肝硬変は - 在宅栄養ケア推進基金

肝硬変は、慢性肝炎が進行することで起こります。
慢性肝炎とは、病気で肝臓の細胞が次々と壊されていくため、再生させようとしても破壊
が速すぎて追いつかない状態です。そうなると、壊された細胞は繊維状の組織となって、
肝臓は小さなコブを形成し硬くなってきます。それが肝硬変です。
肝硬変になると正常な肝細胞の数が減ってしまうため、肝臓の働きが低下してきます。
体内の化学工場
栄養素の倉庫と出荷
・たんぱく質の合成
・糖質をグリコーゲンとして貯蔵
・脂肪酸の合成と分解
・脂溶性ビタミンの貯蔵
・ビタミンの活性化
・合成した栄養素を体内へ送り出す
老廃物の浄化センター
・アンモニアの解毒
(尿酸の合成)
・赤血球の成分などの処理
・不溶性物質の可溶化
肝硬変を引き起こす原因のうち
最も多いのは??
① 飲酒
②
過食
③
ウイルス
肝硬変と聞くと、アルコールが原因とイメージする人が多いのではないでしょうか?
しかし、実際のところアルコールではなくC型肝炎ウイルスが 6 割を占めてします。
アルコール性肝臓障害は約 13%、次いでB型肝炎です。
原因となるもの
○ ウイルス
C 型肝炎ウイルス
B 型肝炎ウイルス
○ アルコール
○ 自己免疫性
自己免疫性肝炎
原発性胆汁性肝硬変
○ 非アルコール性脂肪性肝炎【NASH】
○ その他
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肝硬変の症状と経過
慢性肝炎
初期のうちはほとんど自覚症状はありませんが、
『沈黙の臓器』といわれる肝臓も肝硬変が進行す
るにつれて特徴的な症状があらわれてきます。
◎尿の色が濃い
◎むくみ
◎腹水
◎黄疸
少しでも上記のような症状が当てはまる場合は、
一度受診してみましょう。
だ い しょう き
肝
硬
変
代償期(食欲不振、疲れやすい)※1
非代償期(腹水、黄疸)※2
肝がん
肝不全
食道静脈瘤
肝性脳症など
ひ だ い しょう き
代 償 期とは (※1)
非代 償 期とは (※2)
壊された肝細胞があまり多くないため、
壊された肝細胞が多く、残された肝細胞で
残された肝細胞で何とか必要な働きをし
は体が必要としているし仕事が十分にで
ている時期。破壊された肝細胞の働きを、
きなくなった状態を示す。非代償期になる
ほかの肝細胞が代謝している。
と、いろいろな症状や合併症が起きる。
命にかかわる合併症
慢性肝炎は生命に危険はありませんが、肝硬変になると生命にかかわることがあります。
肝がん、肝不全、消化管出血の 3 つが肝硬変の三大死因です。
○肝がん
肝硬変になると、かなりの頻度で肝がんが発生する。
日本でもっとも多いC型肝炎ウイルスによる肝硬変の場合、1 年に 5~7%の人に肝
がんが発生している。肝がんが発生しても治療法などの進歩によって、QOL(生
活の質)を維持した延命が可能だが、最終的には死因となることが多い。
○肝不全
著しく肝臓の機能が低下し、黄疸や肝性脳症などの症状が強くなり死に至る状態。
肝移植の普及してない現在の医療状況では、肝不全は肝硬変の 1 つの終着点といえ
る。
○消化管出血
肝硬変による消化管出血は、食道静脈瘤、胃潰瘍、出血性胃炎などがあるが、薬物
療法や食道静脈瘤に対する硬化療法でかなりよくコントロールされるようになり、
死因となる頻度は減少してきている。
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検査
肝硬変は慢性肝炎が進行して起こるので、慢性肝炎の階段から次のような検査を行い、
肝硬変になっていないかどうかを調べます。
1) 血液検査
GOT・GPT値:肝細胞の破壊されている程度を調べる検査。
ICG値
:肝臓の解毒機能を調べる。
ビリルビン値
:ビリルビンは黄疸を発症させる物質。これが高い場合には、
肝機能がかなり低下していることを意味する。
アルブミン値
:肝臓のたんぱく質合成の働きを調べる検査。
肝硬変になると 3.5g/dl 以下になる。
2) 画像検査
超音波検査
:体外から超音波を当てその反射を利用して体内を画像化する。
CT検査
:エックス線によって体の横断面を画像化する検査。
3) 肝生検
肝臓に針をさし、組織を取り出して顕微鏡で調べる。(この検査は入院が必要。)
○代償期 ・・・血液検査だけでははっきりしないこともあるので、肝生検で肝硬
変まで進んでいるかどうか診断する。特に自覚症状がないため、
検査が重要。
○非代償期・・・肝臓の働きが十分ではないため、症状や血液検査などにもはっき
り異常が現れる。
○肝硬変 ・・・肝臓癌の早期発見のために、定期的に次の検査を受ける。
腹部超音波検査:画像により癌の有無を調べる。(3 カ月に 1 回)
血液検査:癌になると血液中に増える物質を、腫瘍マーカーといい、
その値は癌の有無を知る際の指標の一つになる。
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治療
肝硬変になった肝臓を、元の状態に戻す方法はありません。そこで、残された肝臓の機能
を助け、肝臓癌への移行を遅らせることと、合併症をコントロールすることが肝硬変の治
療で大切になります。
1)薬物療法
ウルソデスオキシコール(内服):古くから民間薬として使われてきた熊の胆の主成分
胆汁の流れをよくして、胆石をとかしたり、血流をよくし
て肝機能を改善する作用で、GPTの値を低下させる。
小柴胡湯
(内服)
:漢方のひとつ。GOT・GPTの値を下げるのに有効。
グリチルリチン(注射) :漢方薬の甘草に含まれるグルチルリチン酸を主成分と
する。免疫抑制作用や抗炎症作用によってGOT・GPT
の値を下げることで、肝がんの発生を抑制することが期待
できる薬。
アミノ酸
:アルブミン値が低下している場合に用いることがある。
2)生活療法
肉体労働や激しいスポーツは体に負担をかけすぎるのでよくないが、日常生活で体を
動かすことは問題ない。
また、飲酒は肝臓に負担をかけるので原則的に禁酒が必要。
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十分な睡眠をとる
ようにしよう
ぬるめのお湯で湯船につかるの
は 10 分までにしよう
肝臓を休息させて、弱った肝臓を回復
お風呂は血行促進・疲労回復・ストレ
させるために必要な睡眠時間は、毎日
スの解消など、心身によい効果がある。
7~8 時間といわれる。遅くても 23 時
しかし、肝臓病の人には大きな負担に
までには寝るようにしよう。毎日規則
なる場合もあり、熱い湯にのぼせるほ
正しい時間に寝ることで、肝機能が回
どつかるのはよくない。ぬるめのお湯
復する。
で半身浴をするくらいが理想的。
ストレスをためない
ようにしよう
運動直後、食前食後、
飲酒後の入浴は避けよう
ストレスはさまざまな病気に悪影響を
及ぼすが、肝臓にとっても大きな負担
食事の前後、飲酒後の入浴、運動直後
を与える。ストレスにより自律神経が
の入浴は危険ですのでやめよう。
乱れ、肝臓への血流量が減少して、肝
臓に負担がかかる。イライラ・不安の
ない生活習慣を心がけよう。
肝臓が疲労すると・・・??
●栄養素がうまく利用されない
たんぱく質・脂質・糖質の三大栄養素の合成と代謝がうまくできにくくなり、身体がだ
るい、疲れやすい、疲れがとれない、顔色が悪い
などの症状になりやすい。
●脂肪の消化に必要な胆汁の生成ができない
胃腸がもたれる、便秘や下痢になりやすいなどの状態になる。
●解毒作用が低下する
アルコールや体内に必要のない異物を分解し、解毒する働きが低下して悪酔い・二日酔
いしやすくなる。
●ビタミンが貯蔵できない
必要に応じて利用されるビタミンを蓄えられなくなる。
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