弁護団ニュース第7号 - 原子力損害賠償群馬弁護団

原子力損害賠償群馬弁護団ニュース(NO7)
2014年(平成26年)8月
故郷を・普通の生活を返せ!こどもの未来を奪うな!
群馬弁護団ニュース NO7
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原子力損害賠償群馬弁護団
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【発行】原子力損害賠償群馬弁護団(団長)鈴木克昌
【連絡先】〒371-0844
前橋市古市町1-50-1吉野屋ビル303
新前橋法律事務所内
[TEL]027-251-7871 [FAX]027-251-7989
7月14日/第4回裁判(第3回準備的口頭弁論)
裁判所が裁判進行を一気に加速し、
判決を見据えた争点整理
東電が「異常に巨大な天変地変」を理由に
損害賠償が免責される事を主張しないと書面で明言
目を集めています。そのため,次回9月5日(金)午前10時
30分からの裁判には,これまで同様に新潟,山形,埼玉の弁
護団からだけでなく,他の地域の弁護団からも弁護士が駆け付
裁判長の積極的な姿勢が明確に
けてくれそうです。
いずれにせよ私たち弁護団は,この裁判を何としても勝ち抜
7月14日の裁判では,これまでと少し雰囲気が変わりました。 くため,裁判所が関心を持っている点に対して正面から取り組
私たちの裁判を担当している裁判長は,かなり早い時期から, んでいます。まずは,上記①の課題に答えるため,先日,福島
「原告側と被告側は,今年7月末までに基本的な主張を出し切っ 第一原発の建設に関わった大学教授からお話をうかがい,また,
てもらいたい。その上で,9月の裁判の日に裁判所から原告側 この原稿を執筆している8月20日には,やはり福島第一原発の
と被告側に確認したい事項(これを「求釈明」と言います。) 建設に関わった技術者の方からお話をうかがいました。まだま
を伝えます。」と宣言していました。
だ吸収しなければならない知識は多岐に及びますが,弁護団と
ところが,7月14日の裁判では,裁判所から,原告側と被告側 して万全の体制でこの裁判を乗り切っていきたいと思います。
に対して,合計で13項目にわたる詳細な求釈明がありました。
(事務局長:関夕三郎弁護士)
その中でも注目すべき項目を噛み砕い
てご説明すると,以下のとおりです。
≪7・14裁判の意義について≫
裁判所が求めてきた釈明内容
① 原告側は,東電が具体的にどのよ
うな措置を取っておくべきだったかを明らかにせよ。その際,
その措置が取られていれば,どのような経過をたどって事故
防止につながったのかも分かるように説明せよ。
② 国際的には色々な対策が取られていたようであるが,原告
側と被告側は,それらの国々はどの程度具体的な事象を想定
して対策を講じていたのか調査し,明らかにせよ。
③ 東電は,この裁判で東電の過失を明らかにする必要はない
と主張しているが,普通の裁判では,慰謝料の金額を決める
ときに裁判所は加害者側の過失の程度などの悪質性も考慮で
きる。原発事故の裁判では裁判所がそのような判断をするこ
とが許されないというのであれば,それを理論的に説明せよ。
④ 国は,福島第一原発で取られていた非常時の安全対策につ
いて,国としてはどのようなスタンスで関わっていたのか,
また,それらの安全対策は東日本大震災で適切に機能してい
たのかを明らかにせよ。
このように裁判所が2か月も前倒しして求釈明を行ったのは,
裁判所自身,当初予想していたよりも早く裁判の核心に迫れそ
うだという感触を得たからではないかと思います。
「異常に巨大な天災地変」(原賠法)
に関して東電が態度を表明
東電は,「本訴訟では原賠法第3条1項ただし書の主張はしない」と明言
する準備書面(5)を提出しました。
この「原賠法第3条1項ただし書」というのは,ご存知の方も多いと思い
ますが,原発事故の原因が「異常に巨大な天災地変」だった場合,原子力事
業者は損害賠償責任を負わないという条文です。
もう少しかみ砕いて説明すると,原賠法の原則によれば,東電は,故意や過
失がなくとも被害者に対して損害賠償責任を負いますが,東電が原発事故の
原因について「異常に巨大な天災地変」に該当することを立証すれば,東電
は損害賠償責任を免れることになっています。
この「異常に巨大な天災地変」の問題は,福島第一原発事故の発生当初か
ら国会等でも議論されていました。当時の国会議員の中には
「異常に巨大な天災地変には当たらない。」と明言していた人
もいましたが,経済界には「『異常に巨大な天災地変』を主張
すべきだ。」という根強い意見もあり,東電を始めとする電力
業界は態度を明確にしませんでした。
ここ前橋地裁の裁判でも,東電は,これまで,この問題に対する立場の明
言を避けていた節があります。しかし,裁判長からの強い要請により,今回,
「異常に巨大な天災地変」の主張はしないと明言するに至ったのです。
全国を見渡しても,東電がこの点の態度を明確にした裁判は,ごく少数です。
原子力事業者は,これまで,「安全神話」の下,巨大地震や巨大津波の可能
全国各地で進んでいる裁判の中でも,現在のところ,ここま
で細かく裁判官の考え方を明らかにしている裁判所はありませ
ん。前橋地裁の裁判は,進行が非常に早いという点もさること
ながら,裁判官が今回の原発事故の裁判をどのような視点から
見ているのかを知るという点でも,全国の弁護団から非常に注
性,全電源喪失に至った場合の危険性などについて,安全側からの鋭い指摘
に対して事態を曖昧にすることで先延ばしを図ってきました。この裁判でも,
東電は,「異常に巨大な天災地変」の問題について同じような態度で切り抜
けようとしていたわけですが,裁判所はそれを許さなかったと言えると思い
ます。
(事務局次長:舘山史明弁護士)
原子力損害賠償群馬弁護団ニュース(NO7)
2014年(平成26年)8月
8・3/原告の意見交流会及び第三次提訴説明会開催
8月3日(日)の前橋は36℃を超える猛暑日でしたが、訴訟
の原告となっている方々に群馬県庁の昭和庁舎(何度か説明会を
実施したところです)に集まって頂き、意見交換会を開催させて
頂きました。
この意見交換会では、弁護団から現在の訴訟の状況等についてご
案内させて頂くとともに、これまでのみなさんの体験等について
話して頂きました。
暑い中、都合をつけて来て頂いた
皆様、ありがとうございました。
この意見交換会では、原告となっ
ている方々に、会議室のテーブルを
大きな輪の状態にして座って頂いて
いたので、順番に、これまでの体験 ■次回裁判に向けて、真剣な
や、意見等について話して頂きまし 議論が展開される弁護団会議■
た。
原告の方々は、それぞれ、大変な苦労をしているのだ、という
ことを改めて実感すると共に、弁護団で活動している弁護士にとっ
て、本当に考えさせられるところがありました。
避難しようにもガソリンがなくなってしまい、避難に支障を来
たした方、仕事がなくなってしまい避難せざるを得なくなった方、
東電の答弁書を斬る!
被害者に寄り添う弁護団の思い新たに!
情報が全くない中で、避難するように言われて着の身着のままで
とりあえず避難した方、すぐに子どもだけを避難させた方など、
避難の状況は様々。
また、避難してからも、福島とは違う自然環境の中で、住環境
の中で、そして、今までとは異なる人達の中で生活することにつ
いて不安を感じたり苦労されたりした方々。仕事のこと、家族の
こと、そして、福島の地元の方々との関係など。
みなさんが、避難前も避難後も、様々な苦労をしていることは
共通でしたが、その状況も、苦労している内容も、一人一人が大
きく違っています。改めて、被害者の方々に寄り添う弁護団であ
ろうと、決意を新たにしたところです。
また、弁護団からは、すでに、訴状を含む全21通の書面(本
ニュース発行日現在では24通になりました。)を提出しており
ましたので、これらを案内させて頂いたほか、訴訟に関して原告
の方々にご協力頂きたいことなどについて、ご案内させて頂きま
した。
今後、原告になっている方々には、もう1通陳述書の作成をお
願いすることになります。詳細が決まりましたら、担当の弁護士
よりご連絡させて頂きますので、その際は宜しくお願い致します。
(事務局:稲毛正弘弁護士)
「地震・津波の予見は不可能」・・・・
東電の主張には徹底反論
放射線被ばくにおいて、安全な数値
はない(つまり、「〇〇ミリシーベ
ルト以下なら安全」といえる数値は
●我々は、訴状において、東電が今回の地震や津波を予見す ない。)という考え方に立っていま
ることができたにもかかわらず、十分な対策をとっていなかっ す。
これに対する東電の主張をみると、
たと主張しています。
これに対し、東電は、答弁書において、「今回の地震は、過去 東電は、年間20ミリシーベルトま ■8月に準備された証拠の
の大地震とは比較にならないほど大規模であり、我が国のどの での被ばくであれば、健康被害は生 数々。準備書面と合わせて
地震にかかる専門機関も想定しておらず、東電としても予見で じないと考えていることが読み取れ 証拠を集め、裁判所に提出
する作業がひと苦労です■
きなかった。」、「今回の津波の規模や波高は、およそ予見で ます。
この年間20ミリシーベルトという目安とするという考え方
きないものであった。」、「福島第一原子力発電所における地
震や津波への対策は十分であった。」などと主張しています。 は、政府の要請に基づいて設置された「低線量被ばくのリスク
しかし、今回の地震や津波を予見できなかった、地震や津波 管理に関するワーキンググループ」の報告書(「WG報告書」)
への対策は十分であったという主張は到底納得できるものでは でも触れられており、東電は、このWG報告書をしきりに引用
ありません。我々は、今後も、地震や津波を予見することがで しています。
きたことを指摘していく予定であり、また、地震や津波への対 しかし、このWG報告書には、組織の構成や議論の期間をはじ
めとする問題点が多数指摘されており、我々もこの点について、
策が十分でなかったことは既に詳しく主張しています。
●我々は、区域外避難者の方を含め、避難者の皆さんが避難 既に詳しく主張しています。
(松島 温弁護士)
したことに合理性があると主張していますが、その前提として、
東電の答弁書には、我々が裁判所に提出した訴状に対する認
否や反論が記載されています。
8月26日/福島地裁
事故後、初めて
原発事故避難者の自殺、
因果関係認め東電に賠償命令
福島第一原発事故後、福島県川俣村から避難を強いられた渡辺はま子さん(当時
58歳)が、一時帰宅した際に自殺したのは原発事故が原因として東電を訴えていた
裁判で、原告勝訴の判決が出ました。
訴えていたのは夫の幹夫さん(64歳)ら遺族で、はま子さんは計画的避難区域に
指定された川俣村から福島市内のアパートに避難していましたが、大きなストレス
から体調不良に悩まされ、約3週間後、一時帰宅で一泊した際に自宅に庭先で焼身
自殺をしました。
判決は、58年間暮らした地域でのつながりや仕事を失い、不慣れなアパート生活
による「耐えがたいストレスが、はま子さんをうつ状態にさせ、自殺に至らせた」
と認定しました。原発事故と自殺の因果関係を認めた判決は初めてで、福島県内で
は自殺をめぐり、東電に賠償を求めている裁判が他に2件係争中です。
次回以降の、裁判のお知らせ
※今までの裁判は、午前11時開廷で行われて来ましたが、
今後は10時30分の開廷になります。
● 9月 5日(金)※1次・2次提訴が併合。
●10月24日(金)
●11月17日(月)
●12月22日(月)
2015年
● 1月23日(金)
● 3月 6日(金)
● 3月27日(金)※準備的口頭弁論の最終日で、
証拠調べの内容について検討が始まります。