通販企業の立地に関する一考察 A study of the location of the direct marketing enterprise 北島啓嗣 Hirotsugu KITAJIMA 福井県立大学経済学部 Faculty of Economics Fukui Prefectural University. . 要旨: 隆盛する e コマースを含む通信販売企業はいかなる条件のもとに立地しているのであろうか。流通企業の立 地に関する研究は、数多く蓄積されている。多くは、立地の条件として消費地に隣接するということの重要 性を指摘している。しかし、通信販売企業の立地に関する研究の蓄積は乏しい。e コマースを含む通信販売 企業は、消費地との隣接ということを条件に立地しているのだろうか。本研究は、ロングテール現象をキー ワードに、データ分析および事例研究を通じてこの通信販売企業の立地に関しての考察を行う。現在、イン ターネットを利用する e コマース、そして従来のメディアを利用した通信販売においても、地方立地の不利 は相対的に少ない現象は確認された。これらは、地方の活性化に資する可能性があり、工業に偏った感のあ る地方産業政策を考え直す余地があると考えられる。 1. はじめに 本稿の問題意識の出発点は、地方の活性化にあ る。地方には、地元資本をベースとする中小企業が特 定地域に集積しつつ産地を形成する「地場産業」が存 在する。しかし、地場産業も近年、国内市場の飽和化、 中国、韓国、東南アジア諸国の追上げ、後継者難、全 国的なブランドとの競合など厳しい環境変化に直面し ている。その変化により概して苦しい状況におかれて いるといえるだろう。地域の産業のうち、地域外からの 需要を対象として生産活動を営むものは地域の持続 的成長を可能に地域の盛衰を左右する。 交通革命(transport revolution)は、産業構造、地域 構造に大きな影響を与え、また地域間の意識、情報距 離を大幅に短縮するような交通手段の変革であった。 日本の場合、1950 年代後半期以降、鉄道網の発展、 高速道路の整備により、空間統合(spatial integration) が行われている。この結果、地域内のみの市場を対象 とする地場産業は、国外を含む他地域との厳しい競合 にさらされている。地方の都市化も進んでおり、外食産 業や大規模小売業が地方でも普通に見られる。これら の企業は、 大規模な都市での成功を背景に、地方に おいても市場を席巻している。都市部は、重要な資源 *1 へのアクセスの面で比較優位性を持つ。さらに都市 部には、集積の利益を持つ。これは、多種多様な産業 や企業や人間が一つの地域に集中することから生ず る外部経済効果があるということである。これらの要素 を背景に、大量に生産された製品を、安いコストで消 費者に提供する外食産業や大規模小売業が発展し た。これらは、規模の経済その他の経済効率を持たな い地場産業に打撃を与えた。そして、店舗を使用した 販売では、販売数量が過少である商品は、利益を上げ にくく切り捨てられる。少量生産の地方発ブランドは、こ の切り捨ての対象になりやすい。 流通産業において、「立地」の影響は大きい。商業の 場合は、特に商業立地といわれ、卸売業や小売業など の商業経営に対して、プラスの影響を与える存在であ る。ある特定の空間的な場所に店舗を構えることは、そ の稀少な資源を占有することである。店舗の立地する 空間はある企業がそこに立地する限り、その企業に占 有される。さらに、商業立地は、単に店舗などの位置と いう狭い意味での点としての所在だけでなく,その店 舗立地が影響を受ける地域全体と相互の影響を受け る。立地条件は,その店舗などの所属する地域の人 口、購買力、交通手段の有無といった経済的特性その 他、商業集積の状態,後背地の人口・世帯規模および 消費購買力,自然や気候的条件などの影響を強く受 ける。同時に、それらに対し影響を与える。商業立地の 条件*2を検討し、経営にとって好ましい立地を選択する *1産業にとって重要な資源は土地、交通条件、良質な 労働力、天然資源等である。大都市は多数の人口を有 し、良港や空港が整備されている。19 世紀の終わりか ら、20 世紀のはじめにかけて、道路や船舶港湾施設と いったインフラストラクチャーの発展が特に都市部に おいて発展し、広域における交換が可能になった。そ のことは、大きな市場の大きな需要に対し、規模の経 済をもって大量生産が可能な都市が、地方が小規模の 生産をそれぞれ行うことより有利となった、 といえる。 *2立地条件は、時間の経過近隣とともに大きく変化す る。自らの出店に伴う都市や商業集積の変化,幹線道 路の整備,競合する大型小売店の出店などによって, ことは、立地選定と呼ばれる。 本稿で問題とするのは、通販企業の立地条件であ る。特に断りのない場合、店舗を有した販売形態の小 売業における好適立地の選定である「店舗立地」は、 商業立地と同じ意味で使われている。店舗販売による 小売業の経営は,その店舗にどれだけ購買者を吸引 できるかが大きな要素である。店舗は一般に商業集積 の中に存在し,その商業集積はある商店街等の商業 集積の中に所属する。しかし、店舗を有しない販売形 態である通販企業においては、この「店舗立地」と「商 業立地」は区別されるべき存在である筈である。基本 的に通販企業の購買者を吸引は、周辺の商業集積や 交通状況に直接には影響されないと考え得る。 一方、インターネット上における販売(以下eコマース と略す)においてはその効率性から、全国区のブランド イメージを確立出来ない過少な販売数量の商品にお いても利益を計上できる、という議論がある。従って、 販売から相当時間を経過した商品やニッチ商品でも生 き残ることができる。この現象を称して「ロングテール (Long Tail:長い尾)」現象という。このことから、相対的 に知名度の少ないブランドにおいてもeコマースの世 界では効率よく販売が可能になる。同様に、または印 刷、電波媒体等のメディアを利用した既存の通信販売 においても限定的ながらこの現象は生じているだろう。 知名度の少ない地方かつ中小企業のもつ商品およ びそのブランドに、このロングテール現象がチャンスを 提供する可能性がある。 これをデータおよび事例によって確認し、地方 産業に対する政策について考察する。 2. 通信販売の現状とロングテール 通信販売とは、販売業者が郵便,電話,eメールそ の他の通信方法で直接(ダイレクト)に顧客からの購入 申込みを受け,配送その他の方法で注文の商品を顧 客に届ける販売の形態である。顧客は,各種のメディ アによって提供される商品の情報から商品を選択して 購入を決断する。代表的なメディアは、カタログ,新聞・ 雑誌の広告,ダイレクト・メール,ちらし,テレビ・ラジオ のコマーシャルなどであるが、加えて、近年はインター ネットによるeコマースが隆盛しつつある。 通信販売は 19 世紀末から20世紀のはじめ、特にア メリカの地方都市や農村など,人口が希薄で店舗の未 発達な地帯において隆盛した。そこには、手近な所で 入手できない商品をいつでも購入できるメリットがあっ たが、し 1930 年代に入って自動車の普及による消費 の広域化に伴う交通費用の低減により、次第にチェー ン・ストアに押されるようになった。 消費者は、希望する商品を購買するために、その商 品の価格に加えて取引費用を負担しなくてはならな い。その取引費用は、まず、購入する店舗までの交通 立地条件は大きく変化するために立地選定は将来を見 通して行われる。 手段に対する料金等の支払いである「交通費用」、同 時にその往復及び購入に要する時間の「機会(時間費 用」、商品決定と購入場所の決定に要する情報に対す る費用である「探索費用」がある。 情報の不完全な現実の社会においては、購入する 商品が購入者の欲求を満たすものであるかどうかは分 明ではない。加えて、購入すべき商品を決定したとし ても、それがどこでいかなる価格で購入できるのかは、 探索をおこなわねばわからない。そして全ての情報を 手に入れられない以上、購入者は、どこかで探索を中 止し、購入を決定せねばならない。 購入者に取っての通信販売の利点は、この取引費用 の節約にある。家庭もしくは職場等で購入が可能であ る処から、交通費用がかからず、また機会費用のうち、 往復に要する時間が節約される。探索費用は特にeコ マースにおいて軽減される。商品に関する情報は販売 者から一方的に流されているのではなく,消費者が家 庭から必要とする情報を検索することができる。 消費者の取引費用を節減するためには、交通の便が 良い、そして補完的な商品が多く揃う商業集積の中に ある、探索費用節減のメリットのあるブランドを有する街 またはショッピングセンターにある、などの条件がプラ スに働く。当然、これらのいわゆる商業面における「一 等地」の場所は稀少資源であり、それを利用するため の経費は増大する。 通信販売には店舗での販売に比較して、営業諸経 費の構造が大きく異なる。店員の人件費がない代わり に、宣伝広告費,カタログの作成と送付など商品情報 を提供するための経費が大きくなる。そしてまた、消費 者の取引費用を節減するための商業面における「一等 地」の場所を確保するための地代家賃は必要とはしな い。もちろん、倉庫あるいは出荷のためのスペースを 必要とはするが、一等地に店舗を構える費用を節約す ることができるという点が大きく異なる。 流通企業の取り扱う商品は、基本的に多数であり、そ れを様々に組み合わせて提案する。ABC分析(ABC analysis)は、多品種を扱う企業において、主として売上 高を基準として分析し、多数の商品に対しどのように経 営資源を配分するかの意志決定を行う手法である。対 象となる商品をA、B、Cのグループに分け、重要度に 応じて売場スペースを与える。稀少資源たる売り場ス ペースを効率的に利用するために、売上につながら ず、過剰な在庫となるCランク商品=「死に筋」商品の 発生を防止する。そのために「死に筋」商品を把握し、 製品の頻繁な入れ替えを迅速に行う*3 。売上高の低い *3このための対策として、販売時点情報管理と呼ばれ るPOS (Point of Sales) の導入し、 まずどの商品が売 れて、どの商品が売れていないかを販売時点で把握す ることが一般的になっている。そして売れた商品は速 やかに補充発注するとともに、売れない商品は売場か ら撤去し、有望な新製品との入れ替えを行うことによ 商品は、店頭の面積当たりの効率を引き下げる。また、 それに関わる人頭生産性を下げる。また倉庫をふさ ぎ、在高を圧迫する。相対的に知名度が少なく、生産 量も少ない地方発ブランドは、この死に筋に位置する 可能性が高い。これは、製品を製造するものにとっても 大きな問題である。ある品目の販売数量の多寡は利益 に直結する。それは、単に売上が増大するということに とどまらない。ブランドは知られていない場合、不利に なる。よく知られていない、ということは販路が確保でき ないということに直結する。地方発ブランドが製品は良 くても、苦戦を強いられる原因はそこにある。 これらは、店舗の特性上、交通の便が良く、消費者に 近い、稀少資源たる立地、すなわち地価の高い立地を 有効に利用するために必要な方策である。 ロングテール(Long Tail)とは、ある商品群のある一 定期間における売上を商品単位で集計し、縦軸に売 上を取り、横軸に商品名を並べるABC分析を行ったと きに、グラフ上に現れる特徴に由来している。既存の 経営においては、ある程度以上売れる商品を峻別し、 取り扱う。このグラフの左側の商品群で収益の大半を 稼ぐ。それ以外の商品は、商品のバリエーションを見 せるために取り扱うが、損失をもたらす存在である。従 って、グラフの左側の「ロングテール」部分は、利益を 志向するならば極力絞り込むべき存在である。しかし、 eコマースにおいては、この構造が変化しているといわ れる。米国のアマゾン・コム、あるいは、アップルの「iチ ューンズ・ミュージックストア(iTMS)」での音楽ダウン ロードが事例として知られている。 日本においても、アズワン株式会社の事例がある。 同社は、研究用機器機材、医療用機器、半導体機器 および産業用の先端技術備品の開発と販売を行って いる企業である。企業通販という独自の販売形態を確 立し、コンピュータ・ネットワークによるオンライン受発 注システムと高効率物流システムでクイックデリバリー 体制を整えている。主要な商品は、研究・実験用の機 材である。例えば、ビーカー等の小物から、計測機器 といった製品まで取り扱う。その品目は、約 40,000 アイ テムにも及ぶ。顧客には約10種類のカタログを年間約 50万部発行している。商品は単価が10円程度のもの から、100万円程度の高額品まで幅広い。インターネ ット上では、「アズワンサイバーカタログ」というサイトを 開設している。アズワンの年間売上は405億に達し、 利益率も高く、営業利益率も 11.8%に達する。商品を スピーディーに、顧客のもとにお届ける。約 40,000 アイ テムにも及ぶ商品を取り扱っているために、年間1000 り、在庫形成の延期化を達成する。この手法はセブン・ イレブン、あるいはイトーヨーカドーの隆盛によって 確立され、現在では、コンビニエンス・ストアあるい は、GMSにおいては、POSシステムを軸としたシ ステムが導入されている。 万円を超える売上を持つ商品は百数十点程度であり、 売れ筋の商品でも年間500から1000個程度しか売れ ない。すなわち、この一見効率の悪いロングテール部 分で売上を稼いでいるビジネスモデルである。これだ けの商品点数を持ちながら受注の9割は受注の翌日 に出荷出来ているという。( 日経情報ストラテジー 2006/8) 地価の高い立地を有効に利用するために、生産能 力、広告費などの不足による知名度不足の商品は、死 に筋として売り場を確保できない。この事実によって、 特に、地方産品は不利な状況に置かれてきた。加え て、地方産品の多くは歴史をもつものや、その地域の 風土を生かしたもの、という特性から、製品としては成 熟期あるいは衰退期にあるものが多い。地場産業の代 表的な例、漆器、和食器、絹織物などはプロダクト・ライ フサイクルの上からは、衰退期にあるものといえるだろ う。こうした商品群は、例えば大型小売店舗である量販 店、百貨店においては取り扱う店舗面積を縮小されつ つある。 eコマースにおいて観察されるロングテール現象は、 これら衰退期にある商品に大きな機会を提供する。こ れは、従来の流通経路では不利な状況におかれてい た地方発ブランドにとって、競争条件の平等化(equal footing)でもある。 3. 立地の状況 通販企業の立地状況を商業統計から見てみる。人 口千人当りの全国平均の通販販売額は 24.18 百万円 である。小売販売額全体でみた場合は、同様に、人口 千人当りの全国平均を見た場合は、3176.9 百万円で ある。これを都道府県別に見た場合見る。さらに都道 府県毎の比較を容易にするために、全国平均を100と した指数を計算した。 小売業の販売額は、都道府県単位で見ても立地の 影響を強く受ける。それが顕著に表れるのは、東京 都、大阪府といった大都市圏とその周辺に立地する県 の状況であろう。東京は、人口千人当りの販売額は、 1357.1 百万円、指数では 130 であるのに対し、その周 辺に立地する埼玉県は、指数では 82.4,千葉県は 86.5、神奈川県は 93.0 である。 これは、小売吸引力の状況を表している。小売吸引 力とは、一般に店舗や商店街、ショッピングセンターな どの商業集積が地域の購買力を自店舗あるいは地域 にどれだけ吸引できるかを示す数値である。この小売 吸引力と商圏は密接に関連しており、小売吸引力の地 理的な範囲が商圏と呼ばれる。 小売吸引力=商業人口÷行政人口×100 商業人口=ある都道府県の小売業年間商品販売額÷ (全国の小売業年間商品販売額÷全国の人口) すなわち、小売吸引力とは、相対的にその地域が他 の地域から、どの程度購買力を吸引しているかを示す 係数であり、商業人口≧行政人口の場合、100 以上と なり、商業人口<行政人口の場合、100 未満となる。 この場合は、埼玉、千葉、神奈川の各県は、大きな商 業集積を持つ東京都に、小売業の販売を吸引されて いる。同様に、関西圏における大阪府に対する奈良 県、京都府に対する滋賀県にもこの構図が成り立つ。 では、通信販売においてはどうか。小売吸引力を持 つ指数が100を超える都道府県は、香川県(680.19)、 京都府(314.13)、東京都(280.63)、長崎県(177.50)、 大阪府(165.08)、静岡県(132.34)、熊本県(105.53)で ある。対して指数が低い都道府県は、石川県(19.19)、 富山県(23.21)、滋賀県(28.56)、宮崎県(29.10)など である。 東京、大阪等一般に企業が多く立地している都市部 の指数が高いのはいわば当然である。しかし、香川県、 長崎県、熊本県などの例外があり、これまでの小売業 の立地条件とされた人口集積の多さや交通の便の良 さとはかけ離れた都道府県にも通販企業の立地が可 能であることを示している。これらは、通信販売によるロ ングテール現象、すなわち、衰退期あるいは C ランク の商品の集積による利益追求の概念を拡張し、地方ブ ランドに光を当てる可能性がある。地方ブランドの大き な問題であった流通経路から排除されるという問題を 消費者とダイレクトな経路構築によって解消するからで ある。 り、地方都市においても、全国を商圏とする小売業を 立地させることが可能であることは明らかである。現代 の地場産業育成は「ものづくり」優先で、小売業への目 配りは相対的に乏しかった。 では、これらは大手の企業であるが、さらに、ニッチ 商品を取り扱いながら全国を商圏としている企業の事 例を挙げる。 三和メッキ工業はメッキ加工、金属の表面処理加工 の製造加工業である。福井県に立地し、資本金が1,0 00万円、従業員32名の企業である。硬質クロム、硬質 アルマイト、無電解ニッケルなどの各種メッキを行って いるが、最近はユニークなサービスを試みて注目され ている。メッキにおける、少量生産、短納期、特殊素材 への表面処理、製品開発などの「ニッチ」なメッキの分 野を開拓し、自動車・バイク・自転車・インテリアなど個 人用メッキの分野を開拓した。ホームページ上に、「必 殺!めっき職人」というサイトを開設、全国からこの特 殊な需要を集めている。自動車・バイク・自転車・ホビ ー・インテリア・宝飾のパーツをメッキや塗装によって、 加工する。例えば、古いパター(ゴルフ用品)の再生、 思い出のあるボール等のメッキ加工などの需要は全国 に存在すると思われるが、これまでは効率の面から顧 みられることのなかったロングテール・サービスが、ホ ームページの利用によって、地方都市において生まれ ている。 4. ケーススタディ 5. 結論 通信販売における上位の三社はセシール、ニッセ ン、ベルーナである。まず、この三社の立地を確認して みる。指数の特に高かった香川県、京都府には、大手 通販企業が立地し、これが指数を押し上げている大き な原因である。 香川県には、セシールの本社が立地し(香川県高松 市多賀町 2-10-20)、出荷は同じ香川県の香川県さぬ き市に3箇所もの物流施設を設置している。東京渋谷 に、クリエイティブセンターを設けているものの、面積に して 212 ㎡にすぎず、主要な業務は香川県で行われ ている。同様に、京都府には、ニッセン(京都市南区吉 祥院)が立地している。ニッセンの物流センターは、福 井県あわら市にあるが、高速道路に面しているとはい え、小売業の立地の適地とはいえない場所に存在す る。 ベルーナは、埼玉県上尾市に本社及び流通セン ターを持っている。関東圏内とはいえ、決して都心部と はいえない。 このような企業の立地におけるケースを見ても大手企 業の中心施設・拠点が大都会ではなく地方都市にお かれ。いわゆる店舗を保有する小売業とは立地の論理 参考文献 Chris Anderson(2006)“The Long Tail: Why the Future of Business is Selling Less of More” Hyperion Books e コマースを含む通信販売企業は、店舗を構え る小売業と異なり、必ずしも市場に物理的な距離 の近い、消費地に隣接する場所に立地していない。 地方都市においても、通販企業の立地は可能であ り、また首都圏内であっても商業地ではない場所 に立地している。インターネットによって、地理 的な懸隔が解消される可能性については多くの 指摘があった。しかし、現在、インターネットを 利用する e コマース以前に、従来のメディアを利 用した通信販売においても、この現象は確認され た。これらは、地方の活性化に資する可能性があ り、工業に偏った感のある地方産業政策を考え直 す余地があると考えられる。また、その地方にお ける通信販売の可能性は、地方の持つ物産の供給 地により近く立地することにより、これらのロン グテール商材に流通経路を確保する可能性を高 める。 が異なっていることは明らかである*4。このようにみる限 *4むしろ、工業立地 (manufacturing location) 、す なわち原材料の供給地により近く立地する原料指向型 立地の概念によって説明される部分が大きく、商業立 地の市場により近く立地する市場指向型立地の説明力 が相対的に低いと思われる。
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