りんくう愛たいネット研修会 「妄想性疾患について」 ゆたかクリニック 貴志素子 「看護のための精神医学」より 「医者が治せる患者は少ない。 しかし看護できない患者はいない。」 病気の診断がつく患者も、思うほど多くない。診断 がつかないとき、医者は困る。あせる。あせらない ほうがよいとは思うが,やはりあせる。しかし、看護 は,診断をこえたものである。「病める人であるこ と」「生きるうえで心身の不自由な人」-看護にとっ てそれでほとんど十分なのである。実際、医者の 治療行為はよく遅れるが、看護は病院に患者が足 を踏み入れた、そのときからもう始まっている。 危険な治療者にならないために 広い意味の精神療法とは、患者に対する一挙 一動、たとえば呼び出すときの声の調子や、薬 をわたす手つきへの配慮を含むものである。 これがわかっていなくて狭い意味の精神療法に 熟練した人は、医者であろうと看護者であろうと、 患者にたいしてかなり危険な治療者である。 「こころ」と「からだ」 • 「こころがけが悪いからなった病気」-有害な誤解 • 「こころとからだの中間の病気です」河合隼雄 • 考えすぎないために-脳とこころとは紙の裏と表 のようなもので、二つに分けることもできないが、 同時に両方を眺めることもできないようなもの • 「疲れ」 あたまの疲れ 気疲れ からだの疲れ 「病気」と「原因」 ・外因-「こころからみて外のレベル」(身体病)が原因 脳炎や脳腫瘍なども ・内因-「こころのなかで何かわけのわからないことがお こっている」 統合失調症 躁鬱病など ・心因-「こころの問題が原因になっておこる」 心因反応 神経症など 洞察と病識 • 「自分が病気だった」と知ることには恐ろしい 面があることもわかってきた。「自分が周囲に 苦しめられていると思っていたのに、実は自 分が周囲を悩ましていたのだ」と知るのはじ つにつらい。「早すぎる病識」は、自殺の危険 が高まる印と考えてよいくらいだ。病識は、時 満ちて病識に耐えうるしっかりした余裕があ るところに自然に生まれる必要がある。 洞察と病識 • よくなった患者の多くは、「あのころのことは 夢の中みたいです」と語る。 治療者は、よく なった患者に向かって、病がさかんだったとき のことを話題にしてはならない。「あんなこと を言っていたのに、こんなに良くなって良かっ たわネ」などと言わないことである。癒えた病 の記憶も心の傷(外傷性記憶)として、意識の 皮一枚下に生きていることが多い。その薄皮 を大切にして、はがないことである。 統合失調症の主な症状 • • • • • • • • 思考化声 対話形式の幻聴 自分の行為を批判する幻聴 身体への影響体験 考想奪取および思考の被影響体験 思考伝播 妄想知覚 感情・欲動・意志の分野における外からの作為体験 幻覚や妄想にどう対応するか • 一般には「中立的な態度」がよく、「ふしぎだね」 という感じで対するのがよく、「私は経験していな い」とつけ加えてもよい。 • 自傷他害の恐れを感じさせる幻覚・妄想に対し ては、「ひょっとして間違っていると取り返しがつ かないから、実行しないことを勧める」と言うのが よい。 • つつしむべきは「またあんなことを言っている」 「あなたの言うことを聞きあきた」ということである。 これは患者を意地にさせて長びかせるきっかけ になる。 患者の疲労感について • 硬い疲れと柔らかい疲れ 硬い疲れー緊張のあまりの疲れ 柔らかい疲れー緊張が緩んできたときに感じる 疲れ(リラックスしたと感じずにぐ たっと疲れたとマイナスに感じる) • 薬による疲れ 疲れとイライラ感と自由に動けないきゅうくつ感と が混じったもの
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