ヨーロッパのデザイン拠点EDスクエアで作られた純粋なトヨタの輸入車。 トヨタ トヨタがヨーロッパ車の販売に力を入 較してみた。 れ始めた。 「アベンシス」である。開発し 試乗車は4ドアセダン「Liスポーツ たのはイギリスのトヨタ拠点であるTM パッケージ」の2WD。まず運転席に乗り UK。ただしデザインはフランスのニー 込むと、シートの微調節をするアジャス スにあるEDスクエアだ。「純粋なヨー トレバーがユニーク。操作方法が日本車 ロッパ車」 (トヨタ広報部・白子氏)を作っ とは少し異なる。右手でレバーを押すと て日本市場で売るのは何も今に始まった シートバックは前方に立ち上がる。ラ ことではない。FFの4ドアセダン、 「ア チェット式無段階調節というものだが、 バロン」や「プロナード」なども完全な輸 どうも慣れないと使いづらい。シートリ 入車である。 フターも装備され、きめの細かい調節が だが、 「アベンシス」はヨーロッパ市場 できる点は有り難いのだが、シートリフ のトヨタ車の中でフラッグシップモデル ターとシートバックの調節の微調節に時 として専用開発されたという。それだけ 間がかかる。 にヨーロッパ車好きのユーザーにどの程 また、シート自体も座り心地がヨー 度アピールできる性能や質感を持ってい ロッパ車のままだから少し硬い。体を包 るのか興味が湧いた。実際に試乗車を駆 み込むホールド性もスポーツパッケージ り出してその実力を総合的にチェックす という割には少し脇が甘い感じ。 ると同時に同じ価格帯のライバル車と比 市街地を走ってみると、加速性能はすこ アベンシス 4ドアセダン Liスポーツパッケージ2WD 〔スーパーECT=262万円〕 ☆ フランスでデザインされイギリスで生産された 純粋なヨーロッパ車 ◎ 固い味付けの足回りとシートはドイツ風でスポーティ ◎ 高速走行は静かで直進安定性も抜群!! 輸入車というより大人しい4ドアセダンといった印象。 たように静かでスムースな走りが身上だ。 時速100km時のエンジン回転は巡航 走行で2400回転しか回っていない。 当然、燃費経済性も優れている。実際の 燃費は計測していないが、10・15モー ド走行ではリッター当たり13kmも走 るというから驚きである。 さらに嬉しいのがガソリンがレギュ 質感の高い運転席回りと操作性に優れた各種スイッチ類。 ラーガソリンで済むという点。エンジン のパワーを引き出すために高価なプレミ アムガソリンを給油する必要はない。 走りの点で気になったのがブレーキペ ダルの踏みしろだ。ブレーキ性能が悪い 全幅1760mmの3ナンバーボディを採用。 とか鈍いということではなく、ペダルを 踏み始めてから効き出すまでの踏みしろ ぶる俊敏で軽快だ。しかも静粛性も高くボ 硬いのもうなずける。できればもう少し がどうも長い感じがする。試乗車だけの ディ剛性が高いためか安心感がある。時速 ソフトな味付けのタイヤに変更できるオ 個体差というのなら心配はいらないが、 40km∼60km前後ではトルクも太く プション設定が欲しい。ロングドライブ これがヨーロッパ車のブレーキセッティ アクセルに対するレスポンスも鋭い。 ではドライバーだけでなく同乗者も疲れ ングと言われればそれまでのことだ。実 参考までに試乗車の車両重量は138 易くなると思われる。ただし、スポーツ 際に運転していて少し気になった。 0kg。最高出力155馬力の2000 パッケージだけの味付けというのなら不 インテリアは完全にヨーロッパ車のデ ccDOHCエンジンだから、文句なく 満はないのだが。 ザイン。特にドイツ車的な雰囲気が強い。 ハイパワーの本領発揮といった走りを満 とはいえ、時速80kmを超す高速走 黒で統一されたインパネ回りとシートや 喫できる。タコメーターのレッドゾーン 行では路面にタイヤがピタッと貼り付い ドアの内張りなどはアウディかフォルク 1AZ−FSE型2000 ㏄DOHCエンジン は最高出力155馬力。 スワーゲンの「ゴルフ」に近い印象を受け は6400回転から始まるが、まさかそ 奥行きと深さのあるトランクスペースは大容量。 こまでエンジンを回す人はいないだろう。 普段は3000回転までが常用回転域と 考えていい。それだけ低回転域でのトル クが太く運転しやすいということである。 ひとつ残念なのは乗り心地が硬いこと だ。確かにヨーロッパ車では「平均的」な 味付けなのかもしれないが、シートとサ スペンションが硬いため、路面の凹凸を ダイレクトに拾ってしまう。装着タイヤ は215/45R17という平べったい 仕様のものを付けているので乗り心地が 硬い味付けのサスペンションに扁平率45タイヤを 装備するため路面の凸凹を忠実にひろう。 シートの座り心地はヨーロッパ車の硬い味付け。 スポーツパッケージの割にホールド性が 今一歩のフロントシート。 ライバル車は どれだ!! ライバル車と 比較してどうか。 日産車で262 万円の4ドアセ ダンといえば、 「ティアナ230 JM」が252万 円で最も近い。た だ「ティアナ」の 搭載エンジンは 4ドアセダンの全長は4630mmでホイールベースは2700mm 最高出力173 馬力の2300 た。スポーティで飾り気はないが、機能性 ccエンジン。走りの格差は歴然だ。 重視のドイツ車的な発想とセンスが溶け 次にホンダ車ではライバル車はないの 込んでいるようで興味深い。室内の居住 か。価格で探してみると「アコードユーロ 空間が広さを追求していない点もドイツ R」が253万円で最も近い。エンジン性 車的といえる。 「アベンシス」のチーフエ 能はずば抜けて高性能で、2000cc ンジニアの福里健氏は1987年∼91 DOHCエンジンで最高出力220馬力 年までVW社と共同生産プロジェクトに は圧巻。加速性能で比較すれば間違いな 従事していたというからなるほど納得で くライバルの2車種に負けている。もち きる。 ろん質感の比較は同時に3車を並べて乗 要するに、 「アベンシス」は日本人向け りくらべをしないと比較はしづらいと思 に作られたヨーロッパ車ではなく、ドイ うが。 ツ車好きの一部のファンに支持される輸 確かにヨーロッパ車と日本車を価格だ 入車ということだ。 けで比較するということ自体に無理があ 参考までに月別の登録台数は10月が るのかもしれない。 2353台。11月が2279台。月販目 とにかく、 「アベンシス」はトヨタの欧 標台数が2000台だというから一応輸 州戦略車として専用開発された輸入車だ。 入したことは成功したと断言できる。し その設計哲学を高く評価してくれるユー かし、車両本体価格262万円という価 ザーに支持されるだろう。別の見方をす 格を考えると、筆者であれば他にも選ぶ るならトヨタブランドを愛する外車ファ べきクルマがあるのではと思ってしまう。 ンに最適な1台となり得る。
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