はじめに 本書は、日本の学校教育で欠落している英語文章術を教 えます。学校で教わった近視眼的な「英文法」や「英作文」 の知識を総動員しても、個々の英文を文法的に正しく書き 上げることで精一杯ではないでしょうか? 文法的には正 しいにもかかわらず、自分の書いた英文の不自然さになん となく不満を持つ読者もいるでしょう。あるいは、ネイテ ィヴの読み手に自分の英文Eメールを誤解された苦い経験 を持つ読者も多いのではないでしょうか。 そこで本書では、そのような読者のために、小説など文 芸作品の英文ではなく、仕事の実務に必要な「意図を誤解な く確実に伝える英文」を書くための基本ルールを紹介しま す。基本ルールは簡単なことばかりなので、短時間でその ノウハウを身につけることができます。ここでは、TOEIC の点数上昇に裏付けられるような、時間のかかる英語力そ のものの向上は必要ありません。 この本を一読するだけで、 短期間に英文表現力を向上させることができるのです。今 までゼロに等しかった英文批判力、英文鑑識眼が身につく からです。 昔なら、英文で情報発信できる人は、商社の社員、ある いは、メーカーの貿易部門、あるいは、英語論文を発表す る人、というように限られた専門家でした。例えば、仕事 の現場なら、英語の専門家が "Sincerely yours," で終わるよ うな商業定型英文レターを書き、署名し、封筒に入れ、切 3 手を貼って海外に送っていたわけです。こうした堅い英文 レターでは、英語の専門家に頼らざるを得ない状況だった わけです。 ところが、インターネットの普及により状況は一変しま した。突然「書く英語」が私たちにも身近なものとなりま した。従来、言葉の壁に起因する日本の情報発信力の弱さ は日本の国益を損ねていました。昔は、言葉の壁と言えば、 日本人の英会話力の貧弱さだけが論点でした。しかし、イ ンターネットの出現に伴い、日本から世界に向けての発言 は「話す英語」だけではなくEメール、ホームページ等 「書く英語」にも比重が移ってきたのです。 しかし、こうした状況にもかかわらず、私たちの周囲の 一般書は、相も変わらず、英会話用が多数派です。日本人 が「カッコイイ」英会話好きなためでしょう。そのため、 一般人向けの英文表現術の本が不足しているのです。わず かに存在している英文ライティングの本でも、ほとんどが 科学技術分野の専門家向けの本か、あるいは、単なるビジ ネス文例集ばかりです。英文表現術の本質に迫る入門書が ありませんでした。そこで、英文表現術の基礎ルールを一 般の人に広く紹介するために本書を執筆することとしまし た。 さて、それでも英会話に強い関心のある読者に知って欲 しいことがあります。書く英語の実力を磨くことは、あな たの英会話力をも伸ばします。特に、本書が教える「実務 英文で効率よく確実に自分の意図を伝える技法」を学ぶこ とは確実にあなたの英会話力をも向上させます。英語は、 4 元々「話し言葉」と「書き言葉」との差が日本語ほど大き くない言語です。さらに、従来の封書による堅い商業英文 などと違い、英文Eメールでは、会話調表現が多用される ことも、その傾向に拍車をかけています。つまり「書く英 語」で「話す英語」の練習ができるようになったのです。 「書く英語」で、自分の言いたいことがズバリ、効率よく 表現できるようになることは、知らずしらずのうちにその ままあなたの英会話表現力をも伸ばすのです。「書く英語 でペラペラ」になれば、あなたの最終目的地である「話す 英語でペラペラ」も目前です。 本書によって、多くのビジネスマンが、日本の英語教育 で欠落していた英文表現術を身につける第一歩を踏み出す ことを期待しています。そのことで、世界に対する日本の 発言力、情報発信力が少しでも高まれば、これ以上の喜び はありません。 2001年8月 藤沢晃治 5
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