要旨 - 品質工学コンサルティング

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Robust Consulting
品質工学 話の種 (2)
SN比計算式の中の (−Ve) 項の意味
(望目特性編)
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水上 浩一郎
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結論だけを知りたい方、忙しい方のための
要旨
・望目特性のSN比の定義式と計算式は異なるが、その違いは −Ve 項の有無にある。
定義式 : η = 10log(m2/σ2) ----------------- (i)
m:平均値, σ2:データ y の分散
計算式 : η = 10log{(Sm−Ve)/nVN} ------- (ii)
n:データ数
・SN比を計算するとき、定義式(1)に m2, σ2 の真値 (nが無限大のときの値) を入れることが望ましい。
しかし、真値を知る手段はないので、これを何らかの方法で推定して代用とする。 m2 と σ2 の推定値
として下記を採用したものが計算式(2)である。 (以下、 x の推定値を記号 <x> で表すことにする。)
<m2> = (Sm−Ve)/n = ms2−Ve/n ----- (iii) (ただし ms = Σyj/n , j = 1~n ),
<σ2> = VN = Σ(yj−ms)2/(n−1),
・式(3)の右辺は m2 の「不偏推定量」である。 一般に、ある量 x の推定値として、実験結果から求めた x
という量を採用する場合、何回(無限回)も同じ実験を繰返して得た多数(無限大)個の x の平均値が
真値と一致するなら、「x は x の不偏推定量である」という。 真値に対して平均的に過不足ない(偏って
いない)推定値を与えるのが不偏推定量である。 ただし、不偏推定量であっても、個々の推定値 x は
ばらつくから、真値 xo とは一致しないのが普通である。
・ ms2 は平均的に真値 mo2 より過大な評価になるので、補正−Ve/n を施したのが式(3)であると思えばよい。
Ve は誤差分散と呼ばれ、データの再現性(繰返しのばらつき)を表す。実験が適切に実施されていれば、
Veは小さい(Ve≪Sm)のが普通であるから、 <m2> = ms2 ----- (iv) としてSN比を計算しても実質的には
同じである。 なお、上記の<σ2>が何を推定している量であるかについては本文で解説する。
・ Ve が大きいために式(iii)と式(iv)とでSN比の計算結果に無視できない差異が生じたとすれば、実験が
不適切であったことを意味する。 実験の再現性が乏しいとき、(iii),(iv)いずれの式で mo2 を推定しても、
推定値の信頼性が低いことに変わりはない 。
・SN比の計算には、 式(iii),(iv) いずれを用いても差し支えない。 実は、<m2> が不偏推定量であるかどうか
は重要でない。 より重要なことは、Veが大きくならないように、実験の計画と実施を的確に行うことである。
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はじめに
・この資料の主な目的は以下の項目についての解説を提供することにあります。
① 望目特性のSN比の計算式に−Ve 項が現れる理由を「不偏推定量」という概念に基いて
説明し、計算式を導きます。
② この項を省略した場合と、しない場合について、計算結果の違いを比較し、実質的には
差がないことを示します。
・計算式の詳細は「補足」で解説しました。 「補足」は細部まで確認しなければ気がすまない方々
が対象です。 実用的には役立ちませんから、大多数の読者の皆様には本文のみで十分です。
「本文」目次
「補足」目次
要旨 ---------------------------------------------------------- P.2
はじめに ----------------------------------------------------- P.3
SN比定義式と計算式の違い
真値を実験データから推定する ------------------- P.4
不偏推定量 ----------------------------------------- P.5-P.7
計算式によるSN比の差はどの程度 ? --------- P.8-P.9
Ve は偶然誤差 --------------------------------------- P.10
繰返しのない実験のVe はどう見積もる ? ------- P.11
σ2 の不偏推定量は ? --------------------------- P.12-P.13
SN比は簡易計算で十分 --------------------------- P.14
事例に見る <m2>
正式計算と簡易計算の比較 ------------------- P.15-P.21
補足の位置づけ ------------------------------------ P.22
期待値
期待値は無限回観測時の平均値 ------------- P.23
計算例 ---------------------------------------- P.24-P.25
2種類の分散の定義 ----------------------------- P.26
変数が連続値の場合は積分で計算する ------ P.27
分布の平均値と分散は期待値で表現される -- P.28
期待値と分散に関する基本公式 ----------- P.29-P.30
標本平均の期待値と分散 -------------------- P.31-P.32
母平均の2乗の不偏推定量 ---------------------- P.33
Ve の期待値 ----------------------------------------- P.34
誤差因子の下での mo2 と σo2
実験データの母集団の mo2 と σo2 ---------- P.35-P.36
mo2の不偏推定量 ------------------------------ P.37-P.38
VN の期待値 ------------------------------------- P.39-P.42
事例に見る <m2>
確率密度関数の導出 ------------------------- P.43-P.45
Monte Carlo 計算 ----------------------------------- P.46
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