※収録楽曲について(三枝伸太郎⽒のライナーノーツより) 三枝伸太郎 Orquesta de la Esperanza の記念すべきファースト・アルバムをお届けする。 録⾳は 2015.5.29-30、相模湖交流センターのホールにて⾏われた。レコーディングエンジニア⻑江和哉⽒のコ ン セプトにより、ホールのアコースティックを利⽤しながら、楽器の直接⾳と間接⾳をほどよく捉えた、メイン マイクでの 印象を中⼼とする録⾳となっており、⾮常にリアリティのある⾳で録⾳されている(後略)。 1、Spring is coming Sextet 7:00 春らしい日というのは本当に短く、冬はなかなか去っていかないし夏はあっという間に来るのである。しかしその日、 ⾮常にやわらかい雨が降っていて、風のにおいがそれまでと違っていて、冬と夏の隙間にあってぽっかりと、季節の 始まりと終わりをすべて含んだようなその日、そこに何とも言えない印象を感じて、それがこの曲のメロディになった。 2、Peregrinacion Octet 6:19 タイトルはスペイン語で「巡礼」。旅人が巡礼の旅でのさまざまな体験を経て、全く別の、より高次の存在へと少 しずつ変容していくイメージが楽曲の基となっている。ピアソラ以降のモダンタンゴのスタイルで書かれ、ジュンバや シン コパといったアルゼンチンタンゴ特有のリズム語法が現代的な書法の中で様々に変奏され、別のものに変容 してい く。 3~7組曲「希望の季節」 3.11 の震災のあと、春の終わりから夏までを描写したもの。その年の、明らかに今までと違ってしまった季節の景 色 の中で、いくつかのエピソードがメモランダムのように重ねられていく。死と再生。しかし今までとは違う姿で。 津波 の中、名蕉高田松原の七万本の松の中で一本だけ奇跡的に流されなかったが、海水によって枯れてしま ったため 中に鉄骨を入れてモニュメントとして立ち続けているという「奇跡の一本松」、クジラの腹の 中から戻って きたと きには人間になっている、というピノキオの話(その原型として旧約聖書の中のヨナのエピソードがある)、ま た僕 個人のエピソードとして祖父の死、など。 Overture Pf Solo 2:48 桜の終わり Octet 6:51 夏の二つの横顔 1 Octet 7:49 夏の二つの横顔 2 Octet 6:14 潮風とパレード 7:33 Octet 8、「忘れないと誓ったぼくがいた」 Sextet + Vocal 4:25 堀江慶監督、村上虹郎&早見あかり主演の同タイトルの映画のサウンドトラックより。数奇な運命と向き合って いく二人が、物語が佳境に入っていく後半に差し掛かる直前、スマートフォンでお互いを動画で撮影しながらじ ゃれ 合う、ある美しいシーンのために書かれたもの。 9、瞳の中 の海 Sextet 3:50 Viorin 沖増菜摘の生まれ故郷である尾道の美しい風景を描写した曲。Carlos Garcia の 「Al Maestro Con Nostalgia」のようなスタイルの曲を書きたい、と何となく思っていた記憶がある。 10、Libertango Octet 6:02 本アルバムの唯一のカバー曲。このバンドのバージョンでは、編成的にビブラフォンが加わってより攻めた演奏にな っている。中間部分、突然ギアが入ったように加速していく Viola 吉田篤貴のメロディも素晴らしい。 11、At the sky in moscow Octet 12:44 ドイツに旅⾏に⾏った際、トランジットのモスクワ空港からみた夕焼けが⾮常に印象的で、帰国してから書き上げ た曲。作曲した当時はいわゆるコンテンポラリー・ジャズオーケストラで試みられているような実験をタンゴに持ち 込め ないか、という個人的な課題があった。中間部分のバンドネオンの⻑大なソロ、実はその伴奏パートが⾮常 に難し く、ほぼ延々と 4 つ以上のグループに分かれたポリリズムになっていて、匙を投げずに向き合ってくれたメンバ ーに感 謝。
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