和弘、荒川裕則、岡部清美、 草間仁 、特願 2001- 3198298 70 光反応制御・光機能材料 1.3. 光・レーザー反応の研究 1.3.1. レーザー精密プロセスの研究 産業技術総合研究所光反応制御研究センターレーザー精密プロセスチーム 矢部 明、新納 弘之、川口 喜三、佐藤 正健、奈良崎 愛子 (1)要約 特異的反応場での光反応制御によるレーザープロセシングでの新物質・材料創製を目的として、有機分子の極 低温条件下でのレ−ザ−光分解反応、透明光学材料の高品位微細加工などの検討を行い、高効率・高選択的合成 や機能材料プロセシングに展開できる手法を見いだすことができた。特に、ポリマーアブレーションの機構解明 の研究途上で発見した色素溶液の超加熱現象を光エレクトロニクスで重要な石英ガラスの1ミクロンレベルの高 精度微細加工へと展開できたことは、分子レベルでの光反応制御の成果に基づく革新的なレーザープロセシング として有用である。 (2)研究目的 光と物質の相互作用に基づく光反応制御法を研究し、高選択的な反応を起こさせ、副反応生成物を産出しない 合成プロセスや材料加工プロセスを見いだす。特に、化学的・物理的変換過程の中から特異的な物質の創製や材 料プロセシングに有用な反応を見いだし、高付加価値化学品の合成手法、材料の高性能化や機能性薄膜などの材 料加工法を開発する。 (3)研究方法 紫外光(レーザー)や真空紫外光と有機分子、高分子化合物、ガラス・無機化合物との相互作用に基づく、特 異的な反応場での化学的・物理的変換を検討する。レーザーアブレーション過程を時間的・空間的に追跡し解析 できる分光学手法、飛行時間型質量分析システムやレーザー反応で生成する反応活性種の分析に必要な高感度分 光法などを活用することで、新物質創製や新材料加工のための手法を見出し、光反応制御法を活用して物質合成 手法や材料加工手法の最適化を図る。 (4)研究成果 1)極低温マトリックス場における有機化合物、ならびに、高分子化合物の高強度紫外光パルス励起による反応 活性種の生成を研究した。新物質創製や新材料プロセスに有用であり、他の手法では生成が困難である構造 特異的な活性種ベンズジイン[1-3]、ナフタイン[4,5]、エンテトライン[4,6]、および、ナイトレン[7-9]に 関して、密度汎関数法等の計算機化学手法を応用することで分子構造、振動スペクトル、電子スペクトルに ついての計算を行い、その計算結果と実験値との精緻な比較から、上記活性種の生成・捕捉、同定、生成機 構解明に成功した(図1,2)。 71 光反応制御・光機能材料 図1 芳香族活性種ベンズジイン生成の反応スキーム及び5つの前駆体 図2 波長選択的レーザー照射によるベンズジインの高収率生成 さらに、それらの活性種とポリマー膜表面との反応性ならびに活性種の低温重合を検討し、機能性薄膜作製に つながる新物質創製へと展開した[8,10-12]。 2)ポリマーアブレーションの増感機構の研究過程において、偶発的に発見したピレンなどの多環芳香族分子の 72 光反応制御・光機能材料 ナノ秒レーザーパルス内での循環多光子吸収による超加熱状態の知見に基づき、色素溶液を用いた石英ガラ スやフッ素化ポリマーなどの紫外透明光学材料基板の高品位微細加工手法へと展開した(図3,4) 図3 石英ガラス微細加工実験装置図 図4 液体アブレーションによる加工モデル図 [13-17]。マスクプロジェクション法を応用した大面積一括加工技術を用い、高平滑性の1・m レベルの分解能 を有する高精度加工を達成できた(図5-7)。 図5 石英ガラスの高平坦性エッチング、表面像(上)と断面プロファイル(下) 図6 石英ガラスの大面積一括加工 73 光反応制御・光機能材料 図7 石英ガラスの1mm 微細加工 さらに、基板界面近傍の時間分解画像測定によって衝撃波や気泡生成を検出し、過渡的な高温度・高圧力発生 に基づく加工メカニズムの解明を進めた(図8) [17]。 図8 遅延時間 Dt における石英基板界面近傍画像 (5)考察 特異的な光・レ−ザ−反応による新物質創製と光反応制御によるレーザープロセシングでの材料創製を目的と して、有機分子の極低温条件下でのレ−ザ−光分解反応、高分子膜のレ−ザ−誘起表面反応などの検討を行い、 それぞれの試みにおいて、高効率合成や機能材料プロセシングに展開できる手法を見いだすことができた。特に、 ポリマーアブレーションの機構解明の研究途上で発見した超加熱現象を光エレクトロニクスで重要な石英ガラス の1ミクロンレベルの高精度微細加工へと展開できたことは、分子レベルでの光反応制御の成果に基づく革新的 なレーザープロセシングとして注目される。レーザーアブレーション過程を時間的・空間的に追跡し解析できる 分光学手法[8,9,17]、飛行時間型質量分析システム[12]やレーザー反応で生成する反応活性種の分析に必要な高 74 光反応制御・光機能材料 感度分光法[1-7]などを活用し、反応機構の解明を進めることができた。今後、開発したプロセシング手法の有用 性を実証する方向へ展開すると共に、プロセスの最適化条件を検討する。 (6)引用文献 [1] M.Moriyama, T.Ohana, A.Yabe: Direct observation of benzdiyne : photolysis of 1,4-bis(trifuruoromethyl)2,3,5, 6-benzene-tetracarboxylic dianhydride in an argon matrix, J.Am.Chem.Soc., 119(42), 10229-10230 (1997). [2] T.Sato, S.Arulmozhiraja, H.Niino, S. Sasaki, T. Matsuura, A.Yabe: Benzdiynes (1,2,4,5- tetradehydrobenzenes): direct observation in wavelength-selective photolyses of benzenetetracarboxylic dianhydrides in low temperature nitrogen matrixes, J. Am. Chem. Soc., 124(16), 4512-4521(2002). [3] S.Arulmozhiraja, T.Sato, A.Yabe: Benzdiynes Revisited: Ab initio and Density Functional Theory, J. Comput.Chem.22(9), 923-930 (2001). [4] T.Sato, H.Niino, A.Yabe: Reactive intermediates formed by the consecutive photolyses of naphthalenetetracarboxylic dianhydrides: Direct observation of reactive intermediates generated by laser-induced reaction in low temperature argon matrices, J. Photochem. Photobiol. A: Chem., 145(1-2), 3-10 (2001). [5] T.Sato, H.Niino, A.Yabe: Consecutive photolyses of naphthalenedicarboxylic anhydrides in low temperature matrixes: experimental and computational studies on naphthynes and benzocyclopentadienylideneketenes, J. Phys. Chem. A, 105(33), 7790-7798 (2001). [6] T.Sato,, H.Niino, A.Yabe: Generation of C10H4 species in a low-temperature argon matrix: consecutive photolysis of 1,2;5,6-naphthalenetetracarboxylic dianhydride, Chem.Commun., (13), 1205-1206 (2000). [7] T.Sato,, S.Arulmozhiraja, H.Niino, A.Yabe, M.Kaise: Preparation of 1,5-dinitrenonaphthalene in cryogenic matrices, Chem.Commun. (8), 749-750 (2001). [8] H.Niino, T.Sato, A.Yabe: Laser ablation of phenylazide in an argon matrix: direct observation and chemical reactivity of ablated fragments, Appl. Phys., A69(6), 605-610 (1999). [9] H.Niino, T.Sato, A.Yabe: Direct observation of fragments in laser ablation of phenylazide at a cryogenic temperature, Appl. Phys., A69(Suppl.), S145-S148 (1999). [10] N.Huber, J.Heitz, D.Baeuerle, R.Schwodiauer, S.Bauer, H.Niino, A.Yabe: Chemical composition and charge stability of highly crystalline pulsed-laser-deposited polytetrafluoroethylene films on metal substrates, Appl. Phys., A72(5), 581-585 (2001). [11] V.Drinek, H.Niino, J.Pola, A.Yabe: Surface modification of a polymer film by cryogenic laser ablation of organosilicon compounds, Appl. Phys., A73(4), 527-530 (2001). [12] C.Grivas, H.Niino, A.Yabe: A laser ionization time-of-flight mass spectrometric study of UV laser ablation of polyarylsulfone films, Jpn. J. Appl. Phys., 39(6A), 3614-3622 (2000). [13] J.Wang, H.Niino, A.Yabe: Micromachining of quartz crystal with excimer lasers by laser-induced backside wet etching, Appl. Phys., A69(Suppl.), S271-S273 (1999). [14] J.Wang, H.Niino, A.Yabe: Micromachining of transparent materials with super-heated liquid generated by multiphotonic absorption of organic molecule, Appl. Surf. Sci., 154, 571-576 (2000). [15] Y.Yasui, H.Niino, Y.Kawaguchi, A.Yabe: Microetching of fused silica by laser ablation of organic solution with XeCl excimer laser, Appl. Surf. Sci., 186(1-4), 552-555 (2002). [16] X.Ding, Y.Yasui, Y.Kawaguchi, H.Niino, A.Yabe; Laser induced backside wet etching of fused silica with an aqueous solution containing organic molecules, Appl. Phys. A, in press. [17] X.Ding, Y.Kawaguchi, H.Niino, A.Yabe: Laser-induced high quality etching of fused silica using a novel aqueous 75 光反応制御・光機能材料 medium, Appl. Phys. A, in press. (7)成果の発表 1)原著論文による発表 ア)国内誌(国内英文誌を含む) 1. 矢部明: 「第 3 回光化学協会講演会「光化学と材料研究の接点」報告」 、光化学、31、45-46、(2000) 2. 守山雅也, 佐藤正健, 矢部明, 山本和典, 小林郁, 永瀬茂, 若原孝次, 赤阪健:” Vibrational Spectroscopy of Endohedral Dimetallofullerene,La2@C80” 、Chem. Lett.、2000、 、524-525、 (2000) 3. C. GRIVAS, 新納弘之, 矢部明:”A Laser Ionization Time-of-Flight Mass Spectrometric Study of UV Laser Ablation of Polyarylsulfone Films” 、 Jpn. J. Appl. Phys.、Part 1、39、 、3614-3622、(2000) 4. 矢部明, 新納弘之, 王俊: 「有機物溶液のレーザアブレーションによる石英ガラスのエッチング」 、レーザ熱加工研究 会誌、7、15-18、 (2000) 5. 川口喜三: 「透明光学材料の紫外レーザー照射損傷」 、レーザー学会第 282 回研究会報告、2000、 36-40、(2000) 6. 土屋哲男, 渡邊昭雄, 今井庸二, 新納弘之, 山口巌, 真部高明, 熊谷俊弥,水田進:” Preparation of PbTiO3 Thin Films using a coating photolysis process with ArF ex cimer laser” 、Jpn. J. Appl. Phys.、Part 2、39、 L866-L868、(2000) 7. 川口喜三: 「石英ガラスの KrF レーザー照射の初期過程」 、信学技報、LQE2001-18、 11-16 (2001) イ)国外誌 1. 王俊, 新納弘之, 矢部明:”Micromachining of transparent materials with super-heated liquid generated by multiphotonic absorption of organic molecule ” 、 Appl. Surf. Sci.、 154-155、571-576、(2000) 2. 矢部明, 新納弘之, 王俊:”Micromachining of quartz crystal with excimer lasers by laser-induced backside wet etching” Appl. Phys. A、69、271-273、(2000) 3. C. Bandis, M. L. Dawes, 川口喜三, S. C. Langford、J. T. Dickinson :”Investigations of laser desorption from modified surfaces of ion single crystals” 、Proc. of SPIE、3933 、2-13、 (2000) 4. J. T. Dickinson, 川口喜三, M. L. Dawes, S. C. Langford :”Onset of laser plume formation at 248 nm on cleaved single crystal NaCl: Evidence for highly localized emissions” 、 Proc. of SPIE 、3935 、38-46 (2000) 5. J.- F. Silvain, 新納弘之, 矢部明:”Nucleation and growth of surface microstructures on Nd+:YAG laser ablated elastomer/carbon composite” 、Composites, Part A、31、469-478 (2000) 6. 王俊, 新納弘之, 矢部明:”Micromachining of Transparent Materials by Laser Ablation of Organic Solution” 、 SPIE Proceedings、4088、64-69 (2000) 7. 新納弘之, J. Ihlemann, 小野茂之, 矢部明:”Surface Microstructure Formation by ns-, ps-, and fs-Laser Ablation of an Elastomer Composite” 、 J. Photopolym. Sci. Technol、 13、167-173 (2000) 8. 新納弘之, 佐藤正健, 矢部明:”Laser Ablation of Solid Films at a Cryogenic Temperature” 、SPIE Proceedings、 3933、174-181 (2000) 9. 王俊, 新納弘之, 矢部明:”Micromachining by Laser Ablation of Liquid: Super-Heated Liquid and Phase Explosion ” 、SPIE Proceedings、3933、347∼354 (2000) 10. 新納弘之, J. Ihlemann, 小野茂之, 矢部明:”Surface Microstructure Formation by ps- and fs-Laser Ablation of an Elastomer Composite” 、Macromol. Symp.、160、159-166 (2000) 11. 佐藤正健, 新納弘之, 矢部明:”Generation of C10H4 species in a low-temperature argon matrix:consecutive photolysis of 1,2;5,6-naphthalenetetracarboxylic dianhydride.” 、Chem. Commun.、2000、1205-1206 (2000) 76 光反応制御・光機能材料 12. 川口喜三、M. L. Dawes、S. C. Langford、J. T. Dickinson :” Interaction of wide bandgap single crystals w ith 248nm excimer laser irradiation. VI. The influence of thermal pretreatment on laser desorption of pos itive ions from a water-containing ionic crystal: CaHPO4×2H2O” 、Journal of Applied Physics、 88、 647656 (2000) 13. 實野孝之, 三方博成, 徳村啓雨, 葛生伸, 北村直之, 川口喜三:”Laser ablation process of quartz material using F2 laser” 、 Proc. of SPIE、 4088、355-358 (2000.) 14. 新納弘之, J. Krueger, W. Kautek:”Biomaterial immobilization on polyurethane films by XeCl excimer laser processing” 、 Appl. Phys., A:Mater. Sci. Process、72、53-57 (2001) 15. 川口喜三:”Luminescence spectra at bending fracture of single crystal MgO” 、 Solid State Commun.、 117、 17-20 (2001) 16. 川口喜三、M. L. Dawes、S. C. Langford、J. T. Dickinson:”Interaction of wide bandgap single crystals with 248 nm excimer laser irradiation. VII. Localized plasma formation on NaCl single crystal surfaces” 、 Journal of Applied Physics、 89、2370-2378 (2001) 17. 佐藤正健, 新納弘之, 矢部明:”Preparation of 1,5-dinitrenonaphthalene in cryogenic matrices” 、Chem. Commun.、 2001、749-750 (2001) 18. N. Huber, J. Heitz, , D. Baeuerle, R. Schwoediauer, S. Bauer, 新納弘之, 矢部明:”Chemical composition an d charge stability of highly crystalline pulsed-laser-deposited polytetrafluoroethylene films on metal s ubstrates” 、Appl. Phys., A:Mater. Sci. Process、72、 、581-585 (2001) 19. T. Sato, S. Arulmozhiraja, H. Niino, A. Yabe, M. Kaise:”Preparation of 1,5-dinitrenonaphthalene in cryogenic matrices” 、Chem.Commun.、2001、749-750 (2001) 20. T. Sato, H. Niino, A. Yabe :”Consecutive photolyses of naphthalenedicarboxylic anhydrides in low temperature matrixes:Experimental and computational studies on naphthynes and benzocyclopentadienylidene- ketenes” 、 J. Phys. Chem. A、105、7790-7798 (2001) 21. T. Sato, H. Niino, A. Yabe :”Reactive intermediates formed by the consecutive photolyses of naphthalene tetracarboxylic dianhydrides :Direct observation of reactive intermediates generated by laser-induced r eaction in low temperature argon matrices” 、 J. Photochem. Photobiol. A: Chem.、145、3-10 (2001) 22. A. Narazaki, K. Tanaka, K. Hirao:”Surface structure and second-order nonlinear optical properties of thermally poled WO3- TeO2 glasses doped with Na+” 、J. Opt. Soc. Amer. B、19、54-62 (2002) 23. S. Arulmozhiraja, T. Sato, A. Yabe:”Benzdiynes revisited : Ab initio and density functional theory” 、 J. Comput. Chem.、22、923-930 (2001) 24. H. Niino, A. Yabe:”Laser ablation of transparent materials by UV fs-laser irradiation” 、J. Photopolym. Sci. Tech.、14、197-202 (2001) 25. V. Drinek, H. Niino, J. Pola, A. Yabe:”Surface modification of a polymer film by cryogenic laser ablation of organosilicon compouns” 、Appl. Phys. A、73、527-530 (2001) 2)原著論文以外による発表(レビュー等) ア)国内誌(国内英文誌を含む) 1. 新納弘之: 「低温場におけるレーザーアブレーション」 、光化学、32、20-22 (2001) 2. 矢部 明: 「エキシマレーザでの溶液アブレーション援用による石英ガラスの微細加工」 、レーザ協会誌、26、21-27 (2001) 3. 新納弘之: 「低温場におけるレーザーアブレーション」 、光化学、32、20-22 (2001) 4. 新納弘之: 「真空紫外フッ素レーザーを用いたフッ素樹脂の表面改質」 、光アライアンス、 12、6-8 (2001) 77 光反応制御・光機能材料 5. 川口喜三, 丁 西明, 安井良水, 新納弘之, 矢部明: 「背面照射での溶液レーザーアブレーションによる石英ガラス の微細加工」 、レーザ加工学会論文集、54、1-8 (2001) イ)国外誌 1. H. Niino, T. Sato, A. Yabe:”Laser ablation of solid-nitrogen films at a cryogenic temperature” 、Proc. of SIPE、4274、232-239 (2001) 2. Y. Kawaguchi, S. C. Langford, J. T. Dickinson:”Plume formation and optical breakdown on KrF excimer laser irradiated silica glass” 、Proc of SPIE、4274、258-265 (2001) 3)口頭発表 ア)招待講演 1. 矢部明: 「レーザー化学プロセッシング ・・・高分子の表面改質から石英の微細加工まで・・」 、 ST スクエア第 142 回「光化学反応はどこまで制御できるか」(2000.4) 2. 矢部明: 「有機溶液レーザーアブレーションによる透明材料の微細加工」 、第 131 回フォトポリマー懇話会、第 116 回 有機エレ材研合同講演会 (2000.12) 3. 矢部明: 「透明材料のレーザーエッチングにおける最近の進歩」 、第 47 回東京工業大学総合研究館講演会 (2001.3) 4. 矢部明: 「光化学反応を起点とするレーザー化学プロセシング」 、2001 年春季第 48 回応用物理学会講演会 (2001.3) 5. 矢部明:”Etching of fused silica by laser ablation of organic solutions” 、チェコ科学アカデミー、化学プ ロセス基礎研究所セミナー (2000.4) 6. 矢部明:”Our recent trials to directly trap arynes(Benzdiynes and naphthdiynes) by low-temperature photolysis using a matrix isolation method” 、 マックスプランク(光化学)研究所セミナー (2000.4) 7. 矢部明: ”Micromachining of transparent optical materials by laser ablation of organic solution” 、ヨハ ネス・ケプラー大学(リンツ)応用物理学研究所セミナー (2000.4) 8. 矢部明, 新納弘之, 王俊:”Micromaching of transparent materials by laser ablation of organic solution” 、 The First International Symposium on Laser Precision Microfabrication (第 1 回レーザ精密微細加工国際シン ポジウム) (2000.6) 9. 新納弘之, 佐藤正健, 矢部明:”Laser Ablation of Cryogenically Condensed Films”、 Conference: Laser Interactions with Materials (ゴードン会議:レーザ Gordon Research ーと材料の相互作用) (2000.6) 10. 矢部明, 新納弘之, 小野茂之, 佐藤祐樹:”Microstructure formation of a composite of carbon black and elastomer by laser ablation” 、2000 環太平洋国際化学会議(PACIFICHEM2000) (2000.12) 11. 川口喜三: 「石英ガラスのKrFレーザー損傷の初期過程」 、レーザ・量子エレクトロニクス研究会、レーザー学会、 東京都、機械振興会館 (2001.6) 12. 矢部明: 「エキシマレーザ−による高分子材料の物理・化学プロセシング」 、日本化学会第80秋季年会、日本化学会、 千葉市(千葉大学) (2001.9) 13. 新納弘之, 佐藤正健, 奈良崎愛子, 川口喜三, 矢部明: 「低温場アブレーションを活用した表面改質技術への応用 」 、 シンポジウム、 「レーザーアブレーションの物理と応用」 、 理化学研究所、分光学会、埼玉県和光市、理化学研究所 (2001.11) 14. 川口喜三, 丁西明, 安井良水, 新納弘之, 矢部明: 「背面照射での溶液レーザーアブレーションによる石英ガラスの 微細加工」 、第54回レーザ加工学会、レーザ加工学会和光市 (2001.11) 15. 矢部明: 「反応活性種を利用するレーザープロセシング」 、128回九州大学有機化学基礎研究センター講演会、九州 大学有機化学基礎研究センター、福岡県福岡市 (2002.2) 16. 矢部明: 「フォトレジストからレーザープロセシング」 、筑波大学TARAセンター研究交流会「光が拓く新物質創製」 、 78 光反応制御・光機能材料 筑波大学先端学際領域研究センター(TARA)つくば市 (2002.2) 17. A. Yabe:”Materials processing with excimer lasers: surface modification of polymers and micromachining of fused silica”、Laser Electrochemistry Seminar at Pual Scherrer Institute, Pual Scherrer Institute、 Switzerland (2001.6) 18. T. Tsuchiya, A. Watanabe, H. Niino, A. Yabe, T. Manabe, T. Kumagai, S. Mizuta:”Low temperature growth of metal oxide thin films by metalorganic laser photolysis” 、E-MRS 2001 Spring Meeting、E-MRS、Strasbourg, France. (2001.6) 19. H. Niino, T. Sato, A. Narazaki, Y. Kawaguchi, A. Yabe:”Laser ablation of nitrogen-solid films by UV ps-laser irradiation: surface modification of materials by fragments in laser-ablation plume” 、SPIE Photonics West "Laser Applications in Microelectronic and Optoelectronic Manufacturing"、SPIE、San Jose (USA) (2002.1) 20. A. Yabe:”Laser chemical processing of fused silica and Teflon with excimer lasersKolloquim” 、The Institute for Surface Modification (IOM)、Leipzig University、The Institute for Surface Modification (IOM), Leipzig, Germany (2002.3) 21. A. Yabe:”Laser material processing based on photochemistry”, Kolloquim, Laser-Laboratorium Goettingen (LLG), Goettinge、Germany (2002.3) イ)応募・主催講演等 22. 新納弘之, J. Ihlemann, 小野茂之, 矢部明 : 「ナノ秒、ピコ秒、フェムト秒レーザーを用いたゴム系複合材料のレ ーザーアブレー ション」 、 第 17 回フォトポリマーコンファレンス (2000.6) 23. 王俊, 新納弘之, 佐藤正健, 矢部明: 「有機溶液を用いた透明材料のレーザーアブレーション」 、電子情報通信学会光 エレクトロニクス研究会 (2000.7) 24. 新納弘之, 佐藤正健, 矢部明: 「紫外ピコ秒パルスレーザーを用いた極低温窒素固体膜の アブレーション(2):窒素 原子からの発光」 、第 61 回応用物理学会学術講演会 (2000.9) 25. 佐藤正健, S. Arulmozhiraja, 新納弘之, 矢部明: 「低温マトリックス中での 1,5-ジナイトレノナフタレンの生成」 、 2000 年光化学討論会 (2000.9) 26. 新納弘之, 佐藤正健, 矢部明: 「紫外ピコ秒レーザーを用いた窒素固体膜のアブレーション」 、2000 年光化学討論会 (2000.9) 27. 矢部明: 「レーザー化学プロセシング」 、 平成 12 年度 NEDO 先端技術講座 (2000.10) 28. 矢部明: 「レーザー光反応制御による光学材料の微細加工」 、シンポジウム 2000「明日をめざす科学技術」 (2000.10) 29. 新納弘之, 佐藤正健, 矢部明: 「真空紫外レーザーを用いたフッ素樹脂の表面改質」 、 第 19 回 固体・表面光化学討 論会 (2000.11) 30. 新納弘之, 佐藤正健, 奈良崎愛子, 矢部明: 「真空紫外フッ素レーザーを用いたフッ素樹脂の表面改質」 、レーザー学 会学術講演会第 21 回年次大会 (2001.1) 31. 新納弘之, 佐藤正健, 奈良崎愛子, 矢部明 : 「窒素固体膜のレーザーアブレーション」 、レーザー学会第 285 回研 究会、 「レーザーアブレーションその他」 (2001.2) 32. 佐藤正健, 新納弘之, 貝瀬正紘, 矢部明: 「低温マトリックス反応場におけるジナイトレノナフタレンの生成」 、日本 化学会第 79 春季年会 (2001.3) 33. 奈良崎愛子, 佐藤正健, 新納弘之, 矢部明, 佐々木毅, 越崎直人:”Pulsed laser deposition of CdS-ITO nanocomposite films on electric-field-applied substrate”、2001 年春季第 48 回応用物理学関係連合講演会 (2001.3) 34. 佐藤正健, 新納弘之, 矢部明:”Generation of C10H4 species in a low temperature argon matrix” 、第 18 回 IUPAC 光化学国際会議 (2000.7) 79 光反応制御・光機能材料 35. 奈良崎愛子, 平野俊明, 笹井淳, 田中勝久, 平尾一之, 佐々木毅, 越崎直人:”DC-electric-field effect on CdSe nanocrystal doped in indium tin oxide film and its second-order nonlinearity” 、第 5 回ナノ構造材料国際会 議 (NANO2000) (2000.8) 36. 奈良崎愛子, 平野俊明, 笹井淳, 田中勝久, 平尾一之, 佐々木毅, 越崎直人:”DC-electric-field effect on CdSe nanocrystal doped in indium tin oxide film and its second-order nonlinearity” 、第 5 回ナノ構造材料国際会 議 (NANO2000) (2000.8) 37. 矢部明, 新納弘之, 王俊:”Micromachining of optically transparent materials by laser ablation of a solution contaning pyrene ” 、IX International Conference:Laser Assisted Microtechnology(LAM-2000) (2000.8) 38. J-F. SILVAIN, 新納弘之, 矢部明:”Microstructural Characterisation of Elastomer/Carbon Composite Ablated with KrF Excimer Laser” 、Second International Conference on Inorganic Materials (2000.9) 39. 新納弘之, 佐藤正健, 矢部明:”ps-Laser Photolysis of Nitrogen Solid Films at a Cryogenic Temperature ” 、 CLEO2000Europa(欧州レーザー及び光エレクトロニクス国際会議) (2000.9) 40. 矢部明:”Etching of Optically Transparent Materials by Laser Ablation of A Solution Containing Pyrene Molecules ” 、The 5th Japan-Sino Binational Symposium on Photochemistry (2000.9) 41. 佐藤正健, 新納弘之, 矢部明: 「低温マトリックス法による脱水素 PAH 類の赤外線分光」 、2000 年星間物質ワークショ ップ (2000.11) 42. J.Heitzl, 新納弘之, 矢部明:”Chemical Surface Modification on Polytetrafluoroethylene (PTFE) Films by Vacuum UV Excimer Lamp Irradiation in Reactive Gas Atmosphere” 、RadTech Japan 2000 シンポジウム (2000.11) 43. 佐藤正健, 新納弘之, 矢部明:”Generation of C10H4 species in a low temperature argon matrix” 、2000 環太平 洋国際化学会議(PACIFICHEM2000) (2000.12) 44. 新納弘之, 佐藤正健, 矢部明:”Laser Ablation of Solid-Nitrogen Films at a Cryogenic Temperature” 、Photonics West 2001:Laser Applications in Microelectronic and Optoelectronic Manufactureing (マイクロエレクトロ ニクス・光エレクトロニクスへのレーザー応用) (2001.1) 45. 奈良崎愛子, 佐々木毅, 越崎直人, 平野俊明, 田中勝久,平尾一之:”The effect of DC-electric-field on II-VI semiconductor nanocrystal embedded in indium tin oxide film” 、第 130 回鉱物金属材料学会年次大会(130th TMS Annual Meeting) (2001.2) 46. 新納弘之, 佐藤正健, 奈良崎愛子, 矢部明 :”LASER ABLATION OF SOLID-NITTROGEN FILM ” 、 第4 回物質研 光 反応制御・光機能材料 国際シンポジウム(PCPM2001) (2001.3) 47. 佐藤正健, S. Arulmozhiraja, 新納弘之, 矢部明:”Generation of reactive intermediates by laser-induced reactions in low temperature matrices” 、第 4 回物質研 光反応制御・光機能材料 国際シンポジウム(PCPM2001) (2001.3) 48. 新納弘之, 矢部明: 「紫外フェムト秒レーザーを用いた透明材料のレーザーアブレ―ション」 、フォトポリマーコンフ ァレンス、フォトポリマー懇話会、 千葉市(千葉大学) (2001.6) 49. 新納弘之, 佐藤正腱, 奈良崎愛子, 川口喜三, 矢部明: 「真空紫外フッ素レーザーを用いたフッ素樹脂の表面改質」 、 平成13年光化学討論会、光化学協会、日本化学会、金沢市 (2001.9) 50. 川口喜三, 奈良崎愛子, 佐藤正健, 新納弘之, 矢部明: 「ZnO のプルーム発光のダイナミックス」 、第 62 回応用物理学 会学術講演会、応用物理学会、豊田市(2001.9) 51. 奈良崎愛子, 佐藤正健, 川口喜三, 新納弘之, 矢部明, 佐々木毅, 越崎直人: 「基板電場印加パルスレーザー堆積法に よる ITO 薄膜の作製とその電気抵抗特性」 、第 62 回応用物理学会学術講演会、応用物理学会、豊田市 (2001.9) 52. 矢部明: 「低温凝固体のレーザーアブレーションによる新物質創製」 、高密度パルス光シンポジウム「高密度パルス光 の発生と先端的物質制御」 、東京 (2001.11) 53. 丁西明, 安井良水, 川口喜三, 新納弘之, 矢部明: 「溶液アブレーションによる石英ガラスのエッチング:新たな溶 80 光反応制御・光機能材料 液での試み」 、2002 年レーザー学会年会、レーザー学会大阪市 (2002.1) 54. 佐藤正腱, 新納弘之, 川口喜三, 奈良崎愛子, 矢部明: 「低温マトリックス場での新規ベンズジイン誘導体の直接観 測」 、日本化学会第 81 春季年会、日本化学会、 東京 (2002.3) 55. 新納弘之,丁西明,安井良水,奈良崎愛子,佐藤正健,川口喜三,矢部明: 「トルエン溶液のアブレーションによる 石英基板の微細加工:溶液アブレーションの時間分解画像観察」 、2002 年春季第49回応用物理学関係連合講演会、 応用物理学会、神奈川県平塚市 (2002.3) 56. 奈良崎愛子, 佐藤正健, 川口喜三, 新納弘之, 矢部明: 「FeSi2 プルームの発光分光および飛行時間質量分析」 、2002 年春季第49回応用物理学関係連合講演会、応用物理学会、神奈川県平塚市 (2002.3) 57. 川口喜三, 奈良崎愛子, 佐藤正健, 新納弘之, 矢部明: 「CaF2 単結晶の ArF エキシマレーザー照射プルーム生成の初 期過程」 、2002 年春季第49回応用物理学関係連合講演会応用物理学会、神奈川県平塚市 (2002.3) 58. Y.Yasui, H.Niino, Y.Kawaguchi, A.Yabe:”Etching of fused silica by laser ablation of organic solution with XeCl excimer laser” 、E-MRS 2001 Spring Meeting、E-MRS、Strasbourg, France (2001.6) 59. T.Sato, H.Niino, A.Yabe:”Arynes formed by consecutive photolysis of aromatic anhydrides in low temperature matrices ” 、Euroconference Matrix 2001、Szklarska Preba/Poland (2001.7) 60. A.Narazaki, T.Sato, Y.Kawaguchi, H.Niino, A.Yabe, T.Sasaki, N.Koshizaki:”Pulsed laser deposition of CdS-ITO nanocomposite films on electric-filed-applied substrates” 、The 4th Pacific Rim Conference on Lasers and Electro-Optics、IEEE、Chiba (2001.7) 61. H.Niino, T.Sato, A.Narazaki, A.Yabe:”Laser ablation of solid-nitrogen film by UV ps-laser irradiation” 、 The 4th Pacific Rim Conference on Lasers and Electro-Optics、IEEE、Chiba (2001.7) 62. T.Tsuchiya, A.Watanabe, H.Niino, A.Yabe, I.Yamaguchi, T.Manabe, T.Kumagai, S.Mizuta:”Preparation of In2O3 and ITO films using coating photolysis process with ArF excimer laser” 、The 4th Pacific Rim Conference on Lasers and Electro-Optics、IEEE、Chiba (2001.7) 63. T.Sato, H.Niino, A.Yabe:”Direct observation of benzdiynes in low temperature matrices” 、 International Symposium on Reactive Intermediates and Unusual Molecules、 Nara (2001.9) 64. H.Niino , T.Sato, A.Narazaki, Y.Kawaguchi, A.Yabe:”Laser ablation of solid-nitrogen film by UV ps-laser irradiation” 、The 6th International Conference on Laser Ablation (COLA'01) Tsukuba、(2001.10) 65. Y.Kawaguchi , A.Narazaki, T.Sato, H.Niino, A.Yabe:” Plume dynamics in ZnO under ArF laser radiation” 、 The 6th International Conference on Laser Ablation (COLA'01)、COLA、Tsukuba (2001.10) 66. A.Narazaki, T.Sato, Y.Kawaguchi, H.Niino, A.Yabe, T.Sasaki, N.Koshizaki:”Pulsed laser deposition of semiconductor-ITO composite films on electric-filed-applied substrates” 、The 6th International Conference on Laser Ablation (COLA'01)、COLA、Tsukuba (2001.10) 67. Y. Kawaguchi, A. Narazaki, T. Sato, H. Niino, A. Yabe, S.C.Langford, J.T.Dickinson:”The onset of optical breakdown in KrF-laser-irradiated silica glass” 、The 6th International Conference on Laser Ablation (COLA'01)、 COLA、Tsukuba (2001.10) 68. J.Krueger, H.Niino, A.Yabe:”Investigation of KrF excimer laser ablation of polymers using a microphone” 、 The 6th International Conference on Laser Ablation (COLA'01)、COLA、Tsukuba (2001.10) 69. T.Sato, H.Niino, A.Narazaki, Y.Kawaguchi, A.Yabe:”Direct observation of benzdiynes in low temperature matrices” 、第9回北九州物理有機化学国際シンポジウム、九州大学、Fukuoka (2001.11) 70. Y.Kawaguchi, A.Narazaki, T.Sato, H.Niino, A.Yabe:”Onset of laser ablation in CaF2 crystal under excimer laser” 、Photonics West 2002- Laser Applications in Microelectronics and Optoelectronic 、Manufacturing VII、 SPIE、 San Jose (USA) (2002.2) 71. H. Niino, X. Ding, Y. Yasui. A. Narazaki, T. Sato, Y. Kawaguchi, A. Yabe:”Surface micro-fabrication of 81 光反応制御・光機能材料 silica glass by LIBWE method ”、 The 5th AIST International Symposium on Photoreaction Control and Photofunctional Materials (PCPM2002)、AIST、Tsukuba (2002.3) 72. Y.Kawaguchi, A.Narazaki, T.Sato, H.Niino, A.Yabe:”Time evolution of ZnO plume in He atmosphere” 、The 5th AIST International Symposium on Photoreaction Control and Photofunctional Materials (PCPM2002)、 AIST、 Tsukuba (2002.3) 73. A.Narazaki, T.Sato, Y.Kawaguchi, H.Niino, A.Yabe:”Laser ablation of iron disilicide studied by laser ionization time-of-flight mass spectrometry” 、The 5th AIST International Symposium on Photoreaction Control and Photofunctional Materials (PCPM2002)、AIST、Tsukuba (2002.3) 74. T.Sato, S.Arulmozhiraja, A.Narazaki, Y.Kawaguchi, H.Niino, A.Yabe :”Generation of benzdiynes in low temperature matrices by laser induced reaction” 、The 5th AIST International Symposium on Photoreaction Control and Photofunctional Materials (PCPM2002)、AIST、 Tsukuba (2002.3) 75. X.Ding, Y.Kawaguchi, H.Niino, A.Yabe:”Fabrication of micropatterns on fused silica by laser-induced backside wet etching (LIBWE)” 、The 5th AIST International Symposium on Photoreaction Control and Photofunctional Materials (PCPM2002)、AIST、Tsukuba (2002.3) 4)特許等出願特 1. 1)2001 年 3 月 29 日、 「摩擦材及び摩擦材の表面加工方法」 、矢部明、新納弘之、田中章浩、梅澤栄記、松村史昌、特 願 2001-94922 2. 2000 年 11 月 7 日、 「真空紫外レーザーを用いたフッ素系高分子成型品の表面改質方法」 、新納弘之、矢部明、佐藤正 健、佐藤愛子、工業技術院長、特願 2000-244601 3. 3∼21)2000 年 7 月 6 日、 「Method for preliminary treatment of material to be subjected to electroless plating」 、 田中和宏、廣野聡、新納弘之、矢部明、国際出願(米国、オーストリア、ベルギー、スイス、キプロス、ドイツ、デ ンマーク、スペイン、フィンランド、フランス、イギリス、ギリシア、アイルランド、イタリア、ルクセンブルグ、 モナコ、オランダ、ポルトガル、スウェーデン、計19カ国) 、PCT/JP00/04491、WO 02/04705 A1 4. 22) 2002 年 3 月 11 日、 「フッ素樹脂の表面処理方法および弾性複合材ならびにその製造方法」 、新納弘之、矢部明、 川崎弘志、中村朋代、五嶋教夫、特願 2002-065036 82 光反応制御・光機能材料 1.3. 光・レーザー反応の研究 1.3.2. レーザー利用ナノ材料プロセスの研究 産業技術総合研究所界面ナノアーキテクトニクス研究センター高密度界面ナノ構造チーム 産業技術総合研究所物質プロセス研究部門無機固体化学グループ 越崎 直人、佐々木 毅、土屋 哲男 (1)要約 紫外光パルスレーザーを使ったレーザープロセシングでは、熱的な効果が抑えられ小さな空間に短時間に高い エネルギー状態を生成することが可能であることから、複合酸化物やナノコンポジットの結晶構造制御に有用な 手法であると考えられる。そこで、塗布光分解法とオフアクシス・レーザーアブレーション法の二つの手法によ りペロブスカイト型複合酸化物の室温調製法について検討した結果、塗布光分解法では調製条件の制御により結 晶構造やエピタキシー成長の制御が可能であること、オフアクシス・レーザーアブレーション法ではナノオーダ ーの結晶子から構成される結晶性薄膜が生成可能であることが明らかになった。 (2)研究目的 酸化物を中心とした機能応用を目指した材料のためのプロセスでは、結晶構造制御と低温プロセシングが重要 である。例えば、結晶化したペロブスカイト型複合酸化物の形成には通常 500°C 以上の温度を必要とするため、 シリコンのモノリシックな基板と一体化することは困難と考えられてきた。 一方、ナノコンポジット材料に関し ても分散相やマトリックスのどちらかの結晶構造を独立に制御することがしばしば要求される。 レーザープロセシングは、特に紫外光パルスレーザーにおいて熱的な効果が抑えられ小さな空間に短時間に高 いエネルギー状態を閉じこめておくことが可能であることから、複雑な材料系である複合酸化物やナノコンポジ ットの結晶構造制御に非常に有用な手法であると考えられ、このような系について検討を進めてきた。ここでは、 その中で特に COE プロジェクトの中で開発された、塗布光分解法とオフアクシス・レーザーアブレーション法の 二つのアプローチによりペロブスカイト型複合酸化物の調製について取り上げる。前者は、レーザーにより有機 金属酸化物コーティングを分解することで酸化物薄膜を形成する手法である。この手法では明らかにペロブスカ イト構造の金属原子比を維持することができる。一方、後者の手法も超電導酸化物に関する研究からわかるよう にターゲット組成を保つことが知られている。さらに 1Torr 程度の圧力条件下で閉じこめられたプルーム中で成 長した結晶化したナノ微粒子を膜として堆積させることによりプロセス温度の大幅な低減が期待される。ここで は、これらの二つの手法を使って基板加熱なしに複合酸化物の結晶性薄膜調製を試みた結果について報告する。 (3)研究方法 1)塗布光分解によるエピタキシャルペロブスカイト薄膜調製 われわれは金属酸化物薄膜の新しい調製法としての「塗布光分解法」1-3) をこれまでに開発してきた。この手 法 を さ ら に 拡 張 す る こ と に よ り 、 熱 処 理 なしにエキシマーレーザー照射することでエピタキシャル PZT 83 光反応制御・光機能材料 (PbZr0.5Ti0.5O3)薄膜の調製が可能となった。 出発物質としてモル比が Pb:Zr:Ti = 2:1:1 となるように混合した鉛 2-エチルヘキサノネート、ジルコニウム 2-エチルヘキサノネート、チタン 2-エチル-1-ヘキサノネートのトルエン溶液を用いた。これを単結晶 SrTiO3 (001)基板上に 4000 rpm で 24 秒間スピンコートし、溶媒を除去するために 150°C、20 分間大気中で乾燥した後、 ArF エキシマーレーザー(Lambda Physik, Compex 110)を繰り返し周波数 10Hz で 1 分間集光せずに照射した。膜 上のレーザーフルーエンスは 40∼80 mJ/cm2 で変化させた。膜の結晶性とエピタキシーは X 線回折(XRD; MAC Science, MXP3A)の・-2 ・スキャン、ロッキングカーブ及び極点図形解析により調べた。 2)レーザーアブレーション法によるナノ微粒子凝集膜調製 われわれはガス中凝縮法とオフアクシス配置の採用によりサイズ分布の狭い結晶化した酸化物ナノ粒子の室温 調製法を開発してきた 4,5)。この方法を複合酸化物のナノ粒子堆積膜の調製に適用した。 ArF エキシマーレーザー(波長: 193nm, Lambda Physik LPX110i)をアブレーションに用いた。繰り返し周波数 とパルス幅はそれぞれ 10Hz と 17ns であった。パルスエネルギーは 200mJ/pulse で、レーザーはスポットサイズ 1x4 mm2 に集光して 40rpm で回転させたターゲット上に照射した。BaTiO3 ターゲットは市販(フルウチ化学、純 度 99.9%、18mm 径 x 5mm 厚)のペレットを用いた。石英基板はターゲットに対して垂直なオフアクシスの配置に 置かれた。この配置がナノ粒子を得るために重要である。ターゲットに 20,000 パルスのレーザー照射を行い、雰 囲気アルゴンガス圧は 1∼200Pa の範囲で変化させた。相の同定はX線回折(リガク, RAD-C)を用い結晶子サイ ズは Scherrer の式によって計算した。表面形態は電界放射走査型電子顕微鏡(FE-SEM: Hitachi, S-800) 、薄膜 の組成はX線光電子分光装置(XPS: PHI 5600ci)により測定した。 (4)研究成果 1)塗布光分解によるエピタキシャルペロブスカイト薄膜調製 図 1 (a)-(e)は塗布光分解法により STO (100)上に調製した膜の XRD ・-2 ・ スキャンの結果である。40mJ/cm2 のフルーエンスで照射した時は、基板以外からのピークは観測されなかった。一方、50mJ/cm2 以上のフルーエン スで照射したときは PZT の(001)と(002)のピークが STO 基板からの強いピークの肩に観測された。しかし、弱い PZT(110)ピークも図1 (b)-(e)に観測された。これらの結果から試料(b)-(e)は少量の多結晶相は存在するが、非 常によく配向していることがわかった。これらの試料の中で、試料(d)が・-2 ・スキャンで最大強度を示しかつ (001)のロッキングカーブの半値幅が最小だった。XRD の極点図形解析では(110)による4つの明らかなスポットが 観測されたことから、膜は非常によく面内配向をしていることが明らかになった。このように塗布熱分解法によ り熱処理することなくエピタキシャルの PZT 薄膜を得ることに成功した。 84 光反応制御・光機能材料 図1 塗布光分解(ArF、10Hz、1分間)法により STO(100)基板上に形成した膜の X 線回折パターン 2)レーザーアブレーション法によるナノ微粒子凝集膜調製 図2はオフアクシス配置でレーザーアブレーションにより 200mJ/pulse で さまざまな Ar 圧力下で得られた BaTiO3 薄膜の XRD パターンである。 図2.オフアクシス配置のレーザーアブレーション法により調製した BaTiO3 薄膜の X 線回折パターンの圧力依存性(レーザー 85 光反応制御・光機能材料 パワー:200mJ) 1Pa で得られた膜はアモルファスであったが、10Pa では単相の BaTiO3 で粒子径が約 7.2nm の凝集膜が得られた。 さらに圧力を 200Pa まで上げると、BaTiO3 のみならず BaCO3 のピークも観測された。この副生成物は試料をチャ ンバーから出したときに空気との反応により生成するものと考えられた。FE-SEM による表面形態の結果、液滴状 生成物のない均一な膜が 100Pa 以下で形成されるが、200Pa ではポーラスな構造をもった凝集体が得られた。XPS 分析から酸素欠損が 10Pa 以下で認められ、50Pa 以上では、構成元素の組成比は一定であり、特に[Ba]/[Ti] 比は ほぼ1であった。これらの結果から、ある圧力範囲でナノ粒子から構成される複合酸化物膜を室温で合成できる ことがわかった。このように、オフアクシス PLD プロセスは電子デバイスに応用できるようなナノ結晶酸化物薄 膜を室温で調製するための有効な手段と考えられる。 (5)考察 以上のように、レーザープロセスを応用することにより熱処理なしで結晶性の複合酸化物薄膜に成功した。こ のような機能性酸化物の物性には酸素のストイキオメトリーが重要な役割を果たすが、現段階ではまだ十分制御 できていない。いずれの手法についてもこの点が今後の課題として残されている。 (6)引用文献 [1] T. Tsuchiya et al: Jpn. J. Appl. Phys., 38 (1999) L823 [2] T. Tsuchiya et al: Jpn. J. Appl. Phys., 38 (1999) L1112 [3] T. Tsuchiya et al: Jpn. J. Appl. Phys., 39 (2000) L866 [4] Q. Li et al: Appl. Phys. A, 69 (1999) 115 [5] N. Koshizaki et al: Scr. Mate (7)成果の発表 1)原著論文による発表 ア)国内誌(国内英文誌を含む) 1. 佐々木毅, 越崎直人: 「レーザーアブレーションによる金属酸化物ナノ微粒子の調製」 、レーザー研究、 28、348-353 (2000) イ)国外誌 1. 望月明, 千秋和久, 清田由紀夫, 山下修蔵, 越崎直人:”Studies on Surface Structures of Poly(ethylene oxide)-Segmented Nylon Films” 、J. Polym. Sci.,A: Polym. Chem.、 38、1045-1056 (2000) 2. 越崎直人, 安本勝哉, 佐々木毅:”Mechanism of Optical Transmittance Change by NOx in CoO/SiO2 Nanocomposit e Films” 、Sens. Actuators, B、 66、 122-124 (2000) 3. 越崎直人, 大山寿恵:”Sensing Characteristics of ZnO-based NOx Sensor” 、 Sens. Actuators, B、 66、 119-121 (2000) 4. Enrico Traversa,Maria Luisa di Vona,Patrizia Nunziante1,Silvia Licoccia,佐々木毅, 越崎直人:”Sol-Gel Preparation and Characterization of Ag-TiO2 Nanocomposite Thin Films” 、 J. Sol-Gel Sci. Technol. 、 19、 733-736 (2000) 5. A. Narazaki, T. Hirano, J. Sasai, K. Tanaka, K. Hirao, T. Sasaki, N. Koshizaki:”DC-electric-field effect 86 光反応制御・光機能材料 on CdSe nanocrystal embedded in indium tin oxide film and its second-order nonlinearity” 、 Scripta Mater.、 44、1219-1223 (2001) 6. N. Koshizaki, A. Narazaki, T. Sasaki:”Size distribution and growth mechanism of Co3O4 nanoparticles fabricated by pulsed laser deposition” 、Scripta Materialia、44、1925-1928 (2001) 7. L. Zbroniec, T. Sasaki, N. Koshizaki:”Ambient gas effects on iron oxide particle aggregated films prepared by laser ablation” 、Scripta Materialia、44、1869-1872 (2001) 8. M. Pal, A. Narazaki, T. Sasaki, N. Koshizaki:”Parameter effect on the crystallization of Nd:yttrium aluminum garnet laser-ablated TiO2 thin film ” 、J. Mater. Res.、16、3157-3161 (2001) 9. T. Sasaki, J-W Yoon, K. M. Beck, N. Koshizaki:”Preparation of Pt/TiO2 nanocomposite thin films by pulsed laser deposition and their photoelectrochemical behaviors” 、J. Photochem. Photobio. A、145、11-16 (2001) 2)原著論文以外による発表(レビュー等) ア)国内誌(国内英文誌を含む) 1. 越崎 直人: 「ナノ複合化技術」 、先端高機能材料」第3編、3.ナノ複合化技術、2001、 154-160、NGT (2001) 3)口頭発表 ア)招待講演 1. 越崎直人, 佐々木毅: 「レーザープアブレーションによる酸化物ナノ微粒子凝集膜の調製」 、つくば地区合同フォーラ ム−クラスター・超微粒子・ナノ構造− (2000.6) 2. 越崎直人: 「レーザーアブレーションによる遷移金属酸化物ナノ微粒子の調製」 、 第 6 回高機能レーザーアブレーシ ョンの産業応用調査専門委員会講演会 (2000.6) 3. 越崎直人:”Preparation of Nanoparticles by Vapor Phase Methods” 、 KIST セミナー (2000.12) 4. 越崎 直人: 「レーザーアブレーションによるナノ構造形成」 、第22回福井筑波交流会、福井県工業技術センター、 つくば (2001.7) 5. 越崎 直人 : 「高密度界面ナノ構造を利用した機能性材料とナノチップへの展開」 、 平成 13 年度NEDO先端技術講 座、新エネルギー開発機構、つくば (2001.9) 6. 越崎 直人: 「レーザープロセスによる酸化物ナノ粒子の調製」 、粉体工学会 2001 年度秋期研究発表会、粉体工学会、 大阪 (2001.11) 7. 越崎 直人 : 「ナノコンポジットの応用と将来」 、三信鉱工セミナー、 (株)三信鉱工、伊那(2001.11) イ)応募・主催講演等 1. 越崎直人: 「レーザーアブレーションによる薄膜形成」 、平成 12 年度第 1 回超微粒子・ナノ材料技術研究フォーラム (2000.7) 2. J. W. Yoon, 佐々木毅, 越崎直人, Enrico Traversa: 「スパッタ法およびゾル−ゲル法による M/TiO2 (M=Ag, Pt) ナ ノコンポジット薄膜作製と光電極特性」 、第 61 回応用物理学会学術講演会 (2000.9) 3. 土屋哲男, 渡邊昭雄, 今井庸二, 新納弘之, 山口巌, 真部高明, 熊谷俊弥, 水田進: 「塗布光分解法による In2O3 およ び ITO 膜の作製」 、第 61 回応用物理学関係連合講演会 (2000.9) 4. 渡邊昭雄, 土屋哲男,今井庸二: 「KrF レーザーCVD 法により作製したチタン酸化物膜の結晶構造」 、第 61 回応用物理 学関係連合講演会 (2000.9) 5. L. Zbroniec, 佐々木毅, 越崎直人:”Ambient Gas Effects on Iron Oxide Particle Aggregated Films Preparedby Laser Ablation” 、 第 61 回応用物理学会学術講演会 (2000.9) 6. 土屋哲男, 渡邊昭雄, 今井庸二, 新納弘之, 矢部明, 山口巌, 真部高明, 熊谷俊弥, 水田進: 「塗布光分解法による 87 光反応制御・光機能材料 In2O3 および ITO 膜の作製」 、レーザー学会学術講演会代 21 回年次大会 (2001.1) 7. 宮本ゆき, 土屋哲男, 渡邊昭雄, 新納弘之, 山口巌, 真部高明, 熊谷俊弥, 土屋敏雄,水田進: 「塗布光分解法による エピタシャル PZT 薄膜の作製」 、日本セラミック協会 2001 年年会 (2001.3) 8. 渡邊昭雄, 土屋哲男, 今井庸二: 「KrFレ−ザーCVD法よるチタンおよび鉛酸化物膜の作製」 、日本化学会第 79 春季年会 (2001.3) 9. 山田智, 田井英男, 松本泰道, 鯉沼陸央, 鎌田海, 越崎直人, 佐々木毅 :”Preparation of LaNi1-xPdxO3 Perovskite Thin Films by Co-Sputtering Method” 、日本化学会第 79 春季年会 (2001.3) 10. 宮本ゆき, 土屋哲男, 渡邊昭雄, 新納弘之, 山口巌, 真部高明, 熊谷俊弥, 土屋敏雄,水田進: 「塗布光分解法による エピタシャル PZT 薄膜の作製」 、2001 年春季第 48 回応用物理学関係連合講演会 (2001.3) 11. L. Zbroniec, 佐々木毅, 越崎直人:”Ambient Gas and Target Density Effects on Iron Oxide Aggregated Films Prepared by Laser Ablation” 、2001 年春季第 48 回応用物理学関係連合講演会 (2001.3) 12. J-W. Yoon, 佐々木毅, 越崎直人: 「同時スパッタ法により作製した TiO2 基薄膜の光電極特性に及ぼすナノサイズ金 属分散効果」 、2001 年春季第 48 回応用物理学関係連合講演会 (2001.3) 13. 佐々木毅, K. M. Beck, 越崎直人:”Preparation of Pt/TiO2 Nanocomposite Films Using 2-Beam Pulsed Laser Deposition” 、2001 年春季第 48 回応用物理学関係連合講演会 (2001.3) 14. 土屋哲男, 渡邊昭雄, 今井庸二, 新納弘之, 矢部明, 山口巌, 真部高明, 熊谷俊弥, 水田進: 「塗布光分解法による In2O3 および ITO 膜の作製」 、2001 年春季第 48 回応用物理学関係連合講演会 (2001.3) 15. 土屋哲男, 渡邊昭雄, 今井庸二, 新納弘之, 山口巌, 真部高明, 熊谷俊弥, 水田進:”Preparation od metal oxides thin films using coating photolysis process with ArF excimer laser” 、The first International Symposium on Laser Precision Microfabrication (2000.6) 16. L. Zbroniec, 佐々木毅, 越崎直人:”Characterization of Iron Oxide Particle Aggregated Films Prepared by Laser Ablation” 、 Fifth International Conference on Nanostructured Materials (2000.8) 17. J. W. Yoon, 佐々木毅, 越崎直人, E. Traversa:”Preparation and Characterization of M/TiO2 (M=Ag, Au, Pt) Nanocomposite Thin Films” 、Fifth International Conference on Nanostructured Materials (2000.8) 18. 越崎直人, 佐々木毅:”Size Distribution and Growth Mechanism of Co3O4 Nanoparticles Fabricated by Pulsed Laser Deposition” 、 Fifth International Conference on Nanostructured Materials (2000.8) 19. M. Pal, 佐々木毅, 越崎直人:”Preparation and Characterization of Pd/TiO2 Nanocomposite by Magnetron Sputtering” 、Fifth International Conference on Nanostructured Materials (2000.8) 20. U. Pal, A. B-Hernandez, 越崎直人, 佐々木毅, 寺内信哉:”Synthesis of GaAs Nanoparticles Embedded in SiO2 Matrix by Radio Frequency Co-sputtering Technique ”、Fifth International Conference on Nanostructured Materials (2000.8) 21. U. Pal1, E. A. Almanza1, O. V. Cuchillo, 越崎直人, 佐々木毅, 寺内信哉:”Preparation of Au/ZnO Nanocomposites by Radio Frequency Co-sputtering” 、V Congreso de la Associacion Mexicana de Microscopia(第 5 回メキシコ 顕微鏡学会) (2000.8) 22. E. A. Almanza1, U. Pal, 越崎直人, 佐々木毅, 寺内信哉:”Synthesis and Characterization of Au/ZnO Nanocomposites” 、 III Workshop on Optoelectronic Materials and their Applications(第 3 回光電変換材料とそ の応用ワークショップ) (2000.8) 23. 土屋哲男, 渡邊昭雄, 今井庸二, 新納弘之, 矢部明, 山口巌, 真部高明, 熊谷俊弥, 水田 進:”Phase control of TiO2 thin films using coating photolysis process with ArF excimer laser” 、The first International Symposium on Laser Precision Microfabrication (2000.8) 24. E. Aguila1, U. Pal, 越崎直人, 佐々木毅:”Optical Properties of Au/ZnO Nanocomposites” 、XLIII Congreso Nacional de Fisica(メキシコ物理学会) (2000.10) 88 光反応制御・光機能材料 25. 越崎直人:”Functional Nanocomposite Materials” 、 Curso Corto (2000.11) 26. 越崎直人:”Recent Trends of Research Frameworks in Japan” 、Seminario Jesus Reyes Corona (2000.11) 27. J-W. Yoon, 佐々木毅, 越崎直人:”Photoelectrode Properties of Nanocomposite Thin Films Based on Interfacing Nanosized Noble Metal and Titanium Dioxide” 、The 130th Annual Meeting & Exhibition of the Minerals, Metals & Materials Society (2001.2) 28. 越崎直人, L. Zbroniec,佐々木毅:”Parameter Effects on Stoichiometry of Nanoparticle Aggregated Oxide Films” 、 The 130th Annual Meeting & Exhibition of the Minerals, Metals & Materials Society (2001.2) 29. 越崎直人, 奈良崎愛子, 佐々木毅:”Size Distribution and Growth Mechanism of Transition Metal Oxide Nanoparticles Prepared by Laser Deposition”、 第 4 回 物質研 光反応制御・光機能材料国際シンポジウム (PCPM2001) (2001.3) 30. L. Zbroniec, 佐々木毅, 越崎直人:”Laser Fluence and Ambient Gas Effects on Iron Oxide Particle Aggregated Films Prepared by Laser Ablation” 、第 4 回物質研 光反応制御・光機能材料国際シンポジウム(PCPM2001) (2001.3) 31. J-W. Yoon, 佐々木毅, 越崎直人:”Photoelectrochemical Properties of the M/TiO2 (M=Au, Pt) Nanocomposite Thin Films” 、第 4 回物質研 光反応制御・光機能材料国際シンポジウム(PCPM2001) (2001.3) 32. 中山慎也, 高原茂, 越崎直人, 宮川信一, 山岡亜夫:”Buildup Photolithography ”、 第 4 回物質研 光反応制 御・光機能材料国際シンポジウム(PCPM2001) (2001.3) 33. 土屋哲男, 渡邊昭雄, 今井庸二, 新納弘之, 山口巌, 真部高明, 熊谷俊弥, 水田進:”Prepalation of In203 and ITO thin films using coating photolysis process with ArF excimer laser” 、第 4 回物質研 光反応制御・光機能材 料国際シンポジウム(PCPM2001) (2001.3) 34. 宮本ゆき, 土屋哲男, 渡邊昭雄, 新納弘之, 山口巌, 真部高明, 熊谷俊弥, 土屋敏雄,水田進:”Preparation of Epitaxial Pb(Zr,Ti)O3 Thin Films Using Coating Photolysis Process” 、第 4 回物質研 光反応制御・光機能材料 国際シンポジウム(PCPM2001) (2001.3) 35. 佐々木毅, K. M. Beck, 越崎直人:”Preparation of Pt/TiO2 Nanocomposite Films Using 2-Beam Pulsed Laser Deposition” 、第 4 回物質研 光反応制御・光機能材料国際シンポジウム(PCPM2001) (2001.3) 36. R.K. Singh, M. Ollinger, W.S. Kim, V. Craciun, I. Coowanitwong, G. Hochhaus, R.Houriet, H. Hofmann, N. Koshizaki:”Synthesis and Properties of Laser- Synthesized Nanofunctionalized Particulates for Pulmonary Based Controlled Drug Delivery Application” 、 The 6th International Conference on Laser Ablation、COLA、 Tsukuba (2001.10) 37. T. Sasaki, K.M. Beck, N. Koshizaki:”Preparation of Pt/TiO2 Nanocomposite Films by 2-Beam Pulsed Laser Deposition” 、The 6th International Conference on Laser Ablation、COLA、 Tsukuba (2001.10) 38. N. Koshizaki, A. Narazaki, T. Sasaki:”Preparation of Nanocrystalline Titania Films by Pulsed Laser Deposition at Room Temperature” 、The 6th International Conference on Laser Ablation、COLA、Tsukuba (2001.10) 39. J.W. Yoon, T. Sasaki, N. Koshizaki:”Photoelectrochemical Behavior of TiO2-Based Nanocomposite Thin Films Prepared by Pulsed Laser Deposition” 、The 6th International Conference on Laser Ablation 、COLA、Tsukuba (2001.10) 40. L. Zbroniec, T. Sasaki, N. Koshizaki:” Laser Ablation of Iron Oxide in Various Ambient Gases” 、The 6th International Conference on Laser Ablation、COLA、Tsukuba (2001.10) 4)特許等出願等 1. 出願準備中、 「結晶性複合酸化物薄膜の低温製造方法」 、佐々木毅、越崎直人 89
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