リーダーを育成する:勝つ企業はどうやって勝ち続けるのか

Sloan Management Review Fall 2000
リーダーを育成する:勝つ企業はどうやって勝ち続けるのか ロバート・M・ファルマー(Robert M. Fulmer)1 フィリップ・A・ギブス(Philip A. Gibbs)2 マーシャル・ゴールドスミス(Marshall Goldsmith)3 どのようにして、ジェネラル・エレクトリック社、ヒューレット・パッカード社、ジョンソン
&ジョンソン社は、昇進をするリーダーを切切れ⽬目なく輩出し続けているのか。リーダーシップ
開発における五つの基本的要件に注⽬目する。 昨年年の 6 ⽉月、ビジネスの世界が期待して⾒見見守ったように、ジェネラル・エレクトリック社(GE)
は三名の主だったエグゼクティブを昇進させた。彼らは、デビッド・カルホーン(David Calhoun)、
ジョセフ・ホーガン(Joseph Hogan)、ジョン・ライス(John Rice)の三名である。各⼈人は、CEO
ジャック・ウェルチ(Jack Welch)を引き継ぐ三名の潜在的な候補者に報告をする。その三名と
は、ジェームス・マックナニー(James McNerney)、ジェフリー・イメルト(Jeffrey Immelt)、
ロバート・ナルデリ(Robert Nardelli)である。従って、後者のうちの⼀一⼈人が後にウェルチのオ
フィスに移るなら、その他の熟練した GE のプロフェッショナルは、⾃自分の役⽬目を担う準備をす
るだろう。GE のリーダーたちはどこから来たのか。彼らは⼀一晩のうちに地球の外からひょっこ
り現れたのではない。何年年もかけて、会社はリーダーシップの才能溢れる⼈人材の継続的な源泉
を発展させるのに懸命に取組んだ。それは翌年年に控えたウェルチの引退に備えるだけでなく、
全ての組織レベルを強いリーダーたちで強化するためである。ロナルド・レーガン(Ronald Regan)が GE の代弁者だった時、同社のスローガンは「進歩は我々の最も重要な製品である」
だった。今⽇日のマントラは、「リーダーは我々の最も重要な製品である」になるだろう。 学習し続けるリーダーは、持続可能な競争優位性の究極的な源泉になる。その理理解を持って、
多くの企業がリーダーシップ開発に投資している(主だったエグゼクティブがリーダーシッ
プ・スキルを学ぶのを⼿手助けするプログラム)。1993 年年前半にビジネス・ウィークは、管理理職
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ロバート・M・ファルマーは、ペッパーダイン⼤大学のグラジティオ経営⼤大学院の教授。 2
フィリップ・A・ギブスは、ウイリアム・アンド・マリー・カレッジの客員教授で、戦略略経営と企業買収を教える。 3
マーシャル・ゴールドスミスは、ケルティ・ゴールドスミスの共同設⽴立立者。 1
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が彼らを昇進させ、⾃自らの事業領領域を率率率いるのを可能にする思考プロセスと企業特有のスキル
の開発を⼿手助けするために年年間に 170 億ドルが使われたと⾒見見積もった。トレーニング・マガジ
ンは、1998 年年に⽶米国の企業は 607 億ドルをトレーニングに使ったと⾒見見積もっている。しかし、
⽀支出は唯⼀一のコミットメントではない。世界規模のエグゼクティブは、かなりの量量の時間を個
⼈人的に未来のリーダーを指導し・助⾔言することに投資している。彼らにとって、リーダーシッ
プ開発は贅沢品ではなく、戦略略的に必要なものだ。 どんなプロセスが管理理職を戦略略⾏行行動の準備が整っている強⼒力力なリーダーに変容させるのか。最
⾼高のリーダーシップ開発組織がどのように世界レベルのプログラムを設計、管理理、実施してい
るのか。 1998 年年 1 ⽉月、⾮非営利利のリサーチ集団でヒューストンを本拠地にするアメリカ⽣生産性・品質セン
ター(American Productivity and Quality Center)、バージニア州アレキサンドリアを本拠地
にする⽶米国研修・開発協会(American Society for Training and Development)、それに作家
のロバート・ファルマー(Robert Fulmer)らが、答えを⾒見見つけるために取り組みを始めた。その
グループは、リーダーシップ開発のベスト・プラクティスを調査するための研究を開発した。
1999 年年に、彼らは組織の全てのレベルでのリーダー開発の課題を調査するためにその研究を拡
張した。 35 の組織がスポンサーとして参加した(「ベンチマーキング⼿手法」を参照)。各組織はプランニ
ング・セッションに代表者を派遣し、データ収集調査を完了了し、現場でのインタビューに出席
もしくは主催した(「研究スポンサー」を参照)。その連合体は、強⼒力力かつ⾰革新的なリーダーシ
ップ開発プロセスをもつ企業として六六社を特定した。これらの六六社は、ベスト・プラクティス・
パートナーとして研究に参加することを同意した(「そして、勝者は…ベスト・プラクティス・
パートナー組織」を参照)。それらの企業は、リーダーの開発へのコミットメントを⽰示したとい
う理理由で選ばれた。しかし、アプローチ、重視するもの、⽂文化では異異なっていた。 戦略略的視点 最も重要な点:ベスト・プラクティス・パートナーは、リーダーシップ開発とビジネス戦略略を
密接に結びつけており、財務的なリソースをそれに投資していると報告した。CEO は教育への
敬意を払ってそのプログラムを⽀支援したのではなく、そのようなプログラムは財務領領域と企業
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戦略略の⼀一致を⽀支援するという確信から⽀支援した。ジョンソン&ジョンソン社は、リーダーシッ
プ開発会議の未来のリーダー演習により期待された品質を反映するために、後継者育成プラン
ニングと業績評価システムを改定した。 ますます、未来のリーダーの開発に焦点をあてたプログラムは、競争優位の源泉と⾒見見られてい
る。GE 社の CEO のジャック・ウェルチは、ニューヨーク州のクロトンビルにある⾃自社のリー
ダーシップ開発期間を「企業⾰革命の⾜足場」と述べている。事実、シックス・シグマ品質改善プ
ログラムや GE 社の新興国経済への進出のような⾰革新的なアイデアは、リーダーシップ開発イベ
ントでのプレゼンテーションからもたらされている。もの凄い成⻑⾧長、世界中での GE 社の従業員
数の削減、1980 年年代と 1990 年年代の⼤大規模な組織の簡素化は、⼤大きな⽂文化シフトを引き起こし
た。管理理階層の減少により、個⼈人は垂直的な昇進が少なくなり、それゆえリーダーになる訓練
の機会も減った。新しいアプローチが求められた。今⽇日、⼈人事部⾨門の「セッション C」ミーティ
ングで、シニア・エグゼクティブは GE 社の主要な社員を評価している。3 ⽉月の第⼀一回ミーティ
ングの後、ニ、三回の追加的なミーティングとまとめのセッションが 6、7 ⽉月に実施され、クロ
トンビルでのエグゼクティブ開発コースに参加する従業員を選び出す。年年度度の終わりに、本社
機能と同様に、企業のリーダーシップ開発が GE 社の戦略略をサポートできたかという点で評価さ
れる。GE 社の最⾼高研修責任者のスティーブ・カー(Steve Kerr)は、冗談めかしてこう⾔言った。
「クロトンビルは GE 社で唯⼀一、予算計上されず、評価されないコストセンターです」。それか
ら彼は真⾯面⽬目にこう付け加えた。
「全員がもし私たちが戦略略的価値を提供できなければどうなる
か知っています」。 ベンチマークキング⼿手法 ベンチマーキングは、この研究の主なリサーチ⼿手法であるが、世界中の⾄至る所のいかなる組織から際⽴立立っ
た実践とプロセスの特定、学習、特定の企業ニーズへの適⽤用を含んでいる。⼈人的学習プロセスをモデル化
する時、それはまた⾮非常に観察に頼っているが、ベンチマーキングは組織が学ぶべきプロセスになる。基
本的な論論理理的根拠は、ベスト・プラクティス事例例からの学習は、その原理理と効果的な実践の詳細を学ぶ最
も効果的な⼿手法であることだ。 フェーズ 1 では、研究を実施したグループはエグゼクティブ開発における主導的な企業を特定するために
⽂文献をレビューした。彼らはマネジメント教育、コンサルティング、ビジネスにおけるオピニオン・リー
ダーと対話した。そして彼らはそれらの組織のリーダーシップ開発サポート、特定の⾰革新的アプローチ、
ベスト・プラクティス・パートナーになる意向などを特定するために様々な⼈人に対してサーベイを実施し
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た。フェーズ 1 の最後に、研究チームは、潜在的なベスト・プラクティス・パートナーの候補リストとス
クリーニング報告書を作成した。スポンサーは、最初のレポートをレビューし、最終的なベスト・プラク
ティス・パートナーを選定し、研究の⽬目的を議論論するために集まった。 フェーズ 2 では、研究スポンサーからの代表者がベスト・プラクティス・パートナーを⼀一⽇日訪れ、彼らの
リーダーシップ・プログラムの発展、設計、実⾏行行、成功などに関する詳細な質問への回答を求めた。研究
は、⾰革新的な実践や、予算のような適⽤用可能な定量量データ、プログラムの詳細、評価基準などの特定を⾏行行
った。フェーズ 2 を終了了時点での成果物は、現地訪問まとめ、⼆二⽇日間のナレッジ移転セッション(全ての
研究スポンサーとベスト・プラクティス・パートナーが参加)と最終報告書であった。 ラルフ・ラーセン(Ralph Larsen)は、ジョンソン&ジョンソン社の会⻑⾧長兼 CEO であるが、同社
のエグゼクティブ会議を⽀支持している。企業の分権化の信条に忠実なので、彼はプログラムの
詳細を世界中の部下に任せているが、プログラム・テーマの提案には時間を取っている。 アーサー・アンダーセン社では、パートナー開発プログラム(PDP)のミッションが、「世界中の
パートナーが激変する市場で価値があり信頼されるビジネスアドバイザーになるために必要な
知識識、スキル、⾏行行動の習得・構築を⼿手助けする」となっている。多様化しグローバル化するビ
ジネスのニーズを満たすために、管理理職はそのプログラムをアーサー・アンダーセン社の考え
出すビジネス戦略略と密接に関連させ続けることを⽬目指している。 ヒューレット・パッカード社は、CEO カーリー・フィオリーナ(Carly Fiorina)のリーダーシッ
プの下、トップ・ハイテク・イノベーターの地位を取り戻すことを急ピッチで進めていた。フ
ィオリーナは、HP 社がインターネット時代のホットで新しい企業であることを世間と従業員に
確信させなければならなかった。それは古い時代の品質と誠実さへのコミットメントを失うこ
となしに。過去の HP 社の栄光は、未来の代わりに以前は重要と思われたことに注⼒力力する多くの
卓越したエンジニアを率率率いていた。いったん、HP 社はリーダーシップ開発の改善を始めると、
同社はより良良い事業上の意思決定ができるようになった。 今⽇日、HP のシニア・エグゼクティブはリーダーシップ開発に積極的に参加している。フィオリ
ーナは、同社を「過去よりも次の 10 年年を代表する」会社にするという彼⼥女女のビジョンを明確に
述べるためにマネジメント・ミーティングやリーダーシップ開発プログラムを⽤用いた。彼⼥女女の
前任者であるルイス・E・プラット(Lewis E. Platt)は、全ての HP 社の加速開発プログラムに同
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席し、開始時と終了了時に参加者と対話する機会を設けることで、リーダーシップ開発へのサポ
ートを⽰示した。そして、同社の CFO であるボブ・ワイマン(Bob Wayman)は、世界規模の有線
テレビ放送に対する内部の擁護者だった。放送の最中、ワイマンは「成⻑⾧長の壁への挑戦」とい
パネル討議のファシリテーターの役割を積極的に果たした。HP 社のシニア・エグゼクティブは
全てのコアプログラムの⼀一部分で教員として努めた。フィオリーナのマネジメント・チームと
のコミュニケーションに対する初期のコミットメントは、彼⼥女女が戦略略的変化の「素晴らしい説
教師」としてリーダーシップ開発を利利⽤用し続けるだろうという企業内の期待につながった。 研究スポンサー • AARP
• Eastman Chemical
• Smith & Nephew
• Aerojet
• Honda of America Manufacturing
• Sprint
• Allstate Insurance
•
• Thomas Cook Group
• American General
• Johnson & Johnson
• The Timken Co.
• Ameritech
• Lucent Technologies
• U. S. Dept. of Treasury
• Amoco
• Lutheran Brotherhood
• U. S. Postal Service
• Buckman Laboratories
• Medrad
• USA Group
•
• Nortel
• USDA Graduate School
• Celanse
• North American Coal
• Wachovia Corporation
• Chevron
• PDVSA-CIED
• Warner-Lambert
• Compaq Computer
• Pharmacia & Upjohn
• Ziff-Davis
• Deere & Co.
• Shell International
Canadian Imperial Bank of Commerce
John Hopkins University Applied Physics Lab
そして勝者は…ベスト・プラクティス・パートナー組織 Arthur Andersen
Johnson & Johnson
General Electric Co.
Shell international
Hewlett-Packard Co.
The World Bank
コー・ヘークストローター(Cor Herkstroter)は、ロイヤルダッチ・シェル・グループの元会⻑⾧長
であった(オランダと英国の両⽅方に本社があった)。彼は以前、50 から 60 名のトップ・リーダ
ーに同社の財務パフォーマンスの改善に対する提案を尋ねた。シェル社の取締役委員会は、新
しいリーダーシップ開発プロセスは組織変更更の触媒になることを決断し、シェル社のリーダー
シップとパフォーマンス・プログラム(LEAP)が作成した。そのプログラムは⽶米国と他の地域で
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測定可能な利利益を⾒見見せた後、シェルはそれを全社レベルのものにした。 ジェームス・ウルフェンソン(James Wolfensohn)は、1995 年年に世界銀⾏行行に社⻑⾧長として⼊入⾏行行し
た時、分散した知識識と財務リソースに対する銀⾏行行の⻑⾧長年年に渡るコミットメントを継続させるが、
世界の貧困を減少させるという⽬目標への強い重点を置くというミッションステートメントを作
り上げた。新しい焦点は変化が必要であった。そのニーズの認識識は、管理理職向けエグゼクティ
ブ・デベロップメント・プログラム(EDP)に⾄至った。そのプログラムは、ハーバード・ビジネス・
スクール、ケネディー政治⼤大学院、スタンドード⼤大学、INSEAD、IESE (スペインのナバラ⼤大学
の経営⼤大学院)とのユニークな協同で、五週間の教室でのトレーニングとその銀⾏行行を更更に世界の
リーダーにする⼿手助けになるプロジェクトを提供している。 5 つの重要なステップ 戦略略的ビジョンを公表することは、変化をもたらしたり、リーダーシップ開発を企業の⽬目標に
結びつけたりするには不不⼗十分である。私たちのデータは、その⽬目的を達成するために 5 つの重
要なステップを提案する(「リーダーシップ開発を戦略略的にする」を参照)。各ステップの例例は、
ベンチマーク企業の全社リーダーシップ・プログラムで⾒見見つけられる。 リーダーシップ開発を戦略略的にする 5 ステップ・プロセス ベスト・プラクティス・プログラム 評価 • アーサー・アンダーセン:定量量可能な測定法を探す。 • シェル:⾏行行動・学習プロジェクトにおいて 25:1 の ROI を期待する。 • 世界銀⾏行行:内部・外部の評価を⽤用いている。 調整・⼀一致 • ジョンソン&ジョンソン:360 度度フィードバックを同社のリーダーシップと後継
者育成プランを連結。 • ジェネラル・エレクトリック:9 ブロック・システム(コンピテンシー評価と同
様)と「セッション C」ミーティング(シニア・マネジャーが研修候補者を評価)
を採⽤用。 • ヒューレット・パッカード:多様性と新しいリーダーシップモデルに対する戦略略
ニーズを考慮。 ⾏行行動 • ジェネラル・エレクトリック:Work-‐‑‒Out と Change Acceleration Process と呼
ばれるプログラムを使⽤用。 6
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• ジョンソン&ジョンソン:エグゼクティブと中間管理理職向けのアクション・ラー
ニングにおいてリアルタイムのビジネス課題を使⽤用。 期待 • シェル:将来を考慮した仮説シナリオを使⽤用する。 • ジョンソン&ジョンソン:Creating Our Future と呼ばれるプログラムを使⽤用。 認知 • アーサー・アンダーセン:データに基づいており、フィードバックと調査を使⽤用。 • シェル:取締役委員会とグローバル・リサーチ・コンソーシアムを使⽤用(調査を
⽀支援する多国籍企業の集団)。 認知 (Awareness) リーダーシップ・スキルを構築するプロセスに対する要望は、ベスト・プラクティス組織に組
織の内外で機能するアプローチを探させる。そのような企業のリーダーシップ開発の基礎は、
認知である。具体的には、外部の挑戦、新興のビジネス機会と戦略略、内部の開発ニーズ、開発
を取り扱う他の優れた組織の⼿手法などの認知である。 アーサー・アンダーセン社は、同社のパートナーの学習と開発ニーズを決めるために内部と外
部のデータの両⽅方を使⽤用する。内部データは、クライアント満⾜足度度と従業員満⾜足度度の調査、上
向きのコミュニケーション、企業が 450 度度フィードバック(360 度度フィードバックにクライア
ントの評価を追加)と呼ぶ分析から得られる。アーサー・アンダーセン社は、パートナーが技
術的なコンピテンシーと顧客への反応の点でどのように認識識されているか知りたい。 新しい財務・経営ツールや事業環境での挑戦に関する外部データは、市場調査、事業トレンド、
最先端の思想家などから得られる。パートナー開発プログラムはまた、アーサー・アンダーセ
ン社にクライアントにサービスを提供しながら、同社が実施する調査や、パートナーが定期的
に最先端の思想家と⾏行行うマネジメント教育やビジネス実践の新しいトレンドに関する会話を利利
⽤用している。PDP はまた、リーダーシップ開発の新しいコンセプトに関する⽂文献を利利⽤用する。 リーダーシップと業績プログラムが単に事業の直近ニーズに対応しないことを確実にするため
に、シェルの LEAP チームは取締役委員会と企業変⾰革について継続的な会話を持っている(取締
役委員会は、シェル社の全ての地域、機能領領域を代表する)。LEAP のスタッフは、事業ユニッ
トのエグゼクティブとこのプログラムを受ける可能性のある主だった従業員との合意に向けて
交渉している。同時に彼らはチームプロジェクトの予算を作成し、実現時期と⽬目標を設定する。 7
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外部の視点を集めるために、シェル社は調査を⽀支援する多国籍企業のグループであるグローバ
ル・リサーチ・コンソーシアムに参加した。コンソーシアムは、参加企業にリーダーシップと
学習に関する最新状況を聞き、議論論する機会を与える。他のベスト・プラクティス企業と同じ
く、シェル社もまた、最新のリーダーシップ研究を常に把握するためにコンサルタントや教授
と仕事をする。 ベスト・プラクティス組織の全社リーダーシップ開発機能が特に戦略略的な課題であるとの重⼤大
な認知がある。より戦術的な経営スキルやビジネス特有のチャレンジングは、通常事業ユニッ
トに委ねられている。これはよく機能するようである。ベスト・プラクティス組織での企業リ
ーダーシップへの取り組みは、事業ユニット内での学習経験を補完し、かつそれと競合しない。
事業オペレーションは、⾃自らのマネジメントスキルトレーニングを扱うことを⾝身につけさせる。
企業のリーダーシップ・プログラムは意思決定者がこれらのツールの利利⽤用で、より効果的にな
るよう⼿手助けすることに注⼒力力する。 全てのベスト・プラクティス・リーダーシップ・プログラムは、リーダーに広範な経験を利利⽤用
させる。アーサー・アンダーセン社、ジョンソン&ジョンソン社、シェル社では、リーダーシ
ップ開発プロセスの責任者は、シニアレベルのビジネス経験を持っている。ビジネス・リーダ
ーの活⽤用は、エグゼクティブの参加は事業からの賛同を確保することに役⽴立立ち、そのプログラ
ムを実践的にし続けるとの信念念に基づいている。 GE 社とシェル・インターナショナル社は、リーダーシップ開発を監督する⼆二年年間のローテーシ
ョン任務に潜在⼒力力の⾼高い⼈人材を取り⼊入れている。HP 社は同じ⽬目的で現場ポジションから主要な
⼈人材を採⽤用している。事業ユニットを利利⽤用するだけでなく、ベスト・プラクティス組織は、企
業教育、⼈人事、アカデミアの⼈人材の経験を利利⽤用可能にする。GE 社のクロトンビルセンターのデ
ィレクターは⼤大学出⾝身者で、世界銀⾏行行の EDP 責任者は企業教育の経歴を持っている。 期待 (Anticipation) ビジネス・ケースは伝統的過去にフォーカスしており、ベスト・プラクティスは現在にフォー
カスしているが、最⾼高のリーダーシップ開発プログラムは未来を強調する。トップのリーダー
シップ開発企業は先⾏行行学習ツール(潜在的なチャレンジを開拓拓するフォーカスグループ)もし
くは、新興技術のインパクト(分散化した戦略略プランニング:多くの組織レベルの未来につい
てイメージすることに基づくもの、未来のシナリオ分析、デルファイ⼿手法:認知や同意を作る
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ために⽤用いる合成された予測の連続的な検討)を利利⽤用している。 戦略略のグルであるゲーリー・ハメル(Gary Hamel)は、分散化されたプランニングを奨めている。
その理理由は、改⾰革は利利益をもたらし、「滅多に絶対君主制から始まらない」からだ。参加型で未
来志向のマーリン(アーサー王伝説で王に仕えた魔術師。予⾔言者)・プロセスは、分散化プラン
ニングの⼀一例例である。管理理職はその組織を現在から 10 年年間想像し、もし全く上⼿手くいけばどう
いう⾵風になっているかを記述する。より伝統的な上向きの戦略略プランニングとは対照的に、そ
のマーリン・プロセスは、組織中のグループに彼らのアイデアを記述させる。結果の発表は、
シニア・エグゼクティブに洞洞察とインプットを与え、より形式的なプランニング・セッション
に繋がる。 1993 年年から 1996 年年に、J&J 社はそのパターンに従った。第⼆二回⽬目のエグゼクティブ会議で、
世界中から集まったエグゼクティブは⼀一週間、外部のコンサルタントと⼀一緒に 10 年年後のビジョ
ンの作成に取組んだ。参加者は、ヘルスケア産業の発展に関する伝統的な知恵に挑戦し、彼ら
の将来を作るために事業部⾨門がとる⾏行行動に注⽬目した。六六カ国 100 名以上のエグゼクティブへの
未来志向のインタビューと、ヘルスケア産業の未来に関する活字化された予測から作成された
拡張シナリオである「J&J 2002」は、複数のトレンドと不不連続性を予測した。修正されたデル
ファイ⼿手法を⽤用いて、参加者は 14 の仮説的な開発の可能性とインパクトを評価した。マーリン
演習と呼ばれた統合的な演習は、プログラムの様々な局⾯面を結びつけるために⽤用いられた(マ
ーリン・プロセスは、企業に将来ビジョンの作成をさせる。マーリン演習は参加者にコースの
コンセプトをそのビジョンに適⽤用させる)。参加者のグループは CEO と副会⻑⾧長に望ましい未来
について正式なプレゼンテーションを⾏行行う。 マーリン演習は結果を得た。J&J 社の新しい企てを率率率いるための著しい昇進を祝福し、プログラ
ムの卒業⽣生のひとりが答えた。「そう。それはほとんど⼀一年年かかりました。しかし、私はついに
マーリンを得たのです」。彼の潜在⼒力力へのコミットメントのために、想定される未来の第⼀一ステ
ップはついに現実となった。 ある組織にとって、期待は企業が必要とするコンピテンシーのリストの作成を伴っている(「コ
ンピテンシーについて」を参照)。 9
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コンピテンシーについて ベスト・プラクティス組織の⼤大多数は、リーダーシップのコンピテンシーを特定したか、少なくとも成功
したリーダーの特徴を定義しようとした。しかし、コンピテンシーに関するいかなる議論論は、⼀一般的に論論
争の的になっている。ある組織はコンピタンシーが本当に定義されるのかを質問さえしている。 全てのベスト・プラクティス・パートナーがコンピテンシーを定義している訳ではないが、各パートナー
は特定の組織の中で成功したリーダーの特徴を指摘しようとしている。それはまた、研究スポンサーにも
あてはまる。しかし、ベスト・プラクティス・パートナーは広範で型通りのコンピテンシー研究を求める
よりも、コンピテンシーを内部で、もしくは限定的に外部のコンサルタントを利利⽤用して開発する傾向があ
る。ベスト・プラクティス企業は、リーダーにとっての主要なスキルを特定する能⼒力力についてより⾃自信が
ある。そして、彼らはコンピテンシーや開発活動を必ず更更新し続ける。 調査された組織の四分の三は、いったんコンピテンシーが定義されたなら、それが継続的に追求されるべ
きだと信じている。ベスト・プラクティス企業は、どのコンピテンシーが重要かを決める前に、地位、事
業ユニット、地理理的ロケーションを考慮している。ジョンソン&ジョンソン社は、⽶米国でリーダーを成功
させたものが欧州やアジアに翻訳されていることを確認するために世界中にチームを派遣した。コンピテ
ンシーの⽤用語のいくつかは変えられなければならないが、⾏行行動は⼀一貫している。 アーサー・アンダーセン社は、コンピテンシーを仕事するのに必要な⾏行行動のステートメントと定義してい
る。同社は組織規模でのコンピテンシーがないが、パートナー開発プログラムはパートナー向けのリスト
を作成した。それは、全てのサービス・ラインに適⽤用される⾮非技術的コンピテンシーに集中している。 コンピテンシーの三つの広範なカテゴリーは、事業開発、⼈人材開発、個⼈人開発である。共通のテーマはリ
ーダーシップである。パートナー開発プログラムグループの狙いは、次のような特徴を持つアーサー・ア
ンダーセン社のパートナーを育成することである。 •
変⾰革代理理⼈人である •
戦略略的に計画する •
グローバルに知られている。 •
先進的なビジネスとプロフェッショナル知識識を促進する。 •
マーケッターである。 •
信頼できるビジネスアドバイザーである。 10
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•
価値のある統合サービスを提供する。 •
チームを率率率いる。 •
⼈人を育成する。 •
関係性を構築する。 •
スキルの⾼高いコミュニケーターである。 •
⾃自らを成⻑⾧長させる。 他の企業はまた、彼らの特定に事業にあわせたコンピテンシーを持っている。 ⾏行行動(Action) 知識識ではなく、⾏行行動はベスト・プラクティス・リーダーシップ開発プロセスの⽬目標である。ベ
スト・プラクティス・グループは、リアルタイムの事業課題をスキル開発に適⽤用することで、
現実の世界を教室に持ち込んでいる。きつい質問に対する回答は、インストラクターの頭にあ
るのではない。学習者は回答をその場で⾒見見つけなければならない。そして、プログラムの参加
者の⾃自らの提⾔言の実⾏行行により、学習の経験が組織と個⼈人に利利益をもたらされるのだ。そのよう
な⾏行行動学習は、しかしながら、複雑でお⾦金金がかかる。そういう訳で、例例えば、アーサー・アン
ダーセン社は、事前と事後の作業を含む修正アプローチを⽤用いている。コースが始まる前、会
社は参加者にビジネス上の課題を抱えるクライアントの選定基準とそのクライアントへのイン
タビュー⼿手順を提供する。学習者はクライアントへの提⾔言をチームで作成する。コースの終了了
後、そのチームは実際のクライアントやプログラムの⽀支援者にプレゼンテーションをする。 GE 社では、ウェルチ⾃自⾝身が三つの年年間事業マネジメントコースと年年間エグゼクティブ開発コー
スの各々の⾏行行動学習トピックを選ぶ⼈人であった。両⽅方のコースの参加者は、プロジェクトの遂
⾏行行に対して⾮非常にやる気がある。それは彼らが企業の⽅方針に従っており重要であった。 参加者のチームによる提⾔言は、通常実⾏行行される。あるマネジメントコースの⽣生徒は、ロシアに
出向き、GE 社の現地でのオペレーションに関する提案を作成した。別のコースの参加者からの
質の⾼高いレポートは、企業規模のシックス・シグマ構想(全ての製品から⽋欠陥を取り除くため
に設計された品質保証プログラム)の適⽤用に繋がった。 GE 社はまた、チェンジ・アクセレーション・プロセス(Change Acceleration Process: CAP)
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と呼ばれる、どのように変化を起こし、加速させ、確実に⾏行行うかに関する GE 社の蓄積された知
識識を広めることで管理理職をプロの変⾰革代理理⼈人にする体系的な企てを⽀支援している。もし CAP が
うまくいけば、ウェルチが次のように⾔言った。「コーチやファシリテーターとして⼼心地よい⼈人た
ちが GE 社の規範になるだろう。そして、他の⼈人は昇進できないだろう」 ベスト・プラクティス・パートナーはコンピテンシーを広範で形式的なコンピテンシー踏査を
⾏行行うよりも、それを内部もしくは外部のコンサルタントの限定的な利利⽤用というかたちで開発す
る傾向がある。 ジョンソン&ジョンソン社では、1997 年年に始まったエグゼクティブ会議の第三グループの⽬目的
が J&J 社のリーダーシップ基準を強調すること(主要なエグゼクティブがマッキンゼーのコン
サルタントとともに開発したモデル)と、その基準を⾏行行動学習を通じて特定の事業課題に結び
つけることであった。主要なセッションは五⽇日間続き、事前課題とフォローアップでその経験
を拡張させた。コアセッションの前に、各運営ユニットは注⽬目すべき事業トピックを議論論する。 様々な事業の異異なるエグゼクティブが、会議の各々のセッションを「⽀支援」している。トピッ
クを選んだ⼈人たちは、重⼤大で変⾰革インパクトをもつ何かを選ぶように依頼されている。過去の
プログラムでのトピックは、売上の成⻑⾧長、製品開発サイクル、新市場への参⼊入、リーダーシッ
プ開発などが含まれている。いったんトピックが定義されると、エグゼクティブは 50 から 130
名のプログラム参加者を⽀支援する。彼らはデータの収集や企業内で関連する洞洞察を持つ⼈人たち
へのインタビューなど追加的な準備を⾏行行う。 参加者はプログラムを経験し、職場に戻ってから⼀一⽇日を実⾏行行の結果を報告するために使う。典
型的に、そのプロセスは 6 から 9 ケ⽉月かかる。J&J 社のエグゼクティブ会議のアプローチは、
研究されている問題を経験している事業領領域からのワークチームを含んでいる。しかしながら、
同社の中間管理理職レベルの⾏行行動学習アプローチは、より広範な問題に取組む J&J の全部署から
⾼高い潜在性を持つ社員を集めている。エグゼクティブ会議の問題は、組織開発により狙いを定
めており、⼀一⽅方で中間管理理職レベルのプログラムは個々のスキル開発により注⼒力力している。 調整・⼀一致 (Alignment) ベスト・プラクティス組織は、リーダーシップ開発と他の企業機能の間の⼀一致の重要さを認識識
しているので、彼らはしばしば教育的な取組みと正式な後継者育成プランを結びつける。ベス
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ト・プラクティス・パートナーのいくつかでは、リーダーシップ開発機能と後継者育成プラン
ニング機能は同じエグゼクティブに報告している。他の企業では、単に⾃自然なつながりが強調
されているだけだ。 J&J 社では、全開発機能で 360 度度フィードバックがリーダーシップ開発の⼀一部として⽤用いられ
ている。ファシリテーターは、⾏行行動に関する多項選択式の質問票を評価する。それは、参加者
が多くの領領域で⾃自らのパフォーマンスを評価し、上司、同僚僚、部下からの評価を得る。計画は
後にコーチングを受ける、もしくはプログラムの⼀一部として弱点の領領域を強化する活動に従事
する参加者のために作成される。しかし、ファシリテーターの評価は通常は、後継者育成プラ
ンニングには直接取り⼊入れられない。 データは結論論的ではないが、最⾼高の企業は、評価、開発、フィードバック、コーチング、後継
者育成プランを統合・調整し始めていると信じる。統合されたモデルでは、リーダーシップ開
発が、企業内での着実な情報の流流れを維持し、トップの才能ある⼈人材が追跡され、成⻑⾧長を続け
るのを確実にする重要なパートになる。 GE 社は、隠し⽴立立てせずリーダーシップ開発を後継者育成プランニングに結びつけている。全従
業員は、年年度度セッション C レビューにおいて 9 ブロックシステムを⽤用いて評価される。そのレ
ビューには、個⼈人の業績と、GE 社のバリュー・ステートメントのバリューの遵守に関する議論論
が含まれている。そのシステムは、典型的なコンピテンシーモデルと類似したものであるが、
ウェルチのコメントと⼈人事チームの精緻化から、素早くシンプルに GE 社が⾃自信を持って作った
ものだ。それは、従業員の最終的なパフォーマンスを⼀一つの軸に、GE バリューへの遵守をもう
⼀一つの軸にしたチャートで特徴づけられる。業績の数値を出せなかったが、GE バリューを遵守
した⼈人は数値を改善し、⾼高い評価を獲得するチャンスが与えられる。数値は出したが、GE バリ
ューが四段階モデルで低い⼈人は、昇進の適格性が詳細に評価される。どちらも低い⼈人は、最低
の評価が与えられる。 シニア・マネジャーは、最優秀社員の開発に彼らのリソースの⼤大半を費やしている。彼らはそ
のアプローチを最も利利⽤用価値があるものの供給だと認識識している。具体的には、ロール・モデ
ルと価値があると評価されるものへの⼀一致を作ることだ。クロトンビルのリーダーシップ開発
が提供しているものは、⾮非常に⾼高い潜在⼒力力を持つ個⼈人で、組織が「プレーヤー」と⾔言及する⼈人
たちを対象にしている。毎年年、その機関は約 30 万⼈人の従業員のうち約 1 万⼈人にトレーニングを
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している。 GE 社では本社が同社のトップ 500 の⼈人材を所有し、社内の各事業に貸し出していると⼀一般には
⾔言われている。ビジネス・タレントの共有を推進するために、GE 社は才能のある従業員を出し
惜しみする管理理職への業績評価にネガティブ変数を含めている。顕著な事業パフォーマンスと
リーダーの開発は、密接に関係し合う。 ヒューレット・パッカード社は、新興のリーダーに発展と成⻑⾧長する多種多様の機会を提供して
いる。元 CEO のプラットは、創設者とともに成⻑⾧長した多くの⼈人たちは退職し、その後の後継者
はお互い少しだけ似ているようだと認識識していた。同社がよりグローバル化するにつれ、⺠民族
性や性別の多様性が必要になるだろうと考えていた。⼥女女性の CEO を今得ることは、誰がリーダ
ーシップに向いているかの認識識を変えるのに役⽴立立つだろう。HP 社のリーダーシップ開発プロセ
スは明⽩白に多様性の⽬目標を⽀支持しており、最も将来有望な⼈人たちに能⼒力力を伸ばす任務を提供し、
個々の貢献者や第⼀一級の管理理職向けに加速化されたプログラムを利利⽤用可能にしている。 ベスト・プラクティス組織は、リーダーシップ開発プログラムの⽬目標を最適な⼈人材を最適なプ
ログラムに登⽤用するガイドラインとして⽤用いている。シェル社の LEAP プログラムの⽬目標は、全
ての階層でリーダーを作ることで、プログラムは組織内のいかなる⼈人にも開放されている(し
かし、あるプログラムは⾮非常に⾼高い潜在⼒力力を持つ⼈人を対象にしている)。GE 社と HP 社は⼊入学に
関しては選択的である。その理理由は、階層を早く昇進させるために、潜在⼒力力を持つ⼈人材だけに
注⼒力力したいからだ。 評価 (Assessment) ベスト・プラクティス組織は常にリーダーシップ開発プロセスのインパクトを評価している。
感知された価値に関する情報を収集するために、ベスト・プラクティス・パートナーは多くの
ツールや⼿手法を⽤用いている。カークパトリックの四段階評価モデル(参加者の反応、得られた
知識識、⾏行行動の変化、事業の結果)は典型的なものだ。参加者、⼈人事開発部⾨門スタッフ、コンサ
ルタント、ある場合では、財務スタッフが評価を⾏行行う(財務スタッフはプログラムへの⽀支出の
投資利利益率率率を評価する:「エグゼクティブ・プレミア」を参照) ほとんどのベスト・プラクティス・パートナーは、リーダーシップ・プログラムの事業成果に
対するインパクトを定量量化するために、カークパトリック・レベルと呼ばれる評価⼿手法を⽤用い
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ている。研究スポンサーとベスト・プラクティス・パートナーはともに別の測定基準を⽤用いて
おり、それには企業業績、顧客満⾜足度度、従業員満⾜足度度などが含まれている。⼀一般的に、ベスト・
プラクティス・パートナーはプログラムの効果の測定・評価においてスポンサーよりもさらに
積極的である。 エグゼクティブ・プレミア:5 ステップは管理理職がリーダーシップ開発プログラムから最⼤大のメリットを
得るのに役⽴立立つ 認知—必ず主だったエグゼクティブにリーダーシップについてインタビューをする。発⾒見見したことを記録
し続け、それを後継者育成プランや⼈人事リソース開発(HRD)に⽤用いる。HRD の責任者や最⾼高学習責任者に
リーダーシップ開発に関する最新の考えを反映した会議について最低⼀一年年に⼀一回はブリーフィングの機会
を求める。HRD のその他のメンバーに会社の経費で出席したイベントの短いまとめの準備を依頼する。 期待—事業に影響を与えると思われる最も重⼤大なトレンドや予測に関する情報収集を⽬目的に(全てのレベ
ルの管理理職との)ミーティングを始める。彼らに最も先⾒見見の明のある論論⽂文、書籍、プレセンテーションの
要約を依頼し、あなたが学び、予想期間での同僚僚の考えを知る。現⾏行行のチャレンジはあなたが企業の未来
に注⽬目し続けさせないことを確信する。考えうるシナリオとそれにどう反応するかを定義しておく。 ⾏行行動—HRD チームメンバーにどの事業業績が企業教育プログラムから⽣生じているかを尋ねる。導⼊入⽀支援が
必要な戦略略イニシアティブを議論論する。そのようなイニシアティブをより迅速・効果的に起こすためにど
のようにエグゼクティブ学習を活⽤用するかを詳しく調査する。 調整・⼀一致—業績管理理システム(業績評価)、後継者育成プランニングプロファイル、主要な教育、開発課
題、もしかすると「コンピテンシーモデル」を調べる。書類内での⼀一貫性と⼀一致をよく⾒見見る。それらが⾸首
尾⼀一貫した⼀一連の⽤用語、価値、モデルを反映しているかを確認する。もし、そうでなければ、それらがよ
り緊密に⼀一致するよう働きかける。 評価—リーダーシップ開発活動が上⼿手くいったかどうかを評価する。予算が承認された時の成功基準をプ
ログラムが反映しているか証拠を求める(シェル社は、コストの 25 倍以上のリターンがなければプログ
ラムは価値がないと考える。ジョンソン&ジョンソン社は、主だったリーダーの観測可能な業績の変化を
評価するために 360 度度フィードバックを⽤用いている)。 15
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全体—あなたの戦略略的な取組みを⽀支援するために、あなたが⼀一般に HRD を、とりわけ教育をどのくらい
必要かを考える。あなたの会社があなたの望んでいるようになるために、どのように⼈人事リソースプロフ
ィールを変える必要があるか。 ベスト・プラクティス組織の中で、アーサー・アンダーセン社はおそらく最も評価に熱⼼心であ
ろう。そして、利利益も得ている。同社は、パートナー開発プログラムと改善されたビジネス成
果との関連性を⽰示すデータだけでなく、組織が進むべき⽅方向を⽰示すデータなど、対象のデータ
を収集している。 測定は費⽤用がかかり、時には扱いにくいが、その利利益は割り引かれない。アーサー・アンダー
セン社は、インパクト調査と参加者のコース評価を結合させている。プログラム参加者は、コ
ース受講前、コース終了了直後、三ケ⽉月後に評価シートに記⼊入する。そのシートは、参加者が取
得したと信じる知識識についての質問を含んでいる。 インパクト調査は、コースごとの⽐比較、PDP に参加したパートナーと未参加のパートナーの⽐比
較から構成される。参加者はクライアントの満⾜足度度と時間当たりの請求額が増加しているとい
う調査結果がある。インパクト調査は⼆二年年ごとに実施されるが、⼀一年年前と⼀一年年後のパートナー
に関する情報も含まれる。 参加者の満⾜足度度調査とインパクト調査の両⽅方の利利⽤用は、バランスの取れた結果を提供するのに
役⽴立立っている。アーサー・アンダーセン社はプログラムの⼀一つが⾼高い参加者満⾜足度度を得られな
かったが、インパクト調査ではこのコースが PDP の他のコースよりも⼤大きな効果があったこと
を発⾒見見した(しかし、PDP スタッフメンバーは、強い満⾜足度度と強いインパクトを⾒見見るのを好み、
だからもし、パートナーが低い満⾜足度度であれば、そのコースは推奨されないだろう)。 回帰分析は、コースの⻑⾧長さが参加者の満⾜足度度に対して重要な要因になることを⽰示している。コ
ースが⻑⾧長過ぎるとの認識識は、ネガティブな効果を及ぼす(しかしながら、プログラムの⻑⾧長さが
適切切だとの信念念はそれ⾃自体全体的な満⾜足度度を改善しない)。 それ以外の満⾜足度度を決定する主な要因は、プログラムの参加者がトピックについて同じくらい
のレベルの精通度度合いかどうかである。ある⼈人にとって刺刺激的なコンセプトは、他の⼈人には古
いニュースのこともある。アーサー・アンダーセン社は、問題志向のコース設計への移⾏行行は異異
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なったレベルの参加者の知識識に取組むことに役⽴立立つと信じている。 外部ベンダーの選定における様々な基準の重要性をランクづけるよう依頼された時、企業は料料
⾦金金をリストの下位に位置づけた。 シェル社の LEAP スタッフにとって、もしチームプロジェクトがプロジェクトのコストの 25 倍
以上の収益を⽣生まなければ(25:1 の ROI)、プログラムは価値を出さない。初期の契約プロセ
スの間、LEAP スタッフと事業ユニットのリーダーは、財務的なターゲットを含む望ましいプロ
ジェクトの成果を決定する。ビジネス・リーダーは候補者をプログラムに派遣する際に⾃自らの
⽬目的を表明する。多くの場合、それはチームや個⼈人が取組むプログラムと問題を定義している。 品質は値段相応だ。ベスト・プラクティス企業はコストを考える。しかし彼らの主な注⽬目はプ
ログラムが提供する価値だ。外部ベンダーの選定における様々な基準の重要性をランクづける
よう依頼された時、企業は料料⾦金金をリストの下位に位置づけた。アーサー・アンダーセン社は総
収⼊入のおよそ 6%を教育に投資している(3000 万ドル以上)。もしコースが提供するものがビ
ジネスの成果を改善するという⽬目的を達成するなら、サポートは継続する傾向にある。 世界銀⾏行行のエグゼクティブ開発プログラムへの参加者⼀一⼈人当たりのコストは、22,000 ドルで、
それは旅費、宿泊費、ビジネススクールの 3 モジュールの費⽤用、グラス・ルーツ集中プログラ
ム(管理理職に⼀一週間、開発国の村落落や都市地域で貧困とは何かを⾃自分の⽬目で理理解するプログラ
ム)が含まれる。そのコストは事業グループには請求されないが、同⾏行行の 1200 万ドルの年年間エ
グゼクティブ教育予算から中央的に⽀支給される。 リーダーシップ開発の新しい戦略略的現実 グローバル化、規制緩和、e コマース、急激な技術変化などは、企業に事業のやり⽅方の再評価を
強いている。何年年間も機能していたアプローチは、もはや効果的でない。戦略略的に考えるリー
ダーの開発は、益々持続可能な競争優位性の源泉になる。卓越したリーダーシップ開発の実践
で知られる企業の観察は、それゆえ⾮非常に有益になる。 リーダーシップ開発は今や専⾨門家が進んでおり、⼈人事部⾨門に委託できない。ベスト・プラクテ
ィス企業では、トップレベルの管理理職が関与している。 17
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リーダーシップ開発は今や専⾨門家が進んでおり、⼈人事部⾨門に委託できない。ベスト・プラクテ
ィス企業では、トップレベルの管理理職が関与している。彼らのサポートなければ、リーダーシ
ップ開発プロセスは完全に失敗するだろう。もちろん、企業のリーダーは、もしプログラムが
ビジネスの結果を⽣生み出すのなら、サポートを提⽰示する傾向がある。リーダーシップ開発プロ
セスの効果を監視し、短期的な成果を現⾦金金化し、成功を組織内にコミュニケーションすること
で、ベスト・プラクティス企業は好循環を維持する。 アーサー・アンダーセン社の PDP や GE 社のクロトンビルのような開発グループは、プログラ
ムを熱⼼心に作り上げること、注意深く聞くこと、継続的な監視、頻繁なコミュニケーションを
強調する。それはシニア・エグゼクティブにどのようにしてリーダーシップ開発プロセスは組
織⽂文化を形づくって広め、変化に対する抵抗に打ち勝ち、戦略略的⽬目標を達成させることを⼿手助
けする。 GE 社では、企業のリーダーシップ開発グループは賛同の維持に尽⼒力力している。それは世界中の
企業のリーダーを定期的にインタビューし、未来のビジネスニーズや未来のリーダーが持つべ
き特徴の判断に関する材料料にしている。追加的に、クロトンビルのグループは、所与の開発イ
ニシアティブの初期適⽤用者を特定し、彼らのサポートを活⽤用する。 ヒューレット・パッカード社は、CEO とシニア・マネジャーにそのプログラムに参加させるこ
とでリーダーシップ開発プロセスへの⽀支持を得ている。エグゼクティブはリーダーシップ開発
設計とプログラムのメンター、教授、⽀支持者として奉仕する。 ジョンソン&ジョンソン社のエグゼクティブ会議に対するシニアレベルの⽀支持は、会⻑⾧長か同社
のエグゼクティブ委員会のメンバーのどちらかが、J&J 社の信条や価値、そしてプログラムとビ
ジネスの成功との結びつきを語るために各セッションに参加している事実で証明される。 ベスト・プラクティス企業は、リーダーシップ開発を戦略略的にする⼒力力点で異異なるところがある
が、各々の開発プログラムは五つの重⼤大なステップを含んでいる。 •
外部の挑戦、新しく発⽣生した戦略略、組織ニーズ、優れた企業がニーズを持たすために⾏行行っ
ていることなどへの認知を作り上げる。 18
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•
潜在的な外部の出来事を認識識し、将来を描き、組織がその未来を作る際にとる⾏行行動にフォ
ーカスさせる先⾏行行学習ツールを使う。 •
リーダーシップ開発プロセスと問題解決、ビジネス課題への挑戦に結びつけることで⾏行行動
する。 •
リーダーシップ開発と業績評価、フィードバック、コーチング、後継者育成プラニングを
⼀一致させる。 •
リーダーシップ開発プロセスの個⼈人の⾏行行動変化や組織の成功に与える影響を評価する。 ほとんどの⼈人は、たとえ彼らがジョンソン&ジョンソン社や GE 社の具体的なのリーダーシップ
開発の実践を聞いたとしても、エグゼクティブ育成の卓越さを実現するために統合された変数
をどのように管理理するかは理理解していない。教育予算の増加や研修部⾨門の「企業⼤大学」への名
称変更更では、改善された業績を保証しない。私たちの研究は、ベスト・プラクティス企業のリ
ーダーシップ開発のアプローチの多様さにも関わらず、全ての企業には共通の⽬目標がある。予
測すること、⽀支援すること、組織の戦略略的イニシアティブを開発と⼀一致させること、競争優位
性を獲得・維持することである。そして、ますます、それらの企業は戦略略的ニーズに密接に連
携している⾏行行動志向で、継続的な学習プロセスを選んでいる。 和訳:秋元祐次郎郎(株式会社秋元アソシエイツ、http://www.akimotoassociates.co.jp) Translation by Yujiro Akimoto, Akimoto Associates, Inc., Tokyo, Japan 19