∼2002 年の不動産市場の特徴∼

JAPAN REAL ESTATE TOPICS – Eiji Enomoto
11 January 2002
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目まぐるしい変化の不動産市場
∼2002 年の不動産市場の特徴∼
榎本英二
2001 年から 2002 年への不動産市場の変化はおそらく近年稀に見る程の、めまぐるしいものであっ
た。2002 年初の不動産トピックスでは、2002 年の不動産市況を占う上の 2001 年からの変化の特徴及
びキーワードについて考えてみたい。
まず、オフィス賃貸マーケットについてであるが、日経平均が 2000 年春にピークをつけて以降、
経験則通り、鉱工業生産指数や工作機械受注指数の落ち込みを経て、約 1 年半のタイムラグをもってオ
フィスマーケットの軟化が現実化し始めている。通常のサイクルという点に加えて特徴的な事は、2000
年から 2001 年にかけてオフィスマーケットを牽引した、「I T(Information
Technology)」と「IB
(Investment Banking)」という高額賃料支払い可能な 2 大需要がここに来て壊滅状態だということ
である。従ってオフィスマーケットの 2002 年の特徴は月額賃料 45000 円/坪以上という、「富士山」
型のピークが崩壊し、トップレントが主要なサブマーケットでともに 35000 円近辺に落ち着くという
「八ヶ岳」状態に向かっているという点である。
第二は、不動産資本市場についてであるが、2001 年秋からの金融庁による特別検査や日経平均の
暴落、それに伴った主要金融機関の多額の赤字決算や不良債権処理によって、2000 年から 2001 年にか
けての不動産資本市場の緩めの資金供給が、ここに来て一機に引締められ、資金供給がタイトになりつ
つある。2000 年以降のノンリコースローン・レンダーの多数参入や、外資系ファンドのみならず、国
内不動産会社や投資家の参入によって、流動性がやや過多となり、一部に「ファンド・バブル」とさえ
言われた状況は、2002 年一変しはじめている。すなわち、オフィスマーケットにおける「IT テナント
ブーム」と同様に、不動産資本市場においても「J-REIT ブーム」が終焉し、いわゆる「J-REIT 価格」
が崩壊し、J-REIT プレミアムを前提にした価格から不動産の市場価格に戻ってきていることが特徴と
いえる。
第三は、不動産売買市場について見てみたい。金融セクターの状況や業績の芳しくない事業会社の
状況は、1998 年に逆戻りしたような様相を呈しはじめている。2002 年の特徴は負け組企業の株価の示
すように、1998 年と異なり白黒がはっきりついたという点であろう。98 年から 2000 年の買い手市場
と 2001 年の売り手市場を経て、2002 年からは減損会計や積極的な財務リストラを睨んでの売却を含め
て、日本の不動産保有構造、すなわち企業から投資家へという流れが一段と加速しつつある。2002 年
に、ファンド・バブル状態が解消され、99 年プライスに戻るようであれば、2002 年から 2003 年が大
きな流れで見た不動産市場の底値圏を形成することになると考えられる。
以上が 2002 年における変化の特徴であるが、基本はマクロの状況のみに躍らせれる事無く、不動
産のファンダメンタルをしっかりと分析し、その投資戦略を確実に実行することが常勝ファンドへの道
であることは明らかである。
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