物理科学講座 - 佐賀大学 産学地域連携機構

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佐賀大学研究室ダイジェスト
工学系研究科
物理科学講座(工学系ー8)
物理科学講座は、広範な自然現象を理解する試みを通して、現代の科学技術を支える学力と、柔軟性に富んだ豊
かな発想力を培い、広い分野で活躍できる人材の育成を教育目標にしています。佐賀大学の物理学研究は質におい
て世界トップクラスの研究として高く評価されています。
素粒子物理学では、電磁気力や核力は場の理論により素粒子標準模型として完成の域に達し、
さらにその先の研究が進められている。一方、時空や重力の理解はできておらず、弦理論が有
力候補だが未だ完成していない。青木一准教授は、場の理論や弦理論の基礎的な研究、並びに、
その立場に立脚した、素粒子や宇宙の現象に関する研究を推進している。
青木 一准教授
石渡洋一准教授は、ナノメートルの領域の非常に小さな物質を合成して、そこに潜む新しい
物理的性質の探索を進めている。現在注目している物質は、鉄やコバルト等の遷移金属および
その酸化物であり、これらの物質に現れる特徴的な磁気的・電気的性質が、ナノサイズの結晶
でどのような変化が生じるかを調べている。
石渡 洋一准教授
量子力学は、科学技術に大きな変革と進歩をもたらしたが、その基礎、特に観測の問題につ
いては大きな謎が残されている。遠藤隆教授は、観測の問題に関心を持ちながら、量子力学特
有と言われる様々なコヒートレント現象をどこまで古典的な系、たとえば電子回路でシミュレ
ーションできるかの実験を行っている。
遠藤 隆教授
河野宏明准教授は「クォーク」
「量子色力学」
「高温・高密度」それにともなう「相転移」を
キーワードに、クォークの閉じ込めやカイラル対称性の破れについての理論的解明の研究に取
り組んでいる。
河野 宏明准教授
欧州で進められているLHC実験でヒッグス粒子が発見され、現代素粒子物理学は新たな局
面に向かっている。質量の起源であるヒッグス粒子は、我々の世界の真空の構造も決めている
と考えられており、日本での立地が現実的になってきたリニアコライダー実験ではヒッグス粒
子の謎を解き明かし、さらなる未知の物理現象を明らかにすることができる。杉山晃教授は、
実験に向けて、不可欠な素粒子の検出器の開発を進めている。
杉山 晃教授
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「宇宙はどのように始まったのだろうか?」
「宇宙は始まってから現在までどのように進化
してきたのであろうか?」「宇宙の暗黒物質、暗黒エネルギーの正体は一体何であろうか?」
など宇宙には様々な謎がある。髙橋智准教授は、宇宙の謎の解明を目指し、理論的な研究を行
っている。
髙橋 智准教授
橘基准教授は、
「超高温・超高密度のミクロな物質の世界」の理論的解明を研究の基礎とし、
そこで得られた知見を、
「超高密度天体」や「超高温状態の宇宙」の理解へと応用する研究に
取り組んでいる。
橘 基准教授
鄭旭光教授は固体物理学を中心に「電子スピンの新奇量子状態の探索」「磁性と強誘電性を
併せ持つマルチフェロ新機能物質の研究」
「ナノ物質の新奇物性」をキーワードに、化学的な
手法を駆使して新規物質を創製し、国内外の加速器(放射光、中性子、ミューオン等)などの
物理学研究施設を活用して新奇物性の発現を目指している。
鄭 旭光教授
素粒子論は物質・空間の根源を探る研究である。日本では最初のノーベル賞以降、受賞回数
は最も多く世界トップレベルを誇る研究分野であり、その成果は材料科学、計算機科学やその
応用など広い分野で利用されている。船久保公一教授は、ヒッグス粒子など素粒子の最先端の
実験とも関係する、素粒子論に基づく宇宙の物質の起源の解明に取り組んでいる。
船久保 公一教授
遷移金属酸化物中の電子は、偏った結晶構造と電子間の強い反発力のために、制約された動
きをし、結果として物質に個性的な性質をもたらす。新しいタイプの超伝導や電荷秩序と呼ば
れる秩序状態の出現もその一例。真木一准教授は、測定試料とする結晶を作製し、自作の装置
で電気的性質を調べて、物質中の電子が「自己組織的」に機能を「創発」する仕組みを研究し
ている。
真木 一准教授
素粒子の振る舞いを記述する量子論的場の理論は、無限の自由度と系が持つ対称性のために、
多様な性質を示す。米山博志教授は、場の理論の力学的性質について研究しており、格子上の
場の理論の手法や有効理論を用いた方法によって、強い力を記述するQCD(量子色力学)の真
空の性質を明らかにすることを目指している。
米山 博志教授
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