10 (10) TMR用飼料計算プログラム及び その評価プログラムの開発利用について 榎 谷 雅 文 釧路地区NOSAl 阿寒釧路支所 3 プログラムの基本的考え方 1 はじめに 近年,先進酪農家においては更なる規模拡大傾向にあ 図−1は今までの飼料計算プログラムと今回開発した り.TMR,フリーストール牛舎を建築する傾向にある。 プログラムの違いを示した図です。TMRに於いては, 我々獣医師もこれに対応して行かねばならず,その飼養 牛群の分け方で産乳前期,初産牛群などと区別可能な酪 管理には苦労するところである。今回筆者は,TMR 農家もあれば,一群管理の酪農家もあり,体重,産次等 用飼料計算プログラム,及びその評価プログラムを開発 を入力して飼料計算することには無理が生じます。個別 したのでその概要を報告する。 給与と違い,初産乳牛に成長の分までも給与するような 2 勅料及び方法 ことはできません。そこで,ケントネルソン博士のステー プログラムの開発に使用したコンピューターはPC ▼9801NS/Eラップトップ,32ビット,40MBハード ディスク.3.5インチフロッピーディスクドライブ内臓 ジフィーデイングの考え方を応用して,餌全体の粗飼料 割合,各章分量を計算し給与する方法を採用した。 図一2は飼料計算の計算項目を以前の個体対応のもの と比較した図です。TMRでは乾物摂取量も計算値と タイ70を使用した。 使用ソフトは表計算ソフトのマルチプラン,日本語 実際の摂取量との比較を行うことができ,乾物摂取量が データベースの桐,グラフ用ソフトのオフィスグラフを 制約されている事を知ることができます。又,TDI寸も 用いた。 細分化され.NFC.粗脂肪,ADF,NDFと,CP ではバイパス蛋白質,溶解性蛋白質,結合蛋白質を区別 図1今までの飼料計算と異なる点 スタンチョン方式 lT M Rl して計算します。 図2 飼料計算項目の比較 条件入力項目 条件入力項目 いままで TMR 体 重 産乳前期牛群 産 次 産乳後期牛群 乳 量 初産牛群 乳脂率 乾乳牛群 など 一群管理方式 DMI(乾物摂取量)予測式 DMI・・予測式と実際量で測定 DM(乾物) TDN(可消化養分総量) TDN NFC(非構造性炭水化物) FAT(粗脂肪) L′綿鰻鰻、[ CFi(粗繊維) 」ADF,NDF 腰性,中性デェタープェント繊維) CP(DCP)(粗蛋白質) C UIPいくイパス蛋白質) DIP憾解性蛋白質) (ADF−CP順含蛋白質) 北 獣 会 誌 37(1993) (11) 11 図3 フィーディング フィードバック システム 圏4 事L検成績の分析の仕方 図−3は評価プログラムの概念図で,フィーデイング フィードバックシステムと筆者が名付けたものです。乳 牛を一つのブラックボックスとして考え,インプットと して計算されたTMR飼料を,アウトプットとして乳 検成績,BCS,繁殖成績.糞の状態,乳房の状態,ほ んすうの数,乾物摂取量等を定期的に調べます。これら のアウトプットの状態より,牛の第一胃内の状態を推定 して,インプットである飼料を調整する考え方です。こ の考え方により,現在飼料設計しているものが自分の目 的とした牛群に適応しているものであるかを判定しま す。従って牛群が一群であったとしても自分の目的とし 分娩後日数 初産次 乳期毎の飼養管理の分析 育成方法の検討 た牛群がよければ飼料設計として良いと判断されます。 図−4はフィーデイングフィードバックシステムの最 重要評価項目の乳検成績の分析の考え方を図解したもの 西暦毎(検定月毎) 2産次 季節の変動 初産時の飼養方法検討 です。まず,乳検成績のデ「タベースを作り,そのデー タベースを時系列分析,階層分析して問題点を捜します。 時系列,階層分析の組合せにより,どの時点のどの午群 些萱旦担 3産次以上 過去の技術レベルを知る 遺伝情報の検討 変更後の方向性を知る 乳期全般の飼養方法の検討 の管理が悪いかを判断します。悪いところが解ればすぐ に改善行動を起こし,これが分析上なくなるまで行いま す。乳検成績を分析することによりその酷農家の飼養技 図−6は5月の2産次の午群の乳量を分娩後日数でプ 術が判断できます。 ロットしたものです。どの午に問題があるのかを調べま 以下の図は乳検成績の分析プログラムのアウトプット画 す。 面です。 図−5は3産以上の牛群の4月から8月までの産乳曲 図−7は同じように乳脂率を見たものです。初産次牛 群で,4月から8ノほでのものです。どの乳期が低いか 線です。産後の立ち上がり,ピ「ク乳量,乳量の維持の を見ます。この他に同じようにして,月毎 産次別に, 仕方を見ます。スライド上の産乳曲線は北海道乳牛検定 乳量,乳脂率,乳蛋白質率,組胞数,濃圧飼料給与里を 協会発表の産乳曲線です。各図上の基準線は以下皆同じ グラフ化してみることができるプログラムとなっていま です。 す。 北 獣 会 誌 37(1993) 12 (12) 図5 分娩後日数別乳量 ︵ U 5 6 00 0 g 代  ̄ 0 5 ハ U \ / ﹁ 乳 量 K 70 00 g 代 _ 80 00 g 代 90 00 髭= 1 00 0 − − 3 て ▲ ● − g − \ 、 0 、 − 5 八 − 0 ー ∧ \ / キ ・ → ’ 5 0 0 30 60 90 120 150 180 210 240 270 300 農家=榎谷 雅文 検定=肌−08月 図6 分娩後日数別乳量 60 00 5 0 40 53 45 3 0 2 5 2 0 乳量Kg − − ■ ヶ 、. ・、. 9 〇 、ヾ 70 0 0 g 代 90 0 0 g 代 10 0 00 代 ○ ー → g 代 80 0 0 \ ヽ − ○ g 代 〇 、 ● − \ 、 ニミ・ 0 30 60 90 120 150 180 210 240 270 300 農家=榎谷 雅文 検定=91.05月 図7 分娩後日数別乳脂率 5.00 4.50 4.00 己 V 3.50 V 3.00 2.50 全道平均 農 家 2.00 0 30 60 90 120 150 180 210 240 270 300 農家=横谷 雅文 検定=04−08月 北 猷 会 誌 37(1993) (13) 13 図8 栄養評価図 1 % ト ルーメ ンア シ ドⅥジス /1 良好 % ◇ ∵ 〇〇 〇 噂 栄養不足 % ㌔ 分癒線 A ・分離線 B 00 0 8 / ̄〇 ▲ 七/ o g 0 0 0 0/ ○ T D N ,N F C 不足 % Z 2.5 3 3.5 4 4.5 5 200> 農家=横谷 雅文 検定=91・05月 図−8は栄養評価図と筆者が名付けた図です。横軸に 筆者が現場上で使う分には問題は少ないが,日本での学 乳脂率,縦軸にほ乳蛋白質率を取り,軸の目盛りは同じ 術的裏付けに乏しい事,アウトプットの画面の判断が困 数値を取ります。分離曲線Aは乳脂率分の乳蛋白質率が 難であることは否めない。 1の線です。分離曲線Bはその値が,0.8の直線です。 又,この評価プログラムはTMRでなくても使うこ アメリカDITⅠの研究報告によれば,ホルスタイン種の とはでき,過去の乳検データを入力することにより色々 乳成分はこの範囲に入るべきと言うことです。栄養評価 な分析ができ,酪農家の飼養技術を評価する事が可能で 図は5の区域に分かれており,自分の目的とする牛群が ある。過去を反省し,現在よりも更に良くするには,こ との区域に入っているのかが問題です。左下であれば. のように常に定期的に科学的に評価を下すことが必要で 栄養不足,右下であればNFC不足,左上であればルー メンアシドージスと判断します。(インプットの飼料が あり,このことが目に見えない損失部分を拾い上げるこ とになります。更に規模拡大が進み頭数が多くなればな 解っていない限り簡単には判断できない。)この判断基 るほど,この事は重要性を増します。従って判断するた 準はDHIの研究報告,餌の理論により作成したもので めに貴重な情報を与え得てくれる乳検データは重要な意 す。この図−8であれば,200日以上搾乳している牛群で, 味を持ち,更に評価プログラムは重要な手段となります0 一部にルーメンアシドージスが出現していると判断でき この評価プログラムも時代の流れと共に変わらねばな ます。このように大まかに判断できるもの,飼料設計す らず,更なるプログラムの開発,又,別の分野のプログ なわちインプットがしっかり計算できている事が最低限 ラムの開発も待たれます。 必要です。 (平成4年度学会発表論文) 4 考 察 今回飼料計算7■ログラム及びその評価プログラムの開 発応用を二年半にわたり行い,高産乳農家の出現を見, 乳成分の低下もある程度改善できた。この実績を踏まえ, 筆者の開発した70ログラムの概要を報告した。飼料計算 についてはケントネルソン博士のステージフィーデイン グの考え方を参考にして下さい。評価70ログラムに関し ては筆者独自のもので,餌の理論とDHIの研究報告を 参考にして作り上げたものです。この評価プログラムは 常に牛の反応を見ながら行うことで,今よりより良くす るにはどうすれば良いのかを考えるための材料を提供す るので,非常に現場向きのプログラムと言える。しかし 北 獣 会 誌 37(1993)
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