――――――――――――――――――― ベトナム:全ての人々への飲用水と衛生の提供に近付く Viet Nam: Closer to bringing drinking water and sanitation to all WHO, 1 July 2015 (仮訳)鹿児島大学名誉教授 岡本嘉六 堅牢な 15 年の関与は、ベトナムが飲用水と衛生のための新世紀の発展目標 (MDG)を越える手助けとなった。 25 年前、ベトナムほぼ 5 人のうち 2 人は良質な飲料水を利用できなかった。 主に水道水と整備された井戸からなる改善された水源が都市の各所で利用でき たが、人口の 80%は水道水、整備された井戸、湧水がない農村部住んでいた。 トイレや洗面所を見つけることがより困難であった。5 人のうち 3 人は他人 から離れて排泄する改善された衛生施設を利用できなかった。そして、5 人のう ち 2 人は田舎の森、田畑、河川で排便していた。 「その当時、飲料水と衛生は、不良であった。子供の死亡率が高く、コレラ、 下痢および腸チフスの流行が一般的であった。新世紀の発展目標(MDG)にし たがって、政府は政治的関与を強化し、社会経済発展の指標として飲料水と衛 生の利用を検討し始めた」と、ベトナム保健省副長官の Nguyen Huy Nga 博士 は述べた。 関与は効果を生んだ。ベトナムは、改善された飲料水と衛生を利用できる人 口がそれぞれ 82% と 68%に達して MDG 目標を満たしただけでなく、それを上 回った。現在、ベトナムの 9000 万の住民の 98% 以上が改善された飲料水源を 利用し、人口の 78%が国際基準を満たすトイレと洗面所を使用している。 国の基準を設定 MDG 目標の達成は簡単な作業ではなかった。2000 年には、WHO、ユニセ フ、世界銀行、その他の国際機関からの支援とともに、ベトナム政府は、2020 年までに農村に清潔な飲料水と衛生を供給する国の戦略を策定した。この戦略 は、MDG より高い目標の飲料水と衛生の普遍的利用に向けた全ての政府機関の 基盤を設定した。 この戦略の下で、国の進捗状況を測定するため国の計画目標の 3 つの段階が 実施され、飲料水の量と品質および衛生設備の規格が定められた。 水質改善 「ベトナムの多くの人々はバイクや携帯電話を持っているが、トイレを持 っていない。我々は衛生上の態度や信念を変えていく必要がある」 ベトナム保健省副長官 Nguyen Huy Nga 博士 ベトナムは、WHO 指針に基づく勧告、飲料水の安全計画を実施するため、 全ての都市の水道会社に規制を出した。4 年後に、ベトナムの 68 社にとって、 水源の汚染を排除し、貯蔵と配水を通して再汚染を防ぐ飲料水安全計画を実施 することが規則となった。 「ベトナムの長年にわたる努力は強固だった。飲料水安全計画が適用される 前に、水質検査は利用者の段階でのみ行われており、給水システムで発生する 可能性があるリスクを制御する方法がなかった。現在、国は飲料水の品質のた めの WHO 指針に従い、飲料水安全計画を実施している」と国の WHO ベトナ ムの専門官 Tuan Nghia Ton 氏が述べた。 WHO はベトナム政府と一緒に、都市の全ての水道会社が飲料水安全計画を 実施するのを支援しており、UNICEF は農村における飲料水安全計画を実施す るため政府機関と一緒に活動している。 水道は農村世帯の 10%と都市世帯の 61%にしか普及しておらず、整備され た水源がない地域社会において家庭の水処理と貯蔵を推進するため UNICEF は 農業・農村開発省とも協力している。 建物の衛生的なトイレと洗面所 ベトナムにおける改善された衛生施設の利用は、1990 年の 36%から 2015 年の 78 %へと 2 倍以上になった。そして、洗面所やトイレを使用しない野外排 便は、同じ期間に 39% から 1% に減少している。 ただし、農村部で推定 10 人に 1 人が排泄物を直接池や川に流す原始的な水 上洗面所を使用し、環境や水資源を汚染し続けていることを保健省は強く懸念 している。 UNICEF は、地域社会が衛生慣行を改善し環境を清潔に保つ刺激を与える 地域社会主導の衛生取組みを実施する政府と地方当局の能力構築のために活動 している。地域社会は、彼らが望む衛生施設の種類を決定し、それらを建設し、 政府から小規模建設融資を受ける方法を教わっている。 「2014 年に国は、2025 年までに野外排便をなくする「全ての人々のための 国際的衛生と飲用水の協力」に関与した。現在ベトナムは、250 村が野外排便を なくし、さらに多くの村がそれに取り組んでいると宣言した」と UNICEF ベト ナムで飲用水の消毒と衛生計画のチームリーダーLalit Patra 氏が述べた。 MDG を越えて ベトナムは、MDG 目標に達しており、さらに普遍的な利用を狙っている。 国は 2025 年までに野外排便の排除を計画しており、2030 年までに全てのベト ナム人が安全な飲料水を利用できなければならない。普及啓発活動、農村への 追加投資および持続可能性対策が成功の鍵となる、と Nguyen 博士が述べた。 「我々が依然として直面している問題は、誰もが洗面所を使用する方法を知 っている訳ではないことだ。ベトナムの多くの人々はバイクや携帯電話を持っ ているが、トイレを持っていない。我々は衛生上の態度や信念を変えていく必 要がある」と彼は言った。 ――――――――――――――――――― 各国の現況 WHO, Countries 2015 (仮訳)鹿児島大学名誉教授 岡本嘉六 国際連合に加盟している全ての国は、憲章を受入れることによって WHO 加 盟国になることができる。世界保健総会の過半数の賛成によって承認される時、 その他の国々も加盟国として認められる。国際関係の行為に責任がない領域は、 国際関係に責任がある加盟国やその他の当局によって、申請時に準会員として 認められることがある。WHO 加盟国(194 ヶ国)は地域分布に従ってグループ 化されている。 訳注:比較的親近感がある国の情報の一部を次のように整理する。 GDP 当り保健支出(%)の多い順に並べ替え、適当な区切りで色分けした。 「15-60 の死亡確率」は、1000 人の内 15 歳から 60 歳の間に死亡する人数。 米国 オランダ フランス ドイツ スイス デンマーク カナダ ベルギー ニュージーランド 日本 スウェーデン スペイン 英国 ギリシャ 人口 (百万人) 320 16 64 82 8 5.6 35 11 4.5 127 9 46 63 11 一人当り総所 得(ドル) 53,960 43,210 37,580 44,540 56,580 44,460 42,610 40,280 30,750 37,630 44,760 31,850 35,760 25,630 出生時平均 余命(男女) 76/81 79/83 79/85 79/83 81/85 78/82 80/84 78/83 80/84 80/87 80/84 80/86 79/83 79/84 15-60 の 死亡確率 128/76 69/54 109/52 92/50 66/40 100/60 81/52 98/57 80/52 81/42 69/43 86/40 88/55 98/41 一人当り保健 支出(ドル) 8,895 5,385 4,260 4,617 6,062 4,720 4,676 4,320 3,292 3,578 4,158 3,145 3,495 2,346 GDP 当り保 健支出(%) 17.9 12.4 11.8 11.3 11.3 11.2 10.9 10.8 10.3 10.1 9.6 9.6 9.4 9.3 ブラジル イタリア フィンランド オーストラリア ノルウェー 韓国 イスラエル ベトナム ロシア メキシコ 中国 カンボジア エジプト シンガポール フィリピン インド マレーシア タイ バングラディッシュ サウジアラビア インドネシア ラオス パキスタン ミャンマー 200 60 5 23 5 49 7.7 91 142 122 1,393 15 82 5.4 98 1,252 29 67 156 28 249 6.7 182 53 14,750 34,100 38,480 42,540 66,520 33,440 32,140 5,030 23,200 16,110 11,850 2,890 10,850 76,850 7,820 5,350 22,460 13,510 2,810 53,780 9,260 4,570 4,920 ー 72/79 80/85 78/84 80/85 80/84 78/85 81/84 71/80 63/75 73/78 74/77 70/75 69/74 81/85 65/72 65/68 72/76 71/79 70/72 74/78 69/73 65/68 65/67 64/68 197/97 69/38 114/51 78/45 73/47 93/38 72/41 189/69 339/126 174/93 103/76 210/157 193/117 69/38 255/136 239/158 169/86 177/90 156/126 89/67 176/121 197/158 189/155 240/183 1,109 3,040 3,545 4,068 5,970 2,321 2,239 234 1,474 1,062 480 135 323 2,881 202 157 692 386 68 1,004 150 84 77 25 訳注:GDP 当り保健支出(%)の大きさが保健・福祉政策を重視している ことを示すものではないが(非効率な支出となっていることもある)、保健支 出(%)が少ないことは保健・福祉政策が不十分であることを示す。黄色(10 以上)、青(9~10)、緑(5~9)、赤(5 未満)に色分けしてあるが、ベトナ ムは 6.3 であり、一人当り保健支出は 234 ドルと、日本の 10.1、3,578 ドルと 比べてかなり低い。しかし、赤色の東南アジア諸国よりかなり高い。 飲用水と衛生施設の改善はこれらの数値と並行していると推定され、保健衛 生の社会的基盤を構築するにはまだまだ投資が必要とされている。そのために は、平和を維持することが必須であり、日本の戦後復興は余計な戦費をつぎ込 む必要がなかったことが大きく寄与している。東北アジアには飢えた人民を放 置して核開発している国があるけれども、国を護るのは城ではなく人心である という教訓が日本各地の大名の家訓として残されている。日本の国防を考える 時、日本および各国の人心を掴むために何をすべきかを優先することが重要で ある。国会論議は、人心を離れてしまっている。 9.3 9.2 9.2 9.1 9 7.5 7.5 6.6 6.3 6.2 5.4 5.4 5 4.7 4.6 4.1 4 3.9 3.6 3.2 3 2.9 2.7 1.8
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