IT活用織物企画設計支援システムの開発(第3報)

IT活用織物企画設計支援システムの開発(第3報)
(見本織機自動制御システムの開発)
大野
宏*
牧野
斉*
Development of Textile Design System using Information Technology
(Development of Automatic Weaving System)
by
*
*
OHNO Hiroshi
MAKINO Hitoshi
抄録
見本織機を制御するドビーを自動的に動作させる装置を開発した。パソコンで動作データを作成で
きるソフトを開発し、昨年度開発した自動パンチングマシンのデータ作成ソフトに組み込んだ。本装
置と自動パンチングマシンを使うことで、織物見本の製作からドビー紋栓カード作成及び実際の織物
製造までに要する時間を大幅に短縮することができる。
フィラーニー
1.緒言
ドル制御部
県内織物産地が低価格輸入品に対抗するた
めには、差別化商品の多品種生 産と短納期生
産の体制を確立しなければならない。その た
め 、 I T (Information Tec h nology)を活
用した織物企画設計の迅速化や生産情報の 一
コンプ
センサ
PLC
レッサ
ー
元管理が必要となる。
本研究では、 見 本 織 機 を 制 御 す る ド ビ ー を
自動的に動作させる装置を開発した。実際 に
操作パネル
は、既存 の 見 本 織 機 の フ ィ ラ ー ニ ー ド ル と 呼
ば れ る 多 数 の 針 を 自 動 的 に 制 御 する。また、
昨 年 度 開 発 し た 自 動 パ ン チ ン グ マ シ ン を参考
に し て 装 置 を 開 発 し た。ドビーを動作さ せ る
図1:装置の 概要
ためのデータ作成機 能は、同じく昨年度 開 発
するPLC(プログラマブルコントローラ) 、
した自動パンチングマシンの制御用データ 作
エアシリンダーを動作させるコンプレッサー、
成ソフトに組み込ん だ 。
各 種 設 定 や緯 糸 選 択 デ ー タ を 修 正 す る 操 作 パ
織物見 本 の製 作 を こ の装置 で行えば、ドビ
ー紋栓カードの作成 も 大 変 容 易 に 行 え るた め 、
ネルからなる。
これまで の 見 本 織 機 では 図 2 に 示 す よ う な
織物の設 計 か ら 製 造 ま で の 時 間 を 大 幅 に 短 縮
ドビー紋栓カードと呼ばれる穴の開いた紙で、
できるようになった。
フ ィ ラ ー ニ ー ド ル を 上 下 さ せ機械全体 を制御
してい た が 、 今 回 は 図 3 に 示 す エ ア シ リ ン ダ
2.装置の概要
開発した装置 の概要 を図1に示す。フ ィ ラ
ーニードル制御部、 セ ン サ 、装置全体を制御
*
素材応用技術支援センター
ーで動く 5 0 個 の ス ト ッ パ ー で フ ィ ラ ー ニ ー
ドルを上下させる。
ストッパーを動作させるタイミングは、既
存の見本織機に取り付けた回転センサ (1回
転 3 6 0 度を 16分割する 信号 が出 力 )の信
号で決定する。フィラーニードルは織機の回
転軸が2回転するなかで奇 数針 と偶数 針が1
回ずつ交互に 動作するため 、奇数列か偶数列
かを 判 別 す る 内 部 接 点 を P L C プ ロ グ ラ ム に
設け、奇遇のどちらを動作させるかを 決定す
る。そ れ ぞ れ の 動 作 タ イ ミ ン グ を 図 4 に 示 す 。
織 機 は 非 常 に 高 速 で 動 作 す る た め 、 奇数偶数
それぞれのフィラーニードルが動作す る前に
図2:見 本 織 機 の フ ィ ラ ー ニ ー ド ル と
これを制御する紋栓カード
ストッパーを 動 作 さ せて お く。
3.PLCプログラム
P L C プ ロ グ ラ ム の 概 要 を 図 5に示す。最
初 に 制 御 デ ー タの 書 き 込 ま れ た カ ー ド か ら デ
ータを読んで PLCのメモリに書き込 み、次
に初 期 設 定 や ス タ ー ト 行 の 設 定 を 行 う 。見本
織機を動作させるとメモリから制御データを
図3:フ ィ ラ ー ニ ー ド ル を 制 御
読み取り、ストッパーを動作させる。最後の
するストッパー
データを読み取ると、また最初のデータを読
スタート
回転センサ
1 2 3 4 5 6 7 8 9 10 11 12 13 14 15 16 1 2 3 4 5 6 7 8 9 10 11 12 13 14 15 16
運転開始 [40.15]
偶判別
[40.09]
奇数針
偶数針
↓
↑
↑
↓
回転センサ
9 10
奇数列
偶数列
回転センサ
1 2 3 4 5 6 7 8 9 10 11 12 13 14 15 16 1 2 3 4 5 6 7 8 9 10 11 12 13 14 15 16
運転開始
偶判別
奇数針
偶数針
回転センサ
↓
↑
↑
↓
9 10
9 10
奇数列
偶数列
図4:各部の動作タイミング
( 奇 数 針 偶 数 針 は 織 機 の フ ィ ラ ー ニ ー ド ル 、 奇 数 列 偶 数 列 は ス ト ッ パ ー を 示 す。 )
む。操作パネルから行番号を入力すると、 そ
カードから制御データの読込
の行の緯糸選択データが表示され、パネル 操
作でデータを 修正できる。修正 された データ
初期設定
をカードに書き込め ば 、 パ ソ コ ン で 再 度 読 み
込むことができる。
スタート行のセット
4.データ作成プログラム
自動化した見本織機は、 昨年度開発した自
動パンチングマシン と一体で使用するため、
スタート
同 じ く 昨 年 度 開 発 し たパ ン チ ン グ マ シ ン制御
データ作成プログラムに、見本織機制御デ ー
データ読込
タ作成機能を組み込んだ。自動パンチング マ
シンは既 存 の パ ン チ ン グ マ シ ン の 構 造 か ら 、
ストッパー動作
1回の動作で2行まとめてカードをパンチ ン
グするが、見本織機は1行ずつ動作するため、
カウンターインクリメント
データの構造を変更する必要があり、これ に
合わせてプログラムを作成した。表計算ソ フ
トエクセルのVBA を使用している。
最終行
No
Yes
カウンターを最初に戻す
5.結言
見 本 織 機 を制 御 す る ド ビ ー を自動的に 動作
させる装 置 を 開 発 し た 。 こ れ ま で は 、 自 動 パ
ンチングマシンで作成した ドビー紋栓カード
で見本織 機を 動作させていたが、本装置を使
えば電子データで直接織機を動作させるこ と
が で き る 。 そ の た め 、織 物 見 本 の製作 にかか
る 時 間 が よ り い っ そ う短縮 さ れ 、変更も容易
に 行 え る よ う になった。
本研究は、素材応用技術支援センターの実
用研究及び見附IT推進化事業 (見附市地場
産 業 振 興 ア ク シ ョ ン プ ラ ン )で 行 わ れ た 。
図5:PLCプログラムの概要