書評「新・統合医療学」 日本綜合医学会会長 渡邊昌 統合医療は米国の

書評「新・統合医療学」
日本綜合医学会会長 渡邊昌
統合医療は米国の NCI に統合医療研究所が設けられてから海外では広く普及し始めてい
る。日本医師会でも関心を持つ人は多いが、わかりやすく適切なテキストがなかった。本
書は大学院大学の設立を計画してきた(社)統合医療学院が「新・統合医療学」として世界初
の体系を示したもので統合医療を理解する上で役立つ。世界の5大文明の医療からエビデ
ンスのあるものを選択して、「食、こころ、体で、意義あるいのちを」という正四面体モデ
ルを作り、それを「統合医療診断学、統合医療治療学、統合医療介護学」と分けて、具体
的にひとつの融合した体系として示してある。
「食」は栄養学のみならず、食養、マクロビオティック、薬膳、断食、植物療法(漢方)、
サプリメント、食介護を取り上げ、
「こころ」は精神医学、心理学に加え、五感療法として
温泉療法、音楽療法、アロマテラピー、ヨーガ・アーユルヴェーダ、気功、エネルギー療
法、実存療法、生活行動支援、死への対処など、
「体」は西洋医学的治療法に加わる運動療
法、徒手療法、鍼灸、按摩などを取り上げている。日本には甲田式食事療法や西式健康法、
橋本操体など優れた治療法もあり、古来のものもよく網羅して紹介されている。各論では
各疾患の漢方処方が記載され、実用性が高い。介護保険の地域包括診療科で行う診療行為
にそのまま役立つものである。
今の医療は崩壊寸前であると感じている人は多い。政府の言う混合診療は、米国から輸
入する保険会社と組み合わせた高額医療のことで、医師会の目指す「地域医療を充実させ、
医療費をかけずに幸せに」という考えと対極のものである。地域医療は医療と介護を一体
化させた仕組みが必要であり、これからの高齢化社会でコストパーフォーマンスの良い診
療体系が望まれている。未病を健康体に戻し、健康長寿に生きられるようにサポートする
知恵が必要であり、本書はそれに応えてくれるであろう。
大学病院を頂点とする高額機械や治療と、開業医レベルの経験と洞察の治療では、乖離
がますます広くなると思われるが、本書の基盤を成す「統合知でもって個別化医療、全人
的医療を支える」という考えは、生涯、尊厳を持って生きたいという一般の人たちの希望
と一致すると思われる。150 ページの手頃な本であるが、更に学びたい人向けに索引、文献
は充実している。
㈱メディカルトリビューン製作
定価 3,500 円+税
お申込み、お問合せは、統合医療出版会 [email protected] または FAX 03-5379-7786 へ