熊本地震の仕組みと背景(解説) 2016年11月19日、20日 京都造形

熊本地震の仕組みと背景(解説)
京都造形芸術大学学長
2016年11月19日、20日
尾池和夫
1.
熊本地震は活断層性の地震、南海トラフの巨大地震はプレート境界の地震です。活断層
性の大地震は、1つの活断層で、2000年から5000年に1度しか起こりません。プ
レート境界の巨大地震は、100年に1度は起こります。今後30年の地震発生確率は、
活断層で10%というと、とても高い確率です。プレート境界の地震の今後30年の発生
確率は、前回の地震から70年も経過すれば70%と高くなるのが当然です。
地震の仕組みを、さまざまの視点から学習しましょう。
2.
序は、尾池和夫の自己紹介。
地震とはどういうものか。
世界には巨大地震がどれほど起こっているか。
熊本地震はどんな地震なのか。
5年前の巨大地震はどんな地震だったか。
地震の直前には前兆現象がある。
地震は震災を起こす。
地震のない地域と変動帯を比較する。
日本海ができて日本列島が生まれた。
21 世紀前半の西日本の地震活動は。
地球のことを学習するジオパーク。
3.
最初に私の大学と私の自己紹介です。
京都造形芸術大学の基本理念が、「藝術立国之碑」に刻まれています。姉妹大学の東北芸
術工科大学と京都造形芸術大学に建てられています。
「宇宙の神秘にひれ伏せ」「地球の偉大さに畏れを抱け」「生きとし生きる命を愛し尊べ」
と書いてあるのですが、これがうちの大学の基本理念です。天地人の思想だと私は思って
います。この話をするのではなくて、この碑の石の話をします。
右下が京都駅の駅ビルの北側にあるビルの柱ですが、京都駅の駅ビルは世界中の石材を
集めてつくってありますので、そのサンプルが柱に全部タイルのかたちで貼り付けてある
のです。京都駅をお通りのときにはご覧いただきますと、世界中の石材のサンプルの名前
と産地が書いてありますから、なかなか面白い美術館になっています。中にアンモナイト
の化石が入っていたりして、いろいろ楽しい思いをするので、そういう石を見てください。
この黒い石ですが、実は南インドから取り寄せた黒御影という石材です。先日、大分県
の姫島に行きましたら、同じ石が碑石になっていました。姫島の村長さんに、この石はど
1
こから取り寄せましたと言ったら、
「南アフリカから買いました」と言われました。
昔、ゴンドワナ大陸というところにインドとアフリカがありまして、そこにあったころ
に熱いマグマが上がってきて、火成作用があって、その石材ができたわけです。
そしてインドは、アフリカから分かれて、どんどん今のインドのところにやってきて、
ヒマラヤ山脈が成長し始めたという、そういう地球の歴史があります。
もう一つ、日本には大きな石材がないのです。それはどうしてかというと、地震を起こ
す力が働いて、岩盤が割れるから、細かい割れ目が入って、日本の墓石は小さいのです。
巨石の墓というものはできないわけで、神戸の御影石のサイズはもっと小さなものにな
ります。こういう大きな石を使おうと思うと、安定大陸から輸入しなければならない。そ
んなことを見ていただきたいのです。
4.
京都造形芸術大学の学生たちは1年生全員参加で、ねぶたをつくって展示致します。こ
れは9月ごろになりますと皆さんの目に触れるようになっています。粟田神社の粟田祭の
ときにも参加しております。元気にいろんなものをやろうということです。
2016 年度のねぶたのテーマは「刻」でした。
5.
ねぶたのチームがパリに招待され、
「さむらい」を制作しました。
6.
卒業シーズンには、大学のキャンパスで、卒業修了展をお見せします。通信教育の方も
卒業展をやります。
7.
卒業制作展を、私も全部、数日かけて見てまわります。
8.
2016年、96歳の学士、香川県の平田さんが、世界最高齢の学士として、ギネスブ
ックに登録されました。
9.
わが大学には、春秋座という劇場があります。立川志の輔さんの独演会、今年もまもな
く3日やりますが、800人ほどの席が満席です。2017年春の祇園甲部の都をどりも
この劇場でやることになりました。
10.
私が芸術大学の学長になるというので、京都大学霊長類研究所の松沢哲郎さんが、チン
パンジーのアイに絵を描かせてくれたんです。お祝いの絵をあげようというので、これを
描かせてくれたので、ちょっと描くところを見てください。
11.
こういう絵ができまして、いま私の学長室にこれが掛けてあります。そうすると芸術家
たちがやってきて、「この絵はなかなかいい絵ですね。作家はどなたでしょう」とかいうこ
とを聞くわけです。
2
そういう論争に挑みながら、芸術とは何かということで、科学と、技術と、芸術と、学
術という分野で、私はいろんなことを学生たちに話をします。
「自然と芸術」という題で学生たちに講義もしていますけど、まず芸術作品創作の前に自
然がある、その自然をまずよく見ることをすすめます。その自然を超えるデザインを、芸
術作品を生み出してほしいと思います。
12.
たいへん元気な教員や学生たちがおりまして、いろんなことをやっています。例えば坂
茂さんは、東北の震災のときに間仕切りを避難場所でつくり、紙管を組み合わせて布を掛
けるだけでさっとできというので、これが非常に評判になって賞をもらったりしています。
つい先日、京都市長の門川さんと私と坂さんの間で協定書にサインしまして、何か災害
があって避難場所をつくるようなときには、すぐ紙管の技術を提供しましょうという協定
を結びました。
といいますのは、東北でこういうことをやったのですけど、説明を納得してもらうのに
1週間以上かかったのです。お役人の方たちが「やってもよろしい」と納得するのに時間
がかかるので、初めから納得をしておいてもらって、すぐやりますという協定書を書いて
おくと、だいたい紙のパイプを取り寄せて布を掛けるまで1週間ぐらいでできるという仕
組みです。それで全国で初めて自治体との間で協定を結びまして、こういうことが全国に
広まるといいなと思っているわけであります。
13.
もう1人、やなぎみわさんという方が移動舞台車を運んできて、ぱっと展開すると、そ
こですぐお芝居ができるということをやっております。これもぜひどこかで見てあげてほ
しいと思います。
14.
それから、もう一つ宣伝しておきたいのは、犬山にあります日本モンキーセンターとい
う動物園です。京都大学、その他の大学が使える施設として、私が理事長をやっておりま
す。このセンターは世界で一番サル類の充実した動物園です。
昔から私は、日本の大学に水族館がり植物園があるのに、なぜ動物園を大学は持ってい
ないのかとずっと言っていたら、実現して、いよいよ大学が使える研究用動物園として、
これが生きてくることになります。
15.
私の LINE スタンプです。学長ナマズというタイトルで出ています。英語の学習にもな
ります。
16.
地震学者であることに変わりはなく、最近では震災があると、その元になった地震の性
質を確認して、過去の自分の対社会的発言を振り返ってみることが多くなりました。
最近の地震活動を見ています。鳥取地震の場所を中心に、2001年から2016年1
0月31日までの浅い地震の分布図です。
3
細長く地震が分布している場所は、主として M7 クラスの大規模地震が起こった後の余
震です。内陸の活断層に M7 クラスの地震が起こると、余震は100年も続きます。この
図では、1927年の北丹後地震、1943年の鳥取地震、1995年の兵庫県南部地震、
2000年の鳥取県西部地震、2005年の福岡の地震、2016年の熊本地震などがそ
れに該当します。
大規模地震が起こっていない所で地震が群になって起こっている所は、活火山の活動が
あるか、これから大規模地震が起こる候補地です。
17.
1901年から2016年10月31日までの、浅い大地震の分布図です。大規模地震
が起こった場所です。この図と前の図を比べて、さまざまの情報を読み取ることが大切で
す。
18.
1901年から2016年10月31日までの浅い地震の分布図で、四角は時系列を描
いた範囲です。次の図とセットで見ます。
19.
前の図の四角の範囲の時系列を示しています。四角の範囲で西の方の地震の群の位置に
は、大規模地震が100年以上起こっていないことがわかります。
さらに長期間の浅い大規模地震の分布図を見ても、島根県の三瓶山の近くにはまだ M7
クラスの地震は起こっていないようですが、このことは後で九州の地域と一緒に見ること
にします。
20.
2011年には M9 という巨大地震が日本にも起こり、大津波がありました。そのよう
な巨大な地震のことを概観します。
21.
理科年表で M8.8 以上の地震を探すと、この表ができます。昔の地震は M の大きな値は
決まっていませんから、主に最近の100年くらいの地震が並びます。100年ほどの間
に8回あります。太平洋の周りに7回、インド洋に面して1回です。
22.
1700年の地震では、日本の古文書に基づいて、元禄12年の津波の高さを3通りに
推定しました。北米西海岸における沿岸・海底の地殻変動を6つのモデルで計算、太平洋
を横断する津波を計算し、18通りの組み合わせについて比較しました。その結果、西暦
1700年に北米西海岸の巨大地震の規模を M9 クラスと推定しました。米国地質調査所、
カナダ地質調査所との国際共同研究の成果です。
23.
100年ほどの間に起こった M8.8 以上の地震の分布を見る図です。余震の分布ですが、
昔の余震は不明です。
24.
4
地震の M と震度という物差しを見ておきましょう。
25.
今日は地震の話をさせていただきますが、まず東アジアは変動帯であって、大変大きな
地震の起こる場所であるということを認識していただきたいと思っています。
地震の分布図を描きますと、これが東アジアですが、十字を描いたところが地震の起こ
ったところでありまして、これがマグニチュード5以上の地震で、1700年から後の地
震のあったところです。
ヒマラヤがあったり、海溝の深いところがあったり、地形の激しく動いているところが
あります。地形と一緒に描きますと、高い山がある、深い海があるというところに大きな
地震がいっぱい起こるという原理があるわけです。これを変動帯と言って、動き回る大地
です。
26.
そういうところで地震が起こるわけですが、中国と日本の地震と震災の関係を最初に見
ていただきたいと思います。地震の大きさというのはマグニチュードという数字で表しま
すが、4、5、6、7、8、9と横軸に書いています。縦軸に、それによる震災の規模、
死者の数で、1、十、百、千、万と、10倍10倍です。
日本ではマグニチュード6を超える地震が起こると人が死ぬということがあります。と
ころが、隣の中国ではマグニチュード5ぐらいでいっぱい死者が出ているという、この違
いが非常に大きいのです。つまり家が非常に弱いということがあって、社会構造が弱いた
めに、ちょっとした地震が起こると人が死ぬということです。
世の中には何でも、規模の小さいものほど数が多いですから、マグニチュード5とか6
はしょっちゅう起こるわけで、これでいっぱい死者が出る。「地震が起こって人が死んだ」
というニュースがいつも伝わるのが中国なんです。日本ではめったにそういうことがない
のですが、7とか8という大きな地震が起こると、1万人、10万人と死者がたくさん出
るということがあります。小さい地震で死者が出るというのが中国の特徴です。
27.
震度とマグニチュードとの関係を少し見ていただきます。これは東日本の巨大地震が起
こったときですが、マグニチュード9という地震が起こると、東北の広い範囲で赤くなっ
ています。つまり震度6弱以上の大きな揺れが広がったということを示しています。M7.3
というのは前震、M7.7 とうのが余震ですが、こういう地震が起こるとちょっと揺れます。
28.
震度の物差しを少し詳しく最初にご説明申し上げます。日本では震度0から7まで10
段階の物差しがあるんですが、この震度の物差しを見るときによく聞く言葉ですから、3
つのポイントを今日は覚えてほしいのです。
まず第1に、震度0から7という物差しは日本の物差しであって、日本の気象庁震度階
級です。これは外国では使わないということを知ってほしいのです。
もう1つの大事なポイントは、揺れ出して、思わず座り込んでしまう。立っていられな
5
くなると、震度6弱を超えていると思ってほしいです。地震というのは地下の岩盤が割れ
て破壊が進む現象ですから、長い間揺れているということは、これがどんどん割れている
ということでありまして、それで巨大な地震が起こるということが分かるわけです。
そういう巨大な地震は海でしか起こらないというのが日本の特徴ですから、津波がやっ
て来るということがぴんとくると思います。とにかく揺れている間にそれを判断してほし
いというのが、まず2番目のポイントであります。
例えば耳の不自由の人はラジオが聞こえないから情報が届かないと言う人がいるのです
が、大地が揺れるというのが情報ですから、これで受け取ってほしいのです。そして避難
場所へ行ってから、テレビや携帯で帰っていいものかどうか判断するためのメディアの情
報、そういうものを使ってほしいと思います。これが2つ目です。
もう1つの大事なことは、小さい震度、2とか3とかいうような、
「あっ、地震だ」とい
うやつを十分に使ってほしいのです。小さい現象は数が多いですから、震度2とか3はし
ょっちゅうあるわけです。
例えば夕べ、ぐらぐらっと揺れて、びっくりして飛び起きたという人が、次の日の朝に
友達に会って、
「夕べはびっくりしたな、揺れただろ」と言ったら、
「いや、私は知らない。
寝ていた」と言うでしょう。
そうすると「おまえは鈍いやつだな」と言うのですけど、そうじゃなくて、その人はい
い家に住んでいるわけですね。飛び起きた人は揺れやすい粗末な家に住んでいるわけです。
そうしたら、その飛び起きた人は耐震診断をちゃんとして、地盤を調べて、自分のいると
ころを認識してほしいのです。
そういうふうに、普段からしょっちゅう2とか3は起こりますから、この会社はよく揺
れるとか、このホテルはよく揺れるとか、次の日の新聞とかテレビを見て、向こうは震度
2だったと、うちは震度4というときには気を付けてください。
昔、私は神戸の小学校にはがきを配ったことがあります。揺れたら印をしてアンケート
を送ってくださいというはがきをお願いしておきますと、時々、揺れると返ってくるわけ
です。「障子ががたがたいった」とか、いろんなことを書いてあるわけです。
それで分布図をつくっていきますと、揺れやすい場所というのがあるのです。ちゃんと
分かります。ところが、20年前の神戸の震災が起こってみると、それが震災の帯とか震
度7の帯とちゃんと対応するのです。普段の揺れ方というのが非常に大事であるというこ
とです。
この3つ、とにかく6弱が超えたら大きな地震が起こっている、座ってしまう。これは
震度6弱を超えている。震度2とか3で揺れやすいかどうかを見る。それから、これは外
国人には通じない、日本だけの物差しです。
明治から日本はこういうことをやっていますので、先行しているわけです。後発のイタ
リアなんかの人たちの仕事が、震度1から12というのを使っていますけども、これは外
国でよく使われている1から12という物差しですが、これが隣の中国でもそうですし、
だいたい世界中で通用しているものです。
6
29.
地震というのは地下の岩盤でずれ破壊が広がる。だいたい1秒2キロぐらいで割れ目が
走ります。そしてその破壊面全体から地震の波が生まれて地表が揺れるという現象なので
す。よく岩盤が割れるのが地震だとか、地面が揺れるのが地震だと言いますが、これは全
部言わないと自然現象をちゃんと表現したことになりません。
破壊面がどれだけ広がったかでマグニチュードが決まります。これはいっぺんどんと割
れて、さらに割れ進もうとして余震が起こりますから、その余震の分布図を地図に描きま
すと、だいたいどれぐらい本震で割れたかが分かるのです。それから、各地で揺れの分布
が見られるということで、震度の分布。この両方を言うと、どんな地震であったかという
ことが決まるわけです。
30.
熊本地震のことを少しくわしく見てみましょう。
31.
内陸の活断層性の地震で、しかも阿蘇火山の地域であるという性質が、震災の状況に深
く関係しています。
32.
地震直後の被害の状況です。
33.
京都大学の火山研究所も大きく壊れました。
34.
地震断層が地表で確認されました。浅い地震は地下10kmほどの深さの所から岩盤が
割れてずれる破壊で、地震波が破壊面全体から射出される現象ですが、大規模な地震では
その破壊面が地表にまで達します。地表に現れたずれを地表地震断層と呼びます。地震の
正体を直接見ることのできる現象ですから、日本では、いくつかの現場が保存されて、天
然記念物に指定されて、たくさんの見学者があります。
35.
2016年4月14日の前震の震度分布です。
36.
2016年4月16日の本震の震度分布です。
37.
1995年兵庫県南部地震の後、熊本日日新聞社が私を呼んで、熊本市と八代市で地震
のことを話しました。そのときの記事です。それから20年経過していますが、その間、
地震学的には少し進展がありました。南海トラフの巨大地震の発生時期は2038年頃と
見られており、また、活断層調査が精力的に進められた結果、日奈久断層の活動予測も発
表されていました。
38.
2013年10月、熊本での私の講演記録です。この時には、かなり具体的な話ができ
7
ました。
39.
2013年10月24日の熊本市内での講演では、
「日奈久断層に注意しなければならな
い。小さな地震が起こり始めており、大きな地震の前触れかもしれない」と述べました。
500名ほどの方たちが熱心に聞いていました。
40.
2013年の講演で見せた地図です。
41.
2013年の講演で見せた浅い地震の分布図です。
42.
2013年の講演で見せたプレート境界と活断層の活動予測です。南海トラフと九州北
部です。
43.
2013年の講演で見せた活断層の活動予測です。日奈久断層は16%で、日本で最も
高い確率になっていました。
44.
2013年の講演では、坂茂さんの間仕切りが避難場所で使えるという具体的な提案も
しました。
45.
2016年の熊本地震の後、実際に間仕切りが行われました。
46.
多くの熊本の市民が、熊本の地震が起こると思っていなかったというのを聞きましたが、
実際はちがっており、明治の熊本地震の震災の写真がたくさん残っています。これらは日
本で震災を撮影した最初の写真として知られています。
47.
明治の熊本地震の震災の写真です。
48.
くまもと文学・歴史館に展示されている県の記録「明治廿二年熊本縣大震始末」です。
くわしい調査記録が残されています。
49.
2013年の講演で見せた日本列島の地震分布図です。
50.
九州の地図と地形です。活断層の生み出した地形を観察します。
51.
日本列島と周辺の活断層の分布です。陸よりも海底の方に活断層が多いということがわ
かります。南海トラフから沿岸までの部分に密集しています。
52.
8
気象庁が指定した日本の活火山が110か所あります。
53.
活断層の調査結果から今後30年以内に地震が発生する確率を示しています。また、そ
の地震の規模も示されています。
54.
大規模地震が発生した活断層に関して、その地震が起こる直前の30年発生確率です。
これを見ると16%という数字がたいへん大きい確率を示しているということがわかりま
す。
55.
九州の地震分布図の四角の枠の部分の鉛直断面図を56.に示します。
56.
前の図の四角の枠内の地震の鉛直断面分布です。潜り込む2つの面があります。東側の
潜り込みは太平洋プレート、西側の潜り込みはフィリピン海プレートです。
57.
典型的な前震の特徴は大粒の地震が続いて起こるという特徴です。図の上は2011年
3月11日の巨大地震の2日前からの前震、下は1995年1月17日の兵庫県南部地震
の本震と余震です。余震の場合は大粒が続くことがなく、どんどん小さくなります。
58.
2016年4月の熊本地震の前震でも大粒の地震が続いていました。
59.
熊本地震の前震、本震、余震の分布図です。黒と青と赤で次の時系列の図と対比します。
60.
熊本地震の前震、本震、余震の時系列です。
61.
熊本地震の地震分布で、次の時間空間分布と対比します。
62.
前の図の四角の枠内の地震の時系列です。16日の本震以後、周辺の活動が活発になり
ました。
63.
日奈久断層などに注目していて私の詠んだ俳句です。九州の地震や火山にいつも注目し
ていたことを示しています。
64.
九州地域の1901年以後の M7 以上の深さ100kmより浅い地震です。2016年
10月31日までの分布図です。
65.
同じく M6.5 以上の地震です。
66.
9
同じく M4以上の地震です。M7 クラスの地震の起こったところには余震が細長く並んで
います。
67.
750年以後の M6.5 以上の地震の分布図です。前の図で小さい地震が密集していて、か
つ M7 の地震が長い間起こっていない場所は、大規模地震の起こる候補地です。
68.
日本の巨大地震、2011年の地震のことを概観します。
69.
大きなマグニチュードの分布図を世界地図に描いてみます。世界の M7.8 以上の地震は、
プレートが集まってくる場所で押し合いをして起こります。
この地図で大きな地震が起こっていないところ、例えば中国の南東部にもありますし、
オーストラリアにもありますが、そういうところを見てほしいんです。それからプレート
の境界で巨大な地震が起こるところがあります。この両方を見比べてみたいと思います。
70.
これは8年前にお話をしたときのスライドなのですが、2004年に巨大な地震がイン
ドネシアで起こりました。
スマトラ沖からアンダマン・ニコバル諸島の岩盤が割れたわけですけど、こういう地震
が起こったときに8年前はお話をしたわけですが、インドネシアと日本の地図を、日本を
90度回して同じ縮尺で描いて比べると、同じ形で同じ大きさをしています。
スマトラ、アンダマン・ニコバル諸島が、琉球の諸島に対応し、スマトラは西日本、ジ
ャワからバリは東日本から北海道に対応します。
だから、2004年に巨大な地震が起これば、やはり日本でも同じことが起こるのです。
起こることによって、この島の形が出来上がっていくという話をさせていただきました。
地図を見ると、そういうことが非常によく分かります。
71.
今回、5年前にこれが起こったわけですが、南北に500キロ、東西に200キロの岩
盤の割れ目ができまして、東北の陸地が太平洋の海底にのし上がるようにずれたわけです。
72.
神戸の地震の後、日本学術会議から勧告を出して地震計の整備ができ、至る所に地震計
が置いてあるのですが、一直線を選んで記録を並べてみると、仙台の辺りから揺れが始ま
っていることがわかります。
いくつも大きな地震が起こっているというのが分かるわけです。これは、ビルが倒れる
ようなところでもちゃんと動く強震計という、日本の優れた技術でありまして、そういう
ものが置いてあります。
この記録が現在世界に公開されて、学者たちがこれを研究していますから、こういう記
録を取ったというのは巨大地震で初めてですから、これは日本の国際貢献の最たるもので
あると思っています。これから巨大地震の実態がいろいろ分かってきます。
10
73.
長周期の記録も取れております。巨大な岩盤が500キロも割れますと、非常にゆっく
りした動きが出るんです。超高層ビルがぎいーっと揺れました。そういうこともはっきり
分かるようになり、超高層ビルの揺れ方がシミュレーションで分析できるようになりまし
た。
74.
もう1つ、巨大地震が起こりますと、あちこちに群発地震がいっぱい誘発されます。余
震の領域が割れました。その外側に、あちこちに群発地震が起こっています。
75.
これを時系列で見ますと、3月11日に一斉に起こって、ずっと続いているということ
が分かります。例えば伊豆半島のところです。
群発地震がどういうところに起こるかというと、地下にマグマがたまっていて活動して
いる、ぶるぶる震えている所です。刺激されるとマグマが動きますから、ばしばしっと岩
盤を割って、群発地震が起こるという仕掛けです。
例えばこの中の一つ、伊東の辺りを見ますと、測量のデータを見ると伊東の下が膨れて
きているのです。もう20センチぐらい上がってきているのですが、こういうところはマ
グマが出てこようとしているわけで、こういうところが刺激されて群発地震が起こるわけ
です。
76.
2011年の巨大地震にも前震がありました。
77.
2日前の前震が大きな目立つものでしたが、もっと前からの小さい前震もありました。
それらをアニメーションで見てみましょう。
この地図に赤い点を打っていきますが、地震の起こったところに印を重ねていきます。
これは1日を1秒にしてアニメーションにしてありますから、そのつもりで見ていてくだ
さい。
3月11日に巨大地震が起こるのですけれど、2月18日、19日、20日、仙台の沖
からだんだん割れてくるのです。3月1日、2日、3日、4日、5日、6日、7日、8日、
9日、10日、11日と、こういうふうに岩盤がばんばんと割れます。
力が働いていますから、それがいよいよ大地震を起こすというときになると、弱いとこ
ろからぴしぴし割れて、そして最後にばんといって走るという順序で、3月9日、10日
というのは、ものすごく大きな前震が起こったのです。
典型的な前震の性質というのがありまして、大粒の地震がそろって起こると、これは前
震なのです。そうすると、もっと大きいのが起こるという印です。
こういうデータが取れておりますから、次の巨大地震のときには、こういうのを研究し
ておいて生かして、地震の予報につなげるということが望ましいと思っています。世論が
どう求めるかなのですが、「そんな余計なことをしたら経済活動に差し支える」とか、いろ
11
んな意見が渦巻くわけでして踏み切れないのです。
78.
巨大地震による震災の様子を概観します。
79.
まず震度分布です。震度7が日本の歴史上、3回目でした。
80.
GPSの記録があります。地面が東へ5・4メートル、下へ1・2メートルと、非常に
大きく動いたのです。この動きを分析すると、どういう地震が起こったかが分かるわけで
す。予測されているのが終わったのか、まだ残っているのか、そんなことがここから分か
るわけです。
81.
液状化現象です。
82.
津波が起こります。GPS 波浪計があって、津波の観測に役立つことがわかりました。
83.
沿岸の津波計はかなり破壊されました。
津波は、太平洋をずっと伝わっていって、例えば南極の氷河をたたき割って氷山が増え
ておりますが、津波は激しく渡って行く。ジェット機よりも速く津波はものすごい速度で
伝わっていきます。
津波はよく高さのことばかり言いますけど、速度が大事です。激しく当たることによっ
て、亡くなった方は打撲で死んでいるんです。
津波にもいろんな津波があったんですが、例えば重茂の記録を見ると、青い津波があっ
たと言われます。漁業組合がパンフレットの表紙に載せた写真で、真っ青な津波もあるん
です。そして、これは「ここより下に家をつくるな」という碑が有名になりました。
84.
かつての女川駅です。女川駅には印がしてあって、「チリ地震の津波がここまで来た」と
書いてありました。これを見ながら通勤をしているという町だったわけです。これが大津
波によってなくなってしまったんですね。女川は全部壊れてしまいました。
85.
もちろん駅もなくなったのですが、新しい女川の駅ができました、やっと列車が走るよ
うになったというので、女川駅がニュースで紹介されました。やっと復活して、石巻と線
路がつながったというニュースがありました。4年ぶりです。このように津波に対しても
のすごく意識の高い人たちであったという、これが大事なポイントであります。
例えば原子力発電所を東北電力がここにつくったときに、34メートルの崖が、福島で
は4メートルまでGEの仕様で削ったんですけれども、「ここは駄目だ、津波があるんだ」
ということをみんなが言うものだから、高いところに電源を置いていたというのが違うの
です。そういう非常に大事なことがあります。
12
それから、京都市との関係で紹介しますが、仙台市が分別収集をやりました。津波のが
れきを丁寧に分けるということをやって、このときには思い出の品も分別の対象にしよう
というので、写真を丁寧に分けるということをやりました。
これを指導したのは京都大学の酒井さんたちのグループですけれど、津波のがれきをど
う分ければいいかというマニュアルをつくったのです。この分別したものは入札して売っ
てというリサイクルをやっているわけです。
86.
熊本でも活躍した坂茂さんが女川の駅を再建しました。
87.
女川の人たちの決めた高台移転の方針が立派です。
88.
地震の起こる日本列島のような変動帯と、安定大地を比べてみましょう。
89.
大地震が起こる変動帯と安定大地を比べてみたいと思います。もう一度、さっきの地図
です。大きな地震の分布図を見てください。これから景色を見せますが、ヨーロッパ、オ
ーストラリアの景色をお見せします。
90.
これはフィンランドです。ヘルシンキの飛行場に立ってみると、360度見渡しても真
っ平らです。飛行場の中を見ると岩盤が出ているのです。真っ平らであるにもかかわらず、
岩盤が出ている。これが安定大地の特徴です。日本の平野を見ると、みんな土で出来てい
ますけれども、これが違うのです。
91.
もう一つ見せますが、スウェーデンのストックホルムの街の中は岩ばかりです。こんな
ところで街をつくったら、当然ダイナマイトがないとできませんから、ノーベル賞はこう
いうところで生まれるという、非常にはっきりした理由があるわけです。
京都は鍬で掘れますからノーベル賞はできないのです。大地が動いて、東山から砂が流
れてきて、扇状地をつくると坂ができて、福井さんがよく言っていたのですけど、あの上
り坂を歩いているといいアイデアが出るんだと。それをメモしておくとノーベル賞になる
と。だから、変動帯でノーベル賞をもらう人がでる、安定大地でノーベル賞を出す人がで
るという関係でありまして、京都とストックホルムは大変重要な関係であります。
92.
オーストラリアのザ・ロックス。シドニーにこういうところがあって、オペラハウスが
あるところで、行かれた方もいらっしゃると思いますが、ザ・ロックスの上のところに、
おいしい鉄板焼きの店があるんですが、これも岩盤ですよね。ヨーロッパの人が初めて上
陸するときに、「ああ、岩ばかりだ」というので、ザ・ロックスという地名になりました。
これが安定大地です。
93.
13
変動帯の方はどうなるかというと、例えば敦煌。大地が割れているんですね。大活断層
の運動がありまして、20キロぐらいの深さまで割れていると、その破砕帯からものすご
くきれいな水が出てきて、オアシスをつくるわけです。
そのオアシスを縫ってシルクロードが発達して西域南道です。向こうが青海チベット高
原、こちらがタクラマカン砂漠に続く砂漠で、この上下運動は5千メートルあるわけです
が、それが大地の変動でできるわけです。そういうところに水がありますから、オアシス
を縫ってシルクロードが発達すると、世界で一番規模の大きい活断層に沿って道ができた
ということになるわけです。
規模の小さいものは、例えば花折断層に沿っている鯖街道であるとか、日本の糸魚川・
静岡構造線で塩の道ができて、敵に塩が送る道があったとか、そういうことになるわけで
す。道は活断層に沿ってできます。
94.
それから、フィリピンの断層。1990年に大地震が起こって、地上のずれが、下から
割れてきたずれが地表に出てきて、これは120キロ走ったんです。畑がずれて、道がず
れる。こうなると山が剥がれるということがありまして、剥がれた土砂が台風の雨で流さ
れて、そして平野や盆地をつくるわけです。大地震が起こることによって堆積層が発達し
て、平野や盆地が出来上がっていく。
これが変動帯の特徴でして、そういう激しい運動をしたばかりに、大きな地形ができま
した。海の底も深くなっているわけですし、青海チベット高原ができる。この辺だけ安定
大地があって、貴州省には茅台酒がここにあります。そういうふうにありますけど、とに
かく変動地形ができる。
95.
そういうところで日本列島ができましたので、次に日本列島の仕組みを見ていただきま
しょう。これを理解していただくと、これからどうなるかがだんだん分かるわけでありま
す。
96.
太平洋の地図です。右下に今のハワイがあります。ハワイは深いところからマグマが上
がってくるホットスポットでありまして、その上を太平洋プレートという海底の岩盤がず
っと、1年に10センチぐらいの速さで動いていくんです。
そうすると、ずっと動いた後に穴を開けてありますから、海山ができておりまして、7
千万年前のハワイはアリューシャンのところに来ているんです。そして4千300万年ほ
ど前に向きが変わったということが分かっています。
97.
これを見て日本列島の仕組みを考えてほしいのですが、最初、7千万年前、南の方から
ずっと、島や、いろんなものを載せた海底がやってきては、大陸の横にくっ付いていきま
した。これが付加体といいます。海底に積もった宇宙から来たちりだとか、いろんなもの
を持ってきて引っ付けていくわけです。そして大陸が成長します。
14
ところが、4千300万年前に向きが変わって、西へ沈み込むようになりました。どん
どん沈み込んでいきますと上昇運動ができて、大陸が割れて、湖ができて、広がり始めて、
そして日本海ができるわけです。1600万年前にはすっかり海が広がって、日本海が完
成しました。
98.
日本海ができて、また2万年ぐらい前には氷期になって、氷河に覆われる時代になりま
すと、北の方では陸続きになってマンモスがやって来て、それを追い掛けて旧石器人がや
ってきてというふうにして、この日本列島の歴史ができるわけです。
氷期で大陸全部が凍ってしまったときに、日本は土が出ていたわけで、そこへやって来
ましたから、日本には氷河時代を生き延びた珍しい植物とか動物がいっぱい残っていると
いう、こういう国になりました。
99.
日本列島の様子を漫画で現してみます。
100.
阿蘇火山で破局噴火が起こりました。九州の広い範囲に火砕流がありました。
101.
象さんたちの移動です。
102.
世界地図で、窓を開けて見ます。23.5度の北回帰線から北緯50度です。南も同じ
ように切ってみますと、大陸があって、列島があって、その間に海があるというのは、日
本しかないということが分かります。東シナ海とかもちろんありますが、ここだけがそう
いう特徴を持っております。
103.
中緯度にあり四季折々の変化があって、そこに日本海という海があるというのが、日本
列島のものすごく大きな特徴を生み出すことになりました。そこに対馬海流という暖流が
入ってくるわけです。こういうものを持っているというのは、ほかの国にはありません。
104.
暖流からどんどん蒸発します。それを大陸からの季節風が吹き寄せてきて、雪にして落
とします。中緯度でこれだけ南の方まで豪雪地帯を持っているという特徴ができたわけで
す。世界一の豪雪地帯が日本の特徴になりました。
そして大陸からの風が渡ってくる距離が長いところほど、たくさんの雪が落ちるという
仕組みになっています。
中緯度にこんなに雪の降るところはそんなにないんですね。ギネスブックを見ますと、
1位はたいてい日本が持っているんです。1日当たりの積雪だとか。
105.
それから、もう一つの大地の特徴で、4枚のプレートを持っている国は日本だけです。
106.
15
これらが集まってきて、海のプレートが陸の下に潜り込んでいきます。このために圧縮
力が働いて、日本列島はいつも縮んでいくわけです。地震を起こしながら元に戻っていく
のです。
107.
2011年、どういうふうに戻ったかというのが、矢印で東に向いて動いたところが巨
大地震で戻った場所です。「伸びた」と言った人がいるんですが、伸びたのではなくて、縮
んでいたのが元に戻ったんです。
いま縮み続けている西日本、北海道がいずれ戻りますから、そのときに巨大地震が宿命
的に起こるわけです。これを繰り返しています。最近の100万年は同じパターンで、こ
の動きが起こっています。
100万年とはどういうことかというと、伊豆半島が南からやって来て、70万年ぐら
い前に本州にぶつかって当たったんです。それでぎゅうぎゅう押し始めて、その後、だい
たい今の力のパターンが働いていますから、60万年ぐらい前から、いまの活断層運動が
始まっていると考えたらいいんです。
108.
そういうことを繰り返した結果、日本列島はどんどん隆起しました。プレートが集まっ
てくるわけですから、結果的には隆起するわけです。そして太平洋の海底から見ると、西
にだいたい1万メートル級の大山脈がそびえているという景色になっているわけでありま
す。世界で一番立派な山脈であるという地形をしています。
109.
深くなっているところがプレートの潜り込み口でありまして、巨大地震がこういうとこ
ろに起こるという仕組みになります。それから、海のプレートが潜り込んでいって100
キロぐらい下まで行きますと、圧力が掛かって水が絞り出されるんです。その水の作用で
岩盤が溶けやすくなるんです。溶けると、ちょっと比重が軽いものですから、隙間を通っ
て上へ上がってくる。地表から10キロぐらいのところでつり合い、そこにたまるんです。
これがマグマ溜まりと呼ばれるもので、富士山の下10キロぐらいのところにたまってい
るわけです。
時々、それが出てきたりするわけですが、昔、箱根のところに出てきていた火山が、そ
の上が飛んでしまいました。それから、手前に愛鷹山という裾野が見えていますけど、こ
れも上がなくなって関東平野を埋めているわけです。
今度は富士山が噴火する番であるということで、私はいつも新幹線に乗るとき北の窓で
写真を撮る練習をしているんです。そのうちに噴火したら、絶対にきれいな写真を撮りた
いからです。だいぶ上手になり、必ずぱっと富士山が写せるようになったんです。
実際に噴火したら、これは雲ですけども、こういう景色が撮れるはずでありまして、新
富士駅を少し東京に行ったところにベストポイントがあって、うまいこと写るんです。電
線とかが全部なくなる場所が一瞬あるんです。こういうのをいつも撮るようにしているん
ですけど、練習してみてください。これはいずれ噴火するはずなので。
16
110.
日本列島の活火山の分布です。
111.
活断層の運動の結果、こういう地形ができまして、何となく直線で囲まれた平野とか盆
地ができたわけです。京都盆地、奈良盆地、近江盆地、大阪平野。それから、中央構造線
活断層があると長い川ができて、真っすぐな地形ができました。
112.
京都盆地は多くの活断層の集まるところにできた盆地です。世界的に見ても珍しい城壁
のない都ができました。
113.
京都の盆地を掘ってみます。東山の麓を掘りますと、縄文時代の地層が、ここでずれた
という所が出てきます。これは曼殊院のところで掘っているんですけど、縄文時代の後に
ずれたということが分かります。東山が上がって、京都盆地が下がるという運動をします。
114.
こういうことを繰り返しやっていきますから、100万年ぐらいやっているとどうなる
かというと、上がったところから土砂が流れてきて、下がったところにたまっていって、
色の付いたところは堆積層ですが、下の方が120万年前、300メートルぐらいの分厚
い堆積層が京都の盆地の下に出来ています。
これは桃山丘陵、これは山科盆地で、醍醐山地で、これが西山丘陵と、こういうふうに
なっているんです。その境にずれるところがありまして、何千年に1回ずれるわけです。
そして上がったところから土砂がどんどん流れてきて埋めていくのです。
115.
そこに地下水がありますので、その地下水を使って茶道が生まれました。湯葉ができる、
湯豆腐ができる、私のビールをつくっている、これはみんな京都の地下水のおかげですね。
こういうことが非常に大事です。それがずっと京都の老舗の歴史をつくるわけです。
116.
だから、千家の茶、そして友禅もそうですし、和菓子、そば、京料理、ロームの半導体、
みんな地下水を使っています。それは引っくるめて「変動帯の文化」と私は言うことにし
ました。
117.
これをまとめてみますと、活断層が2つあれば盆地ができる、そこに都市ができるとい
うことで、活断層運動で平野ができて人が集まってくるわけですから、大地震というのは
大都市の直下に起こるという法則が生まれるわけです。例えば20世紀の大きな地震、福
井地震、鳥取地震、神戸の地震、みんな県庁所在地に起こるという、大きな町の下に大地
震は起こるという法則が生まれました。
118.
そういうわけですから、それが動きますと、神戸のときにお分かりのように、あっとい
17
う間に、15分後に亡くなった方が2千人、92%が圧死するということがありますから、
とにかく家を丈夫にしておかなければいけないということは鉄則になるわけであります。
119.
死者の年代別の分布を見ますと、阪神・淡路大震災で20歳のところにピークがありま
す。これは連休明けの早朝の地震で、学生さんたちが安い下宿に住んでいたということを
意味しているわけで、非常に気の毒です。
だから、壊れやすい家にいるとこういうことが出てくるわけですから、とにかく家を丈
夫にしなければいけない。最初に言いましたように、震度2でよく揺れるというときには
耐震診断をなさってください。
120.
そういうわけで、活断層の調査というのが非常に大事ですから、みんなしっかり調べま
す。例えば有馬―高槻断構造線を掘ってみると、室町時代の地層がここでずれています。
その上に江戸時代の地層がある。つまりこれは室町時代以後に断層がずれているわけです。
そういうことが分かります。
121.
地質図というのは、地質学者と一緒にやると、ちゃんと石の形や寸法を測って、そのと
おりにスケッチするんです。いい加減に描いてあるのではありません。
それから、遺跡を調べますと噴砂の跡が出てくるんです。その遺跡のどこから砂が出て
きたかということで、時代が分かるのです。そうすると有馬―高槻断構造線というのは最
新活動が1596年、慶長伏見地震を起こしているということが分かります。もっと掘っ
てみますと、その前は約2800年前、縄文時代末期に動いているということが分かりま
す。
122.
そういうことが分かってくると、これが次に動くのはだいぶ先だろうと思います。有馬
―高槻断構造線は怖いと言う人がいるけど、これはだいぶ先です。いま建てた家はもう当
然ないわけで、もう何百年も先、千年以上先に起こるとすれば今は安全なわけです。これ
が安全情報です。
この安全情報がなかなか伝わらないですね。例えば神戸は一番安全な町だと私は言うの
ですけど、起こったばかりですから、もう2千年は大丈夫。ところが「こんな怖いところ」
と皆さんおっしゃって、電話がかかってくるのですね。「京都に引っ越したい、どこがいい
ですか」と。いや、そんなことをしたら、またすぐ起こりますよと伝えました。
そういうもので、神戸の市長にも兵庫県の知事にも私は言うのすが、神戸は一番安全な
ところになったから、例えば東京の企業を誘致しなさいと。世界一安全だと言ったらいい
と言ったら、「よう言わん」と言うのすね。「そんなことを言ったら市民に怒られる。こん
なところでなんということを言うんだ」となって、全部逆に作用していくわけです。
123.
とにかく神戸は安全で、有馬―高槻断構造線は安全である、逆に和歌山のところ、ここ
18
を取ってみますと、複雑な話はやめますが、これから30年以内に起こる確率を計算する
と14%になっている。神戸の地震の前で、あの断層が8%でしたから、それよりはるか
に高くなっている。2千年に1回動くようなところで30年の確率ですから、数字は小さ
いに決まっているわけですが、こういうふうに出てくる。
124.
いま近畿で地震の起こりそうな確率の高いのは、この断層、和歌山のところということ
になります。気象庁の地震の分布図を見ますと、いま和歌山の辺で小さい地震がいっぱい
起こっているわけです。
125.
だから、2千年以上動いていなくて、小さいが地震が最近起こっていると、いよいよか
なと言うわけです。
126.
もしそれが動いたとしたら、大阪もこれだけ揺れるというので震度の予測ができており
ますけど、大阪は軟弱地盤がありますから、よく揺れるわけであります。
もう1つ、奈良盆地東縁断層帯というのがありまして、奈良盆地というのは上下運動し
て、JR奈良駅を降りて東に向かって歩いていきますと、猿沢池の辺りで坂が急になって、
急に息が切れるところがあるのです。あの下がずれるのですね。
神戸もそうで、神戸駅を降りて県庁の方へ行くと急になっています。看板があって、「弱
者を助けろ」とちゃんと書いてあるのですけど、そういう坂が上がれないしんどいような
ところに下がずれるところがあると思ったらいいです。
奈良盆地東縁断層帯、これが地下構造の断面図を見ますと、いくつもこういう断層があ
って、昔、海の底でたまった地層が水平にずれていますから、よく分かるわけです。そう
いう構造が分かっています。
127.
そして1901年からマグニチュード4以上の地震と活断層を描いてみると、活断層の
あるところにそういう地震が起こっています。ここはこれから起こるところというわけで、
起こって済んだところ、これから起こるところと、いろいろあるわけです。
128.
アニメーションで、1年を1秒にして鳥取県西部地震の前から大規模地震が起こるまで
の地震活動を見ていただきましょう。
長い間、大地震が起こっていない活断層帯で、最近中小規模の地震が増えてきたら、い
よいよ次の大地震が近いと思う必要があります。
129.
韓国で地震があり、韓国の人たちは驚いています。
130.
2016年9月13日の梁山断層の地震です。M5.8 でした。
131.
19
韓国南東部の地形です。
132.
梁山(ヤンサン)断層は活断層であるというのは私たちの調査で明らかになっています。
133.
梁山断層から枝分かれしている蔚山(ウルサン)断層も私たちが見つけました。これも
活断層です。
134.
韓国でも昔、地震が多く起こっている時代があり、そのときには済州島や白頭山の火山
活動も記録されています。
135.
21世紀前半の西南日本の地震活動の予測を見てみましょう。
136.
漢の時代にこういう地動儀が中国でできておりまして、張衡という人がつくったわけで
す。記念切手になっている有名な地震計ですけど、漢民族の伝説に、
「皇帝が間違った政治
をすると、天が警告して地震を起こす」という伝説があるんです。ですから、国家公務員
の仕事で一番大事なのは、揺れたという記録を書くことであります。皇帝の批判が起こる
わけですから。
それを見逃がさないようにというので、音の出る地震計をつくったんです。真ん中に柱
が立っていて、ちょっと揺れると倒れる。そうすると竜が口をぱっと開けて、くわえてい
る玉を下のカエルの口に落として、がらんと鳴るという仕組みをつくりました。これは西
暦200年代で後漢のころですから、日本では卑弥呼がいるころに、こんな機械ができて
いるわけです。張衡というのは中国の自慢の人であります。
137.
そういう思想があって、この思想が日本に伝わってきましたので、日本も書き残すとい
うことをやるようになりまして、日本で初めて「地震」というカタログをつくった人が菅
原道真です。
その当時の一番偉い人が一生懸命「地震」というカタログを自分でつくっていることが、
いかにその時代に地震が大変だったかということを意味しているわけです。学問の神様が
「地震」というカタログをつくっていまして、それまで伝わっていた言い伝え、
『日本書紀』
など全部分析して読み取って、地震の記録をまとめてくれました。
138.
800年代がいかに大変だったかというのを拾い出してみますと、こういうもので、諸
国でマグニチュード7以上の地震がいっぱい起こっているんです。その中に869年、貞
観11年の三陸の大津波、巨大地震というのがあるわけです。
八坂神社の古文書から御霊会の日にちが確定しましたので、それで比べると、これは私
の説ですが、この貞観の地震が起こって、多賀城からの早馬がきて、京都へ1週間で着い
て、そこから祭りの用意をして、2週間後に御霊会をやった。ちょうど合うわけです。
20
そのときの矛の数が、66個の矛を立てたというのは、日本の国の数ですから、全国を
沈めるために御霊会が行われたというのは、ずっと地震が起こり続けているときですから、
よく分かると思いました。最近は市長さんもその説を採用して仙台との交流をしているわ
けですけど、仙台と京都市の縁は非常に深いものがあります。
その後で出雲にも起こるし、五畿七道、南海トラフの地震が887年に起こっていると
いうので、800年代の地震活動は非常に目立つものです。現在がちょうどこれの再現で
あろうといわれているわけです。
139.
そのときに富士山が大噴火するんですね。貞観の富士山の大噴火はこういうものであり
まして、青木ヶ原溶岩台地、あの樹海をつくったあれが、そのときの溶岩なんですね。で
すから、今度、南海地震が起こるころに、また富士山が噴火するだろうということを想像
するわけでありまして、何とか生きている間に噴火の写真を撮りたいと言っているわけで
す。
140.
そういう思想が伝わってくると、日本では非常に地震の記録が克明に残されておりまし
て、これは京都の町人の日記ですけど、2日、3日、4日、5日でしょう。2日の日にこ
んな地震があって、あとはこういうのと、こういうのと、全部書いてくれているんですよ。
だから、気象庁の有感地震報告とまったく一緒の記録が江戸時代にあるんですね。
こういう日記は3か所で出てくると、その余震の減り方というのが分かるわけですね。
場所は分かっていますから、その減り方で、いまの地震の余震の減り方の統計モデルを当
てはめると、地震がどこに起こったかというのが分かるわけです。近くだと余震がどんど
ん続いて、遠くだと余震はすっと減るわけで、その体感記録ですから、そこから距離が分
かるというわけです。
141.
それから、江戸の地震のときの瓦版からで、例えば「鯰はけしからん、こらしめろ」と
やっていますが、大工と左官が「次の震災を早くお願いします」というので、鯰にご馳走
してもてなすわけです。
これは震災景気という現象を表しているわけですけど、いまでも震災景気というのは同
じことをやっているわけで、例えばこの江戸の地震の後で、紀伊国屋文左衛門は材木を江
戸に運んで大もうけするわけです。震災景気で沸き立っているという現象は昔からあるん
ですね。
142.
こういう資料がありますと、いつどんな地震があったということが日本は非常によく分
かるわけで、それをずっと分析していくと、この南海トラフ、特に西日本は歴史が詳しい
ですから、1605年に大きな地震があった、1707年にあったと、ずっと歴史が分か
っていますので、その繰り返しで次、また地震が起こるだろうと、誰でも思うわけであり
ます。
21
143.
そのときに南海トラフから内陸がぐっと押し込まれてきますから、押し込まれてくると
力が働いて活断層が動いて、地震の活動期になります。これが非常にはっきりと西日本で
は出てきます。地震の活動期と静穏期、活動期と静穏期と、繰り返し交代に出てきます。
これは1649年から1718年に、あちこちに地震が起こっていますね。1707年
は宝永の大地震が南海トラフに起こって、これはピークになるわけです。そしてしばらく
休んで、70年間休んでいます。
そしてまたにぎやかになってきて、1854年に安政の東海地震、南海地震。32年間
休んで、次にまた昭和の南海地震が起こりました。
144.
1994年まで休んでおりまして、次は1995年、20年前に神戸の地震が起こって
から、また活動期になりました。鳥取県西部地震、福岡の地震だとか、いろいろ起こって
いるわけで、これが60年ぐらい続くわけです。そして最後から10年目ぐらいのところ
にピークがあって、そこに南海地震が次に起こるということになります。
145.
いつ次の南海地震が起こるかというのはいろんなデータがありまして、例えばこれです。
室津の港というのが高知県にあるんですが、これはずっと沈んでいて、巨大地震が起こる
とぼんと隆起するんです。
東北を見ていると、全部沈んだじゃないですかというんだけど、実は海底は隆起してい
るんです。沈んでいたのがぼんと跳ね上がるわけです。上がったところは、向こうでは海
の底ですけど、西日本の方はプレート境界の南海トラフに非常に近いところに陸地がある
ので、室戸とか潮岬とか、そういうのはいま沈んでいて、地震のときに隆起するんですね。
そうすると港は浅くなるわけで、船が出入りできなくなりますから、漁師は非常に困る
というので、昔からずっと測っているんですね。これが科学的な日本の国民性だと思うん
です。
測ると分かるんです、宝永の時代の1707年は1.8メートル上がったと。そしてずっ
と沈んでいって、安政の地震で1.2メートル上がった。ずっと沈んでいって、昭和の地震
で1.15メートル上がった。またいまは沈んでいますから、ずっと行くと、次は2040
年に跳ね上がるとなるわけです。これは誰が見ても分かるわけであります。2030年か
ら2040年ごろに次が起こるだろうというのは、こういう証拠があるわけであります。
地震の活動期の地震の増え方のデータがあるので、平均すると統計モデルができるんで
す。こういうふうな増え方をして、この辺で南海地震が起こるというモデルです。
私たちが書いた論文ですけど、いま実際に起こっている内陸の小さい地震のデータから
モデルを当てはめると、2038年に南海地震が起こるという答えが出るんです。ちゃん
と統計的に出るのです。
そういうわけで、私は2038年説をとるわけですが、いま政府は2034年という数
字で予測をしています。この論文を最初に書いた、中田さん、島崎さんは2040年ごろ
22
ということで、私は2038年ですから、だいたいその辺なんですね。100年に1回と
ざっと繰り返しても、21世紀の中ごろまでです。
146.
そういうわけで、シミュレーションをスーパーコンピューターでやってみます。ここが
動くとして、繰り返し起こる様子をシミュレーションしてみると、だいたい再現できるん
ですね。
いろんなことが再現できるようになりましたが、ただ、時間間隔がちょっと合わないん
です。どうも歴史の史料で、まだ抜けている地震が、見つかっていない地震があるのでは
ないかということが最近は言われていますけど、だいたいシミュレーションで追究できる
ようになりました。
147.
これでいろんな想定をしておいて、どういうふうに地面が動くかというと、例えば室戸
岬や、御前崎や、潮岬は、そのとき隆起するということが出てくるわけです。こんなこと
が計算できます。
そしていろんな想定をして、これでどんなことが起こるかという予測を全部やりますと、
例えば津波の高さがどうなるかということが出てくるわけですが、例えば34メートルの
津波とかいうのが出てきます。それにいまの社会のデータを入れてみると、死者がどれぐ
らいになるとか、いろんなことが予測できるわけです。
148.
こういうことが新聞に発表されると一人歩きするので、これを読んでおいてほしいんで
す。こういう発表をした最後に、政府のメッセージはこういうふうに出ているということ
です。予測をしているけれども、次に発生する地震・津波が最大クラスの地震・津波であ
るというものではないと。次にどうなるかは分からないわけです。
だから、いまやっていることを諦めるとか、そんなことはやめてください。一番大事な
のはこれですね。強い揺れが来たら逃げるということを、一人一人がしっかり認識してい
ただきたいと。
これが政府から出ているメッセージで、新聞の方もいらっしゃるけど、これをなかなか
書いてくれないんですね。34メートルばかりが大きなニュースで出てくるわけですけど、
そういうものではありません。
149.
そういうことがあるんですが、政府の地震調査研究推進本部から出ている文章で、いろ
んなことが書いてあるんですけど、例えば京都府とその周辺における有感地震回数が、や
っぱり地震活動度が上がるという、活動期の性質を持っているという研究があります。
150.
漫画の本でも、次の南海トラフの巨大地震のことを紹介しました。私の本を読んでくだ
さいという漫画です。
151.
23
この本です。
そういうことがあって、1944年、1946年の昭和の東海地震、南海地震があった
と。現在は次の南海トラフの大地震の前の活動期に入っている可能性が指摘されていると
いうのが、私たちの論文です。そういうことを政府は発表して、そして30年間の確率を
計算すると、今から30年以内に起こる確率が70%になっているという計算ができると
いうことです。
それを私が本にしたわけでありまして、『2038年南海トラフの巨大地震』という題名
にしたら、やり過ぎだと、だいぶ言われましたけど。
さっき申し上げた予測の地図で、私の大学の学生に装丁をしてもらいまして、こういう
本をつくりました。
152.
地球のことを考えるために、いくつかのことを述べておきます。
153.
地球のことを少しでも知っていただくために、ジオパークをつくる運動をしております。
いま日本のジオパークが43か所できました。これは大地の公園というので、大地を見て
学んでいただこうというわけです。青いところはこれから用意をしているところで、星の
付いているところがユネスコの世界ジオパークのネットワークに登録されているところで、
それは100か所あります。
154.
このジオパークの趣旨は、私は、見るということと、食べるということと、そして学ぶ
という、JTBの『るるぶ』と一緒ですけど、
「遊ぶ」のところを「学ぶ」に変えてあるの
ですけど、昔、舩山さんと相談して、ちょっと拝借しますよと。『るるぶ』と同じだけど、
「学ぶ」にするということです。そうやって大地を学んでいただきましょうと、その恩恵
を知ってもらおうというわけです。
北海道の洞爺湖有珠山ユネスコ世界ジオパークです。そこで噴火による大地の変形を見
てください。
155.
そして火山の恵みで美味しい果物やワインを愉しんでください。
156.
火山マイスターのガイドで噴火の仕組みを学んでください。
157.
糸魚川ユネスコ世界ジオパークです。これは翡翠のあるところです。
158.
大地の継ぎ目があって、右側が北アメリカプレート、左側がユーラシアプレートなんで
す。世界の2大プレートがここで出合っています。そういう場所が糸魚川―静岡構造線で
す。
地球を北半球から見ますと真っ二つに割れていて、こういうふうに集まって、ここへ集
24
まってきているわけですが、離れていく方はアイスランドで割れているんです。そこでい
ま大噴火をしているわけで、どんどんマグマが出てくる。これは南から見ると、右側がユ
ーラシアプレート、左側が北アメリカプレートで、半周して糸魚川で出合う関係です。
159.
室戸ユネスコ世界ジオパークです。
160.
砂岩泥岩互層が巨大地震で隆起して陸上にあります。ガイドさんの土佐弁の解説が愉し
めます。
161.
砂岩泥岩互層の上で夕日の沈むのを待ちます。
162.
だるま夕日が名物です。
163.
南紀熊野ジオパークです。日本ジオパークネットワークのメンバーです。津波岩がたく
さんあります。
164.
土佐清水市でもジオパークを申請する準備が行われています。ここでは海底の観察がで
きます。
165.
海外のジオパークを紹介します。例えば香港。香港は買い物と食事の街だと思っている
でしょうけど、ちょっと郊外へ行くと、こういう景色があるんです。香港のビルを支えて
いる大地を1日は見ていただきたいと思います。
166.
済州島に行きます。そうすると、これはカジノだけの島ではなくて、こういう大地なん
です。そして人間の生活を支えているところ見てほしいんですね。
167.
例えば台湾に行きます。台湾に行くと、こういう差別浸食の、これはエリザベス女王だ
とみんな言うんですけど、浸食されて、だんだん痩せてきてもうすぐ落ちそうなので、早
く見ておかないとなくなってきます。
168.
「地球社会の調和ある共存」というのは京都大学の基本理念だったんですが、こんなデー
タを見て、これは5億4200万年前に生物が生まれてからの数ですけども、どんどん生
きては絶滅を繰り返してきているわけです。
最新の大量絶滅が白亜紀の末で、6550万年前。恐竜とかアンモナイトが死んだとき
ですが、いずれまた絶滅をするというのは目に見えています。
私が『日経新聞』に書いたエッセーはこういうことでありまして、いま人間は一番増え
ているんだけども、これは老齢化して、やがて絶滅を向かえようとしているわけです。い
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ま戦争をしたり、ごみがあったりして汚いので、それが化石になると将来恥ずかしい思い
をするから、なんとかきれいな化石になることを、いまから心掛けましょうというのを呼
びかけたら、これは賛同してくれる方がたくさんいらっしゃいました。
そういうわけで、「地球社会の調和ある共存」というのを、「橡の実を熊に残して拾ひけ
り」という、茨木和生さんの俳句を引用しては学生に話しておりましたけども、これはい
まの大学に行っても、やはり同じことを言っているわけであります。
169.
そして3Rというのは、リサイクルというのは物の使い捨てを薦めるので、もう私はあ
まり言わないことにして、2Rを言うか、あるいはリサイクルの代わりにリペア、修理し
て使いましょうというので3Rを言うか、そうしています。
それから、
「もったいない」のマータイさんです。私と同い年で亡くなっています。龍安
寺の知足のつくばいがありますが、まん中に口の字を書いて「吾唯知足」と読むわけです
が、こういう思想をもっと世界に広げていくというのがわれわれの仕事だと思います。
170.
政府の発表している人口予測ですが、いまピークを過ぎたところで、初めて人口が減少
する国として日本は有名でありますが、この中でいろんな物事を上手にやっていけば世界
のモデルとして、人口減少に向かう国のモデルができると思います。
171.
この本は、漫画によって、宇宙の始まりから地球の近未来の破局噴火までを描いた本で
す。宇宙物理学、地球科学、霊長類学、地質学などを専門とする学者によって内容が検討
された漫画です。科学の知識を正確に伝えようとする試みで、くわしい解説も付けました。
172.
地球はテラさん、月はルナさん、1億年を1歳として現在46歳のテラさんが地球の歴
史を案内します。
173.
6500万年以上前、恐竜がいました。
174.
インド大陸がユーラシア大陸に衝突してヒマラヤ山脈ができました。類人猿が登場し、
私たちの時代が始まりました。
175.
再びですが、南海トラフの巨大地震のことを学んでください。
176.
いただいた時間が来たのでおしまいにするわけですが、今日、話したことの詳しいこと
は、この2冊にしっかり書いてありますので、これもまたぜひ読んでいただきたいと思い
ます。
(おわり)
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