科学技術振興機構 中国総合研究交流センター 中国の金融政策と金融改革 獨協大学経済学部 童 適平 [email protected] 2015年2 月12日 1 今日の内容 1.金融政策の概観 マネータリ―ベース供給の要因 国際収支の変化 金融政策の構図 2.金融改革の動きと課題 現行金融政策の問題 金融構造の変化とその背景 金融改革の動き 2 マネタリーベースの供給要因 総資産:外国資産+対政府債権+対預金性銀行債権+その他金融機関債権+対非金融機関債権+その他の資産 総負債:通貨発行+当座預金+債券(中央銀行手形)発行+外国負債+対政府負債+自己資金+その他負債 マネタリーベース 総資産=総負債 マネタリーベース=外国資産(純)+対政府債権(純)+対預金性銀行債権+その他金融機関債権+対非金融機関債権 +その他の資産(純)-債券(中央銀行手形)発行 1(100%)=「外国資産(純)+対政府債権(純)+対預金性銀行債権+その他金融機関債権+対非金融機関債権+その 他の資産(純)-債券(中央銀行手形)発行」/マネタリーベース 中国人民銀行バランスシート(2002.01~2014.12) 140 % 120 100 80 外国資産(純) 対その他金融機関債権 その他の資産(純) 対政府債権(純) 60 40 対預金性銀行債権 対非金融機関債権 手形発行 20 0 -20 -40 3 -60 出所:人民銀行ウェブサイト 300000 マネタリーベースと外国資産,手形発行 (2002.01~2014.12) 億元 250000 外為資産の推移 270000 (2009.01~2014.12) 250000 200000 230000 マネタリーバース 150000 外国資産(純) 210000 手形発行 100000 190000 50000 170000 4800 3800 2800 2014.09 2014.05 10% 経常収支黒字額とその対GDP比 (1990~2014) 8% 経常収支黒字額(左目盛) 経常収支黒字/GDP 6% 出所:世界経済のネタ帳 4% 1800 2% 800 -200 2014.01 2013.09 2013.05 2013.01 2012.09 2012.05 2012.01 2011.09 2011.05 2011.01 2010.09 2010.05 2010.01 2009.09 2009.01 億米ドル -50000 2009.05 150000 0 0% 4 -2% 金融政策の構図 手段 金利 操作目標 短期金利 窓口 指導 市場金利 マネーストック 準備率 公開市場 オペ 中間目標 当座預金 銀行貸出 最終目標 雇用安定 経済成長 通貨価値安定 国際収支 社会融資 外為 買い 介入 為替レート 中国人民銀行副総裁:中国人民銀行は 外為市場での買い介入常態化から脱出 5 2006*1 2006*3 2007*1 2007*3 2008.1 3 5 7 9 11 2009.1 3 5 7 9 11 2010.1 3 5 7 9 11 2011.1 3 5 7 9 11 2012.1 3 5 7 9 11 2013.1 3 5 7 9 11 2014.1 3 5 7 9 -2 70 50 40 30 1980.01 1982.01 1985.08 1990.04 1993.07 1996.08 1998.12 2001,03 2001,07 2001,11 2002,03 2002,07 2002,11 2003,03 2003,07 2003,11 2004.03 2004.07 2004.11 2005.03 2005.07 2005.11 2006.03 2006.07 2006.11 2007.03 2007.07 2007.11 2008.03 2008.07 2008.11 2009.02 2009.06 2009.10 2010.02 2010.06 2010.10 2011.02 2011.06 2011.10 2012.02 2012.06 2012.10 2013.02 2013.06 2013.10 2014.02 2014.06 2014.10 % 18 基準金利とCPIの推移 (1980.01~2014.12) 80 % 銀行貸出金利の分布 % CPI 預金(1年定期) 貸出(1年定期) 13 8 3 % (2006*1~2014.09) 10 0 8 7.5 60 7 優遇金利 基準金利 6.5 上乗せ金利 貸出基準金利(右目盛) 6 20 5.5 5 6 2012年6月8日から預金金利の上限は基準金利の1.1倍、貸出金利の下限は基準 金利の0.8倍;2013年7月21日から貸出金利の下限規制が撤廃;2014年11月22 18 14 10 6 22 準備金率1 準備金率2 (2004.4.25 ~) 預金準備率の推移 2014.10 2014.07 2014.04 2014.01 2013.1 2013.07 2013.04 2013.01 2012.1 2012.07 2012.04 2012.01 2011.10 2011.07 2011.04 2011.01 2010.10 2010.07 2010.04 2010.01 2009.10 2009.07 2009.04 2009.01 通貨発行高(左目盛) マネタリーベース前年比 2008.10 2008.07 2008.04 2008.01 2007.10 2007.07 2007.04 2007.01 2006.10 250000 2006.07 2006.04 2006.01 300000 マネタリーベースとその増加率(2006.01~2014.12) 当座預金(左目盛) 当座預金前年比 70% 60% 200000 50% 40% 150000 30% 100000 20% 50000 10% 0 0% 当座預金残高は量的緩 和の目標として使われ ることもあるが、 中国ではマネーストッ クを調節する目標とし て使われる: (準備率↑→残高↑→ 引締め) 7 預金 貸出 大企業優先 銀行 準備金 規制逃れ 預貸比率 規制回避 準備金 ディスインターメ ディエーション 中央銀行 大企業 中小企業 8 2014.03 2013.09 2013.03 2012.09 2012.03 2011.09 2011.03 2010.09 2010.03 2009.09 2009.03 2008.09 2008.03 2007.09 2007.03 5% 2006.09 2006.03 2005.09 2005.03 30% 2004.09 2004.03 2003.09 2003.03 2002.09 2002.03 大型銀行所有中央銀行資産比率 (2002.03~2014.06) 25% (準備資産+対中央銀行債権)/総資産 20% 準備資産/総資産 15% 10% 対中央銀行債権/総資産 0% 社会融資額内訳の推移 100% (2002~2014) 90% 80% 70% 60% 50% 40% 30% 20% 10% 0% -10% 2002 2003 貸出 億元 180000 160000 140000 2004 2005 外貨建て貸出 2006 委託貸付 金融機関新規貸出と社会融資総額 2007 2008 2009 信託貸付 2010 2011 未割引銀行引受手形 億元 新規貸出 社会融資 90000 80000 70000 社会融資-新規貸出(右目盛) 120000 60000 100000 50000 80000 40000 60000 30000 40000 20000 20000 10000 0 0 2002 2003 2004 2005 2006 2007 2008 2009 2010 2011 2012 2013 2014 2012 社債発行 2013 2014 株式発行 社会融資額における貸出 比率の低下(社会融資額 -貸出=拡大)は政策効 果の低下につながる。 2002年以降、社会融資額 が公表され、中間目標の 参考として使用される。 9 新規貸出とM2前年比など(2000~2014) 35% 億元 新規貸出(右目盛) GDP前年比 M2前年比 貸出前年比 30% 25% 120000 100000 80000 銀行融資の激変は“影 の銀行”資金の需要を 増加させた。 20% 60000 15% 40000 10% 20000 5% 0 0% 2000 2001 2002 20032004 2005 2006 2007 2008 2009 2010 2011 2012 2013 2014 50000 億元 40000 銀行預金残高(前月比) (2007.09~2014.12) 30000 20000 預貸比率規制回避のた めに、預金残高は四半 期ごとに期初下落、期 末上昇の現象が出現。 10000 -10000 -20000 2007.09 2007.11 2008.01 2008.03 2008.05 2008.07 2008.09 2008.11 2009.01 2009.03 2009.05 2009.07 2009.09 2009.11 2010.01 2010.03 2010.05 2010.07 2010.09 2010.11 2011.01 2011.03 2011.05 2011.07 2011.09 2011.11 2012.01 2012.03 2012.05 2012.07 2012.09 2012.11 2013.01 2013.03 2013.05 2013.07 2013.09 2013.11 2014.01 2014.03 2014.05 2014.07 2014.09 2014.11 0 10 家計の金融資産運用(1992~) 100% その他 80% 保険 証券投資預り金 60% 投資信託 40% 株式 債券 20% 預金 0% 1992 1993 1994 1995 1996 1997 1998 1999 2000 2001 2002 2003 2004 2005 2006 2007 2008 2009 2010 2011 2012 通貨 -20% 100% その他 保険 80% 投資信託 ディスインターメディ エーションの動きが常 に存在 理財 60% 証券投資預かり金 投資信託 40% 株式 債券 20% 預金 現金 0% 2004 2005 2006 2007 2008 2009 2010 委託貸付(銀行),集合信 託投資(信託会社),受託 投資(証券会社),分配型 保険(保険会社),証券投 資信託(資産管理会社) 11 理財商品償還の硬直性 金融構造変化の背景 1990年代国 有商業銀行の 不良債権問題 • 銀行リスクの分散 • 低金利政策 直接金融比率 の引上げ WTO加盟に よる銀行サー ビスの開放 オンバランス業務から オフバランス業務へ (利ザヤ収入依存から 脱却) 金利自由化 業際規制緩和 世界金融危機 における政府 の対応 09年銀行貸出急増 とその後の調整 理財 商品 12 信託業総資産額の内訳 100% 億元 140000 信託業総資産額の推移 139799.1 90% 120000 80% その他 70% 工商企業 60% 金融機関 50% 債券 40% 投資信託 30% 20% 10% 74705.55 60000 株式 40000 不動産 20000 0 2010 保険業, 10.16 証券業, 4.09 80000 インフラ 0% 2011 2012 金融業総資産額 信託業, 13.98 2013 2014 万億元 109071.1 1 100000 48114.38 30404.55 20200 12200 2008 2009 2010 2011 2012 2013 2014 金融業分業体制の下、信託業が短期間 で銀行業に次ぐ金融業に急成長した。 信託資金の直接運用先は、工商企業、 金融機関、インフラ建設、不動産開発 の順になっているが、間接の運用先は 不明である。 商業銀行, 130.8017 13 金融改革の動き 2013年1月18日から短期流動性操作手段(Short-term Liquidity Operations,SLO)を導入。 2013年に常設貸付制度(Standing Lending Facility,SLF)(政策 銀行と全国規模の商業銀行を対象に期限1-3か月)を導入。 2014年1月20日から北京,江蘇省,山東省,広東省,河北省,山西省, 浙江省,吉林省,河南省と深圳市で中小金融機関を対象にSLFを 拡大。 2014年9月に中期貸付制度(Medium-term Lending Facility, MLF)を導入。 『予算法』を改正(地方債発行解禁) 『預金保険条例(意見版)』を配布 預貸比率計上範囲を改正 14 金融改革の課題 資本移動の自由化(変動相場制への移行) 金利自由化 金利自由化のネック は金利に対する投資 の非弾力性である 予算制約のソフトな 国有企業と地方政府 の改革が不可欠 15 ご清聴ありがとうございました! 16
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