レジ袋有料化から考える日本の環境政策

日本の環境問題
~レジ袋有料化から考える日本の環境政策~
学籍番号:20818893
経済学部 2 年 02 組
平佐
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賢宗
≪目次≫
1.序論……………………………………………………………………………………3
2.レジ袋削減はなぜ広まっているのか………………………………………………4
3.レジ袋削減による環境への効果……………………………………………………5
a)廃棄物削減効果…………………………………………………………………...…5
b)石油使用量・CO2 削減効果………………………………………………………....5
c)その他(景観・生物への影響)……………………………………………………8
4.レジ袋削減に対する疑問の声………………………………………………………9
a)エコバッグの環境負荷のほうがレジ袋より大きい……………………….…..9
b)環境問題は倫理的問題か……………………………………………………...…9
c)レジ袋はサービスとして当たり前なのか……………………………….……..9
5.環境政策としてのレジ袋有料化の意義………………………………………….10
6.終論………………………………………………………………………...………..10
参考文献・資料…………………………………………………………..….……….11
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1.序論
平成 20 年 4 月 1 日より東京都杉並区において「レジ袋有料化等の取組に関する条例」が
施行されて以降、日本全国自治体レベルでレジ袋有料化制度導入するケースが増えてきて
いる。平成 20 年 11 月 1 日時点でレジ袋の削減に取り組む都道府県は全体の 81%にあたる
39 都道府県、平成 22 年 3 月末までには 23 都道府県の 384 の市町村が条例化や自主協定な
どの締結によって有料化手法による削減を行う見通しだ。そこで、このレポートではレジ
袋削減がなぜこれまで広く一般に周知され、大きな取り組みとなったかを見るとともにそ
の効果を検証する。そして今後日本が取るべき環境政策の在り方を模索する有用な材料で
あることを前提のもとで論を進めていきたい。なお、本レポートでは武田邦彦氏の著書『偽
善エコロジー』を引用することになる。武田氏の論理には問題点が多々見受けられるがこ
の本が多くの読者を獲得し、いわゆる環境政策に反対を唱える『反エコ派』の大きな流れ
の原点になっている点で見逃すわけにはいかないだろう。
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2.レジ袋削減はなぜ広まっているのか
日頃行っている環境のためにできること=「エコバッグを持つ」と答える人が多数
2009 年 11 月に楽天グループが 20~60 代の男女 1000 人を対象として実施したアンケー
ト結果1によると、日頃心がけている環境配慮としてゴミの分別(84%)に次いで「エコバ
ッグを持っている」と答える人が 66%と高い割合を示している(表 1)
。このように多くの
人々が関心を寄せ実践している背景には、
①一般市民が手軽にでき、
②使い捨てのレジ袋を減らすため環境によいということが感覚的にわかりやすい
ことがあげられる。
企業も販促・CSR 活動の一環としてエコバッグを景品としてつけたり配布したりするこ
とを盛んに行っている。またエコバッグがいわゆるファッションの一部とみなされ流行し
ている側面もあり、極端な例では数万円もするエルメスやグッチなど高級ブランドのエコ
バッグも存在する(写真1参照)。なおエコバッグの環境負荷の問題については「4.レジ袋
削減に対する疑問の声」で後述する。
△写真1 エルメスのエコバッグ2
△表1 日頃実践しているエコ
(楽天グループ 2009 年 11 月調査、回答数 1000)
(定価 173,400 円)
日経ウーマンオンライン エコへの意識高まるもののエコの”実践”は 4 割、楽天調査
2009 年 11 月 27 日
URL: http://wol.nikkeibp.co.jp/article/news/20091127/105024/ (2010/03/17 閲覧)、表1
は HP より転載
2 写真は Amazon.co.jp より転載 http://www.amazon.co.jp/
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3.レジ袋削減による環境への効果
a)廃棄物削減効果
もっとも環境問題といえば地球温暖化問題がクローズアップされている現在、この観点
からレジ袋の削減を謳う声は尐なくなってきた。しかしレジ袋削減の取組が本格的に始ま
ったのは 1995 年ごみ減量推進国民会議(現 3R活動推進フォーラム)からであった。当
時ゴミ焼却時のダイオキシン発生問題が話題となっていたことも背景としてあったと考え
られる。もっとも 2008 年の改正容器包装リサイクル法において政府が小売業者に対して、
レジ袋の削減のための目標数値の設定・有料化・レジ袋を断った人に対するポイントの提
供などの取組を義務付けて以降さらに小売業者の対応が進んだことも無視できない。
ちなみにレジ袋1枚あたり 7g、日本全体で年間消費枚数 300 億枚との仮定の下では年間
21 万t、これは日本全土の一般廃棄物を年間約 5000 万t(2004 年度)として概算すると
約 0.4%に当たる数値である。
b)石油使用量・CO2 削減効果
武田邦彦氏は著書『偽善エコロジー』でレジ袋はもともと使われずに捨てていた石油
の残り部分から作られているから環境によいという持論を展開しているが、実際のところ
どうなのだろうか。レジ袋の材質は多くは高密度ポリエチレン(HDPE)であり、原油を
蒸留して得られるナフサを熱分解することで製造されるエチレンを重合したものである。
石油化学工業が発達した今となっては、レジ袋と同じ材質であるポリエチレンは現在レ
ジ袋のみならず、コンテナや食品容器など様々な用途に用いられており、結果としてポリ
エチレンの原料となっているナフサを日本は単体で輸入に依存している状況である。ナフ
サの需要が大きいことは原油価格との強い相関関係から容易に推測できる(表 2)
。したが
ってレジ袋の削減はある程度石油資源の節約は見込めると考えるのが妥当であろう。
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△表 2 原油・ナフサの価格動向3
(原油価格とナフサ価格の相関関係が見て取れる。もし武田氏の主張通りレジ袋の原料が不要な部分で
あるとすればこのような価格動向はあり得ない。
)
一方でレジ袋削減を進める側の論理として青森県庁をはじめレジ袋有料化等に積極的に
取り組む自治体のホームページでは、レジ袋1枚の削減によって
①石油が 18.3ml 削減できる
②CO2 が約 61g 削減できる
という記載がある。果たしてこれは本当なのだろうか。
仮にレジ袋 1 枚あたり 18.3ml の石油が消費されているとすれば日本全国のレジ袋使用量
305 億枚分で日本の 1 日の原油輸入量に匹敵するという数字だという。
まず①の原油使用量についてであるが、産業技術総合研究所が開発した LCA ソフト
「LCA-Pro」の計算によると、エチレン・プロピレン4各 1kg の生産には原油が 0.5kg、ナ
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出光ユニテック株式会社 原油・ナフサ動向
http://www.idemitsu.co.jp/iut/ipack/limited/nafusa/database/oil.html(2010/03/18 閲覧)
より転載
4 プロピレンは重合してポリプロピレン(PP)と呼ばれるプラスチックになる。ポリプロピレ
ンはポリエチレンに比べて硬質なのが特徴で CD ケースや電化製品の絶縁体に用いられる。
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フサが 0.76kg ほど必要となる(表3)
。ポリエチレンとポリプロピレンは価格差がさほど
ないため単純計算で折半して考えると 0.63kg の原油・ナフサ混合から 1kg のエチレンが作
られる計算だ。このように考えると 1 枚 7g のレジ袋を製造するのに 18.3ml もの石油が使
われるとは考えにくい。
△表 3 エチレン・プロピレン各 1kg の製造工程に必要なエネルギー量5
次に②の CO2 排出量を検証する。前述の「LCA-Pro」の計算によるとエチレン・プロピ
レンを各 1kg 製造する際に発生する CO2 は 2.21kg(表 3)である。大体製造されたエチレ
ン・プロピレンの重さとほぼ同じ CO2 が発生すると考えてよいので、これを 7g のレジ袋で
考えると 7g 程度であることが分かる。
ECCJ 省エネルギーセンター 平成 17 年度省エネルギー技術普及促進事業調査報告書
http://www.eccj.or.jp/diffusion/05/diff_08_02.html (2010/03/18 閲覧)より転載
5 ECCJ
省エネルギーセンター 平成 17 年度省エネルギー技術普及促進事業調査報告書
http://www.eccj.or.jp/diffusion/05/diff_08_02.html (2010/03/18 閲覧)より転載
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また、エチレンの完全燃焼式は
C2H4+3O2→2CO2+2H2O
でありエチレン 1mol(約 28g)が燃焼すると発生する CO2 は 2mol(約 88g)
。レジ袋 1 枚を
7g と仮定したときそれを燃焼することで発生する CO2 は 22g である。以上、エチレンの製
造工程と廃棄行程を合計すると 7g のレジ袋 1 枚あたり、29g の CO2 が発生する計算だ。な
おこれにはレジ袋の成形過程や流通過程における CO2 排出が考慮されていないが一応の目
安としては参考にできうる数値である。
以上を見てみると、先に示した 2 つの数値はあまりに誇張された感が否めない。原油使
用量 18.3ml の元データは日本ポリオレフィン工業組合のホームページだったようだがホー
ムページの該当箇所はすでに削除されており、この情報が独り歩きしてしまった格好だ。
レジ袋削減の意義として人びとの意識を環境保全に向けることが大きいのは事実だが、地
方自治体でもこのような情報を流して市民に協力を求めているという実情にも目を向ける
必要がある。
c)その他(景観・生物への影響)
レジ袋は市街地の散乱ごみとして景観保全を損なうだけではなく、低木などに絡まりそ
の生育に影響を与える点が指摘されている。またレジ袋を飲み込んで窒息死したクジラが
イタリアで打ち上げられ、以降同国ではレジ袋の削減の世論が高まったという事例まであ
る。レジ袋削減により多尐の改善効果は見込めるかもしれない。
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4.レジ袋削減に対する疑問の声
a)エコバッグの環境負荷のほうがレジ袋より大きい
レジ袋の代替として用いられるエコバッグは、確かにすぐに捨てられることもなく何度
でも使えるものなので環境によいということを感覚的に理解しやすい。しかしエコバッグ 1
枚の環境負荷をレジ袋 1 枚と比較した場合、大きさ・材質によって程度の差こそあれ尐な
くともレジ袋の数十倍のエネルギーが投入されている6。エコバッグは大量に保有せず、1
枚のものを何回も繰り返し使うことが大切である。
b)環境問題は倫理的問題か
武田邦彦氏は著書の中で、大手スーパーがエコバッグを販売することで利益を上げてい
ることに批判的な姿勢である。この論理でいけば、環境を事業としてビジネスを行ってい
る企業もみな批判されるべきということなのだろうか。だとすればそのような主張を並べ
立てた本を出版し、多額の印税を稼ぐ武田氏の立場もいかがなものか。
安全保障上化石燃料資源確保が重大な問題となっている欧州などとも比べて、日本では
良くも悪くも環境問題が倫理的問題とすり変わって論じられる傾向が強い。
「日々の暮らし
の中で積極的に取り組み地球温暖化を防止しましょう」という心がけは立派だが、現状と
して日本全体の CO2 の排出量は年々増加を見せている。排出量削減が急務とされている今、
環境税や排出権取引などの経済的手法を政策として検討・推進せねばならない局面に来て
いることも考える必要がある。
c)レジ袋はサービスとして当たり前なのか
レジ袋有料化を批判する人たちの中には無料のレジ袋はサービスとして当然との意見も
多い。しかし一般に日本人が考えているような「お客様第一主義」も海外の小売店に行く
と必ずしも通用しない事実は一考に値する。なかには「小売店の経費節減に協力したくな
い」という意見まであったりするが、小売店は経費節減の傍らで売上減尐のリスクも同時
に抱えておりレジ袋削減が店の利益に直結するとは一概に言えない。現にレジ袋有料化を
導入したにもかかわらず、売り上げ減尐に耐えかねてレジ袋の無料配布を再開したという
店舗まである7。いずれにせよもっと広い視野で考えていくことはできないものだろうか。
富山国際大学地域学部紀要第 7 巻 レジ袋考 桑原宣彰 p121-138
http://library.tuins.ac.jp/kiyou/2007chiiki-PDF/kuwabara.pdf より。なお本文献においてもレ
ジ袋1枚あたり原油換算量 18.3ml との表記がなされている点は注意を要する。
7 埼玉県川口市では市と市内のスーパー12 社 19 店および市民団体が協定を結んで 2008 年 1 月
より無料配布を中止していたが、前年比で売り上げが 6~7%下がったサミットストア川口赤井
店、ベルク川口前川店はともに 2009 年 3 月 3 日から無料配布を再開した。
出典:MSN 産経ニュース
http://sankei.jp.msn.com/region/kanto/saitama/090218/stm0902181958016-n1.htm
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5.環境政策としてのレジ袋有料化の意義
レジ袋有料化という施策は環境政策としては非常に小さなレベルのものであるが、消費
者に環境保全に対する対価を支払わせる身近な制度を作ったという点で意義が大きい。
2011 年度には環境税を導入しようとする機運が高まってきているが、身近な例としてのレ
ジ袋有料化を前段階として行っていくことで国民の理解をより得られる可能性が期待でき
る。今までの日本の環境政策はエコポイントやエコカー減税などどちらかといえば補助金
に依存する政策が多かった。確かに補助金のほうが国民に受け入れてもらえやすいことは
確かなのであるが、補助金による環境保全に対するインセンティブは環境税のそれと比べ
て小さいことは確かであるし、財政赤字が日に日に増してくる今日において補助金に偏っ
た政策は最適解とは呼べない。もとより、補助金政策に必要な予算のつけは将来世代が負
担することとなり、ここに財政問題と環境問題ともに将来世代とのかかわりを考えてその
バランスをとっていかねばならないという構図も見え隠れするのである。補助金と環境税、
双方のメリットを上手に取り入れるようなポリシーミックスがいま求められている。
6.終論
本当に大切なのはレジ袋削減からもっと先~環境問題の本質を見誤るな~
以上レジ袋削減について見てきたわけであるが、有料化をはじめとしたレジ袋削減は市
民に意識の変化をもたらす意味で効果的である。しかしながら、環境問題はレジ袋を削減
したところで解決するような問題ではなく、これからの日本の環境行政は数値化された
CO2 削減目標に向かってより有効な政策へと転換を図る必要がある。いつまでもこの問題
に固執していると問題の本質を見誤りかねない。
そもそもレジ袋を減らしたところで環境への影響はほとんどないという批判も多い。し
かし、繰り返し述べたとおり意識の変化を促す取組であるということに主眼を置くべきで
あって、その意味でレジ袋有料化制度の意義は非常に大きいものであると感じている。こ
の取組を出発点として市民が経済的手法を用いた環境政策をより身近に感じ、議論する土
壌ができるといった具合にその効果が波及していくことを期待したい。
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【参考文献・資料】
「レジ袋の環境経済政策」
舟木賢徳 リサイクル文化社 2006 東京
「環境経済学をつかむ」 栗山浩一・馬奈木俊介 有斐閣 2008 東京
「偽善エコロジー」 武田邦彦 幻冬舎新書 2008
東京
環境省ホームページ http://www.env.go.jp/
青森県庁ホームページ http://www.pref.aomori.lg.jp/nature/kankyo/rejibukuro.html
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