第3回 世界水フォーラム 2003年3月18日∼23日 大阪・京都 報告集 水問題研究会(仮称) 水は基本的人権 − 第3回世界水フォーラム・レポート − K.T 3月16日から23日にかけて、京都、大阪、滋賀で第3回世界水フォーラムが開催 された。 私たち水問題研究会(仮称)は、フォーラムに向けて学習会を重ね、今回有志11名 を募りフォーラムに参加をした。 この中で、私たちは世界の水をめぐる状況を学ぶとともに、水は基本的人権であり、 市場化・民営化を許してはならないということを確信した。 世界水フォーラムとは 世界水フォーラムは、「世界水会議」(World Water Council ・WWC)の提唱によっ て、3年に一度、国連水の日(3月22日)をはさんだ日程で行われ、第1回は、1997 年にモロッコ・マラケシュ、第2回は、2000 年オランダ・ハーグにて開催された。 冒頭指摘しておかなければならないのは、この世界水会議が国連などの国際機関では なく、水の市場化をもくろむ世界銀行や水企業により構成、運営されているということ である。 したがって、こうした場で論議される内容は、おのずと水の市場化、民営化やダムな どの巨大開発であることは言うまでもなく、これまで2回の内容からもそのことはうか がえる。 第1回では、水問題の重要性、危機を世界に訴えるビジョン「来るべき 21 世紀にお ける世界の水と生命と環境に関するビジョン」を第2回世界水フォーラムまでに作成す る、ということが決定され、世界銀行副総裁(委員長)やロックフェラー財団会長らか らなる「21 世紀のための世界水委員会」(WCW)が設立された。 第 2 回では、世界水委員会によって、世界の水関係機関の産・官・学にまたがる協力 のもと、ビジョン策定作業が行われ、世界の水問題の方向性を示した「世界水ビジョン (World Water Vision)」が発表された。 同時に開催された閣僚級会合では、21 世紀における"水のセキュリティ"に関するハー グ閣僚宣言を採択した。また、世界銀行や国連開発計画などの資金提供機関が協調し、 より効果的な開発援助を行うことを目指して設立された「世界水パートナーシップ」 (GWP)からは、「行動の枠組み」も発表された。 これまで2回のフォーラムでは、トップダウン型発想に基づく、水の市場化・商品化、 民営化、大規模水資源「開発」、バイオテクノロジー等推進への疑念や、意志決定プロ セスの不透明性が参加した NGO グループの一部から指摘されている。 第3回世界水フォーラムの理念には、 「ビジョンからアクションへ」が掲げられてお り、「世界水ビジョン」を具体的な行動に結びつけるための「世界水行動報告書」等が 発表と閣僚級会合に基づく閣僚宣言が行われることが予定され、それに向けて、様々な 取り組みが進められてきた。 従って、これら水の市場化のアクションをくい止めるためのさまざまな論議と行動が、 世界の NGO、労働組合、市民により行われてきた。第3回世界水フォーラムは「すべ ての人にオープン」等も基本方針として掲げられており、PSIや連合などの労働組合、 カナダ人評議会、世界水フォーラム市民ネットワークを始め多くのNGO主催によるセ ッションも多数開催され、 「水の市場化」「ダム問題」「水と紛争」など様々なテーマで 議論が行われることとなった。 私たちの目的 第3回世界水フォーラムでは、300を越えるセッションがもたれた。なかでも、水 の市場化・民営化が焦点となる「官民の連携」が重要なテーマとなっており、私たちは、 多くのNGO、労働組合の方々とともに、この問題を考えていくこととした。 具体的には「官民の連携」 「ユニオンパネル」 「水は誰のものか」の3セッションとN GO主催シンポジウム「NGOが見た『第3回世界水フォーラム』」に参加をし、世界 の民営化の現状を学ぶと共に、今後日本で展開される民営化の流れに対決するために、 市場化・民営化に反対するNGOとの交流を目標とした。 水の民営化の現状 セッションで明らかになったことは、水道は地域独占となるため、たとえ民営化をし ても競争が働かないこと。利潤追求のために水質が低下したり、料金の著しい高騰を招 いたりし、最終的には住民負担として押し付けられていること。多くの従業員が職を失 ったこと。そして最も深刻なことは、水の民営化により水道にアクセスできない多くの 人々が生みだされていることである。 その一例を挙げると、フィリピンのマニラでは民営化により水道料金は6倍になり、 を業員の60%が解雇をされた。また、カナダの50万都市ハミルトンでは、USフィ ルター社が3年に渡って下水処理場で全く処理をされないまま汚水を排出していたこ とが判明した。さらに、アメリカ・アトランタでは、民営化後茶色い水、残留物がでる ようになり、従業員の50%がクビになったという。ボリビアのコチャバンバでは、1 999年末のベクテル社への民営化により水道料金が3倍に上がり、5ヶ月間の闘いの 末同社を追い出した。 このように、水道の民営化は先進国・途上国を問わず、世界各国で人々の生活を脅か していることがわかった。 また、これからの水道のあり方として、自治体と市民、地域がパートナーを結ぶパブ リック・パブリック・パートナーシップ(PUP)が提唱された。 水基本法制定に向けて ユニオンパネルでは、民営化と共に水基本法制定に向けた討論が行われた。 現在、水を扱う省庁は5省、9局に及び、水道、農業、林業など分野毎に管理されて いる現状がある。安全な水に誰もがアクセスでき、自己水源を大切にし、無用なダム建 設を止めさせていくためには、こうした水行政を流域全体で考え、管理していく必要が ある。PSI、全水道などの労働組合、学者、議員の立場から水基本法制定の必要性が 訴えられた。 NGOによる壇上占拠 21日に行われた「水と資金調達」分科会は、民営化反対派と推進派双方が意見を闘 わせる舞台となった。元IMF専務理事のマイケル・カムデシュ分科会議長が提出した 「すべての人々のために水への資金を」と題する報告書に対し、「報告書は多国籍企業 の利益回収が第一で、貧困層への水供給は二の次になっている」「水供給を手がける多 国籍企業が責任を持って水供給を行うことはありえない」などと批判が相次ぎ、NGO の参加者らが垂れ幕やプラカードを持って壇上を占拠する一幕もあった。22日発行の 水フォーラム新聞日本語版では、 「貧困層への水供給で激論」として写真入で大きく取 り上げられた。 NGOが見た「第3回世界水フォーラム」 最終日を前にした、22日のNG O(AMネット)主催のシンポジウ ムでは、期間中多くのセッションに 出席をして水の市場化反対の中心 的役割を担っているモード・バーロ ウさん(カナダ人評議会)の講演が 行われた。 モードさんは、 今回のフォーラム に対し市民社会と企業の対立を指 摘した。 世界水会議は民営化推進者によ る会議で、彼らはいち早く水の危機を察知し、世界水フォーラムをあたかも国連の会議 のように仕立て上げ、世界銀行など大企業に権力を与えようとした。 これに対し、彼女らNGOは独自の宣言を出すなどそれに対抗してきた。 そうした中で、スエズ、ヴィヴェンディ、テムズ、など水企業ビッグスリーは市民に より町から、国から次々に追い出されている。なぜなら、料金値上げにより人々が水道 を使えなくなり、公共部門の労働者は解雇をされ、水の品質が落ちたからである。 これまで、民営化に反対するNGOの情報交換が行われるようになり、世界水会議は 「民営化推進」を「パブリック・プライベート・パートナーシップ」と言いかえるように なり、政府の透明性、貧困、ジェンダーを取り上げるようになってきた。そうすること により、この会議が水を気にかける人の集まりとして装う中で、民営化という目的を達 成しようとしている。やり方は悪質になっていると指摘する。 民営化を許さないために、世界の市民や労働組合が「水は基本的人権」であり「公共 のもの」という共通のビジョンを持ち、協力して行動していくことが重要だと訴えた。 市民の声はどれだけ反映されたか フォーラムの最終日(23日)に発表された閣僚宣言に対し、NGOの仲間から多く の批判の声が上がっている。 宣言では「民間部門の参加を含むすべての資金調達手段を探求すべき」として、民間 資金の投入、民営化を促し、ダムについても、水力発電のくだりの中で「環境的に持続 可能で社会的に衡平な形で実現されるべき」として、これを容認する内容となっている。 NGOがフォーラムの期間前、中、再三にわたって主張し、国連でさえも明言してき た「水は共有財産であり、基本的人権である」という訴えが無視され、民営推進側の一 方的な意見が盛り込まれている。 世界水フォーラム市民ネットワークでは、参加者の声が反映されていない閣僚宣言に 対し、同日、遺憾の意を表明するプレスリリースが行われた。 そうした傾向はマスコミ各社の取り上げ方にも現われ、日経や読売などは「民営化に 理解」 「ダム容認」と取り上げる一方、NGOからの批判は一切無視されている。 また、期間中配布された水フォーラム新聞においても、京都新聞が担当した日本語版 は、NGOの活動、主張が好意的に紹介されていたのに対し、別の機関が担当した英語 版においては、内容が大きく異なり、NGOの主張や、活動に批判的な内容が目立ち、 海外のゲストからは失望の声が上がっていた。 第3回世界水フォーラムをどのように評価するか フォーラム全体は、残念ながら水の市場化・民営化を容認する内容として締めくくら れた。これは、当所からある程度想定されていたこととはいえ、到底受け入れられる内 容ではない。 しかし、世界水フォーラムに向け、世界各地で水に関心が寄せられ、水をめぐる課題 が話し合われてきたことは意義深い。また、世界各国から多くのNGO、労働組合など が集い、市場化・民営化の現状と問題点を共有し「水は共有財産であり、基本的人権で ある」ということを確認し、内外に宣言した意味は大きい。 そうした意味で、今回参加したNGOなど私たち一人一人のこれからの取り組みが、 第3回世界水フォーラムの真の評価を決定付けるのではないだろうか。 私たちの職場では、都知事石原による暴力的な採用抑制の中で、「合理化」の名の下 に少ない人員をどこに配分するかのみに腐心する数合わせが行われている。その結果、 労使が真摯に水道事業の将来構想を論議することなく、業務委託の拡大が続けられよう としている。その先に見えているのは、水の市場化、民営化である。 私たちは、そのような現状を何としても乗り越えていきたい。そして、水道事業者の 一員として、何にこだわり、直営業務として何を残していくのかを考え、今日の理念無 き委託拡大をくい止めたいと考えている。 今回の水フォーラムに向けての各地の取り組みや水フォーラム、NGOセッションで の貴重なお話は、今後私たちが取り組むべき方向性を確立する大きな助けになることと 思う。 労働の現場から水問題を考え、基本的な人権としての水を皆さんとともに守り抜いて いきたいと思う。 私たちは、今回フォーラムに集まった多くの人々とともに、今後日本で進められよう としている水の市場化・民営化に対して、共に手を取合って闘いぬいていく決意である。 最後に、第3回世界水フォーラムの参加のために、多くの仲間より心温まるカンパを いただいたことに心より感謝申し上げます。 水は基本的人権 だ! M.S 3月16日から23日まで、京都をメイン開場に、滋賀、大阪の3開場で「第3回世 界水フォーラム」が開催された。 世界水フォーラムは、1997年アフリカのモロッコ(マラケッシュ)で1回目が行 われ、2回目がオランダのハーグと続き今回は日本で開催された。この国際会議は、IMF や世界銀行などの「国際金融機関」とともに、自称「NGO」を名乗る「世界水会議(World Water Council:WWC)」が呼びかけ、 「20 世紀は石油を巡って争いが絶えなかった時代 であったが、21 世紀は水を巡って世界中の争いが絶えない時代になる。だから 21 世紀 になる前に、世界の水問題を包括的に考えるための国際会議が必要」ということを表向 きの理由として3年に1度開催されてきた。しかし、このフォーラムは多くの NGO の 間で「怪しげな国際会議」として定評があった。 呼びかけ団体の一つである WWC は、自称 NGO を名乗ってはいるものの、実はフラ ンスやイギリス、ドイツの多国籍水道企業が世界の水事業を牛耳るべく作った 「NGO」 であり、企業の意志が大きく働いている。その証拠に、ハーグで行われた第2回水フォ ーラムでは、水の商品化・自由化やダム建設に反対する NGO や団体の参加が排除され てきた経過にある。 ハーグでの水フォーラムを受けて、国内の多くの NGO の間では「怪しげな水に関す る国際会議が行われた」とささやかれていた。この「怪しげな国際会議」が日本に来る ということが明らかになると、関西地方を中心に市民や労組、NGO などが集まり、そ の対応にあたった。そうした人々の努力によって、今回は「考え方によって NGO や労 働組合を排除」ということは一切行わないことが明言され、逆に市民・NGO は、ここ に参加できる機会を大いに活かして市民の意見反映を行えるような活動を行おうとの ことで、いくつかの NGO が水フォーラム事務局に入り込み、市民レベルでの意見を反 映できるよう積極的な活動を行った。 今回の水フォーラムでは3つの基本理念が掲げられている。一つは「誰もが参加でき るオープンな会議」2つ目は「参加する会議からつくる会議へ」3つ目は「議論する場 から行動にうつす場へ」である。これにより360を超えるセッション(分科会)がも たれ、水を公共で供給すべきというようなセッションもあれば、水の自由化や商品化を 推進するようなセッションも多く行われた。例えば、「水施設への資金調達」などとい うテーマでは、WWC や民間水道事業者、国際金融機関などが中心になって分科会が行 われたが、貧困層への水供給に関して激論が交わされ、水道民営化に反対する NGO な どが壇上占拠を行うような場面もみられた。また、世界銀行やアジア開発銀行などが開 いたセッションでは、「貧困層への水供給の課題」や「貧困撲滅を水管理の主流に」な ど、一見すると貧困層へいかに水供給を行うかという重要な課題としてとらえられがち ではあるが、しかしその内実は、水道企業と結託した国際金融機関による途上国への水 道民営化の圧力そのものであるような極めて危険な内容のセッションも存在した。 一方で市民活動レベルの NGO などが主催するセッションでは『世界の共有財産であ る水を守る』と題されたセッションや、国際公務労連(PSI)や連合が『公共の水−今 後の方向』『今なぜ水基本法なのか』と題して労働者の視点から水の問題を捉えるよう なセッションも行われた。 19日に行われた PSI・連合のセッションでは、カナダ、イギリス、インドネシアで 水道下水道民営化に対抗しての闘いの報告や民営化以降の水道の問題点などが指摘さ れた。 中でもパネラーとして参加したインドネシア・ジャカルタの水道労働者は「公営であっ たときは苦情はなかった。民営化で料金は値上げされ、貧困層は水道にアクセスできな くなり、労働条件も悪化した。そのため人権の問題として闘った。そのために私を含め 多くの労働者が失業した。 」 「民営化が人々を幸福にしないことは明らか」と怒りを込め た報告があった。参加者からは「マニラの水道が民営化になって1万人の失業者が出た。 また、マニラの水道企業は利益が上がらず撤退するという事態になっている」などの切 実な現状が話された。 同日午後は水基本法についての議論が交わされ、 「流域単位での水政策を行うべき」 、 「包括的な水に関する国内法を早急に策定すべき」 「住民参加のもと、水道事業を『公』 として再確立することが必要」などの意見が交わされた。 最後に PSI デヴィッド・ボーイズ氏がユニオンパネルの声明を提起し「水と衛生は 基本的人権であり公共部門で充分な財源を確保すること」「水と水道は WTO の対象か ら除くこと」 「政策決定に市民参加を」と提起した。 22日、23日には「招待客」のみの「閣僚級会議」が行われ、そこで「閣僚宣言」 が出され、8日間の日程で行われた第3回世界水フォーラムは終了した。 この「閣僚宣言」は、22日の 段階ではなぜか非公開となり、当 然の事ながらこれに対して多く の市民や NGO が異議を唱えた。 同日(22日)午後からは、フ ォーラムと別会場で NGO が見た 「第3回世界水フォーラム」∼水 の自由化・民営化問題の視点から ∼と題して京都市内でシンポジ ウムが行われた。ここでは基調と してカナダ人評議会のモード・バ ーロウさんが、『水はすべての生 き物にとって必要なもの。水の自由化・商品化はより多くの貧困をもたらし、環境へも 重大な問題を引き起こす。富める人だけが水にアクセスできるような社会にしてはなら ない』と講演し、インドネシアやスリランカの人々、また日本の NGO のパネラーから 「世界水フォーラム」の問題点や批判が多く出された。参加者からも『行革や規制緩和 によって日本の水道も民営化のターゲットとなっている。水は基本的人権=共有財産で あるから公共で供給するもの』と水道労働者からの発言や、『今回の水フォーラムでも やはり市民の声は反映されていないのではないか、私たちが開いたセッションには WWC の人々は参加しない、WWC のセッションには私たちは入れてもらえなかった』 など非民主的な WWC のやり方に対して批判の声も上がっている。最後に今後『水を どのように守っていくか』というような問題が提起され、シンポジウムを終えた。 私たちが水=命をどのように守って行くかということを議論している最中に、奇しく も米英によるイラク戦争が始まった。フォーラムに参加した多くの労組、市民、NGO は『イラク戦争反対』を大きく掲げ、会場でも多くの人がキャンドルを手に平和を訴え た。 現在、多国籍水道企業が日本の水道への参入をもくろんでいる。仏のビベンディ・ウ ォーター、独 RWE 傘下のテムズウォーター・ジャパンなど海外での水道事業の実績を 引っさげて国内の水道事業への介入を狙っている。これらの企業が一様に主張すること は、「公共より民間の方が効率的な運営ができる。これによって多くの人々に安全な水 を安く提供できる」ということである。また、世界的に水不足がいわれる中で「効率的 な水道運営ができれば貧困層へもより多く供給できる」などである。しかし、民間企業 が水道を運営することに多くの人々が疑問を投げかけている。海外の事例では、民営化 になったとたん水道料金が鰻登りに上昇し、一方で株主への高配当や役員への高報酬な どが行われるなどの問題が発生している。また、一旦は供給を開始したが、採算が取れ ずに撤退するなどの重大な問題が多くの国や地域で起きている。 水はすべての生き物に必要不可欠なものであり、全生命の共有財産である。それを利 益を追求する企業に任せることは、命を市場メカニズムに委ねることと同じ事であり、 大変危険なことである。労働者の視点、市民の視点、使用者の視点から水問題をとらえ、 『水を公共の手に∼Keep Water Public∼』ということを強く訴えたい。 「第3回世界水フォーラム」に参加して G.A 21世紀を迎えて、今年で2年が経過しましたが、世界は戦争の20世紀を反省する どころか、超大国「米国」によって、アフガニスタンからイラクへと、まさに「石油」 をめぐる戦争が引き起こされました。 そして、先進国・多国籍企業は今後、石油利権から、「水」をめぐる利権争いへと推 移していくともいわれており、実際に水をめぐっての戦争が世界で起こっているほどで す。 こうした状況の中で、3回目を迎えた「世界水フォーラム」に参加してきました。 私自身、労働組合の役員、とりわけ青年女性部の役員を体験してきた中で、また、 「水 問題研究会」を通して諸処、「水」について学習してきました。 しかし今回、NGOによるシンポジウム『NGOが見た「第3回世界水フォーラム」 ∼水の自由化・民営化問題の視点から∼』の中で、ある女性が発言した「水はいったい 『だれ』のものなのか?」といった投げかけに「はっ」とさせられました。この問いか けに対して、主催者側は、多国籍企業による「水」資本の自由化・商品化がもたらされ た国、その国に住む人々全般の状況、また自然環境の実態、さらにスリランカでは、 「水」 を使用するための「許認可権」の制度が実際にあることなど、各事例の紹介を織り交ぜ て発言がされました。 そして、結局のところ、「水」は「公共財」であって、「だれ」のものでもない。「生 命」をもつものが生きていくために欠かすことが出来ない、この地球上に生きる、生き とし生けるもの全てが共有する財産であることを参加者で確認すると共に改めて認識 させられました。 これから、私たち一人一人がしていかなければならないこととして、水の自由化・商 品化を目論む政府・資本がこれまで世界各地で行ってきたことが、その国に一体何をも たらしたか、さらに今後、途上国に対して行おうとしていることなどを、もっと知って いくことが重要であると思います。 また、命の水を守って行くためには、一般民衆の視点から「水」というものを考えて いくことと、さらには私たち「水」に携わる労働者として如何に関わっていくか、私自 身の課題として考えていきたいと思います。 そして、日本の伝統文化を育んできた都市で「世界水フォーラム」が開催されたこと の意義として、「水」を文化として捉え、育んでいくことも重要ではないかと思いまし た。 最後に、「世界水フォーラム」に参加するに当たって、大勢の方から多大なるカンパ をいただき、誠に有り難うございました。 第3回世界水 フォーラム に参加して G.H 今回、日本で水フォーラムが開催されるにあたり、水に興味もあったので3月18、 19日は大阪で分科会に参加し、 22日には京都での NGOの会議に参加してきました。 会議では各国の代表者の方から自分の国の水政策や水事情など、今どのようなことが 起こっていることについての訴えがありました。 とくに経済的に貧しい国々にとっては深刻な問題になっており、政府は民営化を推進 し市民を完全に無視した政策を行っています。例えば、水道料金が200%∼300% 以上値上がり(最もひどい国では600%値上がった)した国もあり、高所得者だけに 水が供給され貧困者には水が供給されなくなります。またプリペイド式のメータで自由 な水の権利がないところもあります。そのような事態が起こると市民に平等に水が提供 できなくなり断水になったり、またにごり水が出たりと生活していくうえで問題が発生 し死者もでています。 先進国でも民営化が進んでいて政府も「民営化してもサービス低下はやむを得ない」 とし、企業も参加しています。大企業のスエズ社も「水を提供しているのではなくサー ビスを提供しているのである。」と唱っておきながらもやっていることは反対で、どん どん民営化を進めていっています。儲かるのは一部の経済者だけで国民(市民)を犠牲 にしてまでも儲けようとしています。 日本でも例外ではありません。三重県でも同じような事例があります。住宅地区で水 を管理している会社が水道料金を上げると言った→住民が反発→会社は人為的に断水 →紛争になった→住宅地の長がタンクで水を運んだ。と言った実例もあります。 「21世紀は水の世紀」と言われ2025年には70億の人々が何らかの水問題を抱 えることになるとも言われています。 水は世界の共有財産であり、水は基本的な人権でもあり、民営化、商品化というのは絶 対にあってはならないことだと思います。水の循環を良くすれば自然も維持できる。そ ういったことが環境問題にもつながります。水は私 たちが生きていく中でかけがえのないものですべて のものと密接に関わっています。水源から蛇口、水 処理まで公共でなければいけないと強く思いました。 「水は基本的人権」 、これは当たり前のことと思い ますが世界の国々ではそうではないところがあると いうことが信じられませんでした。その基本的な水 に携わる者として水がどれだけ大切なものなのか再 認識し、これからの公共水道のあり方を考えること ができ、大変勉強になった世界水フォーラムでした。 世界水フォ−ラム・ツア−に参加して…。 T.T 水問題研究会(仮称)の企画する現地ツア−等に参加するのは初めてという、右も左 もわからないままに、そういった意味では、冷やかしではないものの興味本位といった ところで、今回のツア−に参加してきました。とはいってもこのツア−は3月17日夜 ∼23日までの長期日程となっています。とても全日程に参加するわけにはいかず、世 界水フォ−ラムの分科会には参加できませんが、21日∼23日の日程でNGO団体の 一つであるAMネット主催の『NGOシンポジウム、NGOが見た「第3回世界水フォ −ラム」∼水の自由化・民営化問題の視点から∼』に参加をしてきました。 21日は錦糸町にある錦糸公園で午後1時に待合わせて、京都へ移動して先発組との 合流のみでした。しかし、M 木君が1時間近く遅刻したことから、ツア−の先行き不 安を感じつつも出発をしました。が、その不安は、まさに高速道での大渋滞という形で はね返ってきました。何はともあれ、その日のうちに目的がはたせて良かったと、確か めはしませんでしたが、後発組4人中3人は思っていたはずです。 翌日、シンポジウムが開催されるのが午後1時からという事で、午前中は今回のメイ ン会場になっている国立京都国際会館へと行きました。各国、各団体のブ−スや展示物 を見学しました。あまり時間がなかった事と日本で開催されているとはいえ、海外から の出展ブ−スは一部を除いて、ほとんどが外国語で表記されています。恥ずかしながら、 何処のブ−スを見たらいいのか、なんて書かれているのかさっぱりわからない状態でし た。そんな状態でメイン会場を後にして、午後からのシンポジウムの会場へと向かいま した。 シンポジウムは、はじめに主催者挨拶、カナダ人評議会のモ−ドバ−ロウさんによる 基調講演では「水は人権であり、信託された公共のものである。水は循環していて、新 しいものは生まれてこない…。保全・公平な分配を問題にしていかなければならない。 」 等の話がありました。その後、4人の発言者が、今回の世界水フォ−ラムについてと、 現在の水に係わる状況を、それぞれの立場から話してくれました。ユニ・イカワティさ ん(コンパス インドネシア)は、ジャ−ナリストとして公平な立場にたっての視点と、 インドネシアにおける現状から、世界水フォ−ラムに対する個人的意見を。石田恭子さ ん(JACSES)は、貧困削減事業として民営化を推進するIMF、世界銀行、地域開発 銀行の実態として、債務の軽減と引き換えにした「水事業の民営化」と企業送り込みの 押し付け。採算が取れなければ撤退をする、現地における民間企業の現実を。へマンサ・ ウィナサナゲさん(環境財団 スリランカ)は、スリランカにおいて「民営化」を推し 進めようとするアジア開発銀行と政府の対応を。石中英司さん(AM ネット)は、世界 水フォ−ラムが開催されることになった経過と中国での成功例のなかで、水政策のプロ セス中に住民の意見が一切反映されず、係わっていないものにどれだけの意味があるの か等を、それぞれ4人の方たちが話してくれました。 日本においても海外の企業との提携、または独自に開発等によって、水事業に参入を 企てる企業、群馬県の太田市のように自治体によっては丸ごと委託をしているところも あることは聞いています。世界規模では水をめぐる紛争。民間企業の参入によってある 程度の整備はされるものの料金は高くなり、貧困層といわれる人たちは水にアクセス出 来ない。採算が取れなければ撤退をするといった現実が実際にあります。質疑等のとき にあったひとつの意見で「水は誰のものなのか?土地がそうであったように、大変危惧 される。 」といった意見がありました。本当にそう思います。水に人権はあっても自ら はどうすることもできません。極めて公共性の高い生命の水だからこそ、使用する私た ち、水にかかわりながら働いている私たちが、考え、そして行動をしなければなりませ ん。水事業の「民営化、市場化」を許さない取り組みとして、いまは具体的にどういっ たことをしたらいいのか思いつきません。自分のできることから、少しずつ行動に移し ていけたらと思います。 最後にこのツア−に際してカンパをしてくださった多くの方々、そして3月31日の 出産予定日をひかえながらツア−参加させてくれた、かみさんにも感謝しています。本 当にありがとうございました。 メ イ ン会場の国 立 京 都 国際会館前 に て 第3 回世界水フォーラム T.S 第3回世界水フォーラム は、2003年3月16日∼23日京都・滋賀・大阪・ 琵琶湖・淀川流域をむすんで開催されました。この期間中に水に関する会議とイ ベントが行われ、企業・政府・NGO・その他により337もの分科会がひらか れました。 閣僚宣言では、「官民の連携強化」を打ち出し、官が独占してきた水道事業に 民間の資金、経営、技術を呼び込む方針(民営化推進 )を示しました。ただ民営 化で貧困層が水を得にくくなるという発展途上国の反発にも配慮し、水道料金の 値上げなどに関する公的な管理や法的整備が必要との認識(認識しただけで 必ず 行うとはしていない)を示しました。ダムについては環境面などの配慮を求めな がらも「再生可能エネルギーとして水力発電の役割を認識する」「貯水池のよう な構造物を含む包括的な(災害)対策が必要」と事実上、(更なる自然環境破壊) 建設を容認しました。 現在世界では生命の源水を巡る状況は深刻です。世界人口の5分の1、約12 億人が、安全な水を利用できていません。発展途上国の病気の8割は汚水が原因 で、子供が8秒に1人死んでいます。今世紀半ばまでに60カ国の70億人が水 不足に直面します。さらに今後水が原因となる紛争が多くなるとの警告もありま す。実際に現在でも水が絡んだ国際トラブルは年約100件に及び、死者を出す 場合もあります。しかし、対応はほとんどされず遅れています。さらに、WTO (世界貿易機関)は2005年までに統合的水源管理及び水効率化の計画を策定 することが決まっています 。この計画が住民主体で行われず、利益を生み出す商 品として扱われるならば、全ての人が平等に水へのアクセスが出来るはずはなく、 貧困層は現在より困難になる事は明らかです。 日本でも水問題は他人事ではありません。食料の6割を輸入に頼り、輸入食品 に消費される水の量は、日本全体で使う生活用水の3倍以上に匹敵します。水危 機が進み輸入が脅かされると、深刻な事態になります。さらに、水道民営化 によ り海 外へ商品 としての輸 出が始ま れ ば国内で の水不足と 環境破壊が 進む可能性 が増大します。 これらの事から水は国際共有財であり、基本的人権であります。よって民営化 には強く反対であります。だが今後、公共事業の民営化は進んでいきます。その 流れに抗すために、水道事業の公共性を守る上で現在における良くないところを 改善していき、何としても水の安全と公共性を守っていかねばなりません。 京都メイン会場では、資本・国が主催の会議がほとんどでした。これらの会議 では、内容に反対する意見はほとんど削除される形で進められ、主催者側の都合 に合わせた内容で行われているのが目立っていました。 不可避なものの低減―水に関連した災害管理、健康保証・環境保全 (アジア開発銀行) 未整備地域で増大する 水アクセスへの実現的対応―世界の最優先事項 (世界銀行) 上記の会議に参加しました。 この会議に参加する多くの国では、「女性差別」があり女性だけが子育てと家 事をするのは当たり前で、おもに水を女性が使用するとした考えを持っています。 さらに、貧困の度合いを水で計る事が出来るとして、それを基準として世界的に 比べようとしています。その他にも色々な差別的な内容を含んだ会議が少なから ずありました。 人為的に社会と環境が世界規模で脆弱化しており、気候の変化で貧困層に大き な影響を与えたり、大量の井戸水と地下水を使うと水不足と環境破壊が起きます。 水の確保には地域住民のコンセンサスを得ることが重要であり、工業、農業、生 活環境の水使用量により大きく変化するもので、水の悪循環とギャップを埋める 必要があります。しかし会議では世界的なダム建設容認の観点から、干ばつと洪 水をダムにて調節するとした意見が最終的に出されました。 次の会議ではアジアとアフリカでの成功例だけをあげ「水の供給と衛生問題、 学習から実践へ」と提起されました。 1940年 ∼40年間 でジンバブエに公共 のトイレを 設置し井戸 を5万個作 り、50万人に衛生的な水の供給がされると発表しました。(実際は一部であり 本当の成功とは言えません。)1980年に国家プロジェクトで保健省が水質研 究した結果、ほとんどが 汚染された水でありました。さらなる水質改善のためN GOが関わり使用料を集め水質と水量の監視、井戸の改良と数を増やすかを考え れば良いと方針が示されました。さらに瓶による水の保存も密閉式の物を販売す るなど水質の維持が発表されました。結果的に水の供給と安全性で貧しい地域は、 企業の論理で公的資金と基金を集め対応すべきとしてまとめました。 ベトナムで は手動式ポンプから電 動ポンプ への更新を 80年代ユニセフが始 めました。その後、IDEプロジェクト(小規模灌漑事業)やNGOが始めまし た。しかし、安全飲料水供給を掲げたマーケティング戦略の民間企業は地元の小 さな掘削業者にポンプをつけさせました。徹底した作業員の教育と訓練を行い修 繕も容易に出来るようにしました。さらにコストを削減し、全体で6万4千台売 りました。地元業者が儲かった資金を運用したり、世界資金の運用でクレジット でポンプの販売を行いました。結果として、世界資金の回収と国中に普及と報告 しました。(一つも貧困地域の実情は報告されなかった。) ネパールでは、最新水浄化システムに対して資金投資だけでなく、技術投資で も商売になると発表しました。(システムが上手くいっていない事が想像できま した。) 南アフリカでは、地下水の汚染をケアしなければなりません。井戸の場所と汚 染の認識がほとんどなく、ゴミ捨て場と穴式トイレが近くにあります。最低30 メートル離すよう国が指導すべきで、使用禁止の井戸を勝手に使ったり汚染地域 で井戸を掘ったりすることは良くないと報告されました。(都合の悪いことは全 て国にさせる姿勢がみられました。)水とトイレで商売にならないか研究してい くべきであります。さらに飲料水として水を利用する時は沸かす、又は簡易塩素 を入れる。など提案された。 ザンビアでは、JAICの補助金で水道下水会社を設立します。しかし、33 カ所の貧困地域には、一切おこなわれずインフラの劣悪で環境が悪い状態です。 88年に民間会社による表層地下水にて水の供給を開始します。だが貧困地域で は高価な水で結果的に浅井戸を使う事になります。この浅井戸は乾期には干上が るほか衛生面でも最悪な状態で、更なる日本の資金で8カ所の浄水施設を作り衛 生状態が改善されました。(残りの貧困地域はどうなっているのか 、まったく報 告されませんでした。) バングラディシュでは、フィルター 濾過による硫化鉄・ヒ素・細菌の除去を行 っています(コストが高すぎて実際は水浄化の主流にはなりません。) 結果として儲かるところは民間で行い、それ以外は各国で行うべきとした。方 針が確認され終了しました。 米国での民営化反対の声 米国では、政府が市民を無視し民営化を推し進めたのちにサービスと品質の低 下、公共福祉の切り捨てを行いました。 デトロイトでは水道会社が料金未払すぐに給水停止を行い、4万5千人が生活 水が使えなくなりました。貧困層は生活できず、政府対応として子供達を施設に 集めた結果として多くの家庭を崩壊させました。 アトランタでは不景気による財源(税金)不足で民営化を行う、市長は水不足 と水道水による疾病・感染症はなくなると 発言しました。事実は異なり民営化で 企業が利益を追求した結果(労働者の50%首切り)水の安全性の問題に加えて サービスの低下と安定給水が損なわれました 。それは現在、6千ドル以上の料金 未回収と火事になると消火ができず燃え広がる事態につながっています。しかし 住民が現在サービス向上に向けて企業と闘っています。 ジョウジア州では98年ユナイテッドウォーター(スエズ)は4億2千万で2 0年契約の水道事業運営ができると政府に売り込みました。財政難であった州は 民営化しかないと契約をしました。財政の再建が出来ると売り込んだが、実は人 員削減コストダウンとインフラコストのかさ上げを繰り返しました。料金は年間 24%上昇しました。結果として100ドルで飲めない茶色い水を市民が購入す るようになりました。市民は検証を行い市議会により契約解除をしました。再度 のインフラ整備等で住民負担は増大したが、この地域では水の安全性と公共性を 取り戻しました。 ミルオーキーでは、政府と世界銀行がPPP( 官民パートナーシップ)を押し 進めユナイテッドウォーターが水道・下水道事業を行っています。政府は水道水 による疾病が多いそのため 、下水道の強化を依頼しています 。しかし世界銀行と ユナイテッドウォーターが一体となり、汚職の温床となっているため政府は何も 言わず、下水処理の60%が失敗で効率が悪い物になっています。この事から海 で3週間だけ海水浴が出来それ、以外は閉鎖され臭いがきつく水の汚染が進んで います。 ミシガン州では、水の豊富な地域であります。民営化されたネスレ水道企業は 世界130カ国で企業活動をしています。水道民営化の時に政府と貿易条約を密 約して水を大量に海外へ輸出しました。結果として地盤低下と浄水場の排水によ る環境破壊を起こしたあげく、たびたび断水を引き起こし住民の安定給水を無視 しています。 カリフォルニアでは水の豊富な地域です。水道企業が住民の安定給水を無視し て、4㎞に及ぶパイプラインを引きました。サンディエゴ に水を運びそこから海 外に運び出しているのは明らかです。この事を政府に質問しても解らないと答え ます。 ニューメキシコ州では、昔ながらの伝統的な干ばつ対処方がありました。政府 はメキシコ灌漑システムを発案し干ばつを無くそうとしました 。水の権利が売り 買いできるこのシステムでは、貧しい地域の人は一時的な大金につられてしまい 大企業の思いどおりに水利権が売買されています。その結果として干ばつがさら に深刻なものとなっています。住民の手で新法を作り水利権の売買を規制して水 循環による昔ながらの灌漑システムを守っていかなければなりません。 アジア・アフリカでの民営化反対の声 フィリピンでは、ライフラインは基本的に公営であるべきである。特に貧困層 には、政府がおこなうべきであります。第三世界は人間を守れない事態になる。 パキスタンでは、アジア開発銀行が貧しい人が中心の地域に住民を無視した水 源開発を行いました。この地域では(女性差別が日常的に存在する地域で)水は 基本的に女性の物であるとして、古くから水利権は女性が持っていました。その 水 利 権の売買 を行った結 果として金 があっても女性は町 に行かないので使う事 ができず、全てを失う事になりました。アジア開発銀行は全ての責任を放棄して 逃げ回る政府とグルとなり、計画に反対する者の情報を集め反対者に嫌がらせや 妨害をおこないました。例えば(英語で書かれた)読めない書類を住民に渡すな ど情報操作をおこない、プロジェクト委員会に地域住民は賛成者しか参加できな い様にしました。 ネパールでは、世界銀行やアジア開発銀行が政府と一体となり、ダム開発や水 利権の売買を住民の理解を得られぬまま強引におこなっています。これ以上好き 勝手 をさせないためにも 政府資本の 水とダム に対する一方的なナショナルガイ ドライン策定に反対していくべきです。 アフリカでは、ダムの水が少ないので蒸発抑制剤を使用しています。この薬は、 環境に問題がある事が解っていますが日常的に使用されています。この環境破壊 に対して反対の声を揚げるべき労組(労働者)は、企業の管理の下で資本側に取 り込まれ、市民の仲間ではありません 。さらに、民営化反対の意見は抹殺された あげく、フランスの企業にピンハネされる構造にあり水道料金が高く市民の負担 は増大しています。 南アフリカでは、アパルトヘイトが根強く残っており、プリぺイド式水道メー タで簡単に断水できる。前払いによる安定給水の否定がおこなわれ貧困地域のみ 導入されている。 ガーナでは、NGOやマスコミを取り込み、水道民営化をおこないました。し かし一部の金持ちにしか供給しない事や塩素消毒をしないなどずさんな管理で、 出来た水や余った水を捨てています。 その他の地域での民営化反対の声 アルゼンチンでは、現在でも水道料金が高いのに更なる料金の値上げが起きる (南米では1社の独占となる確率が高い)公的水道民営化 の危機に政府が理解し 合えない事態になっています。それは世界的に発展国が途上国への増資をちらつ かせ、条約締結をして水利権を奪い取る構造となっているからです。民営化に失 敗すると、公共に戻すために更なる住民負担を強いることになる。 京都 メイン会場 にて 白鳥 と私 水フォーラムに参加して M.H 水フォーラムへの参加は、世界における水事情、水に対する考え方を改めさせ られるものとなりました。 水フォーラムが、政府・企業・NGOなどの主催により300以上もの分科会 が開催されるとあって、自分としては最初から参加をして、見たり聞いたりして 多くの知識として学びたいと思っていましたが、諸般の事情により後発からの参 加となりました。 今回参加するにあたり、世界各地での水に関わる問題、民営化問題など、昨年 に行われた集会の資料等を読み返し、学習をしたつもりでしたが、自分の想像を 越えた厳しい現実が目の当たりになるものでした。 一つの分科会で、中東からの参加者から水資源を巡る地域紛争が起こりつつあ る実情を半分怒りを込めたような発言を聞いた時に、自分自身なんて無知なんだ と改めて考えさせられました。 私は、これまで水に不自由したことがなく、何気なく蛇口を捻って、自由に水 を使う環境に生まれ育ってきた、水を無駄にしてきたことに大変恥ずかしい感じ を抱きました。 世界中で、多くの人に安全な水が行き渡ることが出来ずに、生命が脅かされて いること、今後水が原因で紛争が起きることに対し、危機意識を持って、すべて の人が平等に使うことの出来る水を守って行かなければと改めて実感しました。 また、私達に直面した課題でもある「民営化」が推進されることに対し異議を 唱え、すべての人と問題の共有化を図り、水道事業で働くものとして公共性を守 り、水の大切さを訴えていきたいです。 「『水』は人権、共有財産である」と多くの参加者が述べられていました。生 命の源である水が、利益を生み出す商品として扱われ、争いを招く『道具』とな ることを許してはならないと考えます。 限りある時間の中での参加でしたが、水道事業に携わっている労働者として、 自分達の仕事を見つめ直し、広い視点に立った水の安全と公共性を守っていかな ければなりません。 今回だけで終わらせるのではなく、みんなと共有化させて、すべての人と水資 源を守っていきたいです。 最後に、今回参加させて頂いたことに感謝を申し上げますと共に、これからも 運動に邁進していきたいと 思います。 The 3rd World Water Forumに参加して H.H まず始めに、世界水フォーラムという3年に1回行われる国際会議に参加する 機会を与えて頂き、誠にありがとうございました。この会議に参加したことは、 一水道労働者として、これからの水道事業のありかたを 考える、そして、自分の 考えを確信に変える大変貴重な経験でした。 私は、水の自由化・民営化には反対の立場で参加した。ただ、それは漠然とし た考えであって、どういう理由で反対なのかという決定的な持論が無かった。数 あるセッションの中から3つのセッションに参加したが、実に色々なことを学び、 考えさせられた。 それぞれのセッションのテーマに沿った提起がパネリストから行われ、参加者 が質問、意見、報告という形で進められた。初日は「官民の連携」というセッシ ョンに参加し、そこでは20カ国を超える人から発言があった。民営化後の自国 での事例、水の自由化に対する思い、批判が語られた。南アフリカでは民営化後、 水道メータを事前に料金を支払うプリペイド 式に変更され、その結果貧困層 が拡 大したことが報告された。そして最後にはどの国の人も「水は人権だ、絶対に公 共性を守る」という熱い言葉が会場に響き渡った。 この数年経済のグローバル化の進展に合わせて、水道・下水道のウォータービ ジネス市場で企業買収や企業グループの統合が進められ、水市場への民間企業の 進出が活発に進められている。これは多国籍企業が無限の可能性を持つ水市場を 独占的に支配し、多くの利潤を手にしようとする動きであることは否定できない 事実である。 水道事業にとって最大の敵は民営化だと思う。全てが効率的に、安全に、平等 に全ての人々にきれいな水を供給することができるというのなら、例え民営化に なったとしても批判はしない。しかし、水フォーラムでの各国の代表者の意見、 事例等を聞くと、殆どが料金値上げ、断水、水質悪化等により、きれいな水を飲 めない人が増加、死者まで出た国もあるという。成功例はほんの一握りだ。 水は全ての生命に欠かせないものである。民営化を経済再生化の道具として使 うのは大変危険なことであり、利益追求の企業に委ねるということは生命の危機 をも意味する。 水は全人類の共有財産であり、基本的人権の1つだ。人間の基本的な権限を守 るため、私たちは行動しなければならない。「民で出来るものは民で行う。」と どこかの首相が言っていたが、命である水の公共性は守られなければならない。 「公共のものは公共で」という基本的な考えのもと、迫りくる民営化という荒波 に抗し闘っていきたい。 水フォーラムに参加するにあたって、多大なるカンパを頂き支援して下さいま したこと、誠にありがとうございます。感謝申し上げます。 最後に・・・違う土地でお酒を飲み、気分が高揚するのは当然のことであるが、 後で後悔することのないよう、自己責任がもてる範囲で遊んで頂くことをお 勧め する。 アメリカのイラク攻撃に抗議する フォーラム参加者によるキャンドルパフォーマンス 始まったばかり 、 水の国際連帯 S.E (民営化反対派、大阪に集まる) 3月18日に大阪会場に合流した私達は、基本的に全水道の行動に参加してきました。 参加した「官民の連携」の分科会では、発言者の全員が水道民営化反対の立場であり、 民営化推進側との討論とはなりませんでした。しかし、多くの発言者から「水は基本的 人権」 「民営化は結局、民衆を切り捨てる」 「世界銀行、アジア開発銀行と多国籍企業の 横暴」など、民営化の失敗例、各国の深刻な実態をこれでもかと繰り返し聞ける機会を 得ることができました。アジアでの民営化実態を持ち出し、民営化論をブチあげる当局 職制に聞かせたいものです。 (市民ネットワークの前進はこれから) 3月19日の午後、私は「水の自由化・商品化」分科会に参加しました。ここは、 「世 界水フォーラム市民ネットワーク」が運営し、各国の NGO 代表からテーマに沿って報 告を受け、全体で論議する場でした。各国参加者からの報告は、すべて民営化、商品化 を否定するものでした。 参加者の中から(食糧問題に関わる日本人)「民営化、商品化の反対を主張する側は 説得力のある具体的データに欠けている。午前中、京都の会場で、民営化推進の世界銀 行などが参加した分科会に出たが、たとえば、中国では、料金支払い率がこれだけ上が ったなど、図表で示して、分かりやすかった。反対する側ももっと具体的なデータを示 してほしい」と要望がありました。これを機に会場からの発言が盛んになり、具体例も 示されましたが、それよりも「そもそもやり方が問答無用だ」という意見が多くを占め ました。途上国や日本のNGOからは、「途上国の財政赤字解消計画の中に、すでに公 共サービスの民営化が組み込まれている。そこには住民の声は反映されない。国民に判 断材料と選択肢を与えるべきだ」 「大規模施設を建設して終了の支援ではなく、技術や 運営の支援の方が地元の役に立つ」などの意見が出ました。結局、政策決定のプロセス に住民が参加していない、住民に知らされていない、この構造がある限り、すべての貧 困層に水アクセスは困難だと感じました。 (雰囲気違った京都メイン会場) 開会式や閣僚級会議が開催された京都会場は、大阪会場とは一段格が違うという印象 でした。それは各国政府関係者や水企業関係、世界銀行など資本側の機関の関係者の多 さからもうかがえました。私が参加した世界銀行主催の「水アクセスへの現実的対応」 分科会やアジア開発銀行の分科会では、それぞれの開発や支援の担当者が、美しい映像 とスマートなプレゼンテーションで、その「成果」を紹介しました。また、アフリカな ど途上国の参加者も大阪の会議とは違い、行政の担当者が発言し、支援事業の成果につ いて評価し、今後の取り組みにも積極的でした。大阪の生活者・労働者の「どろくさい」 発言とはまるで百八十度違う違和感を覚 えました。 一方で、民族衣装や音楽で自己主張する 人、3月20日には、米軍のイラク攻撃に 抗議してCNNニュースを放映する大画 面の前で抗議の座り込みを行う人など、さ まざまなアピールがあり、国際会議の雰囲 気を直に感じることはできました。ちなみ に私達も、イラク攻撃に対しては、大阪に 戻り、アメリカ総領事館に大阪水労の仲間と抗議に行きましたが、後から後から、水フ ォーラム参加者も含め抗議行動に集まってくる人々に心強いものを感じました。 (資本の連携に対抗する連携へ) 「世界水フォーラム」は、前回企業優先で市民団体排除の構造が露骨に出て、それが 問題になり、今回はNGO・NPOなど市民団体や労働組合が主張する場が保証されま した。もっとも、各国政府や関連企業が多額の金を出資しており、そうした背景を持っ た国際会議であるわけです。水を巡る資本の連携は、私達運動側のそれより、早く広い ことはもちろんです。ただし、途上国や市民団体の「命の水」の主張に対し、それを完 全に無視できないことも今回分かりました。 私達公共性を守ろうとする勢力にはPSI(国際公務労連)があり、NGOにはネッ トワークがあります。今回の参加はある意味で「敵の土俵」に入っていったわけですが、 これからの闘いは、そうならざるを得ないし、実際世界のNGOと連携するとなれば、 こうした行動も必要だと思いました。目先の合理化はひどいわけですけれど、私達の日 常を飲み込むような大きな仕組みを意識に捉えながら闘わなければ、と思い知らされた 会議でした。 世界水フォーラム M.T 地球上の水は97.5%が海水で我々が飲み水などで使用可能な表面水(河川 ・ 湖沼)は 全体の0.01%でしかない。 現在、世界の人口は約60億人で年間に一億人のペースで増加していくと 考え られている。爆発的に増加する人口が0.01%の水を平等に、そしてあたりま えに使用することは決して容易なことではない。そして、その結果、水が原因で 紛争まで起きるのではないかとまで囁かれている。 21世紀は水の世紀と言われるが、今こそ世界銀行・多国籍企業を頂点とする 資本側と我々、消費者・市民との関係を見つめ考える時がきているのではないだ ろうか。 2003年3月16日から23日まで京都・大阪を会場に第三回世界水フォー ラムが開催された。1997年の第一回から続く三年に一回の世界会議で、会を 増すごとに参加者、参加国が増えている大規模な会議である。 今回の第三回世界水フォーラムには私も参加したのだが、たくさんの分科会が あり資本・世界銀行・大学・官公庁・NGO・労働組合などさまざまな団体が企 画をし、主催していた。私が参加したのはNGO・労働組合が主催する分科会で、 資本側の利潤追求を追い求めるような会議ではなく、各国の消費者の声をストレ ートに聞ける会議であった。 さて、私の参加した分科会だが、『世界の共有財産である水を守る』・『日本に おける水に関する基本法』というものである。会議では主催者より世界の水事情 をのべ、その後参加者より自国での水事情の発言を受けていく形式で行われた。 民営化が進んでいる国の方の発言が目立った。「水は人権である」「民営化する ことによりサービスが低下した」「民間で経営していくために水道料金が何倍に も上がった。結果、貧困層は水道を使用できなくなり不衛生な川の水しか使用で きなくなっている」など発言の内容は非常に似たものが多かった。 国の例をあげると、南アフリカの発言者はアパルトヘイ トの時でも水は普通に 使用できたのになぜ今自由に使用できないのか(プリペイド式メータになってい るため即停水)?政府は「民営化は指示されている」と言うが誰一人、一度もそ んな質問をされていないと 発言。その結果、民衆は怒り、民営化が良いか、悪い かを投票し民営化を阻止したそうだ。 アメリカでも市の予算不足のため民営化したが、人員削減、料金値上げでサービ スを低下させ続けた民間会社が最後には設備の維持、修繕費を上乗せし、市へ請 求していたことが明らかとなり、市が企業へ契約破棄したこともあるそうだ。 その他、多くの話を聞いて、強い資本、財政難の政府・行政、どこまでも 弱い 民衆という構造が世界では出来てしまっていることに気づいた。政府・行政は財 政力が無いため世界銀行などに借金をする。世界銀行などは融資の条件として水 道の民営化を要求し、民営化へと進んでいく。一方、住民は民営化された水道を 使用するしか選択は残されていないのだが、企業の利潤追求の代償として高額な 料金、質の悪いサービスしか受けられなくなる。 水や大気は誰のものでも 無いはずだが、世界の多くの国では資本の利潤追求の 道具にされているのだ。蛇口をひねれば 当たり前に水が出てくることしか知らな い私にはショックなことであった。 分科会の中で民営化の話がでると必ずといっていいほどでてきた世界銀行は、 実は日本がアメリカに次ぐ出資国である。世界の国々で民営化により苦しんでい る人 々がいるということは日本の出 資によって苦しんでいることになるかもし れない。現在の日本は川の水を生活用水として使うほど水に不自由はしていない。 だが、地球規模で天候などが大きく変化しこの先これまでのように水が満たされ ている保証が無いのも事実ではないだろうか ? 日 本に水があっても自給率が低く 輸入農産物に頼っている現状で は他国の水 不足も他人事ではなく死活問題にまでなってしまうのである。これからは、広い 視点で水問題を考えていかなくてはいけない 。明日は我が身である。 最後になりますが、今回のフォーラム 参加にカンパをいただき大変ありがとう ございました。 「…」 M.N 「第3回世界水フォーラム」自体に私は 参加することが出来ませんでしたが、 3月22日に開催された「NGОが見た第3回世界水フォーラム∼水の自由化 ・ 民営化問題の視点から∼」と題したシンポジウムに出席しました。 同日の午前中、「せめて会場の雰囲気でも肌で感じよう」と、京都市内のメイ ン会場を見学しました。会場内へ入るには8000円を支払い、「手形」を受け 取らなければなりません。これは1日の「手形料」ですから、全行程をフルに参 加するにはかなりの出費です。世界の貧困層はもとより 、労働者・民衆にとって は参加すること自体が困難です。 会場の展示物は、どれもこれも「水の大切さ」「貧困対策と水の供給問題」等、 とても重要な課題でした(私には英文が理解できず、日本語のみで解釈)。しか しその内実は、水を金儲けの具とする多国籍水道企業と結託した国際金融機関に よるアピールが主のようでした。 会場では毎日、「水フォーラム新聞」がスタッフによって配られ、フォーラム の内容や説明が記載されていました(英文は理解不能)。この新聞の特徴は、半 分が日本文で書かれ、残りの半分は英文で書かれていることです。ところが、同 じ内容が書かれているかと 言えばそうではないのです。私には英文が理解できな いので、後で知らされたのですが、「日本語記事は比較的NGOの立場も記載さ れていたが、英文記事はWWC、多国籍水道企業 、国際金融機関の意向に影響さ れた内容である。同じ新聞なのに紙面によって大きく違うのはおかしい」(NG Oフォーラムスタッフの言葉)なのです。 これは、「民衆の声を反映する」としつつも、全世界で水事業の民営化を促進 する多国籍水道企業がフォーラムのスポンサーであるが故に、現象化されたもの と思いました。しかし、地元・京都新聞の粋な計らいが、日本語版ではあるもの の「民衆の声」が発信されたことは救われる思いがしました。 さて、「NGOフォーラム」ですが、そもそも「世界水フォーラム」が全世界 で水道事業の 民営化を推 進していくための戦 略として位置付けられていること に対し、水は共有財産であり、基本的人権だと確信する立場で行われたと考えま す。また、「世界水フォーラム」を総括し、問題点や批判も多く出されたと思い ます。 私たちは、深刻な地球環境問題の現状や水の性格や位置付け、その安全性など の現状をあまりにも知らないと思います。いや、知るべき人に知らされることな く、マスコミ報道を通して水道事業の民営化の流れが形成されつつあります。 「官 より民が生産性も高く、安上がり」が如何にウソか。「NGOフォーラム 」を通 して身に滲みたのではないでしょうか。 国際競争力の激化は「市場には失敗がつきもの」ということを満天下に示しま した。「水の市場化・商品化」を許すことは、結果として特に「途上国」では、 経 済 的に水を 買えない人 は汚染さ れ た水を使 用するか死 ぬしか選 択 肢がなくな るでしょう。なぜならば、民間企業の第一の目的が利潤の拡大にあるからです。 故に、節水よりも販売の拡大を選ぶし、収益に直結しない「水の安全コスト分」 や環境コスト分は出来るだけ削減するでしょう。「事業の失敗」もあるし、採算 が取れずに撤退する例も数多くあります。水道事業の「失敗」は即、人間の生死 に関わる大変な被害を拡散する恐れを成す、ということを 海外のゲストの話から 感じました。 同時に、国際競争力の激化は、企業のリストラ、行革・規制緩和で、有無を言 わない労働者民衆の切り捨てが横行しています。その事がまた、生活や人権を顧 みない世の中となっています。いじめや自殺の報道が後を絶ちません。 地球環境の絶望的破壊、労働者民衆への犠牲転嫁、社会構造の腐敗、社会の陰 惨化、無責任社会が現実として作り出されています。確かにこのことは、資本側 の戦略の結果としてあります。しかし、このような世の中を駆使しているのは、 私たち人間です。今の社会で生きている私たちは、この社会を活用しています。 従って、それを活用している私たち人間の問題であります。 労働と生活の場から世の中を問う運動の形成!「命の水」に関わる労働者とし て、まさに歴史的使命ではありませんか!そのための人的基盤・人間関係の豊か さ、人と人との深い絆が大切だと思います。 私にとっては、たった1日の行動でしたが、職場での業務確立運動につなげる 「ヒント」を得られたような気がします。 今回の行動に対する心温まるカンパに御礼を申し上げます。ありがとうござい ました。 世界水ビジョンについて (世界水フォーラム市民ネットワークより) ●世界水ビジョンの目標 「世界水ビジョン」では、以下のような提案が行われている。 「世界水ビジョンにはつぎの3つの目標がある。 1. われわれがどのように水を利用するのかを決定する権限を女性、男性、地域社 会に持たせる。 2. 水一滴当たりの穀物収量および生産料を増やす 3. 水を管理して淡水と陸上生態系の保全を実施する。 また、世界水ビジョンは、以上3つの主要目的を達成するために、重要な5つの 行動を明記している。 1. すべての利害関係者が総合管理に関与する。 2. すべての給水にフルコスト価格設定を導入する 3. 研究と革新に向けて公的資金を拡大する。 4. 国際河川流域を共同で管理する 5. 水への投資を大幅に増加させる。世界水ビジョンを実現する責任をわれわれ全 員に帰する。われわれ全員とは政府、多国籍機関、家庭、地域社会、非政府組織、 大学、研究所、民間部門である。」 と 4.5 水の未来への投資(世界水ビジョン川と水委員会『世界水ビジョン』p.127) において、要約されている。 ● 危機からビジョンへ 「われわれのビジョンは、淡水生態系の完全な維持を保証できるような方法で、 すべての人に、食糧をはじめ諸々の必要なものを充足するために、安全かつ十分 な水が供給される世界を実現することである。 ビジョン策定の究極目的は、人類が直面する水危機と、それに対処するための解 決法についての全世界的な意識を醸成することである。 この認識が高まれば、新しい政策と立法的・制度的枠組みが策定されるようにな る。 また世界の淡水資源は、効果的、効率的かつ平等に人類と地球の利益となるよう、 個人から国際社会までのあらゆるレベルで統合された方法で管理されるようにな る。」 4.1. ビジョン声明と重要なメッセージ(世界水ビジョン「川と水」委員会編『世 界水ビジョン』(2001)p.69)に、水ビジョンの策定の目的として、このように 「危機と、それに対処するための解決法についての全世界的な意識を醸成するこ と」を指摘しています。 また「危機からビジョンへ」(「概要 水をすべての人類の課題に」『世界水ビジ ョン』p.61)では、以下の通り7つの項目を掲げています。 水危機が深刻になり、激化するかどうか――あるいはこの動向を持続可能な水資 源管理へと転回させ得るかどうか――は、複雑な仕組みの中で相互に関係してい るさまざまな動向の変化に依存している。 現実的に解決するためには、水資源管理への統合的仕組みが必要である。 未来をまったく違うものにするために取り組まなければならない重要な課題と して、つぎのようなものがある。 ● ● ● ● ● ● ● 灌漑農業の拡大を抑制する。 水の生産性を向上させる。 貯水量を増加させる。 水資源管理制度を改革する。 流域での国際的協力を強化させる。 生態系機能の価値を評価する。 技術革新を支援する。 ●世界水ビジョンのメッセージ その上で、4.1. ビジョン声明と重要なメッセージの中で、「統合的水資源管理」 が推奨されている。 統合的水資源管理(integrated water resource management)とは、「大局的 な観点から、水の状態と農業、工業、家庭、環境といった給水先の需要とを検討 すべきであるとする考え方。 水資源と給水の管理には、給水の調整が必要なため、部門内外で調整すべきであ る。 給水先の要求が満たされ、また水資源と給水を統合的に管理できるならば、公平 で、効率的な管理体制の維持が可能になる(世界水パートナーシップ、1999 年度 行動枠組み)」 「統合的水資源管理の主たる目標は、以下の 3 つである。 ● 女性、男性、および地域社会において、安全な水と衛生的な生活条件の確保、 および彼らが希望する経済生活の形態に応じて決定すること。そして、目的達成 のために行動を開始することの権限を付与する。 ● 女性および男性のために、1 単位の水の使用からより多くの食糧を生産し、よ り多くの持続可能な生計を創出する(水 1 滴あたりの作物生産と雇用を増加)、ま たすべての人に、健康かつ生産的な生活のために必要な食糧の供給を保証する。 現在は、水の専門家の分野別の取組みによって大半の水管理がされており、これ は立案と運営との調整においては、環境分野との密接な協力において不十分であ る。 また表流水・地下水の自然な流域区分を無視した行政区分の中で管理されている ことが多い。 さらに悪いことは、最も重要な利害関係者であり、水管理が生活と生計に影響を 及ぼす地域社会の女性と男性は、意思決定に参加していない。 土地と水の利用に影響を及ぼす社会的・経済的決定には、これらの利害関係者を 参加させなくてはならない。 政府は、これを実現するために制度的機構を確立すべきである。 すなわち土地と水の計画と管理は、地域社会の経済的・環境的・社会的利害を代 表する女性などの利害関係者を参加させ、完全な情報の共有にもとづいて行うも のとすることなどが、国の法制度によって義務づけられるべきである。」 ● 人間およびすべての生物に役立っている淡水、および陸上の生態系の量と質を 保全するために、人間による水の利用を管理する。 そして、これらの目標を達成するために必要となる重要な行動、「要請される行 動」として 「国際河川流域での統合的水資源管理に関する協力の必要性を認識する」 「水への投資を大幅に増大させる」とともに、 「利害関係者の参加」や、「水のフルコスト方式」が提唱されている。 また、実施への責任の項目において、制度的な課題を強調し、参加プロセスの促 進や、基準設定による国際的制度改革などに触れるともに、民営化の意義が、公 的経営との関係で述べられています。 フルコスト価格設定(full-cost pricing)とは、「利用者が水の採取・集積・処 理・配分と廃水の回収・処理・処分にかかる費用を全額支払う制度」と説明され ています。 要請される行動には、以下のような文言があります。 「●すべての利害関係者を統合的管理に参加させる。現在の細分化した水管理の 枠組みでは、ダブリンとリオで指摘されたような相互関連性を取り扱うことはで きない。 ダブリンとリオからの発展に関しては、以下のような説明が『世界水ビジョン』 p.70 にあります。 1970 年代以降、一連の国連会議と大会は持続可能な水資源管理への里程標とな り、現在では水管理に関するダブリン原則が広く受け入れられている。 ・淡水は、生活と発展と環境の維持に不可欠な、有限で損なわれやすい資源であ る。 ・水開発と管理は、あらゆるレベルの利用者、計画立案者、政策決定者を含む、 参加方式にもとづくべきである。 ・女性は、水の供給、管理、保全に中心的な役割を担う。 ・水は、あらゆる競合的用途において経済的価値を持ち、経済的財貨として認識 されるべきである。 これらの原則には、経済的・社会的・環境的安全保障の密接な相互関連性が認 識され、含まれている。世界水ビジョン行動に課せられた課題は、ダブリン原則 の実施を加速するだけでなく、それを実施するための包括的な実施原則を提案す ることであった。 「●人間が利用するすべての水関連サービスを、全費用負担方式で価格設定に移 行する。 水は希少であるため、経済的財貨として扱われなくてはならない。 この概念に意味を与えるため、本報告書では、水関連サービスを供給するための すべての費用を消費者が負担するべきであると勧告する。 これは政府が、常に他の公的資金需要を考慮に入れながら、対象となる貧困 層を明確にした、透明性の高い助成を行うことまで禁止するものではない。 水に関する助成や、水を社会的財貨として扱う政策は、貧困者が最も苦しめ られるという矛盾を生じている。 水に関する助成が富裕者によって独占され、その他の機能を運営し拡張しようと しても十分な資源は残っていないという場合があまりにも多い。 その結果として割当制が敷かれ、貧困者はつねに列の最後尾に回される。 水関連サービスの価格設定は、外的影響をも含めた水の経済的価値を、十分に認 識した枠組みを最終的に確立するための第一歩として友好な手段である。 フルコスト方式の価格設定は、対象となる低所得の地域社会及び個人を明確に した、透明性の高い助成を伴わなくてはならない。 そのような助成により、彼らが最低限の必要性を充足するための費用を支払うこ とができるようにし、意思決定への利用者の参加を助長することが必要である。 このような取組みで水の価値を評価し、インフラへの投資と民間からの参加が促 進され、運営と維持の費用を賄うだけの収入が確保される。 また、生態系からの取水と生態系の汚染が抑制される。さらに、節水の習慣や技 術の活用や、更なる研究も奨励される。 公共の利益となる分野における研究と技術革新への公的資金を増加させる。 世界水ビジョン行動の一環として行われた協議では、これまで水と環境の価値が 評価されなかったため、淡水生態系についての定量的知識は著しく不足している ことが明らかになった。 同様に、節水技術の革新を促す刺激は、ごくわずかしか与えられていない。 水資源管理の価格設定は、民間部門にいくらかでも刺激となる革新を起こさせる。 国際的水資源管理に関する革新的な技術的・社会的・制度的取組み方法の開 発と普及を推進するために、公的資金による開発研究がさらに必要である。 とくに市場指向型の研究では対応できない分野で、公共の利益となる分野への公 共資金の増加が重要である。」 「●水への投資を大幅に増加させる: 世界の水資源問題への取組みには、莫大な投資が必要である。 水インフラへの投資は、現在の年間 700∼800 億ドルから約 1800 億ドルに増やす 必要があり、そのうち 900 億ドルは、役務での提供を含めて、主として地元の民 間部門と地域社会から供給されることになる。 追加投資と連携して、貧困者にも新規インフラの利益を享受させるため、政府に よる貧困者を対象とした(効果的かつ効率的な)助成が行われる。 これを可能にするためには、水の価格設定により、将来の投資と運営・維持 のためのキャッシュフローを生み出すことが、大いに有効であるはずである。 現在の考え方とは反対に、当ビジョンは、政府予算を現状の水準に維持すること を勧告する。 その第一の目的は、助成なしには水関連サービスを受けられないような低所得の 個人と地域社会に間接的に資金を供給することと、食糧価格を貧困者にとって手 頃な水準に維持することである。」 「実施への責任」としては、制度的な問題点を指摘し、 「水資源管理における最大の課題は、制度的なものである。 社会機構、政府の政策、技術の選択、および個人による消費が、いずれも影響力 を持っている。 しかしこれまでは、政治腐敗、断片化した制度、重複した努力、資源配分の誤り、 権威主義的な中央集権制度が、日常的に事業コストの増大を引き起こしてきた。」 として、 幅広い利害関係者の意志決定への参加を強調し、 「とくに女性などを含めて、すべての利害関係者を意思決定に参加させるよう、 政治的意志を結集する必要がある。」 としている。 そして、「各国での水管理は、全地球的な社会構造、経済、環境に影響を及ぼす: 基準を設定し、各国内での実績を基準に照らして監視するためには、国際的制度 が重要な役割を演じる。」 と述べて国際的な制度に基づく基準設定にも触れている。 この項目で、より具体的な課題として掲げられているのが水事業への民間参入な どの問題である。 「水関連サービスの供給は、社会的に重要であるため、多くの国では公共機関 に委ねられてきたが、ほとんどの発展途上国および大半の先進国でも、それが非 能率的になり、無規制になり、説明責任が不明確になっている。 民間部門の参入で、この状況は、根本的に変化する。 なぜなら民間の独占企業は、明確な契約のもとで操業すること(すなわち契約で 規制する)が必要だからである。 民間企業に対して規制と説明責任が確立された場合は、必然的に、それらの実績 を公的企業と比較すること、公的企業にも利用者への責任を負わせること、公的 企業を規制することの3つが実行されることになる。 このプロセスによりよい競争環境が樹立されることになる。 ほぼ間違いない最大の利点は、公的企業が規制され、説明責任を負い、効率的に なることである。 都市水道の分野では、そのような状況で、公的企業の実績がかなり向上するとい う明らかな証拠があるが、灌漑の分野では、このプロセスはまだ始まっていない。」 として、 「公共と民間の水管理は、どちらも説明責任の強化、透明性、および法の原則に よって改善されなくてはならない。」と述べている。 -------------------------------------------------------------------------------Copyright (C) 2002 PFW. All Rights Reserved. (仮訳) 2003年3月23日 閣僚宣言 ―琵琶湖・淀川流域からのメッセージ― 我々閣僚及び代表団の長は、2003年3月22日及び23日、第3回世界水フォーラム の機会に日本の京都に結集し、開発資金に関するモンテレイ会議、持続可能な開発に関す る世界首脳会議(WSSD)、国連事務総長の「水、エネルギー、保健、農業、生物多様性」 (WEHAB) イニシアティブ、その他の水関連行事の成果を踏まえ、国連ミレニアム開発目標を含む国 際的に合意された目標や目的を達成するための適切な提言を実施していくとの共通の決意 を表明する。 我々は、ここに、第3回世界水フォーラムからのテーマ毎、地域毎の声明や提言に留意し つつ、以下を宣言する。 [全般的政策] 1.水は、環境十全性を持った持続可能な開発、貧困及び飢餓の撲滅の原動力であり、人 の健康や福祉にとって不可欠なものである。水問題を優先課題とすることは、世界的に喫 緊の必要条件である。行動の第一義的責任は各国にある。国際社会は国際・地域機関とと もに、これを支援すべきである。貧困者及びジェンダーへの十分な配慮とともに、政府に より地方自治体及びコミュニティーの権限強化が促進されるべきである。 2.これまでに行われてきた水資源開発と管理に関する努力を継続し、強化すべき一方、 我々は、この努力を成功させるためには、良いガバナンス、キャパシティ・ビルディング、 及び資金調達が最も重要であることを認識する。この関連で、我々は統合的水資源管理を 促進する。 3.水管理においては、我々は、水政策において貧困配慮及びジェンダーの視点に十分留 1 (仮訳) 意し、便益の共有における衡平の確保に取り組むことにより、家庭及び近隣コミュニティ ーに根ざしたアプローチに一層強い焦点を当てて、良いガバナンスを確保すべきである。 我々は、すべての関係者の参加をさらに促進するとともに、すべての行動における透明性 及び説明責任を確保すべきである。 4.我々は、長期的に、国際社会からの技術的及びその他の支援によって人々及び組織の 能力を強化することを約束している。これには、とりわけ、成果を計測し、監視する能力、 また、地域の条件に即した革新的なアプローチ、最善の慣行、情報、知識及び経験を共有 する能力が含まれなければならない。 5.資金的ニーズに取り組むのは我々全員の課題である。我々は、資金の投入を促がす環 境づくりのために行動しなければならない。我々は、水問題の中での優先課題を特定し、 それを貧困削減戦略ペーパ(PRSP)を含む国家開発計画/持続可能な開発のための戦略に 反映すべきである。資金調達は、地域の風土、環境、社会の状況に適した費用回収アプロ ーチ及び「汚染者負担」の原則を採用しながら、貧困者に十分配慮しつつ、行われるべき である。官民及び国内・国際の全ての資金源は、最も効率的かつ効果的な方法で動員され、 活用されなければならない。我々は、水施設への資金調達に関する世界パネルの報告に留 意する。 6.我々は、国家の政策と優先度に沿った形で、民間部門の参加を含むすべての資金調達 手段を探求すべきである。我々は、異なる関係者が関与する官民パートナーシップという 新しいメカニズムを特定し、開発する。その際、貧困者の利益の保護を特に強調しつつ、 公益を保護するために必要な公的な管理と法的な枠組みを確保する。 7.水を巡る状況は地域毎に異なっているので、我々は、アフリカ開発のための新パート ナーシップ(NEPAD)を促進するアフリカ水閣僚会議(AMCOW)の構想、中米統合機構(SICA)、 及び後発開発途上国(LDCs)を優遇する行動の計画の実施等の、既存の地域的、準地域的 2 (仮訳) な努力を支持する。我々は、開発途上にある島嶼国特有の水資源の脆弱性を認識し、小島 嶼諸国における水及び気候に関するカリブ・太平洋共同行動プログラムのような特定の協 働計画を支持する。 8.我々は、各国が、必要に応じ適切な国家指標を開発しつつ、地方、流域、及び国家レ ベルでの点検と評価の制度をより良く協調させる必要性を確認する。我々は、国連が、特 に持続可能な開発に関する委員会を通じて、透明かつ協調的な形で、主導的役割を担い、 水部門に関与する他の機関と協調して作業することを要請する。我々は、経済協力開発機 構(OECD)や他の機関が、水関連分野における援助活動を定期的に国際社会に報告する意 向を持っていることを歓迎する。水問題に関する進捗をたどる方策は、既存の仕組みや、 各国、関連国連機関、地域開発銀行、及び市民社会組織を含む他の関係者からの情報を踏 まえることにより有用な形で探求され得る。 9. 我々は、情報を共有し、協力を推進するために、 「水行動集」をフォローアップし、 各国及び国際機関が水関連問題について計画している行動と、実行した行動を公表する新 しいウェブサイトのネットワークの設立についての提案を歓迎する。 [水資源管理と便益の共有] 10.我々は、2005年までに統合的水資源管理及び水効率化の計画を策定することを 目標としており、開発途上国、特に後発開発途上国、及び市場経済移行国に対し、そのた めの道具や追加的に必要な支援を提供することにより、支援する。この関連においても、 我々は、地域開発銀行がこれを促進する役割を担うことを奨励する。この目的のため、我々 は、関心を有する民間のドナーや市民社会組織を含む全ての関係者がこのプロセスに参加 することを慫慂する。 11.沿川諸国間で、国境を越える及び国境上の水路における協力が、持続可能な水管理 や相互利益に貢献することを認識し、我々は、これらの国に対し、このような協力を促進 3 (仮訳) することを奨励する。 12.我々は、気候変動の影響を含む地球規模の水循環の予測及び観測に関するさらなる 科学的研究を推進するとともに、この貴重なデータを世界中で共有できる情報システムを 発展させる。 13.我々は、水配給システムの無駄を減らす措置や他の水需要管理措置を、需要を満た す費用効果的な方法として、促進する。 14.我々は、海水の淡水化、水のリサイクル、ウォーターハーベスト等の革新的で環境 にとって健全な技術を推進することにより、非在来型の水資源を開発し導入するべく努力 する。 15. 我々は、水力発電を再生可能かつクリーンなエネルギー源の一つとして認識し、水 力発電の可能性については、環境的に持続可能で社会的に衡平な形で実現されるべきであ ると認識する。 [安全な飲料水と衛生] 16.2015年までに安全な飲料水を利用できない人口の割合を半減させるという国連 ミレニアム開発目標(MDGs)に設定された目標と、2015年までに基礎的な衛生施設 を利用できない人口の割合を半減させるというWSSDの実施計画文書に設定された目標 を達成するには、水供給及び衛生施設に対し莫大な投資が必要である。我々は、各国がこ れらの目標を達成するための戦略を策定するように呼びかける。我々は、公的部門、民間 部門双方において、財政的及び技術的資源を動員するための集団的努力を増加させる。 17.我々は、水供給と衛生施設のサービスの短期的な改善とともに、長期にわたって費 用効果の高いインフラ投資、健全な運営及び維持管理を行うことを目的として、都市部及 4 (仮訳) び農村部において各々の地域の事情、管理能力に即した形で、水供給及び衛生施設の改善 に取り組む。そのような取組みにおいて、我々は、貧困者の安全な飲料水及び衛生施設へ のアクセスを向上させる。 18.家庭レベルでの手洗いに始まる基礎的な衛生習慣が奨励されるとともに、技術的突 破口、特に安全な飲料水と基本的な衛生施設の供給において日常生活に適した効率的かつ 低コスト技術の開発及び実用化を促進するための強力な取り組みが始められるべきである。 我々は、革新的技術が地域に根付くよう研究を奨励する。 [食料と農村開発のための水] 19.水は、食料安全保障を向上させ、貧困を撲滅するための広範な農業・農村開発のた めに必要不可欠である。水は、食料生産、経済成長、環境の持続性を含む多面的な役割を 引き続き担っていくべきである。我々は、限られた淡水資源及び環境に対する圧力が増大 しつつあることを懸念する。世界には多様な農業形態や農業経済のあり方が発展してきた ことを踏まえ、我々は、持続的ではない水管理を削減し、農業用水の効率性改善のために あらゆる努力を行うべきである。 20.効果的かつ衡平な水利用と管理を通じ、また、必要な地域にかんがいを拡大しつつ、 我々は、近隣コミュニティーベースの開発を促進する。これは、農村地域にて収入をもた らす活動や機会をつくり、貧困撲滅に資するべきものである。 21.我々は、参加型かんがい水管理、既存水利施設の更新と近代化、ウォーターハーベ スト、節水型/耐かん性作物品種、水の貯留、優良な営農方式の普及を含む、需要主導型 の水管理手段として、農業用水管理の漸進的な向上のための革新的で戦略的な投資、研究 及び開発と国際協力を奨励する。 22.内水面漁業は主要な食料源であり、淡水魚生産は、河川における水質及び水量の改 5 (仮訳) 善及び産卵場所の保護や再生に向けた努力を強化することにより取り組まれるべきである。 [水質汚濁防止と生態系の保全] 23.我々は、健康と環境への害を減じるとともに、生態系を保護するために、外来種の 管理を含め、水質汚濁防止を強化する必要性を認識する。我々は、水質汚濁と水資源の非 持続可能な利用を避けるため、伝統的な水に関する知恵の存在を認識するとともに、子供 に対しても含め、広報と教育を行うことにより、流域での人間活動が水循環系全体に与え る正と負の影響への自覚の喚起を推進する。 24.良質な水の持続可能な供給を確保するため、我々は、河川、湿地、森林、土壌等の ような水を自然に保持、浸透、貯留、放出する生態系を保護し、持続可能な方法で利用す べきである。 25.我々は、水資源の保護及び持続可能な利用並びに水質汚濁防止のための適切な法的 枠組みについて検討し、必要な場合には、これを確立することを各国に促す。 26.流域及び森林の劣化が急速に進んでいることを踏まえ、我々は、緑化、持続可能な 森林経営、荒廃した土地や湿地の再生、及び生物多様性の保全を促進するためのプログラ ムを通して、森林減少、砂漠化、土壌劣化に立ち向かうための努力を集中する。 [災害軽減と危機管理] 27.洪水と干ばつの影響は深刻さを増していることから、環境及び内陸水運を含む様々 な水利用との調和を図りつつ、包括的アプローチが必要となっている。包括的なアプロー チには、貯水池や堤防といった従来の構造物による対策を強化すること、土地利用規制・ 指導、災害予警報システム、国家危機管理システムといった非構造物による対策を含む。 28.我々は、必要に応じて、データ、情報、知識・経験の共有と交換を、国際的なレベ 6 (仮訳) ルで強化することを通して、災害によって引き起こされる被害を最小限にするために協力 する。我々は、脆弱性を減じるために、水管理者に対し最善の予測、予報手段を提供でき るよう、科学者、水管理者及び関係者が引き続き協働することを奨励する。 29.最後に、我々は、この閣僚級国際会議とフォーラムの開催について日本政府及び日 本の国民に感謝する。 7 プレス・リリース 2003 年 3 月 23 日 16 時 30 分 世界水フォーラム市民ネットワーク 「曖昧なまま終了した第 3 回世界水フォーラム」? 参加者の声はどこに反映されたのか?? 2003 年 3 月 23 日午前 11 時 30 分、第 3 回世界水フォーラム閣僚級会議は「閣僚宣言−琵 琶湖・淀川流域からのメッセージ−」を採択して終了した。この「閣僚宣言」は 3 月 16 日 ∼23 日にかけて開かれた第 3 回世界水フォーラムの 337 もの分科会の成果を受けたものと されているが、NGO の視点から見て、多くの重要な点が抜け落ちており、曲解されている。 何よりも、“議論から行動へ”という第 3 回世界水フォーラムの理念から考えて、この宣言は とても行動志向型とは言えない。 ・ まず、水に関する根本的なコンセンサスが得られていない。すなわち、水は国際共有財・ 公共財であり、生けとし生きるものすべての共有財であることの確認がなされていない。ま た、水は基本的人権であり、すべての人々に保障されるべきという国連の場で確認された根 本原則さえ確認されていない。 名の下に、民間からの投資を奨励する方向性が強調されていることを懸念する。過去数年間 に、水道事業を民営化した国々で、企業参入により貧困層が水へのアクセスを一層困難にさ れてきている点について検証する視点を欠いている点は、 「水を貧困及び飢餓の撲滅の原動 力」としている宣言内容と矛盾しているとの懸念を強く感じざるを得ない。 ・ 2005 年までに統合的水資源管理及び水効率化の計画を策定することについて、拙速なゆ えに地域住民主体での策定が行われないのではないかとの強い懸念が NGO の間ではある。 また、この促進を地域開発銀行が担うことをうたっているが、水利権の市場化を前提とした 水効率化を推進してきた地域開発銀行がこのような役割を担うべきではない。 ・ 官民の連携とともに今回のフォーラムにおいて議論となったダムなどの大規模開発に関 して、環境や人権などへの影響に対する配慮が非常に弱い表現にとどまっていることに落胆 せざるを得ない。新たな資金調達が新たな大規模開発に繋がることに大いに懸念する。 ・ 気候変動と水との関係について、多くの島嶼国から強い表現を求める声が挙がっていた にも関わらず、気候変動への取り組みに前向きでない国に配慮して曖昧な表現に終わってし まっている。 ・ 水は国際共有財であり、そのため商品として扱われるべきではなく、WTO(世界貿易機 関)と GATS(サービス貿易に関する一般協定)の交渉対象として水及び水サービスを扱う べきではない。 ・ 安全な飲料水と衛生に関しては、NGO の試算では ODA、MDBs(多国間開発金融機関) 資金などの公的資金で十分にまかなえる。莫大な投資が必要との閣僚宣言での記述は、とう てい現実的でなく、また、受け入れられるものではない。 ・ 第3回世界水フォーラムにおいて、世界中の数百の NGO から「水施設への資金調達に関 する世界パネルの報告」(いわゆる「カムドシュ・パネル報告」 )を拒絶する意見が表明され たにも関わらず、閣僚宣言に何の法的正当性もないこの「報告」に留意する記述が盛り込ま れている。 ・ 先住民の権利と文化への尊重と敬意について全く言及されておらず、国連人権宣言並び に、先住民に関する多くの国際的合意を反映するものになっていない。 ・ 第三世界において水施設への資金充当を妨げているのは、巨額の債務負担が大きな要因 であり、まず債務削減を実施すべきことが必要である。新たな資金調達がさらなる債務負担 に結びつくことを懸念する。 ・ 今回の閣僚級会合への、世界水会議(WWC) 、グローバル・ウォーター・パートナーシ ップ(GWP)など法的正当性のない団体の参加プロセスが不透明であることが、今回の閣 僚級会合自体の性格を非常に曖昧なものとしてしまっている。 ・ 「官民パートナーシップ」については、第3回世界水フォーラムにおいて反対側、推進 側で物別れに終わったにも関わらず、いくつかの留意点を記しながらとは言え、推進する立 場での記述となっている。全く対立した意見について、一方の意見を主として盛り込むこと によって、第3回世界水フォーラムでの真摯な議論の成果が蔑ろにされてしまっている。 ・ 全体を通して、資金調達に重点が置かれた内容となっており、官民パートナーシップの 深刻化する世界の水問題の解決に向けては、水問題で困窮する当事者が参加して解決策を 策定することが重要である。第 3 回世界水フォーラムでは、分科会ベースではそのような試 みがささやかながら行われていた。このような当事者の参加型アプローチを評価しつつ、最 終日に出されたこの宣言に対し、私たちは遺憾の意を表明する次第である。 2003 年 3 月 23 日 世界水フォーラム市民ネットワーク 参考サイト The 3rd World Water Forum(第3回世界水フォーラム) http://www.world.water-forum3.com/jp/ Water For Life http://www.waterforlife.jp/ 京都新聞 http://www.kyoto-np.co.jp/kp/special/water/water.html 世界水フォーラム市民ネットワーク http://www.jca.apc.org/%7Epfw/ The Council of Canadians(カナダ人評議会) http://www.canad ians.org/
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