角運動量とトルク CIS 角運動量とトルク 1 回転運動 どんな運動も「運動方程式」に従う 新しい原理は不要だが 新しい量の導入→記述を簡単にする 回転運動とは? 代表例:円運動 円運動ではない回転運動 回転半径や中心が時間とともに変化する 直線運動にも「回転」の要素がある? CIS 角運動量とトルク 2 糸口:「てこ」の原理 r1 「てこ」の原理 アルキメデス 「回転」のつりあい r2 F2 F1 r F1 = r2 F2 回転の勢いが変化しない条件 1 「回転の勢い」を表す量は? 「回転の勢い」を変化させる量は? 運動方程式 「運動の勢い=運動量」の時間的変化と力 CIS 角運動量とトルク 3 てこの原理 → トルク 回転を引き起こす要因 力の大きさ F 支点(回転中心)から作用点までの距離 r (これを腕の長さという) トルク(ベクトル) 大きさ トルクベクトル 矢印の位置は問わない 回転軸があるときは、その付近に描く N = rF 向き 回転軸の方向 回転する右ネジの進む向き r ベクトル的に加算 「てこ」が回転する面 「つりあい」は「加えた結果が0」 CIS 角運動量とトルク 回転軸 F 4 「腕と直交しない力」の効果 「腕」の方向の力は回転の勢いを 変えない 「腕と直交する力の成分」だけが 有効 トルクの大きさ =腕の長さ ×腕と直交する力の成分 P O F// F⊥ F r F = 腕と力ベクトルがつくる 平行四辺形の面積 CIS 角運動量とトルク 5 トルクの記述に使える数学 ベクトルとベクトルの外積 × 記号「×」は必須 大きさ とがつくる平行四辺形の面積 = |||| sin θ 2つのベクトルが平行のとき、大きさは0 2つのベクトルの長さを変えず向きを変えると、直交で最大 とを含む平面に直交 からへ(小さい方の角 θを通って)回転する右ネジが進む方向 大きさを「面積」と表現したが G B θ G A 向き G G A× B との次元は長さでなくてよい 2つのベクトルが異なる次元でもよい との始点が同じである必要はない CIS 角運動量とトルク 6 外積の特徴、成分による計算 正規直交基底ベクト ルどうしの外積 2つのベクトルを交換 すると符号が反転 結合、分配など G ex G ey Ax Ay Bx By G ez Ay Az = By Bz CIS 角運動量とトルク G G G ex × ey = ez G G G ey × ez = ex G G G ez × ex = ey Az G G ex + " = ( Ay Bz − Az By )ex + " Bz G ez G ey G ex G G G G A× B = −B × A G B G A G G B× A 7 トルクベクトルを外積で表す :始点=回転中心、終点=力()の作用点 大きさ: 向き: rF sinθ 外積の絵では、 ベクトルの始点が同じに描くことが多いが、 トルクには力の作用点の位置が重要 回転軸の方向 その回転で右ねじが進む方向 次元: 距離×力 「仕事」と同じ だが,単位(N・m)をJと書くことはない 力の作用点 CIS 角運動量とトルク G G G N = r ×F 回転中心 G r θ G F 8 例:トルク モータの軸に軽い棒を水平に取り付け、軸から 1mのところに質量10kgのおもりをとりつける。 水平に保持するためにモータが発生すべきトルクは? 水平から45度上向きのときは? 水平から45度下向きのときは? モータ CIS 角運動量とトルク モータ 9 「トルク」を「てこから開放?」する 質点が力を受ける(運動していてもよい) 力は「てこ」の棒から受けてもよい 概念の発展 万有引力、電磁気力、垂直効力、摩擦力、… 真の(みかけでない)力なら何でもよい 回転中心の位置は自由に想定してよい 「てこ」の支点、「てこ」の棒の端、… 太陽、太陽と地球の重心、計算しやすい位置、… 同じ力で、同じ質点が、同じ軌道を運動しても、回転 中心の位置によりトルクの値は異なる CIS 角運動量とトルク 10 例:トルク 長さ1mの糸の一端を原点Oに固定し他 端に質量1kgのおもりをつけ、水平面内 を1秒に10回転の速さで回転させる。 固定端を中心とするとき、糸の張力による トルクは? 回転運動中にこの糸を毎秒1cmの速さで 中心でたぐり寄せて回転半径を縮めると きは、張力によるトルクは? O T 1cm/s (1) 重力で自由落下する1kgの物体がある。 落下の軌道(鉛直下向きの直線)上の点 を中心としたとき重力のトルクは? この軌道から1m離の距離にある点を中 心としたとき重力のトルクは? CIS 角運動量とトルク (2) mg 11 運動方程式とトルク 運動方程式(唯一の原理)から導かれること 運動に対するトルクの影響 力の影響→運動の勢い(運動量)の時間的変化 トルクの影響→回転の勢いの時間的変化 G G G G G G dp G ⎛ dv ⎞ ⎛ G dv ⎞ r ×F = r × = r ×⎜ m ⎟ = m⎜ r × ⎟ dt dt ⎠ ⎝ dt ⎠ ⎝ 運動方程式 「回転の勢い」にふさわしい量は何か? CIS 角運動量とトルク 12 面積速度:「回転の速さ」の表現 t→t+Δt で Δ:質点の位置ベクトルの変化 Δ= dt= dS 1 G G = r ×v dt 2 ΔS:位置ベクトルが「掃く」面積 ΔS =(1/2) |×Δ|= (1/2) |×Δt| d dS 面積速度 = dS/dt = (1/2)|×| P 回転の勢い? 例:惑星の運動 面積速度=一定 CIS 角運動量とトルク O 13 例:面積速度 半径 r = 1 m の円周上を1秒に1回等速で回 る物体について、円の中心から見た面積速 度は?半径 r と角速度ωを用いて面積速度 を表す式は? 直線上を等速 v = 1 m/sで進む物体について、 直線から r =1 m 離れた点から見た面積速度 は? CIS 角運動量とトルク 14 面積速度と角運動量 参考:質量×速度 = 運動量(運動の勢い) G G mv = p ⇒ G dpG F= dt ? 角運動量の単位は N・m・s = kg m2/s だがJ・sとは書かない CIS 角運動量とトルク G G G ⎛ G dv ⎞ r × F = m⎜ r × ⎟ dt ⎠ ⎝ どこか似てない? 質量×面積速度×2 = 角運動量(回転の勢い) G dl d G G G G G m(r × v ) = l ⇒ = = m (r × v ) dt dt 15 例:角運動量 地球(m=6.0x1024kg)が太陽を中心とする円 軌道(r=1.5x1011m)上を等速で運動するもの として、その公転運動の角運動量(の大きさ) を太陽を中心として表すと?角速度ωを用い た角運動量(の大きさ)を表す式は? 自分から1m離れた所を時速108kmで通過し た質量100gの物体の角運動量(の大きさ)は、 自分から見ると? CIS 角運動量とトルク 16 角運動量の和 2個以上の物体があるとき、各物体の角運動 量ベクトル和を「系の全角運動量」と言う。 どの物体の角運動量も共通の原点から見たとき の値を用いる - - 例:半径rの円の直径の両端に質量mの物体があり両 方とも円周上を同じ向きに同じ速さで回転する。全角 運動量は原点の選び方によって変化しないことを示せ。 O CIS 角運動量とトルク 17 トルク=角運動量の時間微分 角運動量(面積速度)を時間で微分すると? G d G G G dv (r × v ) = r × dt dt G G G ⎛ G dv ⎞ r × F = m⎜r × ⎟ dt ⎠ ⎝ d G G = m (r × v ) dt G dl = dt CIS 角運動量とトルク G G Δ (r × v ) G G G G G G ( r + Δr ) × ( v + Δ v ) − r × v = Δt Δt G G G G G G r × Δv + Δr × v + Δr × Δv = Δt → G G G G G G r × dv + dr × v G dv dr G = r × + ×v dt dt dt G G dv G G = r × + v ×v dt トルク と 「角運動量:回転の勢い」の時間的変化の割合 が量的に(ベクトル)として等しい 18 角運動量保存則 トルクが0のとき角運動量が変化しない 力が作用してもトルクが0になる場合に有効 例:中心力(不動の一点に向かう力) 角運動量と回転の角速度の関係に注意 復習:運動量保存則 力が0のとき運動量が変化しない CIS 角運動量とトルク 19
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