誰でもがしてしまいそうな行為に警鐘

BEIビジネス倫理研究所/2009
誰でもがしてしまいそうな行為に警鐘
-結果としての非倫理的行為-
BEIビジネス倫理研究所
代表
山口謙吉
○頑張る社員への警告
社員が会社で頑張ることは誰も否定はしない。だが、頑張りすぎて過度の残業から身体を悪くし
たり、過労死につながったりしてはならない。何ごとにも限度や制約があるわけで、会社としてこの
ような環境を作ってはいけないのはもちろん、見過ごすことも絶対に許されない。
行き過ぎた言動からは不測の事 態 が発生する可能 性が高 いものだ。仕 事に取り組 む中で、自
らの意思に関係なく非倫理的な行為が、結果的に発生してしまうことは、十分にある。会社の方針
や取り組み姿勢などが大きく影響していることはいうまでもない。
○セクシュアル・ハラスメントの収拾で
営業 所 内で発生したセクハラを所 長の責 任 感 から内々で解決しようとしたが失 敗 し、全社 的な
問題へと発展させてしまった例。所長は被害者の女性から相談を受け、内容について話しを聞き、
早々加害者に事実関係などの確認と説明を求めた。内容的に重大でもなさそうなので、悪気があ
ったわけではないし許してあげてはどうかと被害者に話した。これが加害者を擁護するかのように
受け取られ、事態をこじらせてしまった。
二人は一緒に数年仕事をしており、気心も知れた同士で普段は問題ない付き合いをしていたので、
一般的なトラブルとして軽く見てしまったようだ。所長のミスは、①セクハラという特殊な事態への認
識不足、②仕事優先の収拾姿勢、③結果として加害者を擁護したことなどが考えられ、初期対応
ミスが問題を大きくした。
さらに、所長の上司が収拾に乗り出したが、被害 者との面談で、所長の顔を立てて矛を収めてほ
しいなどと話したことで、所長を擁護するように見えたことから、被害者の「人への不信」が「会社へ
の不 信」へと発 展し、さらにもつれさせてしまった。なんとか仕事に差し障 りのないように事態を収
拾しようと取り組んだが、その結果は問題を大きくしただけだった。
○合法的な経費削減と信じて
障害者団体向け郵便料金割引制度を悪用した郵便法違反事件で、広告代理店や一部上場企
業、日本郵便の幹部社員、通販大手の経営者、障害者団体の代表、厚労省の局長、係長などが
相次いで逮捕される事態が発生した。免れた郵便料金の総額は百億円を超えると見られている。
-1-
Copyright (c) BEI Business Ethics Institute 2009. All rights reserved
BEIビジネス倫理研究所/2009
DMを発注した各社は問題の広告代理店から通信費の大幅削減(DM一通八円)につながる提案
を違法性がないといわれ、そう信じて契約をしている。ある企業の広報部などは、顧客に障害者団
体の定期刊行物を読ませることは社会貢献になるとのコメントを出していたようだ。
DM発注会社の担当社員の声までは報道されていないようだが、善意に考えれば、今の時代そこ
には大幅な通信費の削減という提案内容を容易に信じたい事情が強くあったかもしれない。擁護
しているわけではない。会社の決定といわず、制度利用の合法性の検証も自分の仕事として実行
する姿勢があってもいいはずだ。
○会社制度に忠実な業務遂行で
①マクドナルド現役店長 による残業代訴訟「名ばかり管理職」で店長 が勝訴し、会社が制度の見
直しを余儀なくされたのは昨年の今頃だ。流通業界、外食産業では多くの企業が導入しており、
大きな波紋が広がった。
②人 材 派 遣 目 的の子 会 社を設 立し、グループ会 社などへ安 い給 料で正 社 員と同じ仕 事をさせる
人員を派遣し、正社員の代替としないとする派遣法の基本理念などに反するような状況が起き
ている。
③人事関係者は、人員整理の会社方針に従うため、社内でその活動を忠実に実施する。その結
果、元社員から会社都合退職なのに自己都合退職あつかいにされたとして、訴訟を起こされる
ケースも発生している。
これらの事例は、いずれも当たり前の施策として認識され、実施されていたことだろう。社員らは
なんら疑うことなく、ひとつの業務としてその意思に関係なく、取り組んできた結果がこれということ
だ。つまり、ひとつ視点を間違うとそれは利益追求が優先された施策となってきてしまうということで、
経営陣は、いまのわが社の諸施策は経営理念、企業倫理に反していないのか、もう一度よく検証
する必要があるということだ。
(了)
-2-
Copyright (c) BEI Business Ethics Institute 2009. All rights reserved