中国ビジネスニュース第5号

2012 年 11 月(第 5 号)
中国ビジネスニュース
中国ビジネスニュース
編集:
編集:香川県上海ビジネスサポーター
香川県上海ビジネスサポーター 川田真理子
今月の注目トピックス
注目トピックス
■大型連休に
大型連休に見る中国
中秋節・国慶節の大型連休が終了し、関連当局などからの統計データが発表されました。国家旅遊局、国
家統計局の発表によると、今年の中秋・国慶節 8 日間(9/30-10/7)における中国国内旅行者数は前年同期
比 40.9%増の 4.25 億人、旅行収入は同 44.4%増の 2,105 億元とそれぞれ大幅に増加しました。
また世界高級品協会(WLA)は、同連休中における海外での中国人旅行客による消費額は 480 億元以上と
発表しました。韓国では 9 月 28 日-10 月 6 日の中国人旅行客が 12.5 万人を突破、消費額も約 2,700 億ウ
ォン(約 15.3 億元)と、共に過去最高を記録しました。尖閣諸島問題の影響で、日本から韓国へ行先を変更し
た旅行客も多かったようです。国家旅遊局は 2012 年における中国人海外旅行客数は 7,700 万人(2011 年は
7025 万人)に達し、消費額も 2011 年の 690 億ドルから 800 億ドルになる見込みと発表しています。
今回の大型連休における中国国内旅行者数が大幅に増加した原因は、国務院が公布した四大祝祭日に
おける小型車(7 座席以下)の高速道路無料化政策にあります。この政策に伴い、観光地で入場料減額やレ
ンタカー利用初日無料などのサービスが実施され、高速道路の大渋滞や観光地の混雑が話題となりました。
同期間における交通事故は 68,422 件、死亡者数は 794 人にものぼっています。また、万里の長城は観光客
の多さのため「万人の長城」とまで比喩されました。
高速道路無料化の刺激策は経済的な牽引となりましたが、いくつかの問題が表面化しています。一つ目
は高速道路の収入減少です。交通運輸省科学研究院交通財政金融研究所の初歩的概算によると、主要祝
祭日における全国の高速道路収入は約 200 億元の減収になります。高速道路の投資費用やランニングコス
トも莫大であるため、政策とはいえ高速道路の無料化は運営会社にとっては苦しい現実です。
事実、黄山高速道路管理会社の収入は年間 1.2 億元であるのに対し、建築費用は 70 億元を超えているた
め、年間 5 億元以上の損失が出ています。さらに今回の無料化により、年間収入が 1/6 にまで落ち込むと見
られています。この高速道路の料金徴収期限は 30 年と定められていますが、現状のままでは 30 年どころか
60 年でも完済できない見込みです。
二つ目は大型連休を含めた休暇調整の必要性です。2008 年以降、労働節(ゴールデンウィーク)の大型連
休がなくなり、休暇が分散されました。しかし、今回は中秋節と国慶節が連続し大型連休となって、各地で交
通事故や観光地の混乱などが起こりました。
このことから労働節の大型連休復活、更には有給休暇制度徹底の声が挙がっています。有給休暇につい
ては 2008 年 1 月より≪従業員有給休暇条例(中国語:職工帯薪休假条例)≫が施行されていますが、企業
側はコストの観点から有給休暇制度を徹底しない、一方、従業員は有給休暇取得が報酬面などに影響する
のではないかと懸念することから、なかなか実施徹底には至りません。
実際、2011 年 12 月に人材コンサルタント会社 Mercer(美世)が発表した有給休暇取得日数によると、62 カ
国中、中国は下から 4 番目という結果になっています。
文頭のデータが示すように、中国国内または海外への旅行客増加による経済効果は絶大で、中国が消費
大国に変わったことを示す一例でもあります。この度の問題が解決すれば、中国は本当の意味での経済大
国になるのではないでしょうか。
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2012 年 11 月(第 5 号)
政策・
政策・経済トピックス
経済トピックス
【新政策動向】
■証券会社
証券会社の
証券会社の外国資本比率の
外国資本比率の上限引き
上限引き上げ
中国証券監督管理委員会は 16 日、「外国資本参加の証券会社設立規則に関する改正」と「証券会社子会社
設立試行規定」を発表し、国内証券会社への外国資本の出資比率の上限を従来の 1/3 から 49%に引き上げ
た。また、業務範囲の拡大を申請するために必要な子会社の経営期間を 5 年から 2 年に短縮する。
■新
新エネルギー自動車産業技術革新
エネルギー自動車産業技術革新に
自動車産業技術革新に奨励策公布
財政部、工業・情報化部、科学技術部は「新エネルギー自動車産業技術革新工程に対する財政奨励資金管理
暫定弁法」を正式発表した。新エネルギー自動車完成車プロジェクトと動力電池プロジェクト等に奨励金が出る。
■上海市
上海市 新エネ補助金
エネ補助金
上海市は今月、電気自動車(EV)などの新エネルギー自動車導入促進対策補助金政策を実施する。国の政策
と並行して地方自治体でも独自の政策を打ち出すことで、新エネ車の一般消費者への普及を促進する。電気自
動車(EV)とプラグインハイブリッド車(PHV)のナンバープレートの登録費用を無料とし、電池容量が 1kwh ごとに
2000 元の現金補助を支給する。電池容量が 20 kwh の新エネ車の場合、国のエコカー補助金と合わせた補助金
総額は約 10 万元になる。
■第
第 12 次 5 カ年計画の
年計画の危険化学品廃棄物利用
危険化学品廃棄物利用 2000 億元に
億元に
環境保護部は「第 12 次 5 カ年計画の危険廃棄物汚染防止計画」を公布した。危険廃棄物の発生・保存情況の
調査、利用・処理、監督管理能力・人材育成を推進する。危険廃棄物利用の総生産額が 2000 億元、処理費用が
500 億元になると見込まれている。
【経済・産業】
■広州 交易会開幕
交易会開幕
10 月 15 日から、第 112 回中国輸出入商品交易会(広州交易会)が開催された。今年は 44 の国と地域から 552
社が出展し、日本からも 22 社が参加する。展示会の規模は拡大し続けているが、欧州債務危機を始め、世界経
済状況が悪化しているため、厳しい状況下での開催になると予測されている。
■広東省
広東省 エレベーター部品
エレベーター部品の
部品の不合格率 23.9%
23.9%
広東省質量技術監督局はこのほど、2011、2012 年度の同省のエレベーター部品に対する品質抜き取り検査の
結果を発表した。広州、深セン、仏山を含む省内 12 都市のエレベーター部品メーカー22 社と、エレベーター部品を
使うエレベーターメーカー85 社の製品 402 ロットを対象に調査した結果、不合格率は 23.9%に達した。
■省級海洋機能区
省級海洋機能区 新規 8 区画を
区画を承認
中国国務院は天津市、河北省など 8 つの省・直轄市・自治区における海洋機能区の区画を承認した。中国政府
による海洋機能区の区画の承認は、海洋経済の大規模な開発が地域レベルでの推進から国家戦略へと格上げ
されたことを意味する。2020 年までに、沿海地域は 21 万 600 ヘクタールを上限とする海岸埋め立て地区を建設
し、海水養殖機能区の面積を 200 万ヘクタールまで拡大することを目指す。
■南方航空
南方航空と
南方航空と東方航空 「一部日本路線の
一部日本路線の休航」
休航」報道を
報道を否定
「中国南方航空公司と中国東方航空公司が日本 2 路線の運行を停止する」との日本メディアの報道について、
2 社はこれをそろって否定した。南航は、「季節的なダイヤ調整中だが、休航に関する明確な情報はない」と表明。
東航は、「休航となっている便は昨年3月の東日本大震災後から運行を停止している」と説明した。
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2012 年 11 月(第 5 号)
■三菱自動車
三菱自動車、
三菱自動車、三菱商事 合弁会社設立
三菱自動車工業、三菱商事、広州汽車集団は、湖南省長沙市に合弁会社「広汽三菱汽車」を設立し、営
業を開始した。広汽三菱汽車は、2009 年に湖南長豊汽車が広州汽車傘下の広汽長豊汽車となった後、広
州汽車による広汽長豊汽車の吸収合併を経て、新たに広州汽車、三菱自動車、三菱商事による合弁事業と
して成立に至ったもの。10 月下旬より新型車「ASX」の生産を開始し、本格オフロード SUV「パジェロスポー
ツ」も投入する予定。
■日産
日産の
日産の中国合弁 反日デモ
反日デモ被害
デモ被害へ
被害へ補償制度
日産自動車の中国合弁会社「東風日産乗用車」は 18 日、反日デモなどで車が破壊されたりけがを負った
りした顧客に対し、修理費と治療費を全額補償する新サービスを発表した。制度化を発表したのは日産が初
めて。制度化により顧客に安心感を与え、販売回復につなげたい考え。
■上海からの
上海からの乗船客
からの乗船客 日本に
日本に到着
上海からの旅行客約 2,200 名を乗せたイタリア籍大型客船“コスタ・ビクトリア”号が熊本県八代港に到着。熊本
県副知事や八代市市長が中国からの旅行客を出迎えた。熊本県の旅行業者は「今回のコスタ・ビクトリア号の寄
港が緊張している日中関係の緩和となる契機となれば」と話している。
■日中間の
日中間の旅行に
旅行に大きな損失
きな損失
国土交通省の最新の報告によると、9 月中旬以降、日本からの訪中団体旅行の半数が取り消されていると発
表。中国旅行部門も対日本旅行産業の損失は大きいとしているが、中国からの訪日旅行者と日本からの訪中旅
行者の一人当たりの消費額を比較すると前者の方が大きいため、日本側の損失がより大きいと見ている。
国土交通省の報告では、日中関係の緊張化や中国での反日抗議活動から中国への旅行者のキャンセルが相
次ぎ、訪中団体旅行のうち 50%が取り消されているという。また日中間を結ぶ定期便も減便となった。日本航空と
全日空によると、9 月から 11 月において約 5.2 万人の日本人旅行客が中国行の予約をキャンセルしている。日本
で最大の旅行社である日本交通公社は、団体旅行客は 10%減少していると伝えている。なお観光庁の最新デー
タによると、9 月に日本を訪れた中国人旅行客は 12.35 万人で、東日本大震災前の 2010 年 9 月と比べると 10.1%
減少している。
■9 月の全国財政収入 約 1 割増の
割増の 8258 億元に
億元に
中国財政部によると、9 月の全国財政収入は 11.9%増の 8258 億元に達した。第 1-3 四半期の全国財政収入
は、前年同期比 8925 億元増加し、9 兆 588 億元に達した。増加率は 10.9%にとどまり、前年同期の増加率を 18.6
ポイント下回った。このうち、税収の増加率が前年同期より 18.8 ポイント低下した。
■貴州
貴州マオタイ
貴州マオタイ 「国酒茅台」
国酒茅台」商標登録の
商標登録の公示期間終了
10 月 20 日、中国の茅台(マオタイ)酒メーカー「貴州茅台」が、国家商標局に対し「国酒茅台」の商標登録を申
請している件について、3 ヶ月間の公示期間が終了した。期間中、異議申告がなければ「国酒茅台」の商標登録
が認められたが、国家商標局によると、期間中に同業他社から 95 件の異議があったため成立しなかった。公示期
間に異議を受け取った場合、最終的な審査結果が下される時期は最速でも 5 年後となる。
■中国投資
中国投資 ドイツ銀行
ドイツ銀行の
銀行のイギリス本社
イギリス本社ビル
本社ビル購入
ビル購入
中国の国有投資会社「中国投資」は、ドイツ銀行のイギリス本社ビルを買収する計画を進めている。ドイツ銀行
のイギリス本社ビルは、イギリスの金融中心であるシティ・オブ・ロンドンに位置する。中国投資は 2 億 5000 万ポン
ド(約 318 億 3800 万円)でビルを購入する方針を示している。
■上海
上海 自動車保有台数 213 万 5280 台に
10 月 19 日、上海市情報センター自動車産業研究室が、上海市の自動車保有状況を発表した。報告によると
2012 年 1-9 月、上海市で登録された自動車台数は、前年同期比 4.53%増の 25 万 5135 台であった。登録された
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車のメーカーを国別でみると、中国が 15 万 7038 台、ドイツが 1 万 7729 台、日本が 6101 台、イギリスが 2719 台、
アメリカが 2719 台となる。上海市の 9 月末時点での自動車保有台数は、前年同期比 2.96%増の 213 万 5280 台
に達している。
■内陸部
内陸部の
内陸部の原発建設 15 年まで認
まで認めず
国務院は 24 日、温家宝首相が主宰する常務会議を開き、2020 年までの原子力発電の「中長期発展計画」を決
めた。原発の新設について、万一の事故の際に水源汚染のリスクなどが高い内陸部に限り、2015 年までは建設
を認めない方針を新たに打ち出した。
【人民元情報】
人民元市場レート(2012 年 11 月 1 日)
外貨名 100 日本円
中間値 7.8727 人民元
【中国ビジネスワンポイントアドバイス】
中国において代理店を活用した販売を行う場合の留意点
■代理店を活用した販売を行う場合のメリット・デメリット
販売代理という販売手法は、対象の製品や商品が中国での販売実績がない場合や市場の評価が未知数
の場合に、テスト販売として有効です。また、現地に拠点を持つことに伴うコストがなく、少ない初期
投資で始めることができることもメリットの一つです。
その反面、契約交渉が難しく、卸価格や最低販売数量等では日本側の要求を通すのは難しいのが一般
的です。契約義務の不履行も常に問題となり、自社による管理ができないため、販売計画、品質・サー
ビスの保証、トラブル発生時の対応について、代理店の判断に委ねることになります。また、販売虚偽
報告が発生しやすく、会計帳簿の提出義務さえ果たさないケースもあります。こうしたリスクを伴うデ
メリットを認識しておくことも必要です。
そこで、代理店の選定に伴う確認手段や留意点について、以下の通りご紹介します。
[訪問、交流し、自分の目で確認する]
自ら代理店企業を訪問し、情報交換や販売売上状況などを確認しましょう。また、ビジネスは人と
人との交流の上に成り立ちますので、代理店の担当者や責任者がどんな人物であるかを確認すること
も重要です。また、販売実績だけでなく、クレームや問題が発生した際の窓口対応や体制についても
確認すべきです。
[書類の確認]
代理店企業の登記簿謄本にあたる営業許可証(法定代表者、資本金、経営範囲、株主企業、営業期
限、設立年度)などを確認し、疑問点があれば直接質問します。納得できる回答があるかどうかも確
認しましょう。中国では、登録上と実際の内容が異なる場合もあります。
[第三者機関での信用調査]
工商局や税務局における財務データや販売状況データ、株主情報などを把握しておきたい場合は、
信用調査を行うことをお薦めします。
■代理店と付き合い方に関するトラブル事例と留意点
先日、ある日本企業が中国販売代理店との間でトラブルが発生しました。
同社は中国での自社商品の販路開拓のため、中国資本の貿易会社と代理店契約を締結しましたが、代
理店がネットショッピングサイトで仕入れ価格よりも安い価格で販売していたようです。その上、サイ
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ト上には、その販売数(販売実績)も掲載されており、日本企業としては安い価格で販売した上、全く
売れていないということに自社ブランドのイメージを傷つけられたと感じ、中国企業による販売価格の
是正あるいは販売停止を求めたいと考えました。
しかしながら、中国企業は販売行為において何ら違法な行為を行っていないので、法的な手段で販売
を差し止めることはできません。また、仕入れ価格以下の値段で販売することは、代理店との委託販売
契約の中で、販売価格に関する明確な規定がない限り、代理店は仕入れ元の要求に従う義務はありませ
ん。
ちなみに、委託販売契約には「買取販売契約」と「委託販売契約」がありますが、今回のケースは買
取販売契約に該当し、代理店が商品を買取って販売しており、売れ残ることは代理店にとってリスクと
なります。一方、委託販売契約の場合は、販売実績に従ってコミッションが発生するため、代理店のリ
スクが比較的軽いのです。
今回、有難迷惑な出血大サービスをしてでも販売促進を行う代理店を例に挙げましたが、その他にも、
代理店契約を結んだにも関わらず、販売促進をしてくれないというケースも多くみられます。そうした
トラブルを最小限にするには、日本企業は代理店側が取引企業や取扱商品を多数有しているということ
を認識したうえで、
自社商品を積極的に販売促進するよう、
代理店への積極的な営業活動や新製品の PR、
情報交換などを行っていくことが重要です。
多くの日本企業が代理店との間でのトラブルに頭を抱える一方で、豊富な人脈と販路を有する代理店
とうまく付き合うことは日本企業にとっても有益であることから、最近よく見られるのは、日本企業が
現地に販売子会社を設立して代理店を管理する手法です。販売子会社を設立すれば、直接現地で販売活
動を行うことも可能となります。
次回は、現地販売子会社設立による中国での販売展開について取り上げます。
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