技術士資格取得の扉を開く

技術士資格取得の扉を開く
第一次試験
第9号
発行者:江平 英雄、発行日:2009 年 2 月 16 日
メールアドレス:rdsnx187@ybb.ne.jp
「光陰、矢の如し」と言う諺がありますが、今朝(2 月 15 日)の天声人語に
は、「一月は往(イ)ぬる、二月逃げる、三月去る」と言う言葉が見られていま
す。この言葉の意味には、時の過ぎ往く早さが、アット言う間に過ぎ去ること
を表現しています。このメール通信「資格取得の扉を開く」を始めたのが 11
月、そして今、すでに 3 カ月の月日が過ぎ、今、読者である皆様方には、どの
ように利用されているのか、私には分かりませんが、合格発表の日には、全員
の名前が見られることを期待しています。私は、皆さんの名前も、受験地も知
りませんが、その時になれば、何らかの情報が伝わってくるだろうと思ってい
ます。今回のメール通信では、「土の話」をします。
1. 土とは
土とは、地球表面を覆っている土砂のことですが、それを学問として研究し
ている分野に、土壌学、地質学、鉱物学、土質工学、土質力学、粘土鉱物学、
陶芸学、植物学等と、多方面の分野があります。人間社会に最も身近な存在で
ある土ですが、その謎を解くには、あらゆる方面の知識を修得することが必要
になります。一般に土と言えば、火山活動で生成された火山灰土、河川によっ
て運ばれてきた土砂等と思われがちですが、その正体を解明するのには、それ
ぞれの分野の知識(データー)が必要になってきます。
土は、岩石が外力作用によって崩れ、水の力で運搬されて堆積したもの、火
山活動で降灰して堆積したもの等によって生成されています。前者の堆積は、
地形の傾斜や流速によって堆積物が異なっています。流域には、上流に岩石、
玉石、中流に砂利、下流に砂、シルト、粘土が堆積しています。土の堆積には、
粒子の大小が関係しています。軟弱地盤を構成する細粒子は、流速のない地域
に堆積しています。火山灰も、噴火口に近くには、大きい粒子が堆積し、遠方
になればなる程、粒子が細かくなっています。このような現象は、自然の摂理
として一般に知られていますね。
我が国の地盤地層は、何億年の歴史を経ながら地殻変動、火山活動や気象作
用等の影響を受けてきています。しかも、地層は、複雑な堆積過程を示してい
ます。従って、土を調査する際には、地質構造や地形条件を考慮することが大
切です。
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2. 土の理解は、
土を理解するためには、土の構造を考えることです。一般的に土は、土粒子、
水、気泡(空気・ガス等)部分に区分され、これを「土の三相」と言っていま
す。土には、この三相からできていることを理解することによって、その性質
が判断できます。その一つの現象としては、水分の多い土と言えば、泥土化し、
乾燥すれば、土粉塵化します。土の基本的な性質は、土の三相の体積 V と重量
W によって、単位体積重量γt=Ws/Vs=土粒子の重さ/土粒子の体積、土粒
子の比重 Gs=γs/γw、含水比 w=Ww/Ws×100、湿潤密度γt=W/V、
乾燥密度γd=Ws/V、間隙比e=Vv/Vs、飽和度 Sγ=Vw/Vv×100 で
表されています。そして土の変形の難易を示す言葉には、土のコンシステンシ
ーというのがあります。これは、土の含水比に関係する言葉ですが、含水比が
高く液状化し易くなる限界を液性限界(LL)、自在に変形する塑性限界(PL)
および半個体となる限界を収縮限界(SL)と定義するアッターベルグ限界と称
しています。そして塑性指数とは、LL-PL の範囲を示しています。
3. 土の分類法
① 粒度による分類法
この分類は、粒径の大きさで分類する方法で、砂、シルト、粘土の含有量を
三角座標によって分類する方法。
② 統一分類法
粗粒分に対しては粒度を、細粒分に対してコンシステンシーを基準に分す
る方法。
4. 土の工学的性質
① 土の圧密試験
この試験は、荷重と間隙比の関係(e-logp曲線)を求め、圧密時間や沈
下量を算出する土の係数を求めます。
② 土の強度特性
土が破壊する時の極限におけるセン断強さ(s)は、土粒子間の吸引抵抗
による粘着力(c)と粒子間の摩擦抵抗によって表現されています。
s=c+σtanΦ
s=c+(σ-u)tanΦ
ここに:σ・・・・垂直応力
u・・・・間隙水圧
tanΦ・・土の摩擦係数
③ 試験法
⑴ 直接セン断試験・・箱型一面セン断試験
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⑴
⑴
間接セン断試験・・一軸圧縮試験、三軸圧縮試験
原位置試験・・標準貫入試験、スウェーデン式サウンディング試験、静
的・動的圧入による単管式コーン試験あるいは二重管
式コーン試験、ペーン試験
④ CBR 試験
室内試験・・乱した土と乱さない土での試験に分けられています。
現場試験・・現場で測定します。
⑤ 平板載荷試験
載荷板の大きさ・・30cm、40cm、75cm
⑥ プルーフローリング試験
⑦ 土の透水試験
⑴ 室内試験・・定水位試験、変水位試験
⑴ 原位置試験
⑧ 土の締固め
締固め曲線・・最適含水比、最大乾燥密度
締固め度、密度管理、飽和度管理、空気間隙比管理
5.試験法の原理とは
土の試験法の原理を理解しておくことは、設計・施工上で重要なことです。
土の基本的性質は、一つのルールで定められていますが、現実に遭遇する土の
変形や挙動との間に違いがあります。例えば、圧密試験は、オドメーターの中
の試料で試験を行っています。これは、試料を拘束した状態で試験を行ってい
ることになります。実際の現場では、このような状況を再現することができま
せん。そのために、理論は、理論、現場は現場と言われるような相違する指摘
が生じてくるのではないかと思います。もし、仮に、試験内容と同じような状
況を現場で実現できたとしたら、土の挙動は、同じような結果を再現するので
はないかと思います。「お化け丁場」と言われた軟弱地盤対策は、シッカリし
た地盤調査を行って、地層生成過程を把握し、周辺を拘束するような方法で施
工することによって克服することができると思います。その鍵は、設計・施工
法にあると思います。
5. あとがき
今回のメールは、「技術者に要求される能力とは、理論の原理・原則を知る
ことにある」と言うことを強調したくて作成したのかも知れません。私達の身
近にある土には、土としての存在価値、土としての言い分があるように思えま
す。「技術資格の扉を開く」通信では、技術者としての知識、応用すべき能力
の伝承が、術語の理解にあると思っています。「扉を開く」ためには、まず、
専門技術に関する術語をマスターして下さい。
以上
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江平記
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