新潟県飼料作物生産・利用マニュアル

地方競馬益金補助事業
新潟県飼料作物生産・利用マニュアル
平成1
9年3月
新潟県農林水産部
新潟県畜産振興協議会
新潟県畜産技術協会
は
じ
め
に
平成17年に閣議決定された新たな「食料・農業・農村基本計画」においては、
平成2
7年度までに粗飼料を1
00%完全自給することが目標として定められまし
た。
新潟県においても、「にいがた農林水産ビジョン(改訂)」の中で、現在40%
にとどまっている県内の粗飼料自給率を平成24年には60%にまで向上させる目
標を掲げ、各種の施策を推進しております。
消費者に対し、安全・安心な農畜産物の生産と供給が求められている今、購
入飼料に依存せずに地域内の自給粗飼料を十分に活用した畜産物の生産は、飼
料生産基盤に立脚した畜産経営を育成していく観点からも重要です。また、ポ
ジティブリスト制度や適正農業規範に対応した、より安全性の高い飼料作物生
産も必要とされています。
新潟県では、平成5年度に飼料作物の栽培・調製・給与技術の解説書「フォ
ーレージ・インデックス」を作成し、飼料作物生産の振興を図ってきましたが、
稲発酵粗飼料の普及等、その後の畜産を巡る情勢変化に対応した新しい知見を
も取り入れ、このたび、
「新潟県飼料作物生産・利用マニュアル」として再編
しました。
水田を利用した飼料生産など、新潟県の豊かな地域資源を活用した安全・安
心な自給粗飼料の生産に向け、本書が広く畜産関係者に活用され、魅力と競争
力のある畜産物生産が展開されることを期待します。
平成19年3月
新潟県飼料作物生産・利用マニュアル
目次
項 目
ページ
飼料作物別栽培技術
1 県内での栽培に適した牧草・飼料作物の地帯区分と特徴………………………2
2 牧草
(1)県内に適する主な牧草の特徴…………………………………………………4
(2)採草地、放牧地に適する牧草の組合せ………………………………………6
(3)牧草地の造成・更新……………………………………………………………8
(4)採草地の肥培管理………………………………………………………………1
0
(5)放牧地の管理……………………………………………………………………1
1
3 飼料作物類
(1)トウモロコシの栽培……………………………………………………………1
2
(2)ソルガムの栽培、収穫…………………………………………………………1
4
(3)エンバク・栽培ヒエの利用……………………………………………………1
6
4 飼料イネ
(1)発酵粗飼料用稲の栽培…………………………………………………………1
8
(2)わら専用稲の品種と水管理……………………………………………………2
0
5 水田における飼料作物栽培の留意点………………………………………………2
1
付表 飼料作物の奨励品種・認定品種…………………………………………………2
2
Ⅱ 牧草地・飼料畑の雑草防除
1 牧草地や飼料畑で使用する除草剤…………………………………………………2
4
2 飼料作物生産における適正農業規範(GAP)への対応 ………………………2
6
Ⅲ 土壌改良と堆肥利用
1 県内の草地土壌の実態と特徴………………………………………………………2
8
2 土壌分析に基づいた土壌改良と施肥………………………………………………3
0
3 堆肥を活用する場合の留意点………………………………………………………3
2
Ⅳ 飼料作物収穫・調製技術
1 ロールベールサイレージ調製のポイント…………………………………………3
4
2 バンカーサイロでのサイレージ調製のポイント…………………………………3
6
3 サイレージ添加材と特性……………………………………………………………3
8
4 最近普及している専用収穫機………………………………………………………4
0
Ⅴ 粗飼料の給与技術
1 粗飼料の成分評価
(1)粗飼料の簡易分析………………………………………………………………4
2
(2)β−カロテンについて …………………………………………………………4
4
(3)粗飼料利用上の留意点…………………………………………………………4
6
2 乳用牛への粗飼料給与のポイント
(1)乳用育成牛への粗飼料給与……………………………………………………4
8
(2)乳用経産牛への粗飼料給与……………………………………………………5
0
(3)乳用牛向けの発酵粗飼料用稲…………………………………………………5
2
3 肉用牛への粗飼料給与のポイント
(1)繁殖牛への粗飼料給与…………………………………………………………5
4
(2)肥育牛への粗飼料給与…………………………………………………………5
6
(3)肉用牛への稲発酵粗飼料の給与………………………………………………5
8
Ⅵ 自給粗飼料確保対策
1 稲わら収集のすすめ…………………………………………………………………6
0
2 耕作放棄地等の放牧活用……………………………………………………………6
2
参考 1 主要草種の栽培概要一覧………………………………………………………6
4
2 粗飼料評価で使用される語句…………………………………………………6
6
Ⅰ
−1−
Ⅰ−1 県内での栽培に適した牧草・飼料作物の地帯区分と特徴
#!$"
秋に播種する牧草の草種・品種の選定にあたっては地域の根雪日数に注意。
(トウモロコシなど春播きの飼料作物は、根雪日数に左右されない。
)
県内の根雪日数の地帯区分
凡例
根雪日数 6
0日以下
6
0∼9
0日
9
0日以上
村上市
佐渡市
新潟市
長岡市
上越市
−2−
県内に適する主な牧草・飼料作物
○
オーチャードグラスは採草地・放牧地の基幹草種で、県内全域で栽培が可能。
○
リードカナリーグラスはイネ科牧草の中では嗜好性は劣るが、永続性に優れる。
○
ライグラス類は、他のイネ科牧草に比較して耐雪性が劣るので、根雪日数の長い地帯(根雪日
し こう
数9
0日超)での栽培には不向き。
○
チモシーは耐暑性が劣るので、冷涼な地帯での採草利用向け。
○
トールフェスクは放牧地の補完草種。
○
アルファルファは播種した年の根雪日数が長いと越冬個体が減少する。
【主な牧草・飼料作物の特性】
根雪日数
培
特
性
利用適性
放
乾
雪
牧
草
性
性
性
サイレージ
耐
湿
干
転 作 利 用
耐
耐
(飼料作物)
性
作期
暑
日 以 上
9
0
日
作物名
︱
日 以 下
0 (牧草)
6
0 6
0 9
・
耐
目
再 生 利 用
項
栽
利用年限
イ ネ 科 牧 草
マメ科牧草
飼 料 作 物
オーチャードグラス
リードカナリーグラス
イタリアンライグラス
雑種ライグラス
チモシー
トールフェスク
ペレニアルライグラス
○
◎
◎
◎
○
◎
○
◎
◎
○
◎
○
◎
◎
◎
◎
△
○
○
◎
◎
多
多
短
短
多
多
多
年
年
年
年
年
年
年
◎
◎
◎
◎
◎
◎
◎
○
◎
○
○
△
◎
△
○
◎
○
○
△
◎
△
○
◎
◎
◎
◎
◎
○
○
○
◎
◎
○
○
―
◎
◎
△
○
◎
◎
◎
◎
◎
◎
◎
◎
○
―
◎
◎
○
○
◎
○
―
◎
○
×
△
○
◎
◎
アルファルファ
赤クローバー
白クローバー
◎
◎
◎
○
◎
◎
△
◎
◎
多
多
多
年
年
年
◎
◎
◎
◎
◎
◎
◎
◎
◎
△
◎
◎
×
○
○
△
◎
◎
◎
◎
―
×
×
―
×
×
◎
トウモロコシ
ソルガム
スーダングラス
栽培ヒエ
エンバク
◎
◎
◎
◎
◎
◎
◎
◎
◎
◎
◎
◎
◎
◎
◎
春∼秋
春∼秋
春∼秋
春∼秋
春∼秋
―
○
◎
○
×
◎
◎
◎
◎
◎
◎
◎
◎
◎
○
△
○
○
◎
△
○
○
○
◎
○
―
―
―
―
―
◎
◎
○
○
○
―
―
△
○
○
―
―
―
―
―
凡例
◎適・強
○やや適・やや強
△やや不適・やや弱
−3−
×不適・弱
Ⅰ−2−(1)県内に適する主な牧草の特徴
#!$"
○
多年利用する採草地、放牧地の基幹草種にはオーチャードグラスが適当。
○
1∼2年の短年利用の場合はライグラス類が適当。
○
放牧利用の場合はオーチャードグラスを基幹に、気象条件や地形等を考慮し補完
草種を混播。
【主なイネ科牧草の特徴】
草
種
名
特
徴
オーチャードグラス
・多年生(5∼6年)
・耐寒・耐雪性に優れ、広い地域で栽培可能
し こう
・嗜好性も優れ、採草及び放牧利用の適性が高い
・年数を経ると株立ちし、裸地化しやすい
・年間3回以上は収穫可能
リードカナリーグラス
・イネ科牧草の中で、耐寒・耐雪性、耐湿性、耐暑性が最強
・地下茎(ランナー)で増殖し、永続性に優れる
・乾きやすいので乾草仕向けに適するが、牛の嗜好性は劣る
サイレージ化で嗜好性改善
・年間3回以上は収穫可能
イタリアンライグラス
・短年生(1∼2年)
・嗜好性に優れ、播種翌年の1番草は生育旺盛
・耐雪性に劣り、根雪日数の長い積雪地帯には不向き
・永年草地の利用1年目の収量確保の補完草種として最適
・転作田での1年利用に最適
ハイブリッドライグラス
・イタリアンライグラスとペレニアルライグラスの交配種
・イタリアンライグラスより耐雪性、耐暑性に優れる
ペレニアルライグラス
・多年生で、嗜好性に優れ放牧地向け
・耐雪・耐寒性に優れるが、耐暑性はやや劣る
・オーチャードグラスと組み合わせ放牧地の補完草種
トールフェスク
・多年生
・耐寒、耐雪性、耐暑性に優れるがやや嗜好性が劣る
・夏枯れが心配される放牧地の補完草種
−4−
【リードカナリーグラス主体の採草地(阿賀町)
】
【肉用牛の放牧草地(佐渡市)
】
【乳用牛の放牧草地(津南町)
】
−5−
Ⅰ−2−(2)採草地、
放牧地に適する牧草の組合せ
採草利用する場合の牧草の組合せ
・
オーチャードグラスを基幹草種に、気象条件や利用年限、利用方法等により、補完草種とし
てイタリアンライグラス、リードカナリーグラス等を組合せる。
・
播種後の越冬個体を確保するために、組合せ播種量は3kg/10a を目安とする。
(1)
ア
永年利用の草地
牧草の組合せ
オーチャードグラスを基幹草種に、イタリアンライグラスを組合せる。
根雪日数の長い地帯では、イタリアンライグラスの雪腐れが懸念されるのでハイブリッ
ドライグラスを用いる。
イネ科牧草の夏枯れが発生しやすい平場地域ではリードカナリーグラスを組合せる。
イ
マメ科牧草の扱い
マメ科牧草は刈り取り後に乾きにくく、乾草づくりを予定する草地には不向きである。
サイレージづくりを主体とする草地の場合は、栄養価を高めるため赤クローバー0.
3kg
/1
0a 程度を目安に混播する。
(2)
短年利用の草地
転作田等で1∼2年の利用を予定する場合は、少雪・平場地帯ではイタリアンライグラス
を、多雪・山間地帯ではハイブリッドライグラスの利用が適当である。
いずれの草種も他のイネ科牧草に比較し、越冬性、越夏性が劣り、特にイタリアンライグ
ラスは永続性が極めて劣るので経年利用には不向きである。
ライグラス類は播種後の発芽・定着が優れ、翌年の1番草の生育も旺盛であるので、
播種量は2.
5kg∼3.
0kg/1
0a とし、単播でよい。
必要以上に厚播きにすると、越冬時に雪腐れを発生する恐れがある。
! )*(#*%"&'#$ !
イタリアンライグラスやハイブリッドライグラスは、発芽・初期生育が旺盛であり、不耕
起播種によっても定着が期待できるので、草地の裸地化を防止するための追播に有効。
−6−
放牧利用に適する牧草の組合せ
・
採草利用と同様にオーチャードグラスを基幹草種に、気象条件や放牧家畜の種類(乳用牛、肉
用牛)
、地形等を考慮し、補完草種を組合せる。
・
放牧家畜が乳用牛主体の場合は、嗜好性に優れるペレニアルライグラスや耐暑性のあるトール
フェスクを補完草種として混播する。
・
肉用牛(繁殖牛)主体の放牧利用の場合は、やや嗜好性は劣るが永続性に優れるリードカナリ
ーグラスを少量混播しておくと、利用年限の延長が期待できる。
・
傾斜地が多く、掃除刈りが困難な放牧地の場合は、補完草種としてケンタッキーブルーグラス
等の芝タイプの草種を混播する。
【採草地、放牧地の一般的な組合せ、播種量】
採
(単位:kg/10a)
草
地
放
草
種
畑
地
転
換
牧
地
田
冷涼地域 平場地域 排水良好 排水不良 短期利用 冷涼地域 平場地域
オーチャードグラス
リードカナリーグラス
ライグラス類
ペレニアルライグラス
トールフェスク
赤クローバ
白クローバ
合
計
2.
5
−
0.
5
−
−
(0.
5)
−
1.
5
1.
5
0.
3
−
−
−
−
2.
5
−
0.
5
−
−
−
−
1.
5
1.
5
0.
3
−
−
−
−
−
−
2.
5∼3.
0
−
−
−
−
2.
5
−
−
0.
5
−
−
0.
5
2.
0
−
−
0.
5
1.
0
−
0.
5
3.
0
(3.
5)
3.
3
3.
0
3.
3
2.
5∼3.
0
3.
5
4.
0
【牧草刈り取り収穫作業(津南町)
】
【ロールベールの調整作業(上越市)
】
−7−
Ⅰ−2−(3)牧草地の造成・更新
#!$"
○
寒地型イネ科牧草の発芽適温は1
5∼2
5℃。
○
少雪・平場地帯では9月下旬までに、積雪・山間地帯では8月下旬までに播種す
る。
事前作業
造成・更新予定地の土壌分析及び施用する堆肥の分析を行い、土壌改良資材の投入量、化学肥料
の施用量を求めておく。
(具体的な施肥方法については、2
9・3
0ページを参照。
)
準備する資材(10a 当たり)
堆肥
石灰
種子
肥料
2t(分析により成分を把握しておく)
土壌分析により必要量算出
組合せ種子 3∼4kg
窒素1
0kg リン酸10kg カリ5kg を目安に土壌分析によりカリを減量
具体的作業の流れ
① 雑草除去 → ② 堆肥散布 → ③ 土壌改良資材散布 → ④ 耕起・砕土
⑤ 整地・播種床づくり
①
→
⑥ 播種・施肥
→
⑦ 鎮圧
雑草除去
雑草が目立つ場合は、これらを除去した後に耕起作業を開始する。
強害雑草のギシギシ等の多年生雑草は薬剤を散布し、確実に枯死させた後に耕起する。除草剤
使用の詳細については、2
4・2
5ページを参照。
②
堆肥散布
1
0アール当たり2トンを目安に全面散布する。
③
土壌改良資材散布
土壌分析結果に基づき、土壌 pH6.
0を目標に石灰等を全面散布する。
④
耕起・砕土
ロータリ耕起は砕土率を高めるため低速・高回転で行う。
雑草が多い場合は、プラウ耕により「天地返し」後に、ロータリ耕を行う。
−8−
⑤
整地・播種床づくり
耕起後にツースハロやドライブハロ等を用い、均一に整地する。
⑥
播種・施肥
数種類の牧草を混播する場合は、事前に種子を混ぜ合わせ、ブロードキャスタや散粒機等で均
一に散布する。
播きムラを防止するために、縦横十文字に播種する。
⑦
鎮
圧
覆土を兼ねて、確実にタイヤローラ等を用いて鎮圧する。
【牧草地の強害雑草
ギシギシ、ワラビの除草剤と散布時期】
:散布時期
薬剤名
対象雑草
ハーモニー
ギシギシ生育期
薬剤散布時期
4月
ギシギシ展葉期
(9∼5月)
ワラビ
6月
7月
8月
9月
1
0月
1
1月
茎葉に散布
(1番草刈り取り後から最終番草収穫後まで)
バンベルD ギシギシ生育期
アージラン
5月
秋期最終刈り取り後3
0日以内に散布
葉に局所散布
葉に局所散布
展葉期
ワラビ展葉期に茎葉に散布
平成1
8年度農作物病害虫雑草防除指針(新潟県)
(図中の薬剤は平成1
9年1月1
2日現在の登録農薬
【除草剤使用に関しての留意事項】
本書では、平成1
8年度の農作物病害虫雑草防除指針に記載の農薬(除草剤)のうち、平成1
9
年1月1
2日現在、農薬取締法上で登録のある薬剤について、その使用方法を掲載している。従
って、登録内容の変更により、本書に記載の農薬が後に使用不可となる場合もある。
農薬取締法においては、農薬の使用者が遵守すべき基準の1つとして、適用作物、使用量・
希釈倍率、使用時期、使用総回数等を内容とする「農薬使用基準」が定められており、違反者
に対しては罰則が規定されている。
また、食品衛生法の一部改正によりポジティブリスト制度が導入され、農薬の管理・使用に
はこれまで以上に注意を払う必要がある。
このため、農薬使用にあたっては、必ず最新の登録内容等を確認し、使用者の責任において
適切に管理・使用すること。
−9−
Ⅰ−2−(4)採草地の肥培管理
#!$"
○
採草利用では、年間の施肥量の1/2は消雪後に施用。
○
経年化した草地は土壌分析により化学肥料を使い分ける。
肥培管理の留意点
肥培管理は、窒素、リン酸、カリ及び石灰の施用を主体とするが、リン酸、カリの施用量は土壌
分析により加減する。特に堆肥を連年施用している草地ではカリが集積しているので、過剰施用に
留意する。
(単位:kg/1
0a)
年間の施用量の目安
施
消
1
2
3
年
用 時 期
雪
後
番 刈 後
番 刈 後
番 刈 後
間
窒
素
7∼8
4
3∼4
―
1
6
リ ン 酸
4
―
4
―
8
カ
リ
6
3
3
―
1
2
堆
肥
―
―
―
2t
2t
①
窒素の施用は1回当たり1
0アール1
0kg を上限とする。
②
高温、干ばつ時には窒素、カリの施用を控える。特に2番草収穫後の夏季高温時の尿素施用
は控える(濃度障害)
。
③
窒
土壌分析により石灰類を2∼3年毎に1
0アール当たり1
0
0kg 施用する。
素
窒素は牧草の増収効果は高いが、利用初年目や夏季高温時には牧草の生育に障害を起こす恐れが
あるので、草勢を見ながら加減する。
窒素肥料の種類
肥料
窒素保証成分
尿素
窒素全量
46%
特
徴
肥効性
水に溶けやすいが、施用してもすぐに土壌には吸着されない。
施用後2日ほどで炭酸アンモニアに変わり、土壌に吸着されやすくなる。 遅
アンモニアは、硝酸化成菌により硝酸イオンとなり、植物に利用される。
硫安
アンモニア性
窒素
21%
水に溶けやすく、土壌に吸着されやすい。
アンモニアイオンと硝酸イオンに分解された後、硫酸イオンが土壌中の
カルシウムイオン等を伴って溶脱することにより、土壌の酸性化が進む。
中
塩安
アンモニア性
窒素
25%
水に溶けやすく、土壌に吸着されやすい。
アンモニアイオンと塩素イオンに分解された後、塩素イオンが土壌中の
カルシウムイオン等を伴って溶脱することにより、土壌の酸性化が進む。
硫安よりも水に溶けやすく速効性があるが、雨による流亡も多い。
速
肥料便覧第5版(平成1
5年農文協)から引用
リン酸
リン酸は増収効果は大きくないが、家畜栄養面において重要な成分である。ただし、土壌へ集積
しやすいので、土壌分析により施用量を加減する。
カ
リ
増収効果も高いが、ゼイタク吸収により牧草のミネラルバランスを悪化させるので土壌分析によ
り、施用量を加減する。特に、牛尿を施用する草地においてはカリの施用は控えてもよい。
−1
0−
Ⅰ−2−(5)放牧地の管理
#!$"
○
放牧は消雪後、牧草が2
0㎝程度に伸びたら早めに開始する。
○
施肥は年2回に分けて散布する。
1回目は1∼2回放牧利用後の梅雨時期に、2回目はお盆過ぎが目途。
放牧利用の留意点
イネ科牧草は、早春から初夏にかけて旺盛な生育をするので、早めに放牧を開始する。
オーチャードグラス主体の放牧地であれば、1度放牧利用した場所の牧草の再生期間は1
5日∼
2
5日程度であり、草勢を見ながら年間6∼8回の放牧利用が可能である。
留意点
①
牛に採食されずに牧草が過繁茂状態になり、倒伏したり、踏圧されると牧草密度が低下する
ので、不食過繁草は1回目の追肥前に刈り払う。
②
不食過繁草は刈り取り、乾草等として草不足になる秋の補助飼料として利用する。
③
草勢が衰える秋に、強放牧・過放牧状態が続くと牧草密度が衰退するので、放牧頭数を減じ
るか、補助粗飼料を給与する。
放牧地の肥培管理
∼年間の施肥量は採草地の半量程度∼
牧草の生育が旺盛な春には施肥を控え、1回目の施肥は1∼2回放牧利用後に年間の半量程度を
目安に行う。
施肥量、施肥時期の目安
(単位:kg/10a)
施肥時期
窒素
リン酸
カリ
1回目
2回目
梅雨入り∼7月上旬
お盆過ぎ
5∼6
4∼5
3
5
2∼3
1
合計
―
1
0
8
4
留意点
リン酸、カリの成分は牛のふん尿から還元されるので、永年利用の放牧地においてはリン酸、カ
リの施用量を半減してもよい。
−1
1−
Ⅰ−3−(1)トウモロコシの栽培
#!$"
○
平均気温が1
0℃以上であれば発芽可能。早めの播種で安定収量。
○
湿害に弱いので、排水良好な場所を選び栽培することが基本。
品種選定
一般に、早生品種に比較して晩生品種の収量は多いが、収穫時期を考慮し品種を選定する。
播種から収穫までの日数目安
収穫までの日数
梅雨時期∼初夏の気温により生育が左右
早生品種
中生品種
晩生品種
1
0
5前後
1
1
0前後
1
1
5∼
され、冷夏年は収穫までの日数が伸びる。
留意点
早晩性の区分は市販種子の袋に記載されている相対熟度(RM)を参考にする。「相対熟度」と
は播種から収穫までの大まかな日数目安。
栽
培
品種にあった栽植本数を確保するため、水はけの良い場所で、砕土率の高い播種床を準備する。
堆肥を活用し、化学肥料を加減する。
(具体的な施肥方法については、3
0・3
1ページを参照。
)
準備する資材(1
0a 当たり)
堆
石
種
肥
除 草
①
肥
灰
子
料
剤
2t (成分分析をしておく)
1
0
0∼1
5
0kg
2∼3kg
窒素1
5kg(∼2
0kg) リン酸15kg カリ10kg(∼1
5kg)
播種直後の土壌処理剤
播種床
堆肥・石灰を散布後にロータリ耕起する。ロータリ耕は低速・高回転で行うと砕土率が高ま
る。さらにドライブハロで仕上げると均一な播種床が得られる。
②
播種から鎮圧まで
コーンプランタ等の専用機を用いると播種・施肥から鎮圧までの作業が一行程で済む。
人力又は手押し播種機を用いる場合は、耕うん機等の管理機で播き溝を作り、肥料を施し、
軽く土をかけ、その上に播種し、覆土・鎮圧する。
−1
2−
③
肥
料
播種前に施用した堆肥から供給される有効肥料成分を差し引き、不足分を化学肥料で補う。
(具体的な施肥方法については、3
0・3
1ページを参照。
)
肥料は全量を基肥で施用して良い。
牛ふん堆肥は肥料成分としてリン酸、カリを多く含むので、有効に活用する。
④
栽植密度(種子の量)
トウモロコシは密植にすると子実収量割合が下がり、栄養収量(TDN)が減少するので、
品種にあった適正栽植密度を確保する。
早生品種はやや多めの本数、晩生品種は少なめの本数にする。
トウモロコシの栽植本数の目安
早晩性
極早生、早生
中生
晩生
適正本数
本/1
0a
実播種粒数
粒/1
0a
7,
0
0
0
6,
5
0
0
6,
0
0
0
7,
7
0
0
7,
2
0
0
6,
6
0
0
畦幅別の株間(㎝)
畦間7
0cm
株間1
8.
6
1
9.
8
2
1.
2
畦間7
5cm
株間1
7.
3
1
8.
5
1
9.
9
畦間8
0cm
株間1
6.
2
1
7.
4
1
8.
7
市販されている種子は、種子袋の裏に1kg 当たりの粒数が記載されている。
概ね1kg で3,
0
0
0粒∼4,
0
0
0粒。
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コーンプランタを用いる場合は、予め機械の播種畦幅を調整し、試験運転により種子の落
ちる間隔(株間)を調整しておく。
⑤
除草剤
覆土・鎮圧直後の土壌処理剤の全面散布が基本となる。対象雑草(イネ科雑草か広葉雑草か)
により、使用薬剤を使い分ける。
薬剤使用については、2
4・2
5ページを参照のこと。
⑥
収穫時期の判断
黄熟期収穫が乾物収量、栄養収量も高く、良質なサイレージ発酵が得られる。
黄熟期の見分け方
乳熟期:
糊熟期:
黄熟期:
完熟期:
∼子実を爪で押す方法
ミルク状の液が出る
のり状(つきたてのモチ状)
やっとへこむ程度。液が出ない
爪がたたない
−1
3−
Ⅰ−3−(2)ソルガムの栽培、収穫
#!$"
○
サイレージ利用する場合はソルゴー型糖蜜タイプを選定。
○
半乾草や乾草として利用する場合はスーダングラスを利用。
ソルガムの生育特性
・
発芽適温は平均気温1
5℃程度の5月上旬。
・
低温時には発芽不良。早播きは危険。
・
播種から収穫までの日数は8
0日∼1
0
0日程度。
・
高温時の生育が旺盛で再生も優れる。2回刈りでトウモロコシを上回る乾物収量。
品種の使い分け
ソルガムには種々のタイプがあるが、トウモロコシと同様に細断してサイレージ調製する場合(固
定サイロ等を利用する場合)はソルゴー型糖蜜タイプを使用、乾草を作る場合、又は半乾草でロー
ルベール調製する場合はスーダングラスを利用する。
利用特性
利用時のポイント
ソルゴー型糖蜜タイプ
・太茎で糖含量が高い ・乳熟から糊熟期に収穫
・サイレージに適する
・再生収量はやや劣る
ス ー ダ ン グ ラ ス
・細茎、分げつ多
・再生に優れる
栽
・出穂期以降は茎が硬化するので出穂前に
刈り取る
培
トウモロコシ栽培と同様であるが、種子が小さいので、砕土率の高い播種床を作り、深播きにな
らないように注意する。
準備する資材(1
0a 当たり)
堆
石
種
肥
除 草
①
肥
灰
子
料
剤
2t (成分分析をしておく)
1
0
0∼1
5
0kg
条播では2∼3kg
散播では3∼4kg
窒素1
0kg
リン酸2
0kg
カリ10kg
播種直後の土壌処理剤
・条播か散播かは、使用する
収穫作業機等により判断す
る。
・施肥方法については、3
0・
3
1ページを参照。
播種床づくり
堆肥・石灰を散布後にロータリ耕起する。ロータリ耕は低速・高回転で行うと砕土率が高ま
る。さらにドライブハロで仕上げると均一な播種床が得られる。
−1
4−
②
播種から鎮圧まで
コーンプランタ等の専用機を用いると播種・施肥から鎮圧までの作業を一行程で行うことが
できるが、土壌が乾いている場合は、別途、十分に鎮圧をする。
人力又は手押し播種機を用いる場合は、耕うん機等の管理機で播き溝を作り、肥料を施し、
軽く土をかけ、その上に播種し、覆土・鎮圧する。
! )*(#*%"&'#$ !
ソルガムの種子は小粒なので、肥料と混ぜて散布すると肥料やけによる発芽障害の恐れが
ある。別々に散布すること。
③
肥
料
播種前に施用した堆肥から供給される有効肥料成分を差し引き、不足分を化学肥料で補う。
(具体的な施肥方法については、3
0・3
1ページを参照。
)
④
除草剤
覆土・鎮圧直後の土壌処理剤の全面散布が基本となる。
除草剤使用については、2
4・2
5ページを参照のこと。
⑤
追
肥
再生草を利用する場合は1番草収穫直後に刈り株に沿って追肥する(窒素5kg)
。ただし、
1番草を8月上旬までに収穫しないと、2番草は充分な収量が期待できない。
⑥
収穫時期及び利用・調製方法
収穫時期
ソルゴー型糖蜜タイプ
ス ー ダ ン グ ラ ス
利用・調製方法
乳熟∼糊熟期
サイレージ調製
・1∼1.
5cm に細断し密封
・糖分を多く含むので添加物は不要
1番草は出穂前
2番草は適宜
乾草、半乾草利用
・刈り倒し後、充分に反転し、乾燥させる
・半乾草の場合はラッピングし保管する。
茎によるピンホールに注意
−1
5−
Ⅰ−3−(3)エンバク・栽培ヒエの利用
#!$"
○
飼料価値に優れる作物ではないが、栽培はしやすい。
○
エンバクは生育日数は短いが1回刈り。播種期幅が広い。耐湿性は劣る。
○
ヒエは耐湿性に優れ転換田に向く。生育日数が短く2番草も利用可能。
エンバク
栽培ヒエ
準備する資材(1
0a 当たり)
準備する資材(1
0a 当たり)
堆
石
種
肥
①
肥
灰
子
料
播
2t
1
0
0∼1
5
0kg
8∼1
2kg
窒素7∼1
0kg リン酸4∼5kg
カリ6∼7kg
(具体的な施肥方法については、
3
0・3
1ページを参照。
)
堆
石
種
肥
種
①
・水はけの良い畑を利用する。
肥
灰
子
料
2t
1
0
0∼1
5
0kg
3∼4kg
窒素・リン酸・カリ各1
0kg
(具体的な施肥方法については、
3
0・3
1ページを参照。
)
播
種
・耕起、施肥、整地後に全面散播し、鎮圧
・耕起、施肥、整地後に全面散播し、浅く
する。
ロータリを掛け、覆土とし、軽く鎮圧す
る。
②
播種時期と収穫時期
・播種は5月中旬から7月上旬まで可能。
②
播種時期と収穫時期
・播種後5
0日程度で出穂するので、収穫時
・春播きは初夏に刈り取り利用。
期から逆算し、播種する。
・トウモロコシなどの後作としての8月下
・梅雨明け後に乾草として収穫する場合は、
旬以降に播種する場合は年内利用。
6月上中旬の播種が適当である。
・夏播きの場合は、年内に出穂することは
ない。
③
収穫利用
・早播き、早刈りにより再生草の利用も可
③
収穫利用
能ではあるが、再生力は弱いので、1回
・再生は良くないので、1回刈り利用。
刈りが適当である。
・生草給与の場合は出穂期刈り、サイレー
・出穂期に刈り取り、乾草又は半乾草をラ
ジ利用の場合は乳熟期刈りが適当である。
−1
6−
ッピングし、保管する。
【転作田でのエンバク栽培(小千谷市)
】
【エンバクの収穫作業(上越市)
】
【栽培ヒエの収穫作業(上越市)
】
−1
7−
Ⅰ−4−(1)発酵粗飼料用稲の栽培
(#*%
○
基本的な栽培方法は、食用品種と同様である。
○
異なる点は、早期落水等の水管理。
○
使用する除草剤等の農薬は、発酵粗飼料用稲に登録のある薬剤のみを使用する。
品種選定
栽培方法、いもち病への対応、収穫時期等の条件を考慮し品種を選定する。
主な品種の特徴
品種名
特
徴
トドロキワセ
・食用の早生品種で、5月中旬移植で8月中旬の収穫が可能
・いもち病に強く、無防除での栽培も可能
・耐倒伏性はやや劣るので、多肥栽培は不向き
・飼料作物として県認定品種
夢 あ お ば
・飼料用イネの専用品種
早生品種
・5月中旬移植で8月中、下旬の収穫が可能
・いもち病に強く、耐倒伏性は極強
・湛水直播、多肥栽培に適
・県飼料作物認定品種
クサユタカ
・飼料用イネの専用品種
・いもち病抵抗性は中程度
クサホナミ
は ま さ り
中生品種
・飼料用イネの専用品種
晩生品種
・稈長は高いが耐倒伏性は強い
・いもち病に強い
・飼料用イネの専用品種
・いもち病に強い
極晩生品種
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いもち病に強い品種を選択し、農薬の使用を控える。
使用する農薬は、発酵粗飼料用稲に登録のあるものを確認のうえ選択し、使用者が責任を
持って使用すること。
栽
培
基本的な栽培方法は水稲と同様であるが、収穫にトラクタけん引の牧草作業機等を使用すること
から、田面の地耐力を高めておく必要があり、水管理が水稲栽培と大きく異なる。
−1
8−
水管理∼収穫作業対策
留意点
①
収穫作業が可能な地耐力を確保するための、溝切りと強めの中干しと出穂期の落水
溝切り
6月中旬頃に実施する。水を落とし、地固め後に幅1
5cm、深さ1
0cm の溝を10アール当たり6
∼8本掘り、水尻につなぐ。
②
中干し
田面にひびが入り、軽く足跡が付く程度まで強めに行う。
中干し後の水管理は、浅水の間断かん水とする。
③
落
水
出穂期落水を基本とする。
極端な早期落水は登熟歩合の低下により減収となる。
④
収
穫
発酵粗飼料用稲の収穫時期は糊熟期から黄熟期が適当である。
糊熟期は出穂後1
5日前後、黄熟期は出穂後2
5日前後であり、この頃が収穫適期となる。なお、
晩生品種ではこれより登熟期が3日ほど遅れる。
【専用収穫機による発酵粗飼料用稲の
【発酵粗飼料用稲のロールと
収穫(小千谷市)
】
−1
9−
ラッピングマシン(田上町)
】
Ⅰ−4−(2)わら専用稲の品種と水管理
#!$"
○
飼料用イネ専用品種を用いる。
○
収穫作業(乾燥わら作り)を想定した水管理が重要。
○
農薬は、稲に登録のあるものから選択し、使用する。
品種選定
農薬の使用を減らすために、専用品種の中でも「いもち病」等に強い品種を用いる。
主な品種の特徴
品種名
特
徴
夢 あ お ば
・いもち病に強く、縞葉枯病に抵抗性がある早生品種
・湛水直播、多肥栽培に適
耐倒伏性は極強
・県飼料作物認定品種
クサユタカ
・いもち病抵抗性が中程度の中生品種
クサホナミ
・いもち病に強く、縞葉枯病に抵抗性がある晩生品種
・葉やモミは無毛
稈長は高いが耐倒伏性は強い
は ま さ り
・いもち病に強く、縞葉枯病に抵抗性がある極晩生品種
・葉やモミは無毛
茎葉収量が特に多い
水管理∼収穫作業対策
∼溝切りと強めの中干し、出穂期の落水を徹底∼
基本的な栽培方法は発酵粗飼料用稲と同様であるが、収穫にトラクタ牽引の作業機を使用し、刈
り取り、反転、集草、梱包、搬出等、田面での作業回数が多いことから、特に地耐力を高めておく
必要があり、水管理が重要である。
①
溝切り
6月中旬頃に実施する。水を落とし、地固め後に幅1
5cm、深さ1
0cm の溝を1
0a 当たり6∼8
本掘り、水尻につなぐ。
②
中干し
田面にひびが入り、軽く足跡が付く程度まで強めに行う。
中干し後の水管理は、浅水の間断かん水とする。
③
落
水
出穂期落水を基本とする。
④
収
穫
完熟後、葉が退色する頃に収穫する。
−2
0−
Ⅰ−5 水田における飼料作物栽培の留意点
#!$"
○
排水の良否に応じて、栽培する飼料作物を選定する。
○
地表水の排水対策として明きょ(額縁排水溝)を設置する。
草種選定
ほ場の排水の良否や利用年数を考慮し、栽培草種を使い分ける。
ほ場の利用年数別及び排水の良否による草種選定
ほ場の排水の良否
ほ場利用期間
不
良
やや不良
普
良
好
ヒエ
イタリアンライグラス
エンバク
トウモロコシ
リードカナリーグラス
(ヒエ)
永年牧草
ソルガム
トウモロコシ
アルファルファ
1∼2年利用
飼料イネ
多 年 利 用
−
排水対策
∼地表水と地下浸透水の排水対策∼
①
通
地表水の排水
水田は畑に比べ透水性が劣るので、排水効率を高めるためには、地表水の排水を徹底する必要
がある。
周囲明きょ(額縁排水溝)
ほ場周囲に、幅3
0cm、深さ3
0∼4
0cm 程度の溝を設置する。ほ場4辺の溝を連結し、排水口に
つなぐ。
必要に応じ、中央明きょや排水溝を設置する。
明渠設置の例
周囲明きょ
中央明きょ
排
4隅をつなぐ
②
水
【溝掘機】
溝
排水路
【弾丸暗きょ機】
地下浸透水の排水
地下浸透水の排水対策として暗きょが施工されている水田においては、暗きょと直交させた弾
丸暗きょを設置すると、排水効率が高まる。弾丸暗きょは深さ3
0∼4
0cm 程度に設置する。
−2
1−
Ⅰ−付表 飼料作物の奨励品種・認定品種
奨励品種、認定品種
県内での栽培に適する優良な牧草・飼料作物品種として県が飼料作物奨励品種等選定協議会にお
いて認定。
∼
○
奨励品種・認定品種を利用して、高収量・高品質な生産を目指しましょう。∼
奨励品種・認定品種(平成1
7年9月現在)とその特性
飼料作物名
品
系 統 名
種
流 通 名
早晩生
◎:奨励
○:認定
特
性
とうもろこし
NS−68
セシリア
KD640
ゆめそだち
サイレージコーン早生
パイオニアセシリア
ゴールドデント KD640
ゆめそだち
早生
早生
早生
中生
◎
◎
◎
◎
乾物収量や栄養収量が高い。耐病性に優れる。
耐倒伏性が強く、多収である。
倒伏・虫害が少なく、刈り取り作業性に優れる。多収である。
雌穂割合が高く、栄養収量が多い。耐病性に優れる。
ソルガム ソルガム型
KCS−105
SG−1A
スーパーシュガーソルゴー
甘味ソルゴー
中生
中生
◎
◎
太茎で糖含量が高く、サイレージに適する。
太茎で糖含量が高く、サイレージに適する。
HS−67
HS−9401
SD−1
トップスーダン
ベールスーダン
ロールベールスーダン
早生
中生
晩生
◎
◎
◎
耐倒伏性が強く、多収である。
耐倒伏性が強く、多収である。細茎でラップサイレージ向き。
耐倒伏性及び耐病性が強く、多収である。
イタリアンライグラス
ワセアオバ
ナガハヒカリ
エース
ワセアオバ
ナガハヒカリ
エース
早生
中生
晩生
◎
◎
◎
耐寒性・耐雪性に優れる。
耐雪性に優れ、収量が高い。耐倒伏性が強い。
耐雪性が強い。再生力に優れ、周年利用が可能。
オーチャードグラス
POTOMAC
キタミドリ
ナツミドリ
マキバミドリ
ポトマック
キタミドリ
ナツミドリ
マキバミドリ
早生
早生
早生
中生
◎
◎
◎
◎
再生力に優れ、多収である。さび病、雲形病に強い。
耐寒性が強く、再生が早い。多収である。
耐暑性が強く、永続性に優れる。黒さび病に抵抗性。
多収であり、雲形病・うどんこ病などに抵抗性。
トールフェスク
KENTUCKY31
ケンタッキー31
早生
◎
耐寒性・耐暑性に優れ、再生力が強い。やせた土地でも生育。
ペレニアルライグラス
ヤツナミ
ヤツナミ
晩生
◎
多収であり、特に春の草勢に優れる。冠さび病、葉腐病に強い。
リードカナリーグラス
PALATON
VENTURE
パラトン
ベンチャー
中生
中生
○
○
耐湿性に優れ、多収。アルカロイド含量が少ない。
耐湿性に優れ、多収。アルカロイド含量が少ない。
ハイブリッドライグラス ハイフローラ
ハイフローラ
中生
◎
越冬性、越夏性に優れる。2年目収量も多い。
発酵粗飼料用稲
トドロキワセ
夢あおば
トドロキワセ
夢あおば
早生
早生
○
○
いもち病に対して抵抗性が強い。
耐倒伏性が強く、多収である。いもち病抵抗性がある。
栽培ヒエ
グリーンミレット早生
白ビエ
ホワイトパニック
グリーンミレット早生
白ビエ
ホワイトパニック
早生
早生
中生
○
○
○
倒伏に強く、収量が高い。発芽が良好。
倒伏に強く、収量が高い。発芽が良好。
草丈が高く、多収。
アルファルファ
タチワカバ
タチワカバ
中生
◎
再生が良好で、永続性に優れる。耐倒伏性が強い。
アカクローバ
KENLANDO
ケンランド
早生
◎
耐病性・耐暑性に優れ、多収である。
シロクローバ
ニュージーランドホワイト ニュージーランドホワイト
早生
◎
再生力が強く、永続性に優れる。耐寒性が強い。
スーダン
グラス型
注)奨励品種・認定品種には、種子の販売状況やその後の適性試験結果により改廃があるので、確
認のうえ利用する。
−2
2−
飼料作物栽培・収穫作業時の事故防止
飼料作物の栽培、収穫、保管作業等に当たっては、下記の点に注意して事故の未然
防止に努める。
1
作業時の転落・転倒事故
・トラクター等運転時には常に安全速度で走行し、急発進・急加速は行わない。
また、路肩やほ場の端に寄りすぎない。
・ほ場への出入りや畦畔を乗り越える場合は、車体が斜めに入らないようにする。
・傾斜地での作業にはバランスウエイトを取り付ける。
・収穫物を積み上げたりする作業では、倒壊、転落、埋没に注意。
2
挟まれ・巻き込まれ事故
・作業機と壁などの間に挟まれないよう、十分な間隔を取って作業する。
・点検、清掃時にはエンジンを止め、必ず駐車ブレーキをかける。
・作業機の回転部分に着衣の裾、袖口などが巻き込まれないよう注意。
3
酸欠事故
・半地下サイロなど、閉鎖空間で作業を行う場合は酸欠に注意。
4
傷害事故
・刈り払い機等の回転作業機を操作する場合には、飛散物に注意し、保護具など
を着用する。
・カッター部分の点検、清掃は必ず作業機を停止し行う。
−2
3−
Ⅱ−1 牧草地や飼料畑で使用する除草剤
○
農薬取締法においては、農薬の使用者が遵守すべき基準の1つとして、適用作物、使用量・希
釈倍率、使用時期、使用総回数等を内容とする「農薬使用基準」が定められており、違反者に対
しては罰則が規定されている。
○
本書では、平成1
8年度の農作物病害虫雑草防除指針に記載の農薬(除草剤)のうち、平成1
9年
1月1
2日現在、農薬取締法上で登録のある薬剤について、その使用方法を掲載しているが、登録
内容の変更により、掲載農薬が使用不可となる場合もある。
○
また、食品衛生法の一部改正によりポジティブリスト制度が導入され、農薬の管理・使用には
これまで以上に注意を払う必要がある。
○
このため農薬の使用にあたっては、必ず最新の登録内容等を確認し、使用者の責任において適
切に管理・使用すること。
○
農薬に関する最新の情報は、インターネットを利用して各農薬メーカーや下記のホームページ
等で入手できる。
農林水産省「農薬コーナー」
http : //www.maff.go.jp/nouyaku/
独立行政法人
http : //www.acis.go.jp/
農薬検査所
JPP-NET(社団法人日本植物防疫協会)
http : //www.jppn.ne.jp/
牧草地用除草剤
①
草地更新時に使用する除草剤
∼耕起前の薬剤散布が基本∼
ギシギシなどの多年生雑草の拡大を防ぐため、草地を耕起する2週間以前に薬剤を散布し、雑
草の根を枯らしておく。
(表中の薬剤は平成1
9年1月1
2日現在の登録農薬)
薬 剤 名
使用回数
留
意
事
項
1
ラウンドアップ
ハイロード
1回
耕起造成前の雑草生育期に散布する場合は、更新・造成の1
0日
以前に使用。
2 耕起整地後の雑草発生揃期に散布する場合は、播種1
0日以前か
ら播種当日までに使用。
平成1
8年度農作物病害虫雑草防除指針(新潟県)
②
牧草生育期に使用する除草剤
散布後の採草(放牧)制限期間を確認し、使用する。
薬 剤 名
対象雑草
ハーモニー
ギシギシ生育期
バンベルD
ギシギシ生育期
4月
5月
6月
:散布時期
薬剤散布時期
7月
8月
9月
1
0月
1
1月
茎葉に散布
(1番草刈り取り後から最終番草収穫後まで)
秋期最終刈り取り後3
0日以内に散布
−2
4−
アージラン
ギシギシ展葉期
(9∼5月)
ワラビ
葉に局所散布
葉に局所散布
展葉期
ワラビ展葉期に茎葉に散布
平成1
8年度農作物病害虫雑草防除指針(新潟県)
(図中の薬剤は平成1
9年1月1
2日現在の登録農薬
飼料作物用除草剤
∼播種直後の土壌処理剤散布が基本∼
トウモロコシ・ソルガムの除草剤は、播種直後の土壌処理剤を基本とし、必要に応じ、茎葉処理
剤を散布する。
トウモロコシ栽培で使用できる除草剤(表中の薬剤は平成19年1月12日現在の登録農薬)
薬剤名
散布時期
エ コ ト ッ プ 乳 剤
使用回数
播種後発芽前
1回
ゴーゴ ー サ ン 乳 剤30 播種直後
1回
ゴーゴーサン細粒剤F
〃
1回
クリアターン乳剤
〃
1回
クリアターン細粒剤F
〃
1回
ロ
〃
1回
ロ
ッ
ク
ス
留意事項
1
砕土、整地は丁寧に行い、播種
直後の雑草発生前に散布。
2 種子が露出しないよう覆土は丁
寧に行う。覆土深は2∼3センチ。
3 土壌が適度の水分を含んでいる
ときに散布。
雑草茎葉処理
ワ ン ホ ー プ 乳 剤
(トウモロコシ生育期)
1
1回
感受性を示す品種があるので確
認して使用。
2 一年生雑草が2∼4葉期の間に
散布。
バ サ グ ラ ン 液 剤
1回
1
イネ科雑草には効かない。
1回
1
イネ科雑草には効かない。
シ ャ ド ー 水 和 剤
イチビ、ショクヨウガ
ヤツリの2∼5葉期
平成1
8年度農作物病害虫雑草防除指針(新潟県)
ソルガム栽培で使用できる除草剤(表中の薬剤は平成19年1月12日現在の登録農薬)
薬剤名
ロ
ロ
ッ
散布時期
ク
ス
使用回数
播種覆土直後
1回
ゴーゴ ー サ ン 乳 剤30
〃
1回
ゴーゴーサン細粒剤F
〃
1回
ゴーゴ ー サ ン 乳 剤30 雑草発生前∼発生直後
留意事項
1
砕土、整地は丁寧に行い、播種
直後の雑草発生前に散布。
2 種子が露出しないよう覆土は丁
寧に行う。覆土深は2∼3センチ。
3 土壌が適度の水分を含んでいる
ときに散布。
1回
平成1
8年度農作物病害虫雑草防除指針(新潟県)
−2
5−
Ⅱ−2 飼料作物生産における適正農業規範(GAP)への対応
ジーエーピー
○
グ ッ ド
アグリカルチャル
プラクティス
適正農業規範とは、 GAP (Good Agricultural Practice)の和訳。食品安全、環境保全、労
働安全、品質向上などの目的で適切な農業生産を実施すること。
○
新潟県では、安全・安心な食料の提供を促進するため、食品安全のための GAP(食品安全
GAP)への取組を推進。
○
飼料作物は人の食べる食品ではないが、生産の各段階における安全確保の取組が求められる。
食品安全GAPの導入
(1)食品安全 GAP 導入のメリット
食品の安全を確保するためのリスク管理手法には、最終産物を抜き取り検査して安全性を確
認するファイナルチェック方式と生産の過程ごとに必要な対策を定め、これらの確実な実施に
より安全性を確保するプロセスチェック方式の2タイプがある。
GAP は、プロセスチェック方式による管理手法である。
プロセスチェック方式は、過程ごとの対策を実施することにより、より高い安全性を確保で
き、複数の危害要因に対応可能である。
農作物は、外部環境から完全に隔離できないほ場において生産され、保管される期間も含め
てさまざまな危害要因にさらされる可能性があるため、安全性確保のためには総合的なリスク
管理が可能な「食品安全 GAP」が有効である。
(2)食品安全 GAP による管理手法
食品安全 GAP
多様なリスクの存在
・人
・生産基盤(水、土壌、ほ場など)
・生産資材(肥料、農薬など)
・栽培管理(水、肥料、農薬など)
・機械、施設、用具
・生産物
・廃棄物 等
①から⑤の繰り返し
①食品安全のための危害要因の
リストアップ
②リストを確認し、適切な生産
方法で作業を実施
③実施内容を記録
(チェックシート)
物理的リスク
化学リスク
(異物混入等) (農薬、
重金属、
自然毒等)
④適切に実施できなかった
要因を検討
微生物リスク
(病原微生物等)
⑤次の作業や次期作に向けて
実施内容や方法を見直し
生産実態に応じた食品安全を策定し実践することで、リスクを回避
−2
6−
飼料作物の安全性確保のためのチェックシート例
生産者名
飼料作物名
ほ場名
工
程
分
生産者の取り組み
(チェック項目)
類
チェック欄
備
考
(できなかった理由など)
土壌(ほ場、周辺環 ◎ほ場来歴やほ場の周辺環境を確認したか
境)
◎有害物質による汚染はないか周辺環境を確認したか
ほ場準備 ・ は 種 ・ 栽 培 ・ 収 穫
種子
受入
◎購入伝票等を確認し、保管したか
は種
◎地域に適した品種を導入し、適正量播種したか
◎作業日時・ほ場の区分・作業者などを記録し、その記録を残し
たか
農薬・肥 受入
料・土壌
改良資材
保管
◎登録農薬を各都道府県の病害虫防除基準に従って選定・確認し
たか、購入伝票等を保管したか
◎資材ごとに区分し、整理・整頓・清掃(3S)を実施したか
◎農薬・肥料の受け払い管理記録を付け、その記録を残したか
農薬散布 ◎登録記録を使用基準どおり使用したか
◎周辺の農作物への飛散防止に配慮したか
◎農薬の使用方法等について、定期的に研修等を受けたか
堆肥
◎施用する堆肥は完熟しており、適正量であることを確認したか
◎作業記録を付け、その記録を保管したか
収穫
適期収穫 ◎適期に収穫できたか
雑草混入 ◎雑草等が多量に混入していないか目視等で確認したか
◎収穫日時・ほ場の区分・作業者・サイレージ調製剤の使用など
を記録し、その記録を残したか
作業機械・資材等運 ◎作業機械・資材等運搬車両は、定期的なメンテナンスと清掃を
搬車両
実施したか
梱包資材
作業者
◎梱包資材は衛生的に管理し、収穫作業は適切だったか
衛生管理 ◎衛生的で清潔な作業衣、帽子、履物を着用したか
保
掃除用具 ◎決められた場所に保管し、常時使用できる状態にしたか
保管施設
◎保管施設は、整理・整頓・清掃(3S)を実施したか
管
◎保管施設の定期的なメンテナンスと収穫物の点検を実施したか
小動物・ ◎発生、侵入、棲息の痕跡はないか確認したか
衛生害虫
◎侵入防止や駆除に努め、その記録を残し、保管したか
作業者
衛生管理 ◎衛生的で清潔な作業衣、帽子、履物を着用したか
給
掃除用具 ◎決められた場所に保管し、常時使用できる状態にしたか
家畜管理 家畜管理 ◎家畜管理施設は、整理・整頓・清掃(3S)を実施したか
施設
施設
与
◎家畜管理施設は、定期的なメンテナンスと点検を実施したか
小動物・ ◎発生、侵入、棲息の痕跡はないか確認したか
衛生害虫
◎侵入防止や駆除に努め、その記録を残し、保管したか
給与作業
※ チェック欄
◎異物やかび混入のないことを確認して給与したか
十分:○、 まあまあ十分:△、 不十分:×
例を参考に、栽培の実態に応じてチェック項目や対策を整理してシートを作成する。
−2
7−
Ⅲ−1 県内の草地土壌の実態と特徴
特 徴:県内の草地・飼料畑は ①カルシウム不足による土壌飽和度及び pH の低下。
②リン酸の富化。マグネシウムは充分。
③堆肥や尿を連用した土壌ではカリが過剰。
県内の永年草地の土壌調査結果(73か所の調査)
①
pH(目標値 6.
0∼6.
5)
目標値内の土壌は1
1%(8か所)しかない。全体に低く、牧草の生産性が低い要因。
②
腐植(目標値
3%以上)
腐植含量は7
0%(5
1か所)が目標値以上であり、良好な状態である。
③
有効リン酸(目標値 2
0mg/1
0
0g 以上)
9
5%(6
9か所)の土壌が目標値を満たしており、むしろ富化状態の傾向が強い。
④
交換性カルシウム(Ca)(目標値 1
0cmol/1
0
0g 以上)
8
1%(5
9か所)の土壌は Ca 不足の状態である。
このことは、pH の低さや後述する塩基飽和度の低さと関連する。
⑤
交換性マグネシウム(Mg)(目標値 1.
0cmol/1
0
0g 以上)
7
9%(5
8か所)の土壌が目標値を満たしている。
⑥
交換性カリウム(K)
(目標値 0.
4∼0.
6cmol/1
0
0g)
4
9%(3
6か所)の土壌が K 過剰になっており、特に堆肥や尿を施用している草地では過剰傾
向が強い。
⑦
Ca 飽和度(目標値 5
0∼7
0%)
、K 飽和度(目標値
2∼5%)
Ca 飽和度が目標値を満たしている土壌は8%(6か所)しかなく、ほとんどが目標値以下。
K 飽和度は4
4%(3
2か所)の土壌が目標値を満たしている。
⑧
塩基飽和度(目標値6
0∼8
0%)
目標値に達している草地は1
5%(1
1か所)しかない。これは、Ca 飽和度の不足が主たる原因
である。なお、塩基飽和度の不足が土壌 pH の低下を招いている。
⑨
Mg/K 比(目標値
2以上)
4
1%(3
0か所)の土壌が目標値以下となっている。これは K 過剰が原因であり特に堆肥や尿
を施用している土壌でその傾向が強い。
−2
8−
土壌調査結果
堆肥・尿の連用と土壌化学性の改善
−2
9−
Ⅲ−2 土壌分析に基づいた土壌改良と施肥
○
良質な牧草・飼料作物を生産するためには、土壌分析に基づいた石灰質資材による土壌改良と
適正量のカリ肥料の施用が重要。
○
土壌分析法については、
「土壌及び植物分析法の手引き」
(平成1
1年3月新潟県農林水産部)を、
分析数値の見方については「新潟県における土づくりのすすめ方」
(平成1
7年2月新潟県農林水
産部)を参照。
土壌分析に基づいた石灰質資材の施用
土壌 pH は草地土壌で最も重要な改良項目である。酸性に偏った土壌では高い収量が望めないの
で、土壌分析によって対象土層の pH を6.
0に中和するのに必要な石灰質資材の量を求め、施用す
る。分析の結果、Mg が不足している場合は苦土炭カルを施用する。
土壌 pH を改善することにより、生産性の向上のほか、植物中のミネラルバランスが改善され、
グラステタニーなどの防止につながる。
土壌 pH と牧草のミネラルバランス((K/(Ca+Mg)比)
pH4.
6
5.
0
5.
5
5.
9 6.
6
オーチャードグラス
3.
1
7
2.
3
3
1.
8
6
1.
7
0 1.
07
リードカナリーグラス
2.
1
2
1.
5
5
1.
3
6
1.
2
6 0.
5
4
2.
2を超えると
グラステタニーの恐れ
(畜産研究センター、1
9
9
8)
土壌分析に基づいたカリ肥料の減肥
土壌中の交換性カリウムが多いほど、牧草・飼料作物はカリウムを多く吸収し、カリウム含量
が高まる(いわゆるゼイタク吸収)
。
また、土壌中の交換性カリウムが多いほど、牧草・飼料作物のカルシウム、マグネシウムの吸
収量が減少する。その結果、ミネラルバランスが悪化し、グラステタニーや低カルシウム血症の
原因となるので、土壌中のカリウム含量を適正に保つことと、土壌分析に基づいたカリ肥料(堆
肥、尿を含む)の適正施用は極めて重要である。
交換性カリウムの診断結果に基づく施肥対応
交換性 K
(mg 当量/1
0
0g)
施肥対応
0.
3以下
カリウム不足分を増肥
0.
3∼1.
0
標準施肥量
1.
0∼1.
5
標準施肥量の8
0%に減肥
1.
5∼2.
0
標準施肥量の2
0∼5
0%に減肥
2.
0以上
カリ肥料の施肥中止
−3
0−
(畠中、
2
0
0
5)
土壌分析に基づいたリン酸肥料の減肥
草地・飼料畑では、有効態リン酸が過剰であっても収量・品質や土壌環境に悪影響を及ぼさない
が、肥料資源の有効利用等のため、リン酸についても土壌診断結果に基づき施用する。
有効態リン酸の診断結果に基づく施肥対応
有効態リン酸
(mg/1
0
0g)
施肥対応
1
0以下
リン酸の不足分を増肥
1
0∼3
0
標準施肥量
3
0∼4
5
標準施肥量の8
0%に減肥
4
5∼6
0
標準施肥量の5
0%に減肥
6
0以上
標準施肥量の2
0%に減肥もしくは施肥中止
! '($"(#%& !
カリとカリウムの違い
"
#
$
カ
リ
カリウム
!
!
(畠中、
2
0
0
5)
K2O カリ肥料の成分
K+
カリウムイオン
土壌分析(緩衝曲線法)による石灰質資材必要量の算出例
土壌 pH の改良(酸度の矯正)は土壌改良の最も基本的な項目であり、特に草地土壌では最も重
要である。改良対象土壌深を15cm とし、緩衝曲線法によって改良対象土層の pH(H2O)を6.
0に
中和するのに必要な石灰質資材を算出し施用する。土壌が Mg 不足の場合は、苦土炭カルを施用す
る。
計算例
改良目標値:pH6.
0
緩衝曲線図:左図
土壌の仮比重:1.
0t/m3の場合
1
0a 当たり炭カル施用量
1
5m(土壌深)×1.
0t/m3(仮比重)
=1
0
0
0m2(面積)×0.
×5
0mg
(炭カル:緩衝曲線より)
/1
0
0
0
0mg
(乾土1
0g)
土壌の緩衝曲線測定例
=0.
7
5t=7
5
0kg
−3
1−
Ⅲ−3 堆肥を活用する場合の留意点
(#*%
○
草地への施用量は1
0アール当たり年2トンが上限。
○
堆肥のリン酸・カリ成分量を把握し、リン酸、カリ肥料を削減。
施 用 量
堆肥の大量施用は土壌及び植物のミネラルバランスの悪化、硝酸態窒素の蓄積、環境への負荷等
をもたらすので、施用量は1回当たり1
0アール2トンを上限とする。
採草地へは、収穫物への堆肥の混入を防止するため、最終刈り取り後に施用する。
化学肥料の削減
あらかじめ堆肥から供給される肥料成分を把握し、化学肥料のリン酸、カリを削減する。特にカ
リ成分については、土壌分析値を参考に過剰施用に注意する。
堆肥を活用する場合の化学肥料の計算には施肥設計ソフト(新潟畜研、2
0
0
5)を参照
!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!
(http : //www.ari.pref.niigata.jp/chikusan/environment/)
施肥設計ソフトによる計算例
∼イタリアンライグラス栽培で牛ふん堆肥2t/1
0a を施用する場合∼
N
(kg) P2O5
(kg)K2O(kg)
A
必要量
B
土壌中成分
C=A-B 差引必要量
牛ふん堆肥 A
D
ふん尿資材合計
E=C-D 化学肥料必要量
1
5
7
1
0
0.
0
0.
0
0.
0
1
5.
0
7.
0
1
0.
0
2.
5
1
0.
3
1
4.
0
2.
5
1
0.
3
1
4.
0
1
2.
5
−3.
3
−4.
0
・牛ふん堆肥 A を用いるとリン酸、
カリ肥料は不要
・計算上、カリが過剰となるので土
壌分析により、土壌中のカリ蓄積
を確認し堆肥施用量の削減を考慮
する
堆肥に含まれる肥料成分の分析
家畜ふん堆肥は肥料成分のバラツキが極めて大きいので、成分を把握してから利用する。
RQ フレックス(小型反射光度計)を用いると、短時間でリン酸、カリ含量が把握できる(RQ
フレックスマニュアル
新潟県農林水産部,2
0
0
6参照)
。
! )*(#*%"&'#$ !
高温発酵(6
0℃以上を2日以上)を経ていない堆肥は使用しない。
牛ふんには雑草種子や有害微生物等が混入している恐れがあるので、高温発酵により
これらを死滅させた堆肥を利用する。
−3
2−
各有機質資材の有効肥料成分含量
牛ふん
堆肥
豚ふん
堆肥
鶏ふん
堆肥
(縦棒は標準偏差を示す)
乾燥 発酵キノコ 汚泥
生ゴミ 廃床
堆肥
RQ フレックスを用いた分析法の概略
所要時間:約1時間
−3
3−
バーク・ ナタネ
モミガラ かす
堆肥
Ⅳ−1 ロールベールサイレージ調製のポイント
#!$"
ロールベーラ梱包の密度を高めること。
失敗しない6つのポイント
①刈り遅れしない
②水分は6
0%以下
③梱包後は早期に密封
④ラップは2重巻き(4層)以上
⑤密封後の取扱いは丁寧に
⑥鳥虫害防止は確実に
牧草のラップサイレージ
(1)
ア
収穫・調製
刈取時期
硬化した茎によるピンホールの発生を防ぐため、必ず適期に収穫する。イネ科牧草の1番
草の収穫は出穂期が適期となる。
イ
土砂の混入を少なく
土壌には不良発酵の原因の1つである腐敗菌(酪酸菌)がいるので、土が多く付着してい
る牧草はサイレージにしない。
ウ
水分調整
水分含量6
0%以下に予乾する。高水分の材料は機械に対する負荷が大きくなり、排汁によ
る養分ロスも生じる。乾いているように見えても意外に水分が高いことがあるので注意する。
刈り倒した牧草の水分の見分け方
エ
牧草の状態
水分の目安
強く握ると手が濡れる
強く握ると手が湿る
束ねてよじると湿った感じ
7
0%
6
0%
5
0%
梱包密度
梱包作業は低速・高回転で行うことにより、高密度のロールベールを作ることができ、サ
イレージの高品質化や好気的変敗(2次発酵)防止に効果がある。
オ
密
封
密封は梱包後、半日以内に行う。密封が遅れると牧草や微生物の呼吸により梱包の温度が
上昇し、発酵品質が低下する。
ラップフィルムは2重巻き(4層)とする。長期保存の場合は3重巻き(6層)以上が望
ましい。
−3
4−
(2)
ア
保
管
保管場所
屋外保管の場合は、広くて排水の良い場所を用意し、ロールとロールの間は2
0cm
くらい離して縦積み2段以内とすることが望ましい。横積み(俵積み)はフィルムが剥がれ
雨水及び空気が侵入し変敗する恐れがある。
イ
鳥害対策
鳥害対策としては糸張りやネット(使用済みの寒冷紗など)掛けが有効である。
ウ
点検・補修
梱包時のコオロギ等の侵入や保管後の鳥害などにより、フィルムが破損することがある。
保管中は時々ロールの破損状況を点検し、破損が見られる場合は直ちにガムテープ等で補修
する。
(3)
利
用
開封後は好気的変敗(2次発酵)を防止するため、夏季は1日程度で、冬季は3日以内に
給与する。
無切断でロールしたサイレージは、サイレージカッタ等で適当な長さに切断して利用する
と、給与ロスを少なくすることができる。
【梱包】
【刈り取り】
【ラッピング】
牧草サイレージの品質把握
官能評価∼サイレージをその色沢、香り、握ったときの感触から評価
区分
色沢
優
明黄緑色
無臭又は軽い芳香
さらっとして清潔
多給可
良
黄緑色
甘酸臭
やや粘性があるが清潔
多給可
可
黄褐色
僅かにアンモニア臭・不快臭
軽い粘性
要注意
褐色
アンモニア臭・不快臭
粘性・発熱・青カビ・赤カビ
廃
不可
香
り
感
−3
5−
触
給与限界
棄
Ⅳ−2 バンカーサイロでのサイレージ調製のポイント
○
バンカーサイロは地上式・水平型のサイロで、大量のサイレージを調製する場合などには、必
要な大きさを確保し比較的、安価に増設できる。
特
徴
区分
特
徴
・
利
点
欠
点
身近な建設資材(L 型よう壁、型枠、コンパネ)や古電柱などを利用できるので
建設コストが安い。
・ 増改築が簡易。
・ 詰め込みや取り出し等の作業性が高く、サイロガスによる事故の心配も少ない。
・ 機械による踏圧が可能であり、詰め込み密度が高い。
・
取り出し後の再密封にやや不安な面があり、好気的変敗(2次発酵)の恐れがあ
る。
バンカーサイロ模式図
L 型よう壁バンカー
L 型よう壁
L 型よう壁は土木工事で土
止めに用いられる。一般的
なサイズ は 高 さ0.
7∼4m、
長さ2m である。
サイレージの詰め込みイメージ図
!
・側壁に密封用のビニ
ールシートを垂らす
・シートの重ね合わせ
部 分 は1m 程 度 の
余裕をおく
!
・詰め込みながら均平
にしトラクタなどで
踏圧する(土の混入
に注意)
!
・密封シートを張り材
料を包み込む
・その上に更にシート
を掛け密封シートの
破損を防ぐ
−3
6−
・古タイヤ、砂袋など
を乗せ重しにする
・重しが多いほど良い
種々のバンカーサイロ
パイプハウス屋根利用
地形を利用した半地下式
屋根付きの場合は取り出し時に雨、雪等を防ぐことができ、雨水の流入防止になる。屋根資材と
してはテクミラーシートを用いると遮光・断熱効果によるサイレージの品質維持が期待できる。
古電柱・コンパネ利用
・サイロ壁の支柱となる電柱は地上部を9
0cm
程度を出し、地下部も80∼9
0cm 打ち込み、
踏圧に耐えるようにする。
・支柱間隔は9
0cm にし、最低1枚のコンパネ
を2本の柱で支える。
使用時の留意点
・
トラクターによる踏圧は低速で慎重に行うこと。
・
塔型サイロと同様に貯蔵後4
0日以上経過してから開封する。
・
取り出し方が悪いと好気的変敗が起こるので、シートをまくり上げるような取り出し方は避け
る。
−3
7−
Ⅳ−3 サイレージ添加材と特性
○
サイレージ添加剤や添加物は、刈り遅れ等により良質なサイレージ発酵が得にくい場合や利用
時の取り出し量が少なく、2次発酵(腐敗)が心配される場合などに利用する。
サイレージ添加剤、添加物の特徴
タイプ
乳酸発酵促進
種類
目的
乳酸菌
乳酸発酵に必要な菌数の確保
高∼中水分向け
糖 類(飼 料 用 糖
乳酸発酵に必要な糖を供給
高∼中水分向け
高価
植物の繊維を分解して糖を供給
ADF の減少
リグニンは残る
ビートパルプ穀類
糖等の補給
水分の調整
栄養価改善効果もある
添加しにくい
ギ酸類
酵母・カビの抑制
取扱注意
酵母・カビの抑制
取扱注意・刺激臭
やや高価
酵母・カビの抑制
低水分・低品質向け
栄養価改善・取扱注意
蜜)
セルラーゼ
好気的変敗抑制
プロピオン酸類
アンモニア
・トウモロコシ
備考
:糖分が十分に含まれているので、発酵促進のための添加物等は必要ない。
・糖蜜型ソルガム:適期収穫により糖含量が高い材料を確保できるので、無添加でも良質なサイレ
ージ調製が可能。2番草は水分が高いが糖含量も高いため、発酵品質は1番草
よりも優れる。
【牧草などを梱包しながら乳酸菌を添加できる装置】
−3
8−
【トピックス】添加材の利用による粗飼料品質の改善
①
稲わらの尿素処理
十分乾燥していない稲わらや刈り遅れの牧草に対して応用可能。
し こう
期待される効果は、①保存性・嗜好性の向上
②繊維の消化率向上
③粗蛋白質の
増加。
【方法】
肥料用尿素2
0∼4
0kg を温湯に溶かし、梱包前の粗飼料現物1t にジョウロなどでム
ラなくかけた後、密封保存する。
密封後、夏期は1か月間、秋期は3か月間保存後に、稲わらが褐色になってから利
用。開封後は余分なアンモニアを飛散させてから給与する。
【尿素処理稲わらの飼料成分】
(乾物中%)
CP
粗脂肪
ADF
NDF
TDN
尿素処理稲わら
1
2.
0
1.
9
4
1.
4
6
9.
7
5
2.
4
普 通 稲 わ ら
5.
3
2.
0
3
9.
2
6
3.
1
4
2.
8
②
稲発酵粗飼料用の乳酸菌製剤
独立行政法人畜産草地研究所が開発し、現在市販されている。
サイレージ発酵初期の乳酸菌数を確保し、好気性細菌や大腸菌などを減少させるこ
とにより、pH は低下し乳酸含量が高まり、牛の嗜好性のよい稲発酵粗飼料が調製可
能。
【乳酸菌製剤添加による効果】
−3
9−
【市販の商品】
Ⅳ−4 最近普及している専用収穫機
#!$"
発酵粗飼料用稲をコンバイン型の専用収穫機で収穫する場合には、水分調整が難しい
ため、黄熟期に収穫する。
稲発酵粗飼料の収穫機械
稲発酵粗飼料の専用収穫機にはコンバイン型とフレール型の二種類がある。いずれも刈り取りか
ら梱包までの作業を一行程で行うことができるが、コンバイン型は収穫物の予乾が難しいため、発
酵粗飼料用稲の収穫に当たっては、サイレージ発酵に適した水分になる黄熟期に刈り取る。
草地用機械と専用収穫機の比較
作業内容
予乾作業
予乾作業
草地用機械
・トラクターけん引または直装の作業機。
・刈取、反転、集草、梱包をそれぞれトラクターけん引または直装
で作業。
可能
専用収穫機
・コンバイン型はダイレクト収穫(一行程作業)
。
予乾困難
・フレール型は、ダイレクト収穫の他、刈り落として予乾後に梱包
も可能。
予乾可能
(1)コンバイン型専用収穫機
水稲用コンバインにロール成型部分を搭載した自走の収穫機械。
コンバイン操作の感覚で作業できるが、サイレージ品質を左右する収穫物の切断長はフレー
ル型に比べ長く、収穫物の水分調整が困難である。
梱包部分
刈取部分
収穫物の流れ
−4
0−
(2)フレール型専用収穫機
牧草収穫に使用するフレール型ハーベスタの後部に、ロール成型部分を搭載した自走機械。
収穫物の切断長が短く、刈り落としによる水分調整も可能である。
収穫物の流れ
刈取部分
ロール成型部分
トウモロコシ細断型ロールベーラ
トウモロコシ細断型ロールベーラは、コーンハーベスタで刈り取り、細断したトウモロコシを受
けながら、ほ場でロール成型する機械。ハーベスタとベーラの組み作業となる。収穫物はラップサ
イレージとして貯蔵・利用する。
固定サイロは不要であり、給与する場合にはロール単位での開封となるので、二次発酵の心配も
少ない。
ロールは重量が1個3
0
0kg 以上となるので、運搬や給与には機械が必要。
トウモロコシ投入口
ロール
成型部分
作業中は投入口を
上昇させる。
細断された収穫物をこぼさず、梱包圧を高め
るよう、ひもではなくネットでロールを覆う。
−4
1−
細断型
ロールベーラ
従来のコーンハーベ
スタで刈取・細断し
ながら投入していく
Ⅴ−1−(1)粗飼料の簡易分析
通常、粗飼料の栄養成分は定められた方法(公定法)により分析・評価するが、公定法による分
析は長時間を要する。現地等で短時間で応用可能な簡易分析の概略、分析手法を紹介する。
水
分
電子レンジと塩化コバルトⅡ2%水溶液で作成したインジケーターを用いて測定。
分析手順は農業総合研究所ホームページの平成1
7年度研究成果を参照。
粗蛋白質
濃硫酸と過酸化水素により全窒素を抽出し、RQ フレックスのリフレクトクァントアンモニウ
ムテスト(Cat.No.
1
6
8
9
2)を用いて測定。
換算式:飼料中粗蛋白質(CP)
(%)=全窒素含量(%)×6.
2
5
分析手順は「RQ フレックスマニュアル」
(平成1
8年9月新潟県農林水産部)を参照。
粗灰分
家庭用ガスコンロを用い、ステンレス灰皿上で灰化させて灰分を測定。
分析手順は農業総合研究所ホームページの平成1
7年度研究成果を参照。
酸性デタージェント繊維(ADF : Acid Detergent Fiber)
市販の酸性洗剤を AD 液の代わりに使用し、圧力鍋、コーヒーフィルター、ガラス保存瓶な
どを用いて酸性デタージェント繊維を測定。
分析手順は農業総合研究所ホームページの平成1
8年度研究成果を参照。
ADF から飼料の可消化養分総量(TDN)を推定。
イネ科主体の牧乾草及びサイレージに共用の推定式1)
TDN=8
7.
5
7−0.
7
3
7×ADF
リ
(相関係数=−0.
7
8)
ン
濃硫酸と過酸化水素によりリン酸を抽出し、RQ フレックスのリフレクトクァントプラスリン
酸テスト(Cat.No.
1
7
9
4
2)を用いて測定。
分析手順は「RQ フレックスマニュアル」
(平成1
8年9月新潟県農林水産部)を参照。
カリウム
0.
1M の硫酸によりカリウムを抽出し、RQ フレックスのリフレクトクァントカリウムテスト
(Cat.No.
1
6
9
9
2)を用いて測定。
分析手順は「RQ フレックスマニュアル」
(平成1
8年9月新潟県農林水産部)を参照。
−4
2−
硝酸態窒素
水または0.
1M の硫酸により硝酸態窒素を抽出し、RQ フレックスのリフレクトクァント硝酸
テスト(Cat.No.
1
6
9
7
1)を用いて測定する。
分析手順は「RQ フレックスマニュアル」
(平成1
8年9月新潟県農林水産部)を参照。
β−カロテン
家庭用食品ミルサーを用いて β−カロテンを測定。
分析手順は農業総合研究所ホームページの平成1
8年度研究成果を参照。
β−カロテン含量からのビタミン A 含量の換算式2)
ビタミン A 量(IU)=β−カロテン含量(mg)×4
0
0
【新潟県農業総合研究所ホームページ】
http : //www.ari.pref.niigata.jp/nourinsui/seika_index.html
引用文献
1)自給飼料品質評価研究会編:改訂粗飼料の品質評価ガイドブック,7
8,日本草地畜産種子協
会,東京(2
0
0
1)
2)農林水産省農林水産技術会議事務局編:日本飼養標準肉用牛(2
0
0
0年版)
,1
6,中央畜産会,
東京,(2
0
0
0)
−4
3−
Ⅴ−1−(2)β−カロテンについて
#!$"
粗飼料中の β−カロテン含量は変動幅が大きい。
β−カロテンとは?
β−カロテンは、青草、サイレージ、良質乾草などに含まれる色素の一種。主に腸管でビタミン
A に転換されることから、プロビタミン A として知られている。
β−カロテンの生理的役割
β−カロテンはプロビタミン A としてばかりでなく、それ自体が正常な繁殖機能、特に黄体機能
の維持に必須である。
特に高産次の牛は β−カロテンの吸収効率が悪く、ビタミン A が欠乏しやすいので、適量の β−
カロテン(3
0
0mg/日)を青草、良質サイレージなどで補給することが繁殖成績の改善に有効であ
る。
β−カロテンおよびビタミン A の役割
・上皮組織の保持と免疫機構の維持
・動物の成長
・正常な視覚
欠乏すると
・食欲低下
・下痢
・発情不良
・夜盲症
・流産
・虚弱子牛
以下の牛はビタミン A の欠乏に注意
・ワラ、購入乾草など β−カロテン含量の低い飼料を給与している乳牛、繁殖牛、肥育中期
以降の牛
・授乳期の子牛
・高産次の牛
ビタミン A 必要量
体重1kg 当たり 4
2.
4IU
(妊娠牛や授乳牛では体重1kg 当たり7
6IU)
−4
4−
粗飼料からのビタミン A 供給量は、粗飼料に含まれる β−カロテン含量から推定する。
変換式
1mg の β−カロテンは4
0
0IU のビタミン A に相当
現物中2
0mg/kg の β−カロテンを含む飼料を1kg 給与すると、
「2
0mg/kg×40
0IU=8,
0
0
0IU」
(→8,
0
0
0IU のビタミン A 供給に相当する)
(要求量の推算例)
・体重4
5
0kg、維持期の繁殖牛の場合。
ビタミン A の要求量は 4
5
0kg×4
2.
4IU=1
9,
0
8
0IU
・β−カロテンを乾物1kg 当たり2
0mg 含む「牧草サイレージ」なら、
!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!
1
9,
0
8
0IU÷2
0mg/kg÷40
0=2
.
4kg の給与で要求量を満たす。
!!!!!!
!!!!!!!
・β−カロテンを乾物1kg 当たり5mg しか含まない「稲ワラ」の場合は、
!!!!
1
9,
0
8
0IU÷5mg/kg÷40
0=9.
5kg の給与が必要。
−4
5−
Ⅴ−1−(3)粗飼料利用上の留意点
○
家畜ふん尿の大量施用や成分の偏った施肥により栽培された牧草・飼料作物は、ミネラルバラ
ンスを欠き、それらを給与した牛の疾病発生原因になるおそれがある。
給与粗飼料については、RQ フレックス等により成分を確認し、利用する。
硝酸塩中毒
家畜ふん尿や窒素肥料の大量施用は土壌の硝酸塩濃度が高まり、飼料作物中に硝酸態窒素が蓄積
される。硝酸態窒素含量の高い粗飼料を給与すると硝酸塩中毒の恐れがある。
慢性の中毒症は繁殖障害、消化器病、泌乳関連の障害などを引き起こす。
粗飼料中硝酸態窒素のガイドライン
粗飼料中の硝酸態窒素濃度
ppm(乾物換算)
0−1,
0
0
0
給与上の注意
十分な飼料と水が給与されていれば安全。
1,
0
0
0−1,
5
0
0
妊娠牛以外は安全。妊娠牛には給与乾物の5
0%を限度とする。
場合によっては摂食を停止したり、生産性が徐々に低下したり、流
産が起こったりする。
1,
5
0
0−2,
0
0
0
全ての牛に対して乾物の5
0%を限度とする。中毒死を含めて何らか
の異常が起こる可能性あり。
2,
0
0
0−3,
5
0
0
乾物の3
5−4
0%を限度とする。
妊娠牛には給与しない。
3,
5
0
0−4,
0
0
0
乾物の2
0%を限度とする。
妊娠牛には給与しない。
4,
0
0
0以上
有毒であり給与してはいけない。
※:米メリーランド大学のガイドライン
低マグネシウム(Mg)
血症(グラステタニー)
K が牧草中に一定以上蓄積されると、牧草の Mg や Ca の吸収が抑制される。
さらに、家畜の体内でも大量の K 摂取は血中の Mg 低下を招き、グラステタニーが発生しやす
くなる。症状は興奮、けいれんなど神経症状を特徴とし、一般に急性な経過を取ることが多い。
−4
6−
低カルシウム(Ca)血症
血中の Ca 低下は筋肉のし緩を招き、
消化器病や乳熱(起立不能)の発生を引
き起こす。
特に、乳牛の場合は分娩後に大量の Ca
を必要とするため、Ca 不足は周産期の
重とくな疾病を引き起こすばかりか、繁
殖障害の要因にもなる。
自給粗飼料中の K 濃度を低く保つと
ともに、分娩直後から吸収性の良いカル
シウム剤を補給する。
Ca 低下による乳牛の疾病発生
参考
∼
牛に必須なミネラル
牛に必要なミネラルは1
6種類あり、これらは骨や歯の主要構成成分であるとともに、体液の酸−
塩基平衡の保持、蛋白質や脂質の形成に関与している。
牛に必須なミネラル
主要元素
微量元素
カルシウム(Ca) 鉄(Fe)
リン(P)
銅(Cu)
ナトリウム(Na) 亜鉛(Zn)
カリウム(K)
コバルト(Co)
マグネシウム(Mg)マンガン(Mn)
塩素(Cl)
ヨウ素(I)
硫黄(S)
モリブデン(Mo)
セレン(Se)
ニッケル(Ni)
牛のミネラル欠乏症
元素
Ca
P
Na
K
Mg
Cl
S
Fe
Cu
Zn
Co
Mn
I
Mo
Se
Ni
−4
7−
主な欠乏症
骨軟症
発育不良
筋痙攣
筋力低下
神経過敏
食欲減退
食欲減退
貧血
食欲減退
脱毛
食欲減退
骨異常
甲状腺肥大
栄養失調
白筋症
不詳
起立不能
骨折傾向
被毛粗剛
麻痺
痙攣
成長阻害
体重減少
貧血
皮膚角化不全
体重減少
成長阻害
胎児発育障害
縮毛
心筋変性
神経過敏
テタニー
下痢
体重減少
繁殖障害
下痢
Ⅴ−2−(1)乳用育成牛への粗飼料給与
#!$"
○
給与する粗飼料の品質によって、発育が左右される。
○
初産分娩月齢を早めるためには、良質粗飼料給与による発育確保が重要。
粗飼料の栄養価と発育速度
TDN の異なる粗飼料を給与した場合の育成牛の発育速度
育成用配合飼料を1日当
たり現物2.
5kg に制限給与
す る 条 件 で、TDN5
2%と
6
0%の粗飼料を同量摂取し
た場合、日増体量に0.
1kg
程度の差が生じ、体重15
0
kg か ら3
5
0kg ま で の 到 達
日数に置き換えると約2か
月の発育差となる。
育成期の健全な発育を確
体重(kg)
設定乾物摂取量 粗飼料の摂取
DM 量
(kg/日)
(kg/日)
3.
79
4.
67
5.
55
6.
44
7.
32
8.
21
9.
00
150
200
250
300
350
400
450
1.
61
2.
49
3.
38
4.
26
5.
15
6.
03
6.
91
期待される日増体量(kg/日)
TDN6
0%
TDN52%
0.
73
0.
67
0.
65
0.
59
0.
64
0.
65
0.
66
0.
6
6
0.
5
8
0.
5
4
0.
4
8
0.
5
1
0.
5
1
0.
5
1
※乾物摂取量は日本飼養標準乳牛1999年版に示される育成牛の標準発育値を元に
計算し、濃厚飼料を定量(現物2.
5kg/日)給与し、粗飼料を自由採食するこ
とを想定
保するためには、TDN 含量の高い良質な粗飼料給与が重要である。
参考
月齢
0
1
2
3
4
5
6
8
10
12
14
16
18
24
乳用育成牛の標準発育値
標準値
40.
0
56.
3
76.
5
98.
6
1
22.
2
146.
9
172.
4
224.
6
276.
9
327.
5
375.
1
418.
8
458.
0
540.
3
体重(kg)
範 囲
34.
2∼45.
8
47.
1∼65.
5
62.
5∼90.
5
82.
6∼114.
6
103.
2∼141.
2
124.
9∼168.
9
151.
2∼193.
6
198.
1∼251.
1
250.
3∼303.
5
296.
7∼358.
3
342.
7∼407.
5
387.
0∼450.
6
422.
7∼493.
3
496.
4∼584.
2
標準値
75.
1
80.
6
86.
2
91.
3
96.
1
100.
5
104.
5
111.
6
117.
5
122.
4
126.
5
9.
8
12
132.
5
137.
7
体高(cm)
胸囲(cm)
範 囲
標準値
範 囲
71.
4∼78.
8
7
8.
9
74.
9∼82.
9
76.
9∼84.
3
8
7.
3
83.
3∼91.
3
82.
5∼89.
9
96.
6
92.
5∼10
0.
7
87.
5∼95.
1
106.
4
1
01.
2∼109.
6
2.
3∼99.
9
113.
6
109.
3∼117.
9
9
96.
7∼104.
3
1
21.
2
116.
9∼125.
5
100.
7∼108.
3
128.
3
123.
9∼132.
7
107.
8∼115.
4
141.
1
1
36.
5∼145.
7
113.
6∼121.
4
1
52.
1
147.
4∼156.
8
118.
5∼126.
3
1
61.
5
156.
6∼166.
4
122.
6∼130.
4
1
69.
3
164.
3∼17
4.
3
125.
8∼133.
8
175.
9
170.
7∼181.
1
128.
5∼136.
5
181.
3
176.
0∼18
6.
6
133.
6∼141.
8
191.
9
186.
1∼197.
7
(社)日本ホルスタイン登録協会(1995年)
給与する粗飼料の栄養価の把握
発育を高めるためには、粗飼料の CP 含量についても注意する必要がある。
粗飼料の CP 含量が8%を下回ると CP の養分要求量を満たすことができず、エネルギーは満た
されているものの蛋白質が不足するために、育成牛が太ってくることも考えられる。粗飼料の成分
を把握し、適正量を給与することが大切である。
−4
8−
簡易分析による粗飼料の粗蛋白測定
濃硫酸と過酸化水素により全窒素を抽出し、RQ フレックスのリフレクトクァントアンモニウム
テスト(Cat.No.
1
6
8
9
2)を用いて測定。
換算式:飼料中粗蛋白質(CP)
(%)=全窒素含量(%)×6.
2
5
分析手順は「RQ フレックスマニュアル」
(平成1
8年9月新潟県農林水産部)を参照。
【牧草ロールを採食する乳用育成牛】
【放牧による乳用牛の育成(津南町)
】
−4
9−
Ⅴ−2−(2)乳用経産牛への粗飼料給与
#!$"
○泌乳ステージに応じた粗飼料の選択。
し こう
○泌乳前期は、エネルギー含量が高く、嗜好性の良い粗飼料を給与。
○乾乳後期は、カリウム含量の低い粗飼料を給与。
泌乳中期
∼良質な粗飼料給与が不可欠∼
分離給与では、飼料の乾物摂取量は体
重の4%程度が上限とされる。
粗飼料として体重の1.
6%以上を摂取
させながら、養分要求量を充足させるこ
とが基本となる。
消化性の良い粗飼料を給与することに
よって、飼料全体の摂取量が向上し養分
摂取量の増加につながる。
養分摂取量を多くする粗飼料としては、
アルファルファや若刈りのイネ科牧草が
上げられる。
エネルギー含量の高い飼料給与により、
泌乳前期の乳生産が高まる。
泌乳中期
∼牛の状態に応じて粗飼料を選択∼
泌乳中期は乳量も減少し始め、養分要求量も低下してくる。
一方、乾物摂取量は泌乳中期の前半に最も多くなり、ボディーコンディションの回復にあわせて、
濃厚飼料の給与量を減らす必要がある。
乳量の低下には、牛の個体差があるので、給与粗飼料の種類や量は1頭ごとに対応する必要があ
る。乳量の低下が少ない牛については、泌乳前期と同様に良質な粗飼料を給与する。
乳量の低下が大きい牛は、養分要求量に対して養分摂取量が上回るので、濃厚飼料の給与量を減
らし、粗飼料も良質なものから中程度のものに切り替え、適正なボディコンディションを維持する
必要がある。
−5
0−
泌乳後期
養分要求量より養分摂取量が多くなりがちな時期であり、養分の充足面からは消化性の劣る粗飼
料でも支障がない。
乾乳前期
粗飼料主体の給与となるが、乳房のはれが退きはじめたら、日量1∼2kg 程度の濃厚飼料を給
与し、ボディーコンディションの維持を図る。
この時期は、消化性の劣る粗飼料でも良く、ボディーコンディション等により養分の充足状況に
注意する。
乾乳後期
分娩予定日の3∼4週前は、胎児の発育に必要な養分量が急速に増加する一方、
飼料摂取量が徐々
に減少し始める時期である。
この時期は分娩後の飼料の急増に準備する期間でもあり、良質な粗飼料を給与することが重要で
ある。
カリウム含量の高い粗飼料を給与していると、分娩直後の血中カルシウム濃度の低下が顕著とな
り、周産期疾病が懸念されるので、カリウム含量の高い粗飼料の給与は控える必要がある。
特に、ふん尿施用の多いほ場で生産された粗飼料は、カリウム含量が高い傾向にあるので、粗飼
料のカリウム含量を分析し、利用する。
【乳用経産牛への粗飼料給与】
−5
1−
Ⅴ−2−(3)乳用牛向けの発酵粗飼料用稲
乳用牛への稲発酵粗飼料給与の考え方
糊熟期から黄熟前期に収穫・調製した良質な稲発酵粗飼料は、イネ科流通乾草と同等の栄養価を
持ち、代替利用が可能である。
収穫時期と栄養価および成分の消化性
糊熟期初期から黄熟期に収穫された稲発酵粗飼料は輸入チモシー乾草と同等の栄養価である。
刈り遅れると TDN が低く、繊維の消化性が低くなり搾乳牛には不向きになる。
稲発酵粗飼料を良質な繊維の供給源としたい時は、TDN 含量はやや低くなるものの、乳熟期か
ら糊熟期での刈り取りが適当である。
飼料・収穫
時期
チモシー
糊熟期
黄熟期
完熟期
収穫時期と TDN および成分消化率(%)
出穂後
有機物(OM) NDF
NFC
TDN
日数
中の TDN
消化率
消化率
15
24
39
59.
3
55.
2
58.
9
50.
4
62.
7
64.
1
56.
7
59.
4
57.
2
56.
8
49.
8
47.
0
72.
3
72.
6
81.
0
73.
5
灰分
5.
7
13.
8
10.
5
15.
2
発酵粗飼料用稲の特徴
粗蛋白質(CP)は発酵粗飼料用稲の登熟が進むにつれ低下する。品種、窒素施肥量の違いによ
る差は小さい。
NDF、NFC は品種による違いはあるが、収穫時期や窒素施用量には影響されない。
β−カロテンは登熟が進むにつれ顕著に低下するが、品種による違いもみられ、窒素施用量が多
いと β−カロテン含量が高まる傾向がある。
不消化物質であるケイ酸は登熟が進むにつれ高まるが、多肥栽培によって低下する。
表
諸要因と成分値およびルーメン内消化性の関係
全 DM
収量
kg/1
0a
ケイ酸
β−カロテン
DM%
寄与率
4
0.
4*
出穂後1
5日
出穂後2
5日
出穂後3
5日
6
4
6C
7
1
8B
7
6
2A
要因
収穫時期
品
種
窒素施用量
DM%
OM
消失率
%
NDF
消失率
%
2
8.
7**
8
1.
6**
4
9.
5**
1
0.
1*
4.
9Bb
5.
4Ba
6.
2A
4
4.
2A
2
0.
2B
1
0.
4C
4
2.
5A
3
6.
0B
3
5.
0C
2
2.
3Aa
1
9.
7b
1
8.
8B
寄与率
3.
8**
8.
0*
4
4.
6**
トドロキワセ
わせじまん
夢あおば
2
1.
3B
2
7.
0B
2
6.
6A
3
6.
4b
3
7.
1
3
9.
3a
2
2.
2A
2
2.
4A
1
6.
2B
4
9.
5**
1
0.
1*
寄与率
4
0.
4*
2
8.
7**
8
1.
6**
0kg/1
0a
5kg/1
0a
1
0kg/1
0a
6
2
1C
7
1
7B
7
5
1A
6.
0A
5.
3B
5.
2B
2
2.
1B
2
3.
3B
2
9.
5A
※消失率はルーメン内で2
4時間培養した結果を示した
−5
2−
泌乳牛への給与
給与試験では、チモシーやスーダングラス等の流通乾草の代わりに稲発酵粗飼料を用いても、概
ね同等の乳生産が得られている。
表
稲発酵粗飼料を用いた泌乳試験成績
乾物摂取量(kg/日)
粗飼料(%) 飼料全体
稲発酵粗飼料
7.
0
(2
6)
2
6.
6
輸入スーダン乾草 5.
6
(2
1)
2
6.
7
稲発酵粗飼料
6.
0
(2
9)
2
0.
8
輸入チモシー乾草 6.
1
(2
9)
2
1.
3
稲発酵粗飼料
6.
1
(2
6)
2
3.
4
輸入チモシー乾草 6.
3
(2
7)
2
3.
0
稲発酵粗飼料
6.
6
(3
0)
2
2.
0
輸入チモシー乾草 7.
1
(3
0)
2
3.
5
※SNF:無脂固形分、
(
乳量
(kg/日)
3
6.
1
3
7.
5
3
0.
0
3
1.
1
2
5.
0
2
6.
7
3
6.
7
4
1.
9
乳成分(%)
脂肪
SNF
3.
7
7
8.
1
4
3.
8
7
8.
2
3
9
6
4.
0
2
8.
8.
9
5
3.
9
1
4.
0
8
8.
7
1
4.
1
2
8.
7
9
8.
7
9
4.
4
1
0
1
8.
8
0
4.
出
展
三重県
2
0
0
1
新潟県
2
0
0
1
埼玉県
2
0
0
1
広島・群馬・新潟
2
0
0
3
)内の数値は、飼料全体に占める粗飼料の割合
搾乳牛に対しては、稲発酵粗飼料を飼料全体の3
0%程度まで給与することに問題はない。
ただし、刈り遅れの稲発酵粗飼料は、子実排せつ量の増加や養分摂取量の低下につながり、泌乳
量の低下も懸念されるので、給与量を控える必要がある。
育成牛への給与
泌乳牛での試験結果を見る限り、稲発酵粗飼料は乳牛の育成期においてもチモシー等の乾草との
代替利用が可能である。
ただし、育成牛の発育は粗飼料の TDN 含量に影響されるので、刈り遅れて TDN 含量が低くな
っている稲発酵粗飼料の利用は不適当である。
また、稲発酵粗飼料は、イネ科牧草に比べ CP 含量が低いので、成分分析を実施し、必要に応じ
て大豆粕等により CP を補給する。
【稲発酵粗飼料を採食する乳用牛】
−5
3−
Ⅴ−3−(1)繁殖牛への粗飼料給与
育成牛への給与
反芻胃の発達を促すため、繊維の多い良質粗飼料を多給する。
第1胃、第2胃の発育月齢
育成期には体(骨格、筋肉、臓器)の発
達に必要な養分要求量が多く、特に第1胃、
第2胃の発達時期には、良質粗飼料を十分
発育の盛んな月齢
発
育
最大月齢
初め
終わり
8.
0
3.
3
1
2.
6
に給与し必要量を満たすようにする。
育成期に過度な高栄養水準で飼養し過肥になると、繁殖供用時に難産などの分娩事故だけではな
く、分娩後の泌乳能力の低下等を招き、その影響は3産経過後まで残るといわれている。
一方、極端な低栄養水準で飼養し発育が遅延すると、繁殖性、泌乳能力、産子の発育などその後
の生産に悪影響を及ぼす。
育成期に与える粗飼料は良質な牧乾草主体が望ましい。
育成期の雌牛の発育及び飼料給与目安
*
給与飼料(kg)
体高
体重
DG
(cm)
(kg)
(kg)
配合
牧乾草
稲わら
4
9
2.
5
1
1
3.
4
0.
8
9
2.
4
1.
0
0.
5*
6
1
0
1.
1
1
6
8.
5
0.
9
2
2.
4
3.
0
0.
8*
8
1
0
7.
7
2
2
3.
7
0.
8
5
2.
4
4.
0
0.
8*
1
0
1
1
2.
8
2
7
3.
8
0.
7
3
2.
4
4.
6
0.
8
1
2
1
1
6.
7
3
1
6.
4
0.
6
0
2.
2
4.
0
2.
0
1
4
1
1
9.
7
3
5
0.
8
0.
4
7
2.
0
4.
0
2.
5
1
6
1
2
2.
0
3
7
7.
6
0.
3
6
2.
0
4.
0
2.
5
1
8
1
2
3.
7
3
9
8.
0
0.
2
7
2.
0
4.
0
2.
5
月齢
稲わらは細切したものを用いる。
−5
4−
成牛への給与
維持飼料は良質粗飼料でまかない、ボディコンディションを整える。
繁殖牛の飼養管理は、維持期、
妊娠末期、授乳期の3つに区分
される。
このうち妊娠末期の2か月及
び授乳期の粗飼料としては、良
質な飼料に加え、濃厚飼料によ
り必要養分量を充足させる。
初産分娩時はまだ発育段階に
あるので、維持の他に成長に必要な養分も加える(図1)
。
成牛の維持期は養分要求量も少なく、粗飼料のみで十分な要求量を満たすことができるが、栄養
バランスの良い良質粗飼料(TDN と DCP のバランス、ビタミン、ミネラル)を十分に給与し、
適正なボディコンディションを維持することが大切である(図2)
。
粗飼料からの養分が不足する場合は、他の粗飼料や濃厚飼料を組み合わせることでバランスをと
る。また、エネルギーとタンパク質のバランスに加え、長い繊維を含んだエサの取り合わせが牛の
健康を保ち、連産性維持のためにも重要である。
繁殖牛は粗飼料主体で飼養するため、給与量の不足や偏った飼料の給与により繁殖成績の不良に
つながりやすいので、注意が必要である。
図2
「栄養度」判定要領と触診部位
区分
主
な
判定基準
やせている
非常にや やせてい やややせ
やせ気味
せている
る
ている
1
2
3
4
普通
普通
5
太っている
やや太っ 太ってい 非常に太
太り気味
ている
る
っている
6
7
8
9
手を当てると直接骨に触れ 手を軽く圧することによっ 相当の圧力なしでは、骨を
ることができる。脂肪及び て、骨が識別される。ある 識別できない。明らかに脂
筋肉の付着が感じられない。程度の脂肪層が感じられる。肪の蓄積が認められる。
−5
5−
Ⅴ−3−(2)肥育牛への粗飼料給与
#!$"
○
肥育前期は体づくりの飼料給与。
○
肥育中期は筋肉量の増加とビタミン A コントロール。
○
肥育後期は筋内脂肪を増加させる飼料給与。
肥育前期
①
∼
肥育に耐える丈夫な骨格、消化器を作る時期
∼
黒毛和種去勢牛(9∼1
4か月齢)
1
3か月齢までは内臓、骨格の成長期に当たるため、導入後4から5か月間、粗飼料は稲ワラ1
kg 程度と良質粗飼料を合わせて風乾物で4kg 程度給与する。
肥育中期のビタミン A 制限時期に欠乏症が出ないよう、β−カロテンを適度に含む良質な粗飼
料を給与する。
②
乳用種去勢牛(7∼1
1か月齢)
肥育期間が短いことから、1
1か月齢くらいまでに粗飼料を風乾物で2kg 前後給与して腹づく
りをしながら、基準値以上の DG を確保する飼料組合せとする。
肥育前期の粗飼料
第1胃を主体とする消化器官及び骨格の発達に対しては、蛋白質やエネルギーのほかにビタミン
やミネラルが総合的に含まれる良質粗飼料の効果が高い。特に、肥育中期のビタミン A 制限時期
に欠乏症が出ないよう、β−カロテンを適度に含む良質粗飼料の給与が望ましい。
稲わらなどの粗剛性のある粗飼料は、消化管の運動や健全な発達を促す効果が高いので、粗剛性
のある粗飼料と栄養成分に富む飼料を組合せて給与することが大切である。
−5
6−
肥育中期
∼
飼料の摂取量を高め筋肉量を増加させる時期
∼
前駆脂肪細胞から脂肪細胞への分化を促進するためのビタミン A 制限時期。
①
黒毛和種去勢牛(1
4∼2
1か月齢)
粗飼料は風乾物で1日当たり2.
5kg から1.
5kg 程度に漸減し、濃厚飼料をできるだけ多く食い
込ませるようにする。
②
乳用種去勢牛(1
1∼1
5か月齢)
十分な肉量をつけるために、粗飼料を1日当たり1kg 前後に制限し、濃厚飼料の摂取量を多
くする。
肥育中期の粗飼料
肥育中期以降は粗飼料の給与量は少ないが、粗飼料は正常な第1胃機能を維持するために重要な
役割を果たす。特に肥育中期はビタミン A 制限時期に当たるので、稲わらなど物理性に富み、β−
カロテン含量の低い粗飼料を給与する。
肥育後期から仕上げ期
①
∼
肥育中期に増やした脂肪細胞に脂肪を蓄積し、
肉質を向上させる時期
∼
黒毛和種去勢牛(2
1∼2
9か月齢)
前期に十分な粗飼料を給与し、第1胃がしっかり発達した牛は仕上げ期には粗飼料を最小限度
に抑え、濃厚飼料摂取量を高めることにより、第1胃内のプロピオン酸の比率が高まって脂肪の
合成・蓄積が起こり、筋内脂肪(サシ)が増加する。
粗飼料の給与量は稲わらを1日当たり1∼1.
2kg 程度とする。
②
乳用種去勢牛(1
5∼2
1か月齢)
粗飼料は稲わらを主体に1日当たり0.
7∼0.
9kg とする。筋内脂肪の蓄積を図るため、濃厚飼
料中心の給与とする。基準以上の粗飼料の給与は赤肉生産には向くが、濃厚飼料の摂取を抑制し
脂肪蓄積の阻害要因となる。
肥育後期の粗飼料
肥育後期は、極端なビタミン A の制限は必要ない。むしろ肥育中期に低下した体内のビタミン
A を回復させ、正常な食欲や消化吸収機能を維持し、脂肪蓄積及び増体を確保したい。肥育後期
の粗飼料は稲わらを主体とするが、β−カロテンを多く含む粗飼料(サイレージ、ヘイキューブな
ど)を適量給与することにより、ビタミン A 欠乏症を防ぐ必要がある。
−5
7−
Ⅴ−3−(3)肉用牛への稲発酵粗飼料の給与
#!$"
○
繁殖牛への給与には蛋白質の補給が必要。
○
肥育牛への給与は、肥育前期、肥育後期で可能。
○
稲わらの代替としては、黄熟期以降に刈り取り、強く予乾したものを利用。
稲発酵粗飼料の栄養価の特徴
・
稲発酵粗飼料は牧草に比べ粗蛋白質含量が少ない。
・
β−カロテン含量は稲の品種や刈取り時期、収穫・調製体系、保存日数により異なる。
稲発酵粗飼料の栄養価
収穫時生育
ステージ
稲発酵粗飼料
黄熟期
TDN
粗蛋白質 β−カロテン
(DM%) (DM%)(mg/kgDM)
5
5.
9
7.
0
(乳熟期)
チモシー乾草
水分
%
6
2.
7
(45.
9∼100)
備
考
日本標準飼料成分表(2001)
( )内は新潟畜研(2004∼2005)
黄熟期
4
8.
2
7.
3
2.
7
5
7.
0
畜草研(2004)1日予乾現物0.5%尿素加
1番草出穂期
6
2.
6
1
0.
1
6
6∼1
4
0
1
4.
1
日本標準飼料成分表(2001)
繁殖牛への利用
稲発酵粗飼料はイネ科牧草と同等の飼料価値を持つが、やや蛋白質含量が少ないので、妊娠末期
や授乳期には配合飼料やヘイキューブなどの蛋白質飼料による増し飼いが必要となる。
稲発酵粗飼料を給与した繁殖和牛の繁殖成績(長野畜試2
0
0
5)
初回発情まで 受胎までの 平均授精
回数
の分娩後日数 分娩後日数
分娩間隔
妊娠期間
給与粗飼料(原物 kg)
(他に配合飼料給与)
試験区(n=4)
5
4.
3
8
1.
5
1.
8
3
6
7
2
9
3
稲発酵粗飼料10kg+チモシー乾草1.5kg
対照区(n=4)
4
2.
3
6
7.
0
1.
3
3
5
2
2
8
チモシー乾草4∼6kg+稲ワラ1.
5∼2kg
肥育牛への利用
稲発酵粗飼料は肥育前期、後期に牧草や稲わらの代替飼料として利用可能であり、給与による肉
質、脂肪色への影響はない。ビタミン A コントロールのためには、簡易分析により β−カロテン
含有量を把握した稲発酵粗飼料を用いる。
肥育の全期間に給与する場合は、黄熟期以降に刈り取り、4
8時間以上の予乾により β−カロテン
含有量を低減させ、含有量を把握した上で、給与量を調整する。
−5
8−
稲発酵粗飼料を肥育前期、後期に給与した肥育牛の枝肉格付(新潟県2
0
0
6)
枝肉重量
kg
ロース芯面積 バラの厚さ
C㎡
cm
BMS No.
格付
試験区(前期、
後期給与)
4
7
5
5
3.
0
8.
3
5.
7
A5,
A4,
A3
対照区(後期のみ給与)
4
6
1
5
4.
0
8.
5
5.
0
A4,A3,A3,A3
稲発酵粗飼料を全期間給与した試験の枝肉格付
一日予乾後、2%尿素処理を行ない、β−カロテン含量を稲わら並み(2.
7mg/kg)に低減さ
せた稲発酵粗飼料を黒毛和牛去勢肥育牛に全期間給与し、良好な肥育成績が得られている(畜草
研2
0
0
4)
。
半丸枝 ロース芯 バラ厚 皮 下 歩 留
肉 重 面 積
脂肪厚 基準値
cm
Cm2
kg
cm
BMS
BCS
BFS
No.
No.
No.
ロース
枝肉格付 脂肪含量
%
2
1
9.
9
5
6.
2
7.
3
2.
4
7
1.
9
4.
0
3.
0
2.
5
A3 B3 2
2.
9
黒毛和種 1
9
7.
1
5
2.
2
7.
5
1.
6
7
4.
8
6.
5
2.
5
3.
0
A4 A4 33.
9
交 雑 種
牛肉の品質向上効果
稲発酵粗飼料にはビタミン E が豊富に含まれており、肉色保持や肉の脂質酸化防止に効果が
ある。ただし、強い予乾やアルカリ処理した稲発酵粗飼料はビタミン E 含量が低下しているの
で、ビタミン E により肉色保持等を図るには、黄熟期以降に予乾せずに収穫した稲発酵粗飼料
の利用が適当である。
【稲発酵粗飼料を採食する黒毛和種肥育牛】
−5
9−
Ⅵ−1 稲わら収集のすすめ
#!$"
○
稲わらは水分1
5%以下に乾燥させる。
○
給与する稲わらは、肝てつの感染を予防するため、収穫後4か月以上保管したも
のを利用。
稲わらの収集体系
①
コンバイン排出ワラを収集する体系
水稲収穫
わらの切断長
2
0㎝以上∼無切断
コンバインわらの乾燥
集草・梱包
テッダレーキによる反転
テッダレーキ集草
ベーラ梱包
・晴天が2∼3日継続する頃を見計らって、反転作業を開始する。
・コンバイン排出わらの回収率を高めるには、わらは無切断が望ましいが、回収不能によりすき
込む場合を想定し、排出わらの長さを調整する。
②
コンバインにノッタ(結束機)を装着し、結束わらを収集する体系
水稲収穫
コンバインノッタ
による結束
ノッタわらの乾燥
結束わらの収集
ほ場に立てて乾燥
・コンバインのわらカッターを解除し、無切断状態で結束
③
はざ掛け・天日干しの稲わらは充分に乾燥しているので、そのまま収納
収集作業の留意点
①
田面の乾燥
収集・梱包作業を効率化し、わらの乾燥促進と泥の付着防止を図るため、水稲収穫時には田面
をできるだけ乾かしておく。
②
刈り取り高さ、排出わらの長さ
わらの乾燥を促し、泥の付着を防ぐため、普段よりも高刈りにする。
コンバイン排出わらの切断長は2
0cm 以上にする。
③
わらの乾燥・反転
コンバイン排出わらを1∼2回反転し、乾燥後は速やかに収集する。
④
梱包・搬出・保管
梱包後は速やかに搬出し、風通しが良く雨の当たらない場所に保管する。
肝てつ対策
稲わらには、肝てつが付着しており、牛の疾病「肝てつ症」の原因となるので、稲わらを給与す
る場合は肝てつの感染に十分注意する必要がある。
−6
0−
(1)肝てつとは
肝てつは、ヒルなどの吸虫の一種。体長は
2∼3センチ、体は平たい楕円形である。
虫卵は水中で孵化し、中間宿主のヒメモノ
アラガイに侵入する。成長するとメタセルカ
リアという虫体となって稲や水草に付着し、
これを食べた牛・羊・豚・馬などの胆管に至
って成虫となる。
写真:ヒメモノアラガイ
(殻長1
0mm 前後)
(写真提供:元動物衛生研究所 吉原
忍)
(2)肝てつ症の特徴
肝てつ症は、肝てつが肝臓に寄生し起こる疾病。牛の場合、4
0℃の発熱や元気消失、食欲不
振等の初期症状から、肝硬変、著しい貧血、痩削、下痢便、下顎や胸前の浮腫等の重い症状が
見られることがある。
(3)肝てつ症の予防対策
肝てつ症の予防は、肝てつの発育サイクルを断つことが重要。単一の方法ではなく、以下の
方法により総合的に対処する。
ア
薬剤による駆虫
虫体を駆除することで、産卵を抑制し外部への伝播を防ぐ効果がある。獣医師の指示のも
とで実施すること。
イ
排せつ物の確実な堆肥化
虫卵を含む排せつ物は、野積みや雨水による水田への流出がないよう適正に取り扱い、虫
卵を死滅させるため十分に発酵させる。
ウ
長期保管した稲わらを給与
メタセルカリアは低温や乾燥に弱く、稲わら収穫後3か月程度で感染力を失うため、稲わ
らを飼料とする場合は4∼5か月間保管したものを給与する。また、サイレージにすると2
か月後には感染力を失う。
【飼料用稲わらの収集】
【収集した稲わらの運搬・収納】
−6
1−
Ⅵ−2 耕作放棄地等の放牧活用
#!$"
○
耕作放棄地への放牧牛としては、和牛繁殖牛が適当。
○
放牧牛は3週間前から舎外環境や生草に慣らしておく。
○
放牧前に、ピロプラズマ病対策などの衛生対策をしておく。
放牧のメリット
・
・
・
・
除ふんやふん尿処理作業等の飼養管理作業の軽減
粗飼料や濃厚飼料等の飼料費の低減
適度な運動や自然環境による繁殖性(生産性)の向上
耕作放棄地の解消による景観の保全
放牧するための準備
(1)サポート体制の構築
耕作放棄地に牛を放牧するには、畜産農家と農地所有者の話し合いだけでは実現が困難である。
特に、農地の貸し借りなど利用権設定等については、公的機関を交えた支援体制を整えておく必
要がある。
放牧利用することについて地域の了解を得ておき、脱柵による農作物被害等、万が一の事故処
理についても理解、協力が得られるようにしておくことが大切である。
(2)牧柵の設置
牛を放牧するための牧柵を設置する。牧柵としてはポリワイヤー式や高張力ワイヤー式の電気
牧柵等が、有刺鉄線牧柵よりも設置が容易である。
電気牧柵
・電源は太陽電池(ソーラーパネル)
・3
0
0
0ボルト∼7
0
0
0ボルトの電流が断続的に牧柵線に流れ、接触した牛は
感電することを学習し、牧柵の外へは出なくなる。
(3)給水施設の設置
繁殖牛は1日に2
5∼3
0リットル位の水を飲むので、放牧地内には必ず給水施設を設置する。
水道がある場合は、コンテナとフロートを利用した給水施設を設置する。
水源がない場合は、給水タンク等を準備し、水飲み場を設置する。
−6
2−
(4)日よけの確保
和牛繁殖牛は比較的暑さに対する順応性はあるものの、日陰となる林などが全くない場合は、
寒冷紗等を使い日よけの場所を確保する。
放牧後
【茨城県金砂郷地域の事例】
放牧時の留意事項
(1)放牧馴致
自然環境や飼料の変化に適応させるため、馴致後に放牧する。
放牧開始の3週間前から生草を給与し、屋外に出して昼夜温度差に慣らす。また、電気牧柵に
牛の鼻を付けるなど、牧柵に対する馴致を行う
(2)衛生対策
放牧前に、寄生虫病(ピロプラズマ病)等の対策をとる。
プアオン式(背中に塗布)による薬剤投与を行う。また、アカバネ等のワクチンを接種する。
(3)有毒植物対策
耕作放棄地等の野草地には、ワラビなどの牛にとっては有害な植物もあり、牛は、採食する草
が不足するとこれらを食べる場合があるので、草量が不足する場合は放牧場所を移動する等の対
策をとる。
(4)脱柵対策
採食する草が少なくなると牧柵外へ逃げ出す恐れがあるので、草量に合わせた頭数を放牧する。
2∼5頭の牛で群を編成し、概ね1
0∼4
0アールの放牧区画を組み合わせ、順次輪換し放牧する。
−6
3−
参考−1 主要草種の栽培概要一覧
作
物
名
混播牧草(採草利用)
栽培の目安(資材量は1
0a当たり)
【播種期】8月下旬から9月下旬
【播種量】3∼4kg(オーチャードグラス、リードカナリーグラ
スを中心に2∼3の草種を組合せ)
【石
灰】土壌分析により必要量を施用
【堆
肥】2t
【元
肥】N : P : K=1
0:1
0:5kg(播種時)
【追
肥】N : P : K=8:4:6kg(消雪直後)
N : P : K=4:0:3kg(1番草刈り取り後)
N : P : K=4:4:3kg(2番草刈り取り後)
堆肥2t(3番草刈り取り後)
牧
【収穫期】5月下旬から1
0月下旬(年3∼4回)
イタリアンライグラス
【播種期】9月上旬から1
0月上旬(秋播き)
3月下旬から4月上旬(春播き)
【播種量】2∼3kg(4倍体は4kg)
【石
灰】1
0
0∼1
5
0kg
【堆
肥】2t
【元
肥】N : P : K=5:5:1
0kg(播種時)
【追
肥】N : P : K=5:0:5kg
(消雪直後、及び刈り取り後)
場
【収穫期】4月下旬から6月上旬
アルファルファ
【播種期】9月上旬から中旬(平均気温2
0℃前後の頃)
【播種量】2∼2.
5kg
【石
灰】土壌分析により pH6.
5を目標に矯正
【堆
肥】2t
【元
肥】N : P : K=5以下:2
5:1
0kg(播種時)
【追
肥】N : P : K=1:0:1kg
(消雪直後、及び刈り取り後に)
N : P : K=3:1
0:1
0kg
(最終刈り取り後)
石灰 1
0
0kg(連年施用)
【収穫期】5月下旬から1
0月中旬(目標:年5回)
−6
4−
作
物
名
トウモロコシ
栽培の目安(資材量は1
0a当たり)
【播種期】4月下旬から5月上旬
【播種量】2∼3kg
【石
灰】1
0
0∼1
5
0kg
【堆
肥】2t
【元
肥】N : P : K=2
0:1
5:1
5kg
【収穫期】7月中旬から1
0月上旬
ソルガム(ソルゴー、
スーダン)
【播種期】5月中旬から6月上旬(1回刈なら6月末、2回刈なら
5月2
5日までの播種)
【播種量】2∼3kg(条播)
、3∼4kg(散播)
飼
【石
灰】1
0
0∼1
5
0kg
【堆
肥】2t
【元
肥】N : P : K=1
0:2
0:1
0kg
【追
肥】N : P : K=5:0:0kg
料
(2回刈の場合、初回刈り取り後)
【収穫期】7月中旬から1
0月下旬
エンバク
【播種期】3月下旬から5月中旬(春播き)
作
8月中旬から9月下旬(秋播き)
【播種量】8∼1
2kg
物
【石
灰】1
0
0∼1
5
0kg
【堆
肥】2t
【元
肥】N : P : K=7∼1
0:4∼5:6∼7kg
【収穫期】5月上旬から6月下旬(春播き)
1
0月上旬から1
1月下旬(秋播き)
栽培ヒエ
【播種期】5月中旬から7月上旬まで(適期は5月2
0日から6月1
0
日頃まで)
【播種量】3∼4kg
【石
灰】1
0
0∼1
5
0kg(代かき播種の場合は施用しない)
【堆
肥】2t(代かき播種の場合は施用しない)
【元
肥】N : P : K=1
0:1
0:1
0kg
【追
肥】N=1
0kg(2回刈の場合、初回刈り取り後に)
【収穫期】7月中旬から9月下旬
−6
5−
参考−2 粗飼料評価で使用される語句
1
一般成分・・・・・従来の化学分析法によって得られる成分
(1)粗蛋白質(CP : Crude Protein)
6=6.
2
5
飼料の窒素濃度に6.
2
5を乗じて求める。
(蛋白質の窒素含量は平均1
6%なので、1
0
0/1
からこの係数を用いている)穀類は大部分が純蛋白質(アミノ酸の化合物)であるが、粗飼料
では尿素、アマイド、アミノ酸、アンモニア等非蛋白態窒素化合物も含まれることが多い。一
般的なイネ科牧草では乾物中7∼1
5%程度含むが、刈遅れて結実したような場合は5%程度(稲
わら並)まで低下する。
(2)粗脂肪(CF(EE):Crude Fat(Ether Extracts))
乾燥した試料をエーテルで抽出して得られる成分。中性脂肪(トリグリセリド)の他に脂肪
酸、アルコール、カロチノイド等様々な物質が含まれる。イネ科牧草の粗脂肪含量は乾物中2
∼5%程度と少ない。
(3)粗繊維(CFib : Crude Fiber)
酸とアルカリで試料を煮沸し、溶け残った残渣から灰分を引いたもの。セルロースがほとん
どであるがヘミセルロースやリグニンの一部が含まれるため、可消化部分と不消化部分を分離
できない欠点がある。牧草の生育が進むにつれて含量が高くなるが、乾物中3
5%(稲わら並)
以上含むものは低質な粗飼料と言える。
(4)可溶無窒素物(NFE : Nitrogen Free Extract)
水分、粗蛋白質、粗脂肪、粗繊維、粗灰分の和(%)を1
0
0%から引いた残りを可溶無窒素
物としている。澱粉や糖類等の利用性の高い炭水化物が主体となる。
(粗繊維と可溶無窒素物
の和で炭水化物を代表させることが多い)
(5)粗灰分(CAsh : Crude Ash)
試料を磁性ルツボで5
5
0℃で加熱して燃え残った残渣をいう。
2
動物を用いた消化試験を経て得られる成分
(1)可消化粗蛋白質(DCP : Digestible Crude Protein)
動物が摂取した粗蛋白質量から糞中に排泄された粗蛋白質量を引いたもの。
(2)可消化養分総量(TDN : Total Digestible Nutritients)
動物が摂取した粗蛋白質、粗脂肪、粗繊維、可溶無窒素物の消化率を求めて合算したもの。
TDN=可消化粗蛋白質+可消化粗脂肪×2.
2
5+可消化粗繊維+可消化無窒素物
−6
6−
3
デタージェント成分・・・・・界面活性剤を用いて分析する成分
(1)酸性デタージェント繊維(ADF : Acid Detergent Fiber)
酸性デタージェント(酸性洗剤)に不溶な成分で、セルロース、リグニンからなる。イネ科
牧草乾草の ADF 含量は3
0∼4
0%程度である。ADF 含量と粗飼料の乾物消化率は反比例し、
含量が4
0%を超えるような粗飼料は栄養価の面から好ましくない。
(2)中性デタージェント繊維(NDF : Neutral Detergent Fiber)
中性デタージェント(中性洗剤)に不溶な成分で、ヘミセルロース、セルロース、リグニン
からなる。総繊維とも言われ、試料の採食性に大きく関係している。
乳牛の場合は給与飼料全体としての NDF 含量が35∼3
7%が望ましい。
4
酵素分画成分・・・・・酵素を用いて分析する成分
(1)細胞壁物質(OCW : Organic Cell Wall)
酵素法による飼料分析においてアミラーゼとアクチナーゼ処理による残渣から灰分を除いた
もの。デタージェント成分の NDF に等しい成分である。更にセルラーゼ処理をすることによ
り高消化性繊維(Oa)と低消化性繊維(Ob)に分けられる。
(2)細胞内容物(OCC : Organic Cell Contens)
アミラーゼとアクチナーゼ処理による可消化部分から灰分を除いたもの。消化性が高く栄養
的に均一な分画である。
○飼料の成分分画方法
飼料の内容物
水分
無機質
(ケイ酸、カルシウム、カリウム等)
蛋白質
非蛋白態窒素化合物
(アンモニア、尿素、遊離アミノ酸、
アミド等)
脂肪、脂肪酸、色素
澱粉、糖、有機酸
ヘミセルロース
セルロース
リグニン
一般成分
水分
粗灰分
デタージェント成分
酵素分画成分
粗蛋白質
OCC
粗脂肪
可溶性無窒素物
NDF
粗繊維
OCW
ADF
−6
7−
5
牛の消化管内での分解速度に着目した粗蛋白質の分画方法
(1)溶解性摂取蛋白質(SIP : Solble intake Protein)
分解性蛋白質のうちルーメン液に速やかに溶けてアンモニアを生成するもの。
天日乾草及び生草、牧草サイレージに多く含まれる。
(2)分解性摂取蛋白質(DIP : Degradable intake Protein)
ルーメン内で分解される粗蛋白質を言う。分解された後は、微生物体蛋白質に再合成される。
繊維分解性の微生物にとって必要である。高水分サイレージに多く含まれ、特にアルファルフ
ァサイレージに多い。アンモニア処理草も多く含む。イネ科牧草の生草や乾草では少ない。
(3)非分解性摂取蛋白質(バイパス蛋白)
(UIP : Undegradable intake Protein)
ルーメン内で分解されず、第4胃以下に流入する蛋白質を言う。高泌乳牛にとっては重要で
ある。マイロや魚粉に多く含まれる。
(4)不消化摂取蛋白質(IIP : Indigestible intake Protein)
消化吸収されない蛋白質を言い、結合蛋白質とも言う。蛋白質が熱作用を受け ADF と結合
すると消化利用されなくなる。高温発酵したサイレージや火力乾草に多い。
○粗蛋白質の分解速度に着目した分画方法
飼料の内容物
蛋白質
非蛋白態窒素化合物
(アンモニア、尿素、遊離アミノ酸、
アミド酸)
その他栄養素
6
分解性等
非蛋白態窒素化合物
アンモニア、尿素等)
急速に分解するもの
中程度に分解するもの
ゆっくりした分解性のもの
利用できないもの
−
分画
SIP
DIP
UIP
IIP
−
その他の分画
(1)相対粗飼料評価(RFV : Relative Feed Value)
粗飼料の価値を比較検討するための目安として考えられたものであり、粗飼料に含まれる繊
維(ADF、NDF)及び乾物消化率、乾物摂取量から相対的な価値評価を行う。RFV 値が高い
ほど高品質粗飼料としてランクされる。イネ科牧草、マメ科牧草及びそれらの混合物に使用さ
れるが、トウモロコシサイレージや副産物飼料等は該当しない。
・RFV=乾物消化率(%)×摂取可能乾物量(体重%)/1.
2
9
・乾物消化率=8
8.
9−0.
7
7
9×ADF(%)
・摂取可能乾物量(体重%)=1
2
0/NDF(%)
(2)粗飼料評価指数(RVI : Roughage Value Index)
飼料の持つ物理的特性を示す指標であり、乾物1kg 当たりの咀しゃく時間(採食+反芻時
間)で示される。採食及び反芻行動は唾液の分泌量やルーメン運動との関連が強く、RVI が
長いほど採食量が少なくなり、RVI が短いとルーメン機能を正常に保つことが困難となる。RVI
−6
8−
は飼料の形状(長物か粉砕されているか)や NDF 含量により異なるが、搾乳牛の場合は種々
の飼料を組み合わせて乾物1kg 当たり3
5∼4
0分が適当と言われている。
○主な飼料の粗飼料評価指数
区
分
乾草
種
類
アルファルファ
エン麦わら
オーチャードグラス
副産物
サイレージ
長いまま
6
2分/kg・DM
細切断
4
4
ペレット
4
0
長いもの
1
6
0
粉砕、ペレット
1
8
1番草早刈り
7
4
1番草遅刈り
9
0
ミカン粕
3
1±1
5
粉砕モミ殻
1
6
バガスペレット
1
8
アルファルファサイレージ
2
6
コーンサイレージ
濃厚飼料
咀しゃく時間
長切断
6
6
中切断
6
0
細切断
4
0
グラスサイレージ
9
9∼1
2
0
小麦サイレージ
6
9
大麦粉砕
1
5
コーン粉砕
5
マイロ粉砕
1
1
(1
9
8
1Sudweek ら)
(3)非構造性炭水化物(NSC : Non-Structual Carbonydrate)
、非繊維性炭水化物
(NFC : Non-Fiberous Carbohydrate)
非細胞壁分画とも言われ糖と澱粉から構成され、ルーメン内で微生物に利用され急速に発酵
する成分である。全乾物から粗蛋白質、粗脂肪、粗灰分及び NDF を差し引いて求める。
「NFC%=1
0
0−(粗蛋白質+粗脂肪+粗灰分+NDF)
」
厳密には、高発酵性成分としてペクチンを含まない物を非構造性炭水化物(NSC)
、含む物
を非繊維性炭水化物(NFC)
として区別するが、実際には区別されずに使用される場合も多い。
搾乳牛では、NSC が不足の場合は産乳量、乳蛋白質の低下やボディコンディションのマイ
ナス等に影響し、過剰の場合は乳脂率の低下、食滞、アシドーシスに影響する。適量値は確定
されていないが、概ね飼料乾物中(実際に牛が採取した乾物)の1/3程度が適当である。
−6
9−
○炭水化物の分解速度に着目した分画方法
飼料の内容物
牛の消化管内での分解速度
分画
リグニン
分解(消化)されない
セルロース
ヘミセルロース
ゆっくり分解される
構造性炭水化物
澱粉、糖
急速に分解される
非構造性炭水化物
その他の栄養素
−
−7
0−
−
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所
属
氏
名
全国農業協同組合連合会新潟県本部
加
藤
博
幸
新潟県酪農業協同組合連合会
渋
谷
哲
也
社団法人新潟県畜産協会
佐
藤
栄
治
新潟県農業総合研究所畜産研究センター
矢田部
憲
一
中
邦
昭
川
関
誠
小
柳
渉
荒
木
創
高
橋
平
!
英
太
恵
子
新潟県農林水産部経営普及課
宮
腰
雄
一
新潟県農林水産部畜産課
阿
部
瀬
高
寛
治
長谷川
裕
二
悟