資料:CEFR について 古石篤子 ◇ CEFR(セフアール)とは? Common European Framework of Reference for Languages: Learning, teaching, assessment (言語の学習、教授、評価のためのヨーロッパ共通参照枠)の略語。CEF(セフ)とも呼ばれる。 フランス語では CECR(Cadre européen commun de référence pour les langues : apprendre, enseigner, évaluer)。ヨーロッパにおいて人の移動(モビリティ)が高まり互いに異言語、異 文化に接する機会が増大し、言語に関しての様々な資格間の調整や比較のためのツールが必要 になったのがきっかけで欧州評議会により作成された。評価のみではなく「教授・教育」や「学 習」も対象とされる。2001 年に英仏独葡版、翌年に数言語で出版されている。 ◇ 欧州評議会(Council of Europe, Conseil de l’Europe)と EU(欧州連合) 欧州評議会は人権擁護と民主主義の理想を追求するため 1949 年に 22 カ国で誕生。現在の加 盟国は 47 カ国。ここでの決定は、直接は法的拘束力こそ持たないが、統一欧州の基盤作りに大 きく貢献してきた。公用語は英語とフランス語の2言語。 (http://www.coe.int/) EU(European Union, Union européenne)は政治経済共同体であり現在の加盟国は 27 カ国。 設立は欧州石炭鉄鋼共同体(ECSC 1952)に遡るが、各構成員の言語的・文化的多様性を尊重し 市民としての政治参加を保障するために、当初より理念として「多言語主義」を掲げ、現在公 用語数は 23 に上る。80 年代にエラスムス・プログラムやリングワ・プログラムなどが開始し、 若者のモビリティも年々高まっている。(http://europa.eu/) ◇ 欧州評議会の言語政策・言語教育政策 わが国ではこれまで主に次の2つで知られてきた(と思う)。 ① 「欧州地域言語少数言語憲章」(1992) : 1975 年に出版された欧州成人のコミュニケーションに必要 ② Threshold Level(閾レベル) な最低限の言語運用能力のための概念・機能シラバス。学習者のニーズ分析とともにコミ ュニカティブ・アプローチの核となった。翌年には仏語版(Un niveau-seuil)、その後西 語版や独語版等々が続く。また英語では Waystage Level(1991)、Vantage Level(2000) なども出る。このように欧州評議会の言語教育部門は 1970 年代当初よりコミュニケーショ ンの質を高めるため、加盟国間で言語教育について共同研究を続けてきた長い歴史と積み 重ねがあり、CEFR はその延長線上に位置付けられる。 ◇ CEFR のキー概念のいくつか ・ 複言語主義(plurilingualism)・複文化主義(pluriculturalism) ・ 行動中心主義(action-oriented approach)、社会的存在(social agent)、タスク ・ 叙述的知識(savoir), 技能(savoir-faire), 実存的能力(savoir-être), 学習能力 (savoir-apprendre) ・ コミュニケーション言語能力(言語構造的能力、社会言語能力、言語運用能力) ・ 言語活動:受容的、産出的、やり取り(interaction)、仲介活動(mediation) ・ 生涯学習、自律的学習者、ポートフォリオ ◇ 重要なこと あくまでも「参照」のための枠組みであり、決して「規範」として扱ってはならないとされ る。利用者は自らの社会文化的環境に合せて「文脈化」 (contextualization)することが重要。 組織間の対話を促すツールになりうる。 2008.09.15 慶應義塾大学英語教育シンポジウムハンドブックより追加再録
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