社会医療法人北楡会 札幌北楡病院 久木田和丘 わ

「透析 、近年の進歩 とわれわれの関わ り」
社会医療法人北楡会 札幌北楡病院 久木田和丘
われわれの生体の営みに体液が重要であ る と説いていたのは 、 ヒ ポ ク ラ テ スであ り
紀元前の こ と であ る 。 そ し て今 、 体液治療 と し て血液浄化法が広 く 行われてお り透析
療法はその中で も最 も実用化 された もの と いえ る 。 透析の創生期では 1 9 1 3 年 、米国
の A b el が抗凝固剤 と し て ヒ ル ジ ン を使 っ たウサギの人工腎臓装置の展示を行 っ てい
た 。 今か ら ち ょ う ど 1 0 0 年前の事であ る 。 それ以前の 1 8 5 4 年にス コ ッ ト ラ ン ド の
Gra ha m は牛の膀胱膜で浸透圧 と半透膜の発見を し て お り 、 そ れが今で も透析の原
理 と し て応用 されてい る 。 Kolf f が急性腎不全に対 し て回転式 ド ラ ム式人工腎臓を用いて治療に成功 し たのは 、
1 9 4 5 年であ っ た 。 当時はバスキ ュ ラーア ク セス ( VA) と し ては長期に使用する もの
がな く 、 手術に よ り四肢の適当な動 ・ 静脈 を露出 し カ テーテルを留置し て施行する も
のであ り 、 長期の治療は不可能であ っ た 。 その後 1 5 年経過 し た 1 9 6 0 年 、 Q uinto n
と Scrib n e r に よ り 長期に VA と し て使用可能な外シ ャ ン ト が発表 された 。 こ れに よ
り 慢性腎不全に対す る長期透析が可能 と な っ た 。 1 9 6 1 年には Shal d o n は硬性では
あ るが カ テーテルを大腿静脈に留置 し血液透析を行 った 。 これは近年のポ リウ レ タ ン
やシ リ コ ン製の軟性ダブルカ テーテルの開発につなが った 。 外 シ ャ ン ト は血栓を形成
し やすのが欠点であ っ たが 、 1 9 6 6 年にその欠点を克服 し た Brescia と Ci min o の内
シ ャ ン ト が発表 され現在の血液透析療法の隆盛を招いた 。
私が透析 を学ば し て い た だ い たのは 3 5 年ほど前か ら で あ り 、 ダ イ ア ラ イ ザーが
や っ とデ ィ ス ポーザブルに な る頃 であ る 。 本邦 で も バ スキ ュ ラーア ク セ ス (VA) が外
シ ャ ン ト か ら内シ ャ ン ト へ転換する頃であ っ た 。 し か し患者 さんは悲惨な状況で今の
よ う な社会復帰は望みよ う も な く 、 何 とか生 き延びるのが精一杯であ った 。 その後画
期的 な薬剤の出現で貧血が治療可能 と な り 、 ま た 活性型ビ タ ミ ン D も 使用可能 と
な っ た 。 VA で も 自 己 血 管 の み で は VA と し て 対 処 で き な い 症 例 に 対 し て は
Ex p a n d e d-Polytetraf l u o r o ethylene 製によ る人工血管あるいはポ リウ レ タ ン製また
Polyolef i n-Elasto m er-Polyester グ ラ フ ト も 使用 さ れ る よ う に な っ た 。 一方 では動
脈表在化によ る VA も 使われ多様化にある 。 現在で も人工血管静脈吻合部狭窄予防や
ダブルルー メ ン カ テーテルの閉塞予防 、在宅透析用 VA の開発等が進め られている 。
透析では日常管理が重要であ るが 、 こ の 4 0 年ほどで も合併症の治療や長期予後改
善のための薬剤の出現 、透析水やダイ ア ラ イザーなど透析環境の整備が著明に発展 し
た。
過去をふ りかえ り 、 現在 と今後の課題について も言及 し たい 。